第二次スーパーロボッコ大戦 ガールズ&パンツァー編(仮) 作:ダークボーイ
「何が、起きてるの?」
観客席の最前列、ゴシックワンピースに手にボコぬいぐるみを持った少女が、試合状況を映し出す大型ディスプレイに今表示されている異常としか言いようのない事態に、目を大きく見開いていた。
「な、なんだこれ?」
「飛び入り?」
「イベントかしら…」
他の観客達も突如として現れた奇怪な戦車のような存在にざわめくが、それらが大洗、黒森峰構わずに発砲を始めた事で、さらに混乱が広がっていく。
だがそのぬいぐるみを持った少女、飛び級で大学選抜チーム隊長を努めていた島田流家元の娘、島田 愛里寿はすぐに異常に気付いた。
「この発砲音、まさか?」
「いた! 隊長!」
「島田隊長!」
「何が起きてるんでしょうか?」
そこへ、愛里寿の補佐役を努めていた大学選抜チームの三人の中隊長、メグミ、アズミ、ルミの三人が愛里寿を姿を見つけ、駆け寄ってくる。
「これは、イベントじゃない。襲撃だよ」
「ええ!?」「ほ、ホントですかそれ!?」「そんな今時………」
「驚くのは後。ちょっと手伝って」
『了解隊長!』
「何が起きてるの!?」
「わ、分かりません!」
「出現した謎の機械群、通信に応じません! まさか無人機!?」
「協会本部との連絡が取れません! というか短波無線以外の通信手段が全て使用不能です!」
審判席で、審判達ですら何が起きてるのか把握出来ず、右往左往する。
「機械群、大洗、黒森峰双方に発砲中!」
「見れば分かるわ。判定装置に反応は?」
「ノイズが多くて不鮮明ですが、反応ありません! まさか、これ実弾!?」
「冗談、でしょう………」
審判長の蝶野ですら目の前で起きている事が理解出来ず、呆然とする。
そこへ、審判席を訪れる者が有った。
「状況は?」
「あ、西住家元! 島田家元まで! 来ていらっしゃったのですか!?」
「挨拶は後」
「げ、現在所属不明、形式その他不明の機械群が出現! 大洗、黒森峰双方に無差別攻撃を…」
「よく見なさい。無差別ではないわ。その証拠に、戦車以外には見向きもしていない」
しほに指摘され、蝶野は慌てて状況を再確認する。
「た、確かに…」
「今時戦車道反対の過激派の襲撃かと思ったけど、違うわね」
「ええ、それにあんな物、配備している組織を知らないわ」
「開発もね」
「は?」
二人の家元の会話についていけず、蝶野は思わず間抜けな声を上げる。
「発砲時に炸薬の炸裂音が聞こえない、けどあの威力」
「レールガンね。戦車サイズの物なんて、聞いた事もないけれど」
「れれ、レールガン搭載の多脚戦車!? どこのSF兵器なんですか!?」
家元達の導き出した結論に、蝶野の声が完全に裏返る。
「戦車道本部と自衛隊に緊急連絡を」
「それが、無線も携帯も通じません!」
「会場の外、公衆電話が有ったはずよ。こういう時は有線電話を使いなさい」
「私達からの正式通達という件も添えてね」
「は、はい! すぐに!」
しほの指摘と千代の追加に、審判の一人が大慌てで審判席を飛び出していく。
「こ、この後どうすれば」
「決まってるでしょう。今対峙している子達の安全の確保。もう試合も何も有った物ではないようだから」
「きっちり防御陣形整えてるわね。流石に貴方の娘は反応が早いわ」
「問題はここからよ。試合中の子達に通信は入るわね?」
「短距離なら、試合中の選手達には届きます」
「よこして」
通信マイクを受け取ったしほは、少し考えてから、口を開いた。
「何が起きてるんでありますか!?」
「こっちが聞きたいわよ!」
「撃たれてる、すごい」
「こ、こちらも撃っていいんでしょうか!?」
あんこうチームの誰もがパニック寸前の中、みほは必死に考えていた。
(どうしよう、どう見ても向こうは本気。けど試合用のこちらの装備だと…)
『まほ、みほ、それに大洗、黒森峰、双方聞こえてますか?』
「みぽりん、これ!」
聞こえてきた通信に、沙織が慌ててヘッドセットをみほに手渡す。
「お母さん!?」
『来てたのですか?』
『二人共、状況は理解してますね? 責任は私が取ります。戦車道規約、第九条第六項を執行なさい』
「お母さん、それは!」
『………分かりました』
しほからの指示に、姉妹が違う反応をした事にあんこうチームは首を傾げる。
「第九条第六項ってなんだっけ?」
「え~と、しばしお待ちを」
「戦車道条約第九条第六項、試合を含む戦車道活動中に、第三者による攻撃、破壊活動などの危険行為を受けた場合、自衛行動を取る事を許可する」
沙織の問に優花里がルールブックを調べようとした所で、麻子が暗唱してみせる。
「それは一体…」
「かつての学生運動を起因とする過激運動時代、戦車道の備品、場合によっては戦車其の物を狙われる事が有って、急遽追加された条項。ただし追加以後、一度も執行された事は無い。はず」
「その通りです」
華が思わず問うのに、麻子は詳細を説明し、みほも頷く。
「思い出しました! 確か条項賛同派の西住流と撤廃派の島田流で争ってると聞いた事が!」
「私も、いらないんじゃないかと思ってんだけど…」
「それさっきまでの話!」
間近に着弾したのか、大きく車体が振動するのに沙織が悲鳴を上げる。
「! 全車、正体不明の相手に発砲しつつ、後退! 着弾痕通過時に注意してください! エリカさん!」
『こ、こちらも後退! 各車被害状況は!』
『今の所、攻撃はマウスに集中してます!』
『こちらマウス、装甲でなんとか持ってますが、あまり喰らい続けるとどうなるか分かりません! それにこれ、全然ダメージ判定出てないんですけど!?』
「やはり、判定装置の付いてない実弾です! 皆さん、絶対外に出ないでください!」
砲撃を繰り返しながら、大洗、黒森峰双方の戦車が後退していくが、謎の多脚戦車は予想以上の速度でこちらへと迫ってくる。
「来たぁ~!」
「ど、どうするであります!?」
「当てていいんですね?」
「それは…」
一瞬迷うみほだったが、そこで予想外の通信が入ってくる。
『みほ、相手は恐らく無人機だ。動きに迷いが無さすぎる。遠慮している余裕は無いぞ。エリカ、非常事態故に一時的に指揮権を返してもらう。黒森峰全車、非常事態に付き、撃破判定装置の停止コードを入力』
『そ、そんな事したらその場で失格…』
『用心のためだ。相手は撃破の白旗が上がっても撃ってくるかもしれん』
「こちらも停止コードを入力してください! 非常事態につき、試合を一時中断! 大洗、黒森峰双方で事態に対処します!」
ようやく決断したみほも急いで指示を出す。
「停止コード表どこだっけ!?」
「試合前に渡されてましたよね?」
「そこのファイルの中」
「襲撃で判定装置停止なんて史上初で有りますよ!?」
「そう、前例は試合中に急病起こした子が出た時と、大地震が起きた時の二回だけ………」
車内が慌てる中、みほはこれからやろうとしている事に冷たい汗を感じずにはいられたなかった。
『私が戻るまで、二人でそこを持たせろ。少しかかるかもしれないが』
まほからの通信に、砲声が重なる。
「お姉さんの方にも行ってるみたい! 多分これ交戦中!」
「エリカさん! マウスはまだ持ちますか!?」
『まだ大丈夫のようだ! どうする?』
「着弾痕を抜けたら、こちらは右翼、そちらは左翼から不明機に攻撃を仕掛けます! レオポンさんはその場に残ってマウスの援護、判定装置が無くても、衝撃はそのままダメージになるはずですから、皆さん普段通りに!」
瞬時に思考を切り替えたみほが、次々と指示を出す。
「相手が何者であれ、こちらはこちらの戦車道をするだけです!」
『そうね、通じればだけど………』
エリカの呟きは、皆が心中に抱いている不安其の物だった。
「五時、いえ四時、どんどん迫ってきてます! 間近で見ると気持ち悪!」
「砲塔回せ、弾頭は榴弾と徹甲弾を交互に。あちらに付き合う必要は無い」
右側に迫ってくる謎の多脚戦車に、操縦手が思わず本音を漏らすが、まほは気にせず指示を出す。
「来ます、真横!」
「撃て」
砲撃は双方同時、両者の砲弾がすれ違い、互いの車体に激突する。
「命中! けどあまり効いてません!」
「こちらの損害は」
「装甲に一部損傷!」
「攻撃力はやはりあちらが上…」
直後、相手の再度の砲撃がこちらを襲ってくる。
「速射性もか。なかなかの性能だ」
「口径は小さいですけれど、初速が違います! どういう仕組み!?」
「慌てるな、多少形は違うが、あれでも一応戦車なら相手のしようはある」
車内がパニックになりかける中、まほは落ち着いたままだった。
再度の砲撃が命中し、車体が再度大きく震える中、まほは冷静に指示を出す。
「急停止、後に後退しつつ左旋回、相手の後方を狙う」
「は、はい!」
操縦手が車体を急制動、後に高速でバックを始め、砲手が即座に相手の背後を狙えるようになると、砲撃する。
「命中確認! けどやはり」
「そのまま後進のまま旋回、順次砲撃」
「はい!」
多脚戦車も進行方向を変えてこちらを砲撃してくるが、かろうじてそれをかわす。
「再度急停止、今度は前進して右旋回」
「はい!」
今度は逆に弧を描く軌道に、多脚戦車はそれを追うが、そこに再度の砲撃が叩き込まれる。
「命中! しかし…」
「最高速度で旋回続行」
「はい!」
なかなか相手にダメージを与えれない中、今度は高速旋回を始めたティーガーを多脚戦車が追うが、それを狙って砲撃が再度放たれる。
「すいません、かすめただけです!」
「構わん。その場で信地旋回」
「え?」
「信地旋回だ、同時に発砲」
「それでは正確に狙いが」
「それが狙いだ」
突然の意味不明の命令に、操縦手が思わず聞き返すが続けての命令に砲手も思わず聞き返す。
高速起動から、突然スピンするがごとくの信地旋回からの砲撃に、多脚戦車も困惑したのか、横に跳ぶような普通の戦車に不可能な動きでかわす。
「横っ飛びした!?」
「好都合だ。最速前進、すれ違いざまに砲撃」
信地旋回からの急発進に多脚戦車の反応が僅かに遅れ、すれ違いざまの砲撃が至近距離うで炸裂、多脚戦車の装甲に亀裂が入る。
「あっ!」
「停止、相手に撃てるだけ撃ち込め!」
「了解!」
まほの指示に、装填手と砲手が最速で装填、砲撃を繰り返し、向こうも撃ち返してくるが、至近での撃ち合いに相手の亀裂は更に広がっていく。
「亀裂を狙え」
「了解!」
トドメとばかりに撃ち込まれた一撃が、多脚戦車の亀裂に直撃、限界に達したのか爆炎をあげながらその場に擱座する。
「やった!」
「さすが西住隊長!」
「幾ら試合用模擬弾とはいえ、四面から撃ち込めばやはりダメージになるな。それに…」
ハッチから顔を出したまほが、大破角座した多脚戦車を確認する。
「やはり無人機か。中に乗り込むスペースすら」
確認してる途中、多脚戦車が爆発、炎上した。
「中身は意外とモロいようだ。本隊に合流するぞ」
「了解!」
ティーガーを急がせる中、まほは一度だけ炎上している多脚戦車の残骸を見る。
「ただプログラムに従うだけのロボットならばいいが、もしこれが戦術運用されていたとしたら………」
まほの懸念が的中している事を皆が知るのは、そのすぐ後の事だった………