--試合後
「そっかぁ。瀬谷と同じシニアだったならあの送球やバッティングも納得だな!」
「黙ってて悪かったな。ちょっと色々あって野球から離れてたんだ」
「いいって!いいって!誰だって知られたくないことがあるもんだからな!」
「まぁそう言ってくれると助かる」チラ
「ん?どうした比企谷?」
「…いや、なんでもねぇよ」
「…?そうか?」
「あぁ」
「…なぁ比企谷。俺としては比企谷には助っ人じゃなくて正式に野球部に入ってほしいと思ってる。俺らは何もかも足りてない。今野球部に残ってるやつらは本気で勝ちたいと思ってる。…でも足りないんだ」
「………」
「これじゃあ勝てない。強豪校には…。だから…比企谷の力が必要だ!勝つために!」
「……少し、少しだけ待ってほしい」
「比企谷?」
「少しだけ整理する時間をくれ。来週中には答えを出すよ」
「…考えてくれるだけでも助かるよ。いい返事を期待してる」
「あぁ」
「さて!真剣な話はこれで終わり!この後みんなで飯行こうと思うけど比企谷もくるよな!」
「…いや。今日は遠慮しとくわ。久々に動いて疲れたから帰って休むわ」
「ん。そっか。じゃあまた誘うな!」
「あぁ。機会があったら頼む」
「おう!……なんか隼人君が比企谷を気にかける気持ちがわかった気がするな」
「ん?なんか言ったか?」
「いや!何も!グランドの整理とか俺らがやっとくから奉仕部の皆さんは帰ってくれてかまわないからな!」
「ん。助かるわ。じゃあまたな」
「おう!」
--校門
「ヒッキーもうお話はいいの?」
「あぁ。充分に話したからいい。ボッチが一日にあんなに喋ったら一週間は休むぞ。ソースは俺」
「またヒッキーはそういうこと言ってぇ。もうボッチじゃないでしょ?」
「バッカお前真のボッチいかなる時も目立たずひっそりとまるで存在なんてないかのように動くんだよ。まぁ今日は失敗したがな」
「あはは。やっぱヒッキーはヒッキーだね!ちょっと安心したかも」
「あん?いつだって俺は俺だぞ」
「なんか今日のヒッキー見てたらちょっと遠い人に感じて…。えへへ!でも今日の野球に真剣なヒッキーもヒッキーなんだよね!かっこよかったよ!」
「お、おう。そうか」
「うん!あっ!この後三人でご飯行かない?久々にヒッキーとゆきのんとご飯行きたい!」
「いや。今日はやめとくわ。大岡達の誘い断ってるし、疲れてるから俺は帰るわ。行くんなら雪ノ下と行ってこい」
「えー。まぁヒッキー疲れてるもんね。じゃあゆきのんご飯行こ!」
「………ええ」
「ゆきのん?なんかさっきから喋らないけどどうしたの?」
「……比企谷君。あなた今後どうするの?」
「いや。だから帰って寝るって……」
「違う。野球部に入るのかどうかってことよ」
「………っ」
「………もう決めてるんでしょ?」
「…ああ」
「…そう。あなたが決めたことなら私は止めないわ。今日のあなたを見てたらあなたの居場所は奉仕部じゃなくて野球部なのだと理解したから…」
「…ん?」
「あなたと過ごした日々は私にとって宝物よ。普段あなたとは喧嘩ばかりだったけどそれも楽しかった。こんなに異性と接して楽しかったのは初めてなの」ナミダメ
「…いや。雪ノ下?」
「でもあなたにとって野球部に行くことがいいことなら、私は喜んであなたを野球部へ送り出すわ。……でも、たまにでいいから奉仕部に来てくれたら私もうれ……」
「雪ノ下!」
「え!?な、何かしら比企谷君。ちゃんと話をきいてほしいのだけれど…」
「…いつ俺が奉仕部やめるって言ったか?」
「え?」
「…たしかに野球部には入るつもり、いや。まぁ少し整理してから決めるけど、気持ちは野球部に入る方向で決まってはいる。けれど奉仕部をやめるとは言ってねぇぞ」
「でも野球部にはいるなら奉仕部をやめることになるんじゃあ…」
「いや。俺としては雪ノ下や由比ヶ浜、平塚先生が許してくれるなら兼部するつもりだったんだが……」
「…………」カオマッカ
「いや。まぁお前がそう言ってくれるのはむず痒い感じがあるが嬉しいぞ!」
「………帰る」
「え?」
「帰るわ!!さよなら!鬼畜谷君!由比ヶ浜さん!」
「えっ?ちょっとゆきのん!ご飯行かないの!?」
「………」
「私ゆきのん追いかけるね!」
「お、おう」
「じゃあまたねヒッキー!……奉仕部に残ってくれるって言ってくれて嬉しかったよ!また月曜日!」
「ん。またな」
--駐輪場
「ふぅーー」
「さて、そこに隠れてる覗き谷出てこい」
「なんすかそれ。先輩と同じで名前に谷がつくからって俺にもあだ名つけないでください。二股谷先輩」
「いやお前それは無理やりすぎるだろ。あと俺は二股どころか誰とも付き合っとらんわ!」
「ええーほんとですかぁ?」
「てめぇ…。…勝手にグランド整備サボりやがって悪い後輩だな」
「いやいや!誤解ですって!ちゃんと大岡先輩に一言サボりまーすって言ってこっち来ましたから!」
「よりクソ野郎だな…」
「まぁそれは冗談として…」
「ホントかよ…」
「先輩に一つだけ聞きたいことがあって来ました」
「なんだよ…」
「野球、楽しかったですか?」
「………ああ。最高に楽しかったよ」
「…そうですか。それはよかったです…」
「瀬谷…」
「…それだけ聞ければ満足です!…また一緒に野球できる日をお待ちしてます!」
「おう。またな。………お前が総武に来てくれよかったよ」
「はい!」
--
「今日は疲れたな…」
「(でもやっぱ野球はいい。あの打った時の感覚がたまらないんだ。芯でとらえた時快感は何ものにも変えがたい)」
「……ちょっと寄り道するか」
「…久々に来たな」
「(小学校から中学校までの間通いつめたバッティングセンター。やはり生きた球よりは質は落ちるがいろんな速さがあって人気がある。何より硬球のマシンがあるのがいい。普通のバッティングセンターだと軟球だけだからな)」
「(春から秋までの間は一回200円で20球打てる。しかし冬になると少し早めにに営業を終えるが一回100円になる良心的なバッティングセンターでもある。まぁそのかわり芯に当てなきゃ地獄のような痛みが手に来るがな)」
「さて。4回ぐらいやるかな」
カキ-ン カキ-ン
「よしまずは130ぐらいからやるか」
「(ちなみにバッティングセンターの球は表示されてる球速より遅かったりする。諸説あるがマシーンでは人のように指で強くスピンがかけれないのが原因だと言われている。スピンをかけないと初速は実際の球速でもバッターにたどり着くころは5㎞や10㎞ほど落ちてたりする。まぁ最新のマシーンはだいぶ差を詰めてるらしいが…)」
「(金を入れてと…)」
「よし。やるか」
バシュ
カキ-ン
バシュ
カキ-ン
「んー。やっぱ生きた球を打った後だと少し上を叩いちまうな」
バシュ
カキ-ン
バシュ
カキ-ン
「遅い球ほど確実に捉える……」
こうして八幡は夢中に打ち続けた。
そして3回目の頃。
「(140㎞、まぁ実際は130㎞ぐらいだが少し打ち損じが多くなったな。はぁ。これが野球から離れてたつけかね)」
「ん?」
「(150㎞のゲージに誰か入ったな。噂で150㎞のゲージは最新のマシーンを使ってるからほとんど150㎞に近い球を放るらしい)」
「(いくらストレートオンリーだからといっても簡単には打てんだろうな)」
そう思いながら隣のゲージを見るが……
カキ-ン
カキ-ン
カキ-ン
「(おいおい嘘だろ!?ほとんど芯で捉えてるじゃねーか!…誰だあいつ…背は小さいな。170無いだろあれ…なのにあれだけ強い打球が打てるのか。何者だ?)」
八幡はベンチに座りじっくりと観察する。
「(よく見れば腕や脚の筋肉がすごいな。普通150㎞の球を打てば少し球に押し返されるはずだ。だけどこの人にはそれが見られない…しっかりと振り切って捉えてる)」
その人物がゲージから出て来る。その人の目は八幡を捉えてた。
「いやー!そんなにじっくり見られると少し恥ずかしいなぁ!」
「あっ。すみません。じろじろ見るつもりは無かったんですが…」
「いいよ!いいよ!俺もゲージ入る前君の打撃見てたし!」
「そうすか」
「(なんかテンション高い人だな…少し接し辛い…)」
「んー?どっかで君の顔見たことある気がするなぁ」
「(なんか急に考え始めたぞ…。自由すぎるだろ…)」
「んー。んー。どこだったかなぁ?」
「あのぉ俺まだ打つんでゲージ入りますね…」
「(時間かかりそうだしこの人には悪いけど無視させてもらおう)」
「あっ!思い出したぞ!お前山陰シニアの比企谷だろ!」
比企谷の足が止まる。
「いやー!思い出した!思い出した!最近忘れぽくてな!」
「なんで俺のこと…」
「んー?そりゃあ顔をちょっとじっくり見ればわかるさ!全国大会で最優秀選手賞を2年3年連続で取ってるやつはな!」
「…よく知っていますね」
「ははは!面白い顔してるぞ比企谷!…ん?そういえば比企谷どこの高校でやってるんだ?お前の噂を全然きかないんだよなぁ」
「…総武高校ってとこに行ってます」
「総武高校?そんな強豪高校あったかな?」
「総武高校は強豪高じゃないですよ。ただの進学校です」
「ほー。強豪行かずに地元に進学したのか!」
「ええ。ていうか俺のことばっかり聞いてますけどあなたは誰なんですか?」
「ん?俺か?結構有名のつもりだったんだがなぁ。俺もまだまだかな」
「(待てよ?俺もこの人の顔を見たことある気が…)」
「まぁ遠征で千葉に来てるとは思わんだろうししかたないだろう」
「よし!であれば教えよう!俺の名は仙石誠司!大阪正雀高校の3番打者だ!」
「……は?」
「(大阪正雀?あの?全国常連でここ10年で6回も甲子園で優勝してる大阪正雀!?)」
「おうおう!驚いてるな!」
仙石は大口を開けて笑っている。
「(思い出した。仙石誠司。身長が170満たないものの二塁手として大阪正雀を2回も優勝に導いている。広い守備範囲。類まれな捕球技術。そして何よりその鍛え上げられた腕や体幹を使ったバッティングは誰もが認めるところだ。単打。長打。状況に応じたバッティングもできる。万能プレイヤー)」
「…なんであなたが千葉に…」
「さっきも言ったろう?千葉には遠征で来たんだよ。今は帰る前に少しだけ観光の時間がもらえたからバッティングセンターに来ただけだ!」
「遠征で試合した後に観光の時間を使ってまでバッティングセンターに行くなんて練習熱心ですね…」
「ん?まぁ俺は体が小さいからな。みんなと同じ量の練習では足りんのだよ。俺のような体も小さく、センスのないやつは練習あるのみだ!」
「(正雀の3番を張ってながらこの意識の高さは流石だな。しかしセンスがないはないだろ…)」
「むっ!そろそろ集合場所に向かわねばならんな。比企谷!今日は会えてよかったぞ!次会う時は甲子園だな!」
「………ええ。甲子園で会いましょう」
「おう!必ずあがってこい!」
そう言って仙石はバッティングセンターから立ち去った。
「……後2回打ったら帰って素振りだな」
八幡は今日再会した瀬谷康二郎、大阪正雀の仙石誠司の二人の影響で野球への情熱を思い出す。八幡の高校野球が今始まる。
オリキャラの仙石誠司のイメージ選手はMLB、アストロズのホセ・アルトゥーベ選手です。
背が小さいデメリットを感じさせないあのバッティングは本当に心惹かれます。