第二次スーパーロボッコ大戦 ガールズ&パンツァー編(仮) 作:ダークボーイ
「作戦を第二段階に順次移行! 決して気取られるな!」
『了解!』
隊列維持可能なギリギリの速度で前進と後退を繰り返しながら、エリカが指示を飛ばす。
「時間が命だ! 少しでも遅れれば、向こうはすぐ見抜いてくるぞ!」
指示其の物は的確なのだが、その目が血走っているのを見ている同乗員達はどこか不安げな顔をしていた。
「逸見さん大丈夫かしら?」
「昨夜一睡もしてないらしいわよ………」
対戦相手が相手だけに、異常に気負っているエリカだったが、作戦は現状上手くいっていた。
「M、進行状況報告!」
『こちらM、予定通り進行中』
「大洗に動きがあり次第、第三段階に移行!」
「変わった戦法ですわね」
観客席の一角、自前でやけに豪華なイスと天幕を持ち込み、紅茶を片手に観戦していた聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長、通称ダージリンが呟きながら紅茶を口に含む。
「普段の黒森峰の戦い方じゃないわね」
ダージリンの隣でお茶請けのケーキを貪っている小柄な少女、プラウダ高校戦車道チーム隊長、通称カチューシャがケーキを紅茶で飲み込みながら賛同する。
「まほさんは留学を前に隊長を譲ったという情報があります」
「となると、今指揮をしているのは副隊長だった逸見 エリカかと」
聖グロリアーナ女学院副隊長のアッサムと、プラウダ高校副隊長のノンナがそれぞれ得ていた情報からの意見を述べる。
「なるほど、それでですか」
「ミホーシャに対抗しようと、奇策に出たわね。けどこんなのすぐに見破られるわよ」
「さて、どうするのかしら?」
二人の隊長はほくそ笑みながら、観客にだけ表示される双方の配置図を見る。
そこでは、新たな動きが起きていた。
「また来たよ!」
「これで四度目で有ります!」
「何がしたいんでしょう………」
あんこうチームが突撃と撤退を繰り返す黒森峰に困惑する中、冷静に状況を判断している者達もいた。
「みほさん」
「分かってます、これは明らかな陽動です」
麻子の指摘に、みほも頷く。
「恐らく向こうはこの突撃に乗じて戦力を分散させて、他の橋を踏破してくるはずです。カメさんは右の、ウサギさんは左の橋に向かってください。恐らく伏兵が…」
『西住隊長! 大変です!』
指示を出そうとしたみほの耳に、一年生達で構成されたウサギさんチームの声が飛び込んでくる。
「どうかしましたか!?」
『梓が、向こうの砲撃が五発ずつだって! 今突撃してきてるの、五両だけです! 三両足りません!』
言われてみほは思わずハッチを開いて敵の数を確認する。
狭い林道を一列に並んできていたので気付かなかったが、確かに数が減っていた。
「カメさん、ウサギさん急いで下さい! ただし、あくまで確認と合流の足留めが目的です! 無理に撃破は狙わないでください!」
『はいよ~』
『了解です!』
ミホの指示に従い、生徒会メンバーで構成されたカメさんチームの乗る低い車高に固定砲塔のヘッツァーとウサギさんチームの乗る二つの砲塔を持つM3中戦車リーがそれぞれ左右へと向かっていく。
「三両、どう分けてくるかでありますな」
「2:1か3:0、どっちだろ?」
「他のチームも向かわせた方が………」
「いえ、主力はこちらです。下手に包囲を薄くして、突破されたら一溜りもありません」
「また来た」
都合五度目の突撃に、みほは更なる警戒をする。
(伏兵はバレている、それなのに突撃してくる理由は? エリカさんは何を考えているの?)
「なるほどネ~、面白い作戦よ」
「黒森峰だから出来る作戦でもあるわね」
野外観客席でBBQコンロを広げながら観戦していたサンダース大学付属高校戦車道チーム隊長 ケイが感心する中、その隣で簡易キッチンを広げているアンツィオ高校戦車道チーム隊長、通称アンチョビが腕組みしながら頷く。
「似たような作戦はウチでも出来るかもしれない。ケド………」
「あの速度、しかも隊列乱さずですぐに向こうに悟らせないとなると、相当な練度だな。さすが黒森峰、いや西住流か?」
「あれ、西住 まほって一線から退いたって話じゃなかったっけ?」
「今回は副隊長だった逸見さんが指揮してるって話っすよ」
BBQを準備していたサンダース副隊長のナオミと、ピザを焼いていたアンツィオ副隊長のペパロニのツッコミに、アンチョビの動きが止まる。
「そういう大事な事は先に言え!」
「あ、言ってませんでした? さっきグロリアーナの子から聞いたんすけど」
「私も今聞いたネ」
「観客のほとんどは西住姉妹高校最後の対決を見に来てるから、表沙汰にしてないんじゃない?」
「ま、これはこれで見ものだけどね」
「多分ミホはすぐ気付くだろうけど、間に合うかネ~」
BBQグリルからソーセージを取りつつ、ケイは配置図を凝視する。
そこには、黒森峰の主力と分散した車両とは別、背後から来ているもう一両の姿が有った。
「………あれ?」
「あれれ?」
「あらあら?」
「ん~?」
先程までの連続突撃がピタリと止んだ事に、あんこうチームはみほを除いた全員が首をかしげる。
「静かになったであります」
「どうして?」
「伏兵がバレたからでしょうか………」
優花里、沙織、華が思わず顔を見合わせるが、みほは脳内で色々な可能性を考える。
(陽動がバレたから? いえ、それでも挟撃までの時間を稼ぐ必要は有る。こちらも突入する? でも何かおかしい………)
『こちらウサギチーム! 敵発見、ティーガー型一両!』
『こちらカメ、こっちも敵発見。こっちもティーガー一両だね~』
「両方一両?」
どちらかに伏兵を集中させる可能性を考えていたみほは、双方に一両ずつしかいない事に違和感を感じる。
(そう言えば、今眼の前にいるのも機動性重視の戦車ばかり………まだ何か隠してる?)
「今ここにいる全車、突入準備を。向こうが動きを止めている間に、林道内に突入を…」
相手の策を探るためにも、攻勢に出ようとしたみほだったが、ハッチから様子を伺っていた時、何かが見えた。
「あれは………!」
複数のエンジン音が響く中、それ以上に重い駆動音が遠くから響いてくる。
そして、巨大な影が迫ってきている事に。
「まさか、マウス型!?」
「マジでありますか!?」
「本気出しすぎ!」
「あらまあ」
「ビビりすぎ」
その巨大な影、他の戦車の数倍はある超重戦車・マウスの姿に、大洗戦車道チームの全員が度肝を抜かれる。
前回の試合の大苦戦の様子を誰もが思い出し、緊張感が一気に高まっていった。
「西住殿! どうしますか!?」
「すぐに突入を…」
相手の巨体を封じられる森林戦に持ち込もうとしたみほだったが、そこで動きを止めていた黒森峰の他の車両が一気に動き出し、発砲を繰り返しながら林道を一気に突破しようとしてくる。
「全車発砲、弾幕で突破を阻止してください!」
みほが慌てて指示を出し、続けて大洗の戦車が一斉砲撃を開始する。
「マウスに乗り込まれたら、大変で有ります!」
「カメさんに突っ込ませる手も使えないし!」
「多分、伏兵はこちらを分散させるためです!」
車内が騒がしくなる中、林道を突破しようとした先頭車両が、集中砲火を受けて停止、撃破判定の白旗が上がる。
「やった!」
「これで向こうは出てこれません!」
喜ぶ車内だったが、みほはある違和感を感じていた。
先頭車両がいつの間にか別の戦車に変わっていた事に。
(Ⅲ号戦車? どうして装甲の薄い車両を先頭に………)
みほの懸念は、すぐに別の形となる。
撃破判定の出たⅢ号戦車のハッチが開き、そこから搭乗者が出てくる。
「発砲停止!」
慌てて停止指示を送るが、皆わきまえた物で、一斉に砲撃を止めていた。
そのまま、搭乗者は戦車を放棄してその場から撤退、最後にみほの顔見知りの子が一礼してその場から去っていく。
「あれ? 確か基本撃墜判定出たら、安全確保出来るまで降りない事になってたよね?」
「まあ、ルール上降りてダメという訳でもありませんが、相手側の攻撃妨害目的だとペナルティが」
「でも他のも撤退してるよ」
「あら?」
気付くと、Ⅲ号戦車の撃破判定と同時に黒森峰は発砲を停止、しかも丁寧に後退までしていた。
黒森峰の予想外の行動に、再度困惑が広がる。
だがそこで、みほは相手の真の狙いに気付いた。
「華さん! ここからマウス狙えますか!?」
「それが、あの擱座してるのが邪魔で………」
「し、しまった! そういう事でありますか!」
「決勝戦のアレ、根に持ってたのね!?」
黒森峰の狙いが、マウスが林道突破するまでの盾の確保と気付いたが、すでに突入して乱戦に持ち込む手は封じられていた。
「全車、曲射でマウスを狙ってください! どうにかして擱座車両を…」
「マウス来ます! 間に合いません!」
みほが状況打開を指示するよりも早く、マウスが間近まで迫り、必至の砲撃もその強固な装甲に弾かれる。
ダメ押しでマウスは擱座した擱座車両を砲撃、更に力押しでそれを除けていく。
「来たぁ~!」
「どうしますか西住殿!」
「左右に展開! マウスを包囲して…」
マウスが出てくると同時に、他の戦車も次々と林道から飛び出し、素早くマウスの周囲を固める。
「なるほど、マウスの装甲に頼らず、あくまで火力を重点としての攻撃陣形。エリカさんは最初からこの形に持ってくるため、あんな手を…」
「感心している場合ではないですよ、西住殿!」
「あのマウス、よく見るとフラッグ車だし!」
「煙幕を張って一度距離を取り、体勢を立て直します! 威嚇砲撃をしつつ、後退!」
同乗者が慌てる中、みほは落ち着きを取り戻し、即座に一時撤退を指示した。
「退き始めた!」
「深追いは禁止! あくまでのこの陣形を維持! ちょっとでも陣形を崩せば、すぐにそこを突いてくるわ!」
大洗が一時撤退するのを見た同乗者が声を上げるが、エリカはあくまでマウスを中心として陣形維持に細心する。
「撤退する振りで、何を仕掛けてくるかは分からないわ! 周辺警戒を徹底! 私が丸二日一睡もしないで考えた作戦を、向こうは軽く上回る事は十分あり得るわ!」
「………二日?」
「これ終わったら、ベッドに直行させるべきかしら………」
相変わらず指示は的確だが、無意識に鼻息も荒くなってきてるエリカに、同乗者は全員試合とは別の不安を覚え始めていた。
「目標の行動を確認」
「確認作業実行………」