ISⅡ 進化の果てへ   作:小坂井

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やはり内容が内容なだけに1期と似たような部分が多くなってしまいます。よく言えばオマージュ、悪く言えばパクリですが、なんとも言えない平凡さを感じてしまいます。


2話 異文化へのランウェイ

「入るぞ」

 

暗い部屋でドアが開閉する音が響く。室内には電子機器をいじりながら書類の整理をしている一人の人影があった。それを確認すると無感情な声で淡々と告げる。

 

「少し前、お前の妻の家がISに攻撃された。襲撃したISは全部で5機。それをお前の息子が機体を稼働させ、すべて撃墜。そこには私の援護もあったがな」

 

「・・・・・」

 

「それと、オータムによればその後お前の息子は身柄保護のため機体とともにIS学園へ移動したそうだ。母親も政府に保護された」

 

なんの反応もない声で返答するが、先ほどまで作業していた手が止まっているところを見ると、いろいろと思うことがあるのだろう。

 

「今でもあの学園には織斑千冬がいるが、奴一人ぐらいならばなんとかなる。小倉衣音の身柄を奪取するか?」

 

「いや、いい。あの学園に行くことを選んだのはあの子自身だ。それならば、いくら言ったところで無駄さ」

 

「そうか、報告は以上だ」

 

それだけを言い残し、再びドアは閉められ部屋には静寂が戻る。その静けさの中、静かに溜息を吐き、座っていたソファーの背もたれに寄りかかる。

自分と全く同じだ。過去の呪縛から逃れられず、望まぬ力を手に入れてしまった。

 

「辛い道を選んだんだね・・・・衣音」

 

そしてここまで来てしまった以上、もう戻れないだろう。すべては自分の至らなさが招いた結果だ。それを悔やむように手元の書類を握りしめる。

その握りしめられた書類にはぼやけた一枚の写真が貼られていた。全体的にぼやけていたが、人影らしきものが映し出されている。

 

 

 

そして、その写真の下にはこう綴られていた。『小倉瑠奈』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

「っ・・・・」

 

気が付くと見知らぬ部屋で朝を迎えていた。いや、少し考えたらわかる。ここはIS学園の寮。自分は昨日、この学園に入学してきたのだった。すごく当たり前なことのはずなのに、入学した昨日の記憶が曖昧だ。正確に言えば、昨日の放課後からの意識と記憶がない。

 

「なにかあったっけ・・・・ふあぁぁぁ~~~~」

 

体が朝だと伝えんばかりに大きなあくびが口から出る。だが、活気にあふれている肉体とは反対に、ため息が出てくる。この何とも言えない鬱鬱さは一種のホームシックなのだろうか。いや、そんな単純なものではない。なぜかわからないが、自分が女しかいないこの学園に早くも嫌気を感じ始めている。

 

『衣音、おはようございます。起床早々申し訳ありませんが、連絡がございます。本日午前3時22分でヴァリアントの全ての武装のロックを解除、現在操縦者へのフォーマット作業を行っております』

 

「そう・・・後でデータを送ってくれ・・・・」

 

『了解しました。あとどうでもいいですが、今の状態で瞼を閉じた場合、高確率で二度寝が起こります。直ちに起床することを推奨します』

 

「今日は熱があるんだ。学校は休む」

 

『測定した体温は平熱領域を出ていません。仮病はやめましょう?登校すれば女の園が待っていますよ?』

 

「僕がそんな戯言でやる気を出すと思うか?」

 

苛立ちが混ざった声で言い返すが、ここで言い争っても無駄だ。エストのことだ、正当な理由がない限り彼女が学校を休ませることなどないだろう。下手すると、眠気を覚ますために怪しい薬を体に投与されかねない。全身の総力を振り絞ってベットから抜けると、シャワーを浴びて制服に着替える。

 

「まずは朝飯にしようか」

 

朝の運動を兼ねて、部屋から出ると食堂へ向かっていく。当然と言えば当然だが、ここは生徒が住む寮。道中でたくさんの生徒とすれ違うが、皆歩みを止めて衣音ーーーいや、瑠奈を指さしたりごしょごしょと小声で話している。

 

それを見ていると人間の習性だからか、自分に対して悪口を言っているように感じてしまう。彼女達が自分の悪口を言っているなどという証拠や確証もないというのに、無意識にそう妄想してしまう自分がいる。

 

『周囲の雑音をカットしますか?』

 

「いや、いい。この環境にしばらく生きていかなくちゃいけないんだ。早く慣れないとね」

 

エストのアシストを断って食堂へ到着し、朝食の乗ったトレイを持ち、テーブルに座る。ご丁寧に瑠奈から5mほどは無人の状態で、皆遠くから瑠奈を眺めつつ朝食を食べている。どうやら今、ここでの自分のポジションは鑑賞される見世物らしい。自分を見ていて食欲が増すかどうかはわからないが、それを言っても仕方がないので黙って食べる。

 

そんな周囲から感じる視線に耐えつつ、黙々と進んでいく朝食。そこに入ってくる人影があった。

 

「ここ、空いているか?」

 

「どうぞ」

 

声の持ち主で正体を知りつつ、目の前に座った人物を見る。黒いスーツに長い黒髪、そして狼のように鋭い目つき。紛れもなく、それはこの寮長であり、ISの実技授業を担任している織斑千冬であった。

 

「この学園には慣れたか?」

 

「いいや、まだだ。もしかすると一生慣れないかも」

 

「授業の方はついていけそうか?」

 

「昨日、参考書は一通り目を通したからだぶん大丈夫だ」

 

「そうか・・・」

 

不愛想で冷たい態度だが、そこがやはり父親に似ていると感じる。母子家庭であるがゆえに、てっきり母親のような性格になっているかと思ったのだが、彼の根幹は生まれた時から変わらないらしい。それが嬉しくもあり、微笑ましい気分になる。

 

こうして彼はまっとうな人間として育ってくれた。彼が生まれた当時、千冬を含め多くの者が彼の存在に苦悩していたであろう。中には殺した方がいいという意見もあったが、彼の母親は一心にして小倉衣音という存在を守り、信じ、肯定した。無論、彼女も衣音という存在の裏に潜む影を感じ取ってはいたが、それでも愛し続けた。それはどれほど母親としてーーーー人間として立派なことだろうか。

 

「何か困ったことはあるか?お前にもお前の事情があるだろう。遠慮せずに何でも言え」

 

「そう言われてもね・・・・それならば近々外泊許可をくれる?」

 

「外泊許可?それは構わないが、どこかに行くのか?」

 

「まあ、そんなところ。詳細は後々伝えるよ」

 

それだけ用件を伝えると、食べ終わった食器がのせてあるトレイを持って席を立つ。よくわからないが、彼にも事情があるらしい。それを他者に話さず、1人で抱え込んでしまうところは母親に似ているのかもしれない。容姿といい、髪の色といい、見事なまでに小倉衣音はあの両親の血を継いでいると納得してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

「ん?」

 

入学二日目もすると、早くもクラス内でともに行動するメンバーが固まりつつある。それがいいことなのか悪いことなのかはわからないが、生憎そのような適応力を衣音は持ち合わせていない。それも自分が男であることが原因だろう。

 

女子の中で男が混ざっていては良くも悪くも目立つ。そこに単独で乗り込むのはきついであろう。そんな状況で血路を開くものがいた。長い金髪が特徴の外国人少女、名前はーーーー確かアリス・オルコットといったはずだ。入学試験で一位を取り、主席であったはずなのだが、なぜそんな人物が話しかけてくるのだろうか。

 

「訊いていますか?お返事は?」

 

「ああ、聞いているよ。何か御用かな?」

 

「まぁ!なんてだらしのないお返事ですの?わたくしがわざわざ声をかけて差し上げたというのに!!」

 

大袈裟っぽく声をあげて、横柄な態度をとる。なぜかわからないが、今のは自分の態度に非があるらしい。素直に『ごめんなさい』と謝ると、『よろしいですわ。お顔をあげなさい』と殿様ーーーいや、女王のような対応をさせられる。

 

「で、何か御用ですかミス・アリス・オルコットさん」

 

「ほう?わたくしの名前をご存知とは、男にも人の名前を覚える知性はあったようですわね」

 

誉められているのか貶されているのか・・・・いや、たぶん貶されているのだろう。だが、ここで感情的になっても無意味だ。こういう状況はさっさと話しを進ませて会話を終わらせるに限る。

 

「まあ、お互いお世辞を言いあうような仲ではないでしょう。それでは改めて聞かせてもらおう。何か御用ですか?」

 

「あなた、専用機をお持ちですね?」

 

「ああ」

 

「その専用機の技術を我が祖国イギリスへ提供していただけますか?」

 

「断る」

 

迷いもせずに即答する。自分の機体をつい先ほど会ったばかりの人間に渡すなどできるはずがない。それは100人中100人が同じ反応をするだろう。だが、相手はそれで引き下がってくれるほどやさしい思考はしてくれなかったようだ。

 

「よくお考えなさい?どれほど優れた機体であろうと、操縦者がダメでは意味がありません。まさにpearls before swine(猫に小判)です」

 

「私が操縦者として劣っていると?」

 

「ええ、男の中ではそこそこ優秀なようですが、所詮はそれまで。わたくしたちにはまだまだ及びません。そんなあなたができることなど、その技術を万人の方々へ分け与えること。それがあなたのできる最大の献身ではないですか?」

 

高飛車で饒舌となっているからか、言いたい放題なアリス・オルコットのスピーチを聞き流しつつ、なんとかエストを抑え込む。あの自尊心が高い彼女のことだ。下手すると、『ぶっ殺すぞ!この金髪縦ロールアバズレ処女がぁ!!』と喧嘩腰で極道妻のような口調で発狂しかねない。

 

「何度も言うが、答えはNOだ。機体は渡せない。同じことを何度も言わせないでくれると助かる」

 

「これほど頼み込んでいるのにですか?わたくしがあなたに役に立てるチャンスを与えているのですよ?」

 

「君のその安っぽい頭を下げれば何でも願いが叶うほど世界は優しくない。自分のその頭一つで私が顔を縦に振ると思われたのならば、随分と舐められたものだな」

 

「なんですって?」

 

先ほどの柔らかで親切な物腰とはうって変わり、下冷えするような低く、怒りを感じさせるような口調で言い返す。そのまま言い争いに発展するかと思われたが、双方が口を開くよりも早く教員である鈴が教室に入ってきたことによって強制的に会話は中断させられる。

 

「話は終わりませんわよ!!いいですわね!!」

 

「いいね、お互い納得するまで徹底的に話し合おうじゃないか」

 

平和で穏便に済ませられるならば、それに越したことはないのだが、この時話し合いではなく殴り合いで解決することになるとは誰が想像できただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、SHRを始めるわよーーー」

 

前に立った鈴の軽い声を合図に色々と伝達事項を伝えられていく。全体的な一年の行事に学園の設備を使う上の注意事項。そのほとんどが他愛ないものだったのだが、最後に思い出したかのように最重要事項を告げた。

 

「それと再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めなきゃいけないんだけど、立候補者いる?」

 

「先生、代表者ってなんですか?」

 

「代表者っていうのは、そのままの意味よ。再来週の対抗戦の出場だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席、まあ、クラス代表みたいなものね」

 

あからさまに面倒な要件に教室がざわざわと騒がしくなる。ここではリーダーシップのあるものが進んで仕事を引き受けるものなのだが、なにせ場所が場所だ。その行事に対して、民衆の関心がどこへ向かうのかはあからさまだった。

 

「はい!小倉瑠奈君を推薦します!!」

 

「あ、私もそれに賛成です!!」

 

なぜ、こういう嫌な予感というものは的中するものなのだろうか。よくあることだ、『まさかね』と思っていたことがよりにもよって起こってしまう、それも悪い状況に限ってなのだからタチが悪い。場の流れか、それとも同じことを考えていたからか、次々とクラスメイトが賛成の声を出していく。

 

「待ってください!そんなこと納得がいきません!!」

 

その流れを逆流するように、一人の生徒が大声をあげる。それはよりにもよって先ほど言い争ったアリス・オルコットであった。だが、顔をしかめており、耐えられないといった表情だ。

 

「そのような選出は認められません!物珍しいからといって、男がクラス代表だなんていい恥さらしです!!」

 

若干、話のベクトルが違うが、この小倉瑠奈をクラス代表としようとする流れに逆らってくれるとは有り難い。あえて、反論はせずに好きにさせる。

 

「男だからという理由で専用機を手に入れたような素人にクラスの顔となるクラス代表を務めさせるなど、そんな恥辱と侮辱を一年間入学主席であり、イギリスの代表候補生であるこのアリス・オルコットに耐えろとおっしゃるのですか!?」

 

『言いたい放題ですね、それに対して何も言わないだなんてそれでも男ですか?』

 

「黙っていろエスト、僕があんな見え見えの挑発に乗ると思うなよ」

 

言われ放題で我慢ならなかったのか、エストが煽ってくるが、動じた様子もなく無表情で聞き続ける。この流れで行けば、クラス代表は間違いなくアリス・オルコットとなるだろう。ならば、今はやりたいようにさせて、後でどっちが優れているのか、白黒はっきりさせればいい。完璧かつスキのない計画だ。だが、どんな計画も必ず綻びは出てくる、主に人間の感情によって。

 

「そもそも、小倉瑠奈などという男でありながら、なんですかその名は!?まったく、これを名付けた親のセンスを疑いますわね!!」

 

「っ!!」

 

その一言で今まで冷静を保っていた感情が一気に沸騰する。人ならば誰しも心の中で踏みこんでほしくない領域があるだろう。それを彼女は踏みにじった。言い訳や弁解など不要だ。その言葉だけはどんな手段を用いたとしても、撤回させる必要がある。

 

『抑えてください衣音。ここで出てもなんの得もありませんよ?』

 

「黙ってろ。おい!アリス・オルコット!!」

 

ガタンと物音を立てて、勢いよく立ち上がると限界まで感情を押し殺した声で丁寧に用件だけを伝える。

 

「こんな場で申し訳ないが、さっきの話の続きだ。僕の機体、君に差し上げてもいい」

 

その衝撃的な発言に鈴を始めとしたクラスの人間が驚いたような声を出す。そのなかでアリス・オルコットだけは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、口元に手をかざす。

 

「やっとわかってくれましたか。やはり、下手に背伸びをせずに、凡人は凡人なりにコツコツと努力をしていくのが相応ですわ。a journey of a thousand miles begins with a single step(千里の道も一歩から)といいますしね」

 

「ああ、だからどちらがこの機体を手にするのにふさわしいのか勝負しよう」

 

「勝負・・・ですか?」

 

「ああ、君と私とでISの試合を行って、君が勝ったのならばなんの条件も付けずに私の機体を君に引き渡そう。だが、私が勝利したのならばさっきの発言を撤回してもらう」

 

「さっきの発言・・・・あなたを凡人と言ったことですか?」

 

「いいや、私の名前を侮辱したことだ」

 

「いいでしょう、その条件で結構です」

 

どう考えても割に合わない。負けたら機体を奪われるというのに、勝ったとしても相手の謝罪の言葉のみ。メリットとデメリットが不釣り合いすぎる。誰もがそう思う中で、ただ一人発案者である小倉瑠奈だけは涼しい顔で口角が上がっていた。

 

いい機会だ。こんなところで躓くようでは自分が破壊者(ルットーレ)の力も機体(ヴァリアント)も受け継ぐ資格などない。幸いなことに、相手もそれなりの強敵と聞く。相手にとって不足はないだろう。

 

 




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