第二次スーパーロボッコ大戦 ガールズ&パンツァー編(仮) 作:ダークボーイ
「それでは、両者代表前に」
自衛隊の制服に身を包んだ凛々しい女性自衛官に促され、大洗、黒森峰の両チームの代表が進み出る。
「うわ、練習試合なのに蝶野教官まで来てるよ」
「知らないのですか? 教官どころか、有名所の隊長や監督クラスまで見学に来てるでありますよ」
沙織が大洗の教官を務めた事もある女性自衛官の姿に驚くが、優花里が観客席にチラホラ見える戦車道を有する学園の制服姿を確認していた。
「皆さん興味深々なのですね」
「物好きばかり………」
華が小さく笑い、麻子は呆れたため息を漏らす。
そんな中、審判役の教官の前にそれぞれの代表二名が歩み寄っていた。
「それじゃあ、今日はよろしく」
「こちらこそ、急な申し入れを受け入れてくれ感謝する」
大洗のパンツァージャケットに身を包んだ小柄なツインテールの少女、大洗女子学園生徒会長、角谷 杏が手を挙げて挨拶し、それを黒のパンツァージャケットに身を包んだみほに似た、だがみほと違って鋭い雰囲気を持った少女、黒森峰女学園前隊長、西住 まほが軽く頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
続いてみほが挨拶すると、同じく黒のパンツァージャケットを着た、肩口まで髪を伸ばしたどこかきつい雰囲気の少女、黒森峰女学園副隊長、いや次期隊長の逸見 エリカがにこやかに返す。
「試合形式はフラッグ戦、互いに登録車両は八両、間違いないわね?」
「ウチそれしか戦車無いし」
「間違いありません」
蝶野教官の最終確認にそれぞれが頷く。
「三年生はこれが最後の試合、悔いのないようにね」
「は~い」
「分かっています」
「それでは試合開始位置に」
試合前の顔合わせが済んだ双方が、それぞれの戦車に戻る。
「西住ちゃん見た? あのエリカって子の顔」
「ええ、クマ出来てましたね………」
「ありゃ、西住ちゃんに勝とうって気合か、それともお姉さんに後任されたプレッシャーで寝れなかったんじゃない?」
「エリカさんだと、両方かな………」
笑いながら話す杏に、みほも思わず苦笑しながら、挨拶する時も顔は笑っていたが目が微塵も笑っていなかったエリカの事を思い出す。
「けど、前よりはいい顔してましたよ」
「あれでね~。まあやる気満々なのは確かみたいだけど」
離しながらそれぞれの戦車に騎乗、そしてそれぞれの開始位置へと向かう。
「大洗、指定位置に付きました」
『黒森峰、指定位置に付きました』
『試合開始!』
試合開始の号令と同時に、双方の戦車がエンジン音を鳴り響かせる。
「パンツァー、フォー!」
みほの号令と同時に、大洗女子学園の戦車道チームの全車両が一斉に動き出す。
「さて、向こうはどう来ますかね、西住殿?」
「今回の試合会場は橋と林を挟んでるから、エリカさんなら基本に忠実、部隊を分けて一番大きい橋を中心に、左右の小さな橋のどちらかと二面作戦で来ると思う」
優花里の問いかけにみほは考えながら、セオリー通りの戦術と、それの対処法を思案する。
「火力勝負だとこちらは圧倒的に不利だから、まずは中央の橋に繋がる森林地帯前で陣地を展開、分散してくる部隊を集中攻撃しよう」
「それじゃあ、その旨連絡するね」
てきぱきとみほの作戦を沙織は各車に伝えていく。
(気になるのは、エリカさんのあのクマ。多分必死になって今日の作戦を考えてる。何かアレンジをしてくるかも)
「レオポンさんチームとカバさんチーム、そしてアンコウチームは前に、後は後ろに配置、向こうの突撃に備えてください。カメさんチームとアヒルさんチーム、ウサギさんチームは最後方に。相手の台数によっては、すぐに他の橋に向かってもらいます」
「あんまり大勢で来ないといいのですけれど」
「撃ち合いになったら絶対不利。身を隠せる建物も無い」
みほの作戦を聞きながら、華が少し不安に呟き、麻子も頷く。
「場合によっては林の中に潜伏、各個撃破を狙います」
「正面戦闘を避けるとしたら、そうなるでありますな」
「部隊を分けるとしたら、タイミングを合わせてくるだろうから、こちらに来るまでは少し間が…」
ハッチから身を乗り出し、様子を確認しようとしたみほの目に、遠くに上がる土埃が飛び込んでくる。
「もう来た!?」
「ウソっ!?」
「は、早すぎであります!」
「随分とせっかちなんですね」
「確かに」
「全車装弾! 砲撃戦用意!」
自分の予想を遥かに上回る黒森峰の進撃速度に、みほのみならず、車内全員が慌てる。
「まさかミポリンに勝てないと思って、特攻してきた!?」
「あ、ありえるであります! 作戦も何も無しに、相討ち覚悟で突っ込んできたのでは!?」
「エリカさんは最初からそんな無謀な事はしません! これは、電撃戦です! 全車後退、森林出口に向かって半円陣を!」
相手の狙いが、機動性に物を言わせた突撃攪乱作戦だと悟ったみほが即座に防御陣形を整えさせる。
「まさか、橋梁が有るのに電撃戦とは…」
「黒森峰、いえお姉ちゃんは陣形の維持には特に厳しく指導してたから。向こうは最高速度のまま、縦深陣で来るはず」
「よっぽど運転に自信がお有りなのですね」
「これだから名門校は…」
驚愕、歓心、呆れ、それぞれの言葉を口にしながらも、皆が迫ってくる相手に向かって備える。
「フラッグ車が先頭とかだったら楽なんだけど」
「さすがにそれは無いと………」
「こちらも林の中に潜んでは!?」
「林道入り口は狭い上に木が密集してるから、今から突入だと時間がかかるし、陣形を構築する前に突撃されたら、危険だよ」
「でもそれって、向こうも出てくるとこは危険って事だよね?」
車内で喧々諤々の論争が起きる中、麻子の呟きに全員が考え込む。
(そう、電撃戦はその突破力こそ危険だけど、このように突入口が限られている場合、防衛側はそこに火力を集中させればいい。最悪、突入口を塞がれたら相手は動きを封じられる。エリカさんの狙いは?)
『すぐそこまで来てるぞ!』
『まさに疾きこと風のごとし!』
各車から聞こえてくる通信に、みほは黒森峰の作戦を思案しつつも、迎撃体勢に入る。
「発砲は先頭車両が林道を突破してきてからです! かなりの速度で来ると思われますから、タイミングはこちらで指示します!」
みほはハッチから身を乗り出し、すでにその姿が目視出来る範囲に来ている事に驚きつつも、タイミングを見図る。
先頭を来るティーガー2型戦車に目を凝らす間も無く、どんどんその姿が大きくなっていく事にみほの喉が鳴る。
(隊列を組める限界速度まで出してる。あの堅実なエリカさんが何故?)
考える暇も無く、目前まで迫った相手にみほが号令を出そうとした時だった。
林道入り口直前で、ティーガー2型が急停止、のみならず後続の他の戦車も全く同時に急停止する。
「………え?」
「あれ?」
「あれれ?」
「あら?」
「ん?」
全く予想外の急停止に、あんこうチーム全員が思わずマヌケな声を漏らす。
もっとも、それは他の車内でも一緒だった。
直後、向こうが先に発砲してくる。
戦闘のティーガー2型を皮切りに、後ろの戦車も高射角射撃で次々と砲弾を撃ち出す。
「全車、発砲しながら後退!」
我に返ったみほの指示で、大洗全車が発砲しながら後退。
周辺を凄まじい砲撃音が鳴り響きまくり、双方の砲弾が着弾、あちこちで盛大に土砂を巻き上げる。
「西住殿! これは一体!」
「分からない、あんな狭い所からじゃ、集弾も精密砲撃も出来ない!」
「それはこちらもです! 後ろからの砲弾がどこから飛んでくるか分かりません!」
互いに先頭車両以外見えない撃ち合いに、優花里が思わずみほに問うがみほも向こうの狙いが分からず、華も林道の中に籠もった相手に狙いを付けられない。
「レオポンさん、援護しますから突撃した先頭車両を…」
「あ」
状況打開の突撃を支持しようとしたみほだったが、そこで麻子の声が響く。
「退いてく」
「え?」
「ほ、本当だ!」
麻子の指摘通り、向こうは散発的な発砲をしながらも、今来た道をバックで後退していく。
「ほ、砲撃中止!」
慌ててみほが砲撃を中止させる頃には、向こうの姿は大分小さく、相手の砲撃も止んでいた。
エンジン音以外は静かになったその場で、大洗戦車道チームは全員、訳が分からずに呆然としていた。
『え~と、西住ちゃん。説明お願い』
「それが私にも………」
杏からの問いかける通信に、みほも説明のしようがなく、なんとか状況を整理しようとする。
『向こうが退いたなら、今度はこちらがアタックしましょう!』
『危険ではないか? これは明らかにこちらを誘った囮作戦だ!』
『でも、正面からの撃ち合いじゃ勝ち目無いって………』
『それこそ、林の中ならこちらが有利!』
『え~と、こんな戦法ゲームに有ったかな』
各車から色々な意見が飛び交う中、みほも突入か防衛かに迷う。
が、再度向こうがこちらに迫ってくるのを見たみほは即座に後者を選んだ。
「また来ます! 迎撃を!」
「な、何なのでありますか!?」
「分かりません!」
意味不明の黒森峰の戦法に困惑しつつも、みほは再度迎撃に移った。