Apocrypha転生もの   作:火影みみみ

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取りあえず設定が固まりつつある転生ものを投稿してみる。
たぶんこれが一番連載しやすそう。
いくつか設定を変える予定あり。


とある黒のサーヴァントの場合

 私には、前世というものがあった。

 

 日本のとある地方都市で生まれ育ち、特に事件と言う事件もなく、穏やかで平和な、なんの特異性のない一生を終えたはずだった。

 しかし、人生と言うものは不思議なもので。終わりを迎えたはずの人生が再び始動するという稀有な体験をすることになった。

 二度目の私はフランスのとある田舎に生まれた。

 両親はおらず、私は生まれながらの孤児であった。

 しかし、私は幸運なことに二つの武器を生まれながらに手にしていた。

 一つは前世の知識。幸いにもここは前世の常識が通用する場所で、その知識を頼りに食べ物をさがし、その国の言葉を身に付けた。

 二つ目は今世から備わった私の特異な瞳。どこまでも遠くを見渡すどころか過去や未来させも見通すことができるその瞳で私は生まれながらありとあらゆる災厄を遠ざけ幸運を手にすることができた。

 私はこの二つの力を使い、その都市で豪勢とはいかないまでも普通に暮らしていけるほどには生活基盤と人脈を築くことができた。

 

 しかし、何事にも限度というものがあった。ある程度私の存在が知れ渡ってくると、まるで魔女狩りのように私の命を狙う輩がでてきた。

 やれ魔女だの悪魔だの、挙げ句のはてには魔術師とか言うよくわからない輩すら出てくる始末。

 幸いにも奴等を文字通り鎧袖一触にできる力が私にはあった。いや、目覚めたというのが正しいのかな?

 ともかく、奴等に殺されるほど弱く歩なかったがこうも連日連夜刺客がやってくるとすごく気が滅入る。知り合った数少ない同類たちに視線をやっても、どうでもいいとか、ガンバ☆とか、コヤツめwww的な失笑を込めた視線しか返ってこない。本当に役に立たないなあいつら。

 

 仕方ないので私は旅に出ることにした。

 

 唐突な行動だと思うかもしれないけれど、昨日転寝(うたたね)してしまった時に視てしまったのだ。

 見るもの近づくもの全てを焼き尽くさんばかりに燃え盛る、太陽のごときその姿を。

 予知に導かれ、私は火山を目指す。

 北緯37度45分18.2秒、東経14度59分42.9秒。

 イタリア南部、シチリア島東部にある活火山……エトナ火山。

 かつての神話の時代から不死の怪物が封じられている、巨人が封じられている、とある神がここで鍛冶を行っていたなど伝説には事欠い場所である。

 その火口近く、一般人の立ち入りが禁止されている場所にそれはあった。

 深淵へと通じるような深く暗いその洞窟は、まるで新しい獲物を今か今かと待ち構える怪物の口のように思えた。

 歩くアルクあるく。

 下へ、奥へ、深淵へ、降りていく。

 道中、迷い込んだ部外者を排除するような仕掛けが施されていたけれど、私の瞳の前に全ては意味をなさなかった。

 そして、最奥、深淵の深淵へとたどり着き。

 

 

 そこで、視た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルーマニアの地方都市トゥリファス、ユグドミレニア城付近の森林内、そこに2つの人影があった。

 1人は騎士の軽装に身を包んだ女性と見間違うほど美しい美少年。

 もう1人は弱々しく少し押しただけでも壊れてしまいそうなほど華奢な茶髪の少年。

 

「あれれ?」

 

「これは……」

 

 二人は足を止め、目の前のそれに目を奪われていた。

 本来彼らはそんなことをしている場合ではない。

 茶髪の少年、まだ名前すらない彼は人間ではない。ホムンクルスという人造人間だ。

 今、このトゥリファスで行われている聖杯大戦、七騎と七騎のサーヴァントを殺し合わせ勝者の願いを叶えるという儀式、ためだけに用意された生け贄、英霊という戦闘兵器を十全に運用するために魔力を絞り出され続ける生きた電池だった。

 だが彼は幸運にも、……いや不運にも自身がどうなるかを自覚してしまった。

 他のホムンクルスよりも少しだけ自我が強く、聡明な彼は自身が閉じ込められた円柱状の水槽の中から、その残骸を見た。

 自身とそっくりな人形の残骸、ホムンクルスの死体の山である。

 ホムンクルスは人ではない、故に人間未満の扱いしかされない。こうして実験の失敗で死亡した彼らの扱いは産業廃棄物に対するそれでしかない。

 彼は悟った、それが自身の未来の姿だと。

 だから彼は逃げたした。

 この世に生を受けたものなら誰しもがもつ単純だが何よりも強い衝動、生存欲求(死にたくない)に突き動かされ、彼は自らの枷を壊し逃げ出した。

 途中、騎士の英霊、この場にいるライダーことアストルフォに助けられ今もなお彼の逃走を手助けしてくれている。

 そんな彼らが逃げる時間を捨ててまで足を止めたのは目の前にあるその風景が余りにも異様だったからだ。

 

 そこは辺り一面全てが炎に包まれていた。右も左も前も、今通ってきた後方ですら燃え盛る炎に阻まれている。

 勿論これは彼らが自分からここへ飛び込んだ訳ではない。彼らは間違いなく森を駆け抜け、安全な街へと逃げていたはずだったのだから。

 更に英霊であるアストルフォはこの炎が只の炎でないことに気づいていた。

 通常の炎程度なら英霊たる彼に効果はなく、ホムンクルスの少年を抱えて走り抜ければいいだけの話。

 しかし、目の前に広がるそれらは高度な神秘を秘めていて、例え英霊であろうと触れれば只ではすまないことを彼は理解していた。

 

「…………?」

 

 ふと、何かが見えた気がした。

 ホムンクルスの少年は炎の奥に目を向ける。

 業火の向こう、揺れる炎の先に、小さな影が見える。

 それは少しずつ大きくなっていき、それがはっきり視認できる距離に近づいた時、彼らは度肝を抜かれた。

 

「なっ!?」

 

「うっそぉ!?」

 

 それは人間だった。

 英霊さえも負傷させる炎をものともせず、黒い靄でハッキリとはわからないが、女性らしき人間がこちらへ歩いてきていた。

 彼女が何者なのか? こちらへ危害を加えるつもりなのか? そんなことを考えている間に彼女は少年の目の前へと辿り着く。

 

――――

 

 彼女が何かを言ったが、それは彼らには届かなかった。

 彼女はゆっくりと彼の右手を取り、そこに自身の右手を重ねる。

 

――――

 

「――ッ!?」

 

 少年の右手に痛みが走る。

 見ると、先ほどまではなかったはずの赤い痣がそこに刻まれていた。

 

「ねえ君! それって」

 

「ああこれは、――令呪だ」

 

 令呪、それは聖杯戦争の参加者のみに与えられる特別な証。マスターが呼び出したサーヴァントに対する絶対命令権。

 それは1人につき3画、つまり3回まで自身のサーヴァントに命令を実行させることができる。その用途は多種多様であり、サーヴァントが好まない行動を強制することや、逆にそれを彼らが望む行動に対して後押しする形で使用し彼らを一時的にパワーアップさせることもできる。

 しかし、今この時最も重要なのはそれがこの少年に宿ったということ。この少年に()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということである。 

 

 本来これはあり得ないこと。あるはずないこと。

 敵陣営もアストルフォの陣営も令呪の配布は既に終了しており余剰などあるはずもない。

 事実アストルフォもアサシンを除いた全てのサーヴァントを確認している。

 その暗殺者ですら遠い異国の地で召喚に望んでいたはずだ。

 

 まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「君は……あれ?」

 

 アストルフォが視線を戻すと既に姿はなく。

 焼け野原だった大地も元の物静かな森林へと戻っていた。

 

「幻覚……じゃない、確かに令呪がある、それに――」

 

 少年に言われ、アストルフォはそこにある物に気づく。

 

 少年の2、3歩先ほぼ目の前の位置にそれはあった。

 

「これって、召喚陣と剣? 何でこんなところに……」

 

 英霊を召喚するには令呪が必要である。しかし実際にはそれに2つほど更に必要になる物がある。

 それが召喚陣と触媒である。

 召喚陣を描き、側に触媒を置き、召喚の呪文を唱え、成功すして初めて英霊を使役することができる。

 召喚陣を描くことは簡単ではあるが、触媒を用意するのは困難を極める。

 聖杯大戦の元凶たる聖杯、それは元はトゥリファスではなく日本の冬木という街にあった。それをアストルフォの側の一族、ユグドミレニアが奪い去ったのだ。

 その際、聖杯戦争の術式が流出し、世界各地で亜種聖杯戦争なるものが発生する始末。呼び出される英霊は触媒によって決まると言ってもよい、最高の英霊を呼び出すことができればそれは聖杯戦争に勝利したも同然である。その為、触媒の価値が高騰し、世界中に散逸してしまっている。

 

 今目の前にある2つは正に触媒と召喚陣。あとは令呪があれば英霊を呼び出す準備が整ってしまっている。

 そして、令呪丁度ついさっき手に入れている。

 少年は何者が自身に英霊を呼び出すことを望んでいるように思えた。いや、実際に目にしてしまえば誰でもそう思うだろう。

 こうも都合良くお膳立てがされていると、不自然極まりない。

 

「…………」

 

 一歩、少年は足を進める。

 

「駄目だよ」

 

 それをアストルフォは手を掴んで止める。

 アストルフォは理性蒸発という特異な状態ではあるが考えられないほどではない。

 今この少年がマスターとなってしまえばもう逃げられない。マスターとして正式に聖杯大戦の一員として組み込まれ、敵陣営から命を狙われることになる。しかも、彼は味方のはずの陣営からも命を狙われる立場、故に彼はたった一騎で残り十三騎を相手にしなければならないことを理解していた。

 こうなってしまえばアストルフォでもどうにもならない。いくらアストルフォでも自身の陣営全てを敵にして勝ち抜けるほど強くはない。むしろ弱い部類だと自負している。

 

「……大丈夫、召喚したりはしない、ただ他に何もないのか気になっただけだ」

 

「な~んだ、それなら良かったよ」

 

 少年の答えにアストルフォはほっと息をつく。

 事実、少年はあれだけの出来事がありながらここを無視して進んで大丈夫なのか不安になっただけだった。

 

 

 まあ、正確にはそんなものは必要なかったのだか。

 

 

「まったく、やっと見つけたぞ!」

 

 少年たちの背後、森の奥から現れたのは二人の男。

 (ユグドミレニア)のセイバー、真名はジークフリート。竜殺しの逸話をもつ北欧の大英勇である。

 そしてそのマスターであるふくよかな体型の中年男性、ゴルド・ムジーク・ユグドミレニア。

 彼らが多数のゴーレムを率いて少年を捕らえに現れた。

 

「あちぁ、君って人気者だね」

 

 アストルフォは少年をかばうように前に立つ。

 

「…………」

 

 同様にジークフリートもアストルフォの前に構える。

 

「君は早く逃げて!」

 

 アストルフォに急かされ、少年は走るが躓き転んでしまう。

 

「ふん、ろくに歩けぬ欠陥品に何故キャスターは拘るのやら……」

 

 ゴルドは二人を避け、少年へと近づく。

 アストルフォはそれを阻止したい、がジークフリートがそれを阻む。

 言うまでもなく、英霊としての格はジークフリートの方が上である。アストルフォの実力では彼を突破し少年を助けにいくことはできない。

 

(――嫌だ)

 

 ゴルドが一歩一歩、確実に近づいてくる。

 アストルフォの助けは期待できない。生まれたて、しかも魔力タンクとして調節された自身の体では逃げ切ることはできない。

 死。どうしようもない結末が少年を待ち構えている。

 あの男の手に囚われたが最後、何もない少年の命すら差し出さなければならなくなる。

 

 それが、とても嫌だった。

 

 無様に死んでいく(消費されていく)同類たち。彼らにも命がある、意思もある。

 

 何故、彼らが死ななければのらないのか?

 

 何故、自由に生きてはいけないのか?

 

 何故、奴らは追ってくるのか?

 

 生まれて間もない少年にはまだわからない。

 しかし、だからこそ、そこに強い意思があった。

 

 ――生きたい。

 ――死にたくない。

 ――例え残り少ない命だとしても、こんなところで何もできずに死にたくない。

 

 その強い思いが、彼女を喚んだ。

 

「何だ!?」

 

 突然の閃光に目が眩む。刹那、浮遊感と共に温かい何かが少年を包む。

 

「OK事情は大体把握したわ、取りあえずそこの人それ以上こっちに近づくと焼くから覚悟してね」

 

 誰もが突然の乱入に動きを止めていた。

 二人のサーヴァントですら何が起こったのか理解できていなかった。

 

「?」

 

 少年は恐る恐る目を開ける。

 最初に飛び込んできたのは紅い炎だった。

 まるで衣服のように炎を纏い、火傷どころか熱がる様子もない。

 赤と白に彩られた修道服を思わせる服装に身を包み、白いベールで顔を隠した女性の腕の中に少年はいた。

 

 よく見ると、先ほど少年がいた位置から少し離れていることがわる。恐らく、彼女が少年を抱えてここまで移動したのだろう。

 

「馬鹿な、ホムンクルスが英霊を召喚したというのか!?」

 

 信じられない、しかし目の前の女から感じる威圧は自陣の英霊たちと同等、いやそれ以上かもしれない。

 彼女がこちらを向いているたけでゴルドは自身の首筋にナイフを当てられているような感覚に襲われ気が気でない。

 

「んー、それにしても寂しい場所ね、私的にはもっと温かい場所の方が好みなのだけれど」

 

 対して彼女はそんな素振りなど微塵も感じさせず、ただゆったりと辺りを見渡している。

 この場に英霊が二体いるというのにまるで眼中にないかのように。

 

「さあマスター、どこへ行きます? 何をしたいです? あなたの望む場所へ、あなたの好きなようにしていいのですよ」

 

 まるで聖女のように優しく語りかける。

 

「あの……」

 

「何ですか?」

 

 彼女は少年の答えを待つ。

 

「まず、貴女の名前を教えてくれ」

 

 少年がそう言うと、ああそうでしたねと彼女は呟き、改まって少年に告げる。

 

「申し遅れました、他者がいるこの場で真名を明かすことはできませんが、今は私のことを"黒のフォーリナー"とお呼びください」

 

 こうして、異端者を交えた聖杯大戦が幕を開ける。

 七騎と七騎の聖杯大戦、その結末や如何に。

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