第二次スーパーロボッコ大戦 ガールズ&パンツァー編(仮) 作:ダークボーイ
「なんて事………」
「予想外が過ぎるわね………」
「あわわわわ………」
試合用カメラから映し出されるJAM巨大戦車の映像に、二人の家元も流石に絶句し、審判員に至っては腰が抜けかけている者までいた。
「どど、どうすれば!?」
「娘達はすでに分かっているわね。遅滞戦闘に入っている」
「下手に後ろを見せれば撃たれ…」
動揺しすぎて声が裏返っている蝶野に二人の家元は冷静に状況を判断するが、そこで審判席にまで轟く砲声が響いてくる。
「…大きいわね」
「こんな口径は初めてね。それに」
僅かに遅れて響く着弾音に、流石に家元達も眉をひそめる。
「かなりの高威力。榴弾の類のようね」
「これだけの口径なら、榴弾でも十分破壊力は有るわ。カール自走臼砲が可愛く思えるわ」
「あの、なんでお二人ともそんな落ち着いて」
「慌ててどうにかなるとでも」
「西住と島田の娘がいるのなら、そうそう全滅はさせないでしょう」
「指揮官が落ち着いているのは助かるが」
審判席に詰めていたプロキシマも落ち着き払っている家元二人に感心しながら、現状確認をする。
「今マスターから増援要請が正式にNORNへと発信された。こちらの戦闘データも送信されているので、編成終了と同時に送られてくるはず」
「所要時間は?」
「長くて、20分」
「難しいわね………」
凄まじい対空攻撃に空戦部隊は近寄れず、大火力に陸戦部隊も距離を取らざるを得ない状況に、しほも千代も考え込む。
「自衛隊から連絡は?」
「は、はい! 相変わらずこの近辺で通信、レーダー双方使用不能ですが、迎撃機の通信途絶からさらなる増援が出撃体勢に入りました!」
「あれだけの小型高速機体すら正確に落とせる命中精度よ。出撃はともかく、不用意な攻撃は控えるよう連絡を」
「了解!」
「見学者の避難は?」
「完了しました! 消防と警察が更に距離を取るように誘導してます!」
「間違っても会場内にはこちらの許可が出るまで誰も入れさせないで。被害が増える一方だわ」
「えと………」
しほが自衛隊の、千代が消防警察に指示を出す中、通信担当の審判が首を傾げる。
「あの、西住家元」
「なに?」
「娘さんが、あの巨大戦車にはフラッグがついてて、向こうは戦車道をしているつもりだって言ってますが………」
「はあ!?」
蝶野が思わず間抜けな声を上げるが、家元達は逆に表情を固くする。
「なるほど、それなら辻褄は合う」
「対空攻撃と対地攻撃、明らかにレベル差がありましたからね」
「つまり、あれをどうにかするには陸戦で対処するしかない、と」
「そうなるわね」
「あれを、ですか?」
手早く結論をまとめ上げた二人に、蝶野は画面に映る巨大過ぎる戦車にどう対処すれば全く分からず、絶句する。
「NORNであれに対抗出来そうな陸戦力は?」
「難しいな。最悪、先程言ったように上空に宇宙戦艦を転移させ、砲撃するしかない」
「そちらの準備も進めさせて。本当に最後の手段だけれど」
「了解、言質と判断する」
最終手段の許可を確認したプロキシマが、現場承認の報を送信する。
「あとは、被害者を絶対に出さない事だけね」
「ああ………」
それが一番の難題である事を、二人の家元は誰よりも自覚していた。
「なるほど、とうとう宇宙人からも試合を申し込まれるようになったか」
「これのどこが戦車道の試合ですか!?」
みほからの通信に納得するまほだったが、その場にいた同乗者が他全員一致の反論をする。
「向こうは陸戦では砲と機銃しか使ってこない。れっきとした戦車道ルールだ」
「レールガンやメタルストームは不許可です!」
「あまり騒がないでください。傷口は塞ぎましたが、完治したわけじゃありません」
騒ぐ同乗者にまほの治療をしていた白香が注意する。
「ふむ、便利な物だな。こんなすぐ傷が治るなら多少の無理も効くか」
「なんでか皆さん同じ事言って困ってるんですが」
「治療が終わったら、もっと距離を取りましょう。あんだけの怪物、どこまで被害が出るか分からないわ」
「後退準備、急げ!」
治癒能力でふさがった傷を感心しつつもアレな事を言うまほに白香は困った顔をするが、一段落ついたと判断した琴音とクラリッサは前線部隊の後退を始める。
「さすがにみほ一人の手には余るだろう。私も戦線に戻る」
「だから傷塞いだばかりですよ!?」
「それに、空いてる戦車もありません!」
白香と同乗者にそろって制止されるまほだったが、そこでにやりと笑みを浮かべる。
「ティーガーならそこに一台余っているじゃないか」
「え?」
まほの視線の先を追った者達は、そこにある物に気付いて愕然とする。
応急修理を完了しようとしている、ティーガー型ストライカーユニットに。
「全車、一定の距離を取りながら相手フラッグ車周囲を旋回してください! 向こうの砲塔の動きに注意、決して正面に立たないように! 側面部から砲塔にのみ攻撃を集中させてください!」
『了解!』
みほの指示に従い、動ける戦車がJAMフラッグ車と距離を取り、側面についた車両が嫌がらせのように砲撃を繰り出す。
「砲撃妨害のみを重視した陣形か。帝国華撃団、散開しつつ、一気に距離を詰める!」
「こちらも散開して接近! 動き続けて狙いを定めさせるな!」
大神と翼の指示が飛び交い、帝国華撃団とシンフォギアチームが木々の間に散開しながらも距離を詰めようとする。
「立花は足を絶対止めるな! 狙い撃ちされるぞ!」
「了か…」
言葉の途中で、響はJAMフラッグ車の狙撃砲がこちらに向いたのに気付き、即座に横っ飛びした直後に先程までいた場所に砲弾が炸裂する。
「危なっ!?」
「足止めんな! あっちは速射が効く!」
クリスがアームのハンドガンを反撃とばかりに連射するが、相対的な質量差の前にさしてダメージにならない。
「ちっ! 小技は効かねえ、大技は出してる暇をくれねえ、どうしろってんだ!」
「今に増援が来るわ、それまで足止めだけでもしないと!」
攻撃の手は止めずにボヤくクリスに、マリアもなんとか接近しようとするが、突出した途端に狙撃砲がこちらに向いて慌てて回避する。
「でもこっちの攻撃が効く範囲になったら、どんな近接武装出てくるかも不明ね」
「あ………」
紗羅檀に指摘され、響が思わず声を上げた所を再度砲撃され、かろうじて避けた響が地面を転がる。
「立花!」
「大丈夫!」
翼が声をかけてくるのに返答しつつ、跳ね起きた響だったが、そこを再度狙撃砲が狙う。
「やばっ…」
「桜花放神!!」
体勢を立て直すよりも早く発射された砲弾は、響の前を突き抜ける霊力の斬撃波に撃墜される。
「大丈夫!?」
「はい! ありがとうございます!」
狙撃を防いださくらに礼を言いつつ、響は再度走り出す。
「何となく分かってきました! 砲口が向こうとした時に大技を出せば防げます!」
「タイミングが難しいですね」
並走状態のさくら機からの声に、響は狙撃砲の照準から発射までの殆ど無いタイムラグをどう狙うのか疑問に思う。
「私がまた防壁を…」
「いえ、狙撃砲だけならまだしも、あの主砲が有るわ。速度を落とすのは危険よ」
「じゃあどうすればいいデス!?」
「また来る!」
翼が大剣を呼び出そうとするのをマリアが制止するが、今度は切歌と調へと狙撃砲が向く。
だが発射直前、横手から飛来した砲弾が狙撃砲の角度を僅かに変え、砲弾は的外れの方向へと炸裂する。
「へ?」
「あっちの戦車から!」
何が起きたか理解出来ない切歌に、調は砲弾の飛んできた先のⅣ号戦車を指差す。
『NORNの皆さんはそのまま前進してください! 狙撃はこちらでなんとかしてみます! 全車、狙撃砲を横手から狙って、照準を外します! その名もツクツク作戦です!』
みほからの通信に、帝国華撃団、シンフォギアチーム双方頷くと一気に速度を上げる。
「向こうの隊長、結構頭切れるな。ネーミングセンス以外」
「それは言わん方がいいで」
クリスが感心すると同時に呆れるが、そばにいた紅蘭が思わず苦笑する。
そんな中でも左右の狙撃砲に戦車からの砲弾が間を置かず炸裂し、その度に狙いがずれるがたまに間近に着弾する。
「上空支援が無いのはきついわね………」
「一人まだ頑張ってるけど」
マリアが思わずぼやく中、調が対空砲火を縫って攻撃を続けるメイヴの方を見る。
メイヴがハリネズミが如き対空砲火を驚異的なマニューバーで掻い潜りつつ、爆撃を試みるが投下した爆弾は即座に撃墜され、機銃の類は質量差で効果は薄かった。
「彼女クラスのマニューバーを誇るのはそうそういない。やはり私達でどうにかするしかないな」
「幾らシンフォギアでも、あの動きは無理よ!」
翼が上空で一人奮戦するメイヴを見て呟くが、マリアが思わず怒鳴り返す。
「あの動きは無理でも!」
「みんなで手分けすれば!」
シンフォギアチームの隣を、着地して地を駆けるわかばとあおいが並ぶ。
「待て、君達のは陸戦用じゃ…」
「なんとかなります!」
その様子を見た大神が制止するが、ネイキッド・ブレードを手にしたわかばは構わず突撃する。
そこに妨害砲撃の合間を掻い潜った狙撃砲の一撃が飛来し、砲口がこちらを向いた瞬間にとっさにネイキッド・ブレードを盾のようにかざしたわかばだったが、刃に直撃した砲弾にふっ飛ばされる。
「うわあぁ!」
「わかばちゃん!」
「だ、大丈夫!」
なんとかネイキッド・ブレードが耐えきったお陰でダメージを抑えられたが、地面を派手に転がったわかばはなんとか立ち上がる。
「一瞬でも隙が出来れば的確に撃ってくる。距離を詰めても、その一瞬で無効化される」
「直撃は禁物や! 光武弐式の装甲だと耐えきれるかどうか…」
レニが冷静に状況を解析するが、紅蘭が注意を促した所で、僅かに狙いをそれた砲弾が紅蘭機をかすめていく。
「狙いが変わってきた。速度の速い者か、遠距離攻撃を持つ者を…」
「おい待てそれって…」
レニの言葉に嫌な予感がしたクリスだったが、次の瞬間砲口が自分の方を向いている事に気付くと全力で後方へと跳びながらアームのハンドガンを連射する。
飛来した砲弾と弾丸がかちあい途中で誘爆、爆風が吹き抜ける。
「やっぱり私か!」
「まずい、上空援護の次は遠距離援護を狙い始めたのか!」
「砲撃戦のノウハウを熟知してる………JAMとはこういう戦い方もするのか………」
大神と翼が焦りを感じ始め、こちらの接近を的確に阻むJAMフラッグ車に未だ有効な攻撃すら叩き込めない。
「せめて、どちらか一方だけでも封じれれば…!」
今打てる手を大神は考える。
増援到着までに、少しでも相手を力を削ぐべき手を………