らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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エピローグ それからの日々

<陵桜学園:屋上>

 

 

 

チアダンスを見事に成功させたみんなに労いの言葉と、何故にやまとさんが混ざっていたのかを聞くためにこなたさん達を探し始めてから数分後。

こなたさんからメールが送られてきた。

 

『みんなで屋上に集まるから先行ってて~。答えは聞いていない!』

 

・・・なんじゃこりゃ?

探す手間が省けたから良いけど、何だか妙に必死と言うか何と言うか・・・。

そんな事を考えながら階段を上っていく。

ちなみに屋上はフェンスが高いうえに点検も行き届いてるらしく、特に出入り禁止と言うワケではない。

そして俺は屋上の扉を開いた。

こなたさん達は着替えやら疲労やら色々とあるんだろう。

まだ誰も来ていない・・・てか完全に無人だった。

まぁ、こんな日にここで何か催し物をするはずも無く、それを分かっててわざわざ来る物好きはそういないだろうけど。

しかしみんなで集まる場所が何故に屋上(ここ)なんだろ?

思い当たる節は・・・一応、あるにはある。

そんな事をぼんやり考えながらグラウンドを見下ろす。

グラウンドの一部では部活動の体験や屋台などを出しているが、基本的には一般開放になっており、小さい子供たちが元気に走り回っている。

それから約10分後。

屋上に来たのはチアをやったメンバーの半分・・・こなたさん、かがみさん、つかささん、みゆきさん、みさおさん、そしてやまとさんだった。

 

「お、みんなお疲れ様・・・って他のみんなは?」

「みんなそれぞれのクラスに戻って活動中よ」

 

・・・やまとさんはともかく、こなたさん達は時間的に大丈夫だったっけ?

それと丁度疑問を持ってた本人が来たので聞いておく事にする。

 

「ねぇやまとさん、どうして陵桜(ウチ)の制服着てるの・・・?」

「あ、えっと実は私も皆さんがメンバーに入れてくれて。他校生だから無理なんじゃないかって言ったんですけど・・・」

「そこでこうちゃんには生徒会長、黒井先生には私達でお願いしたのだよ」

「ていうか黒井先生があんなにあっさり許可するとは思ってなかったけどな~」

「制服はこうちゃんが予備の制服を貸してくれたんだよ♪」

 

生徒の数が数だ。

放課後の時に紛れ込んだら簡単にはばれないだろう。

ちなみに練習は個人練習はともかく、合わせての練習は柊家や日下部家などで行い、前日に俺を締め出したのは通し練習をやまとさんも含めて一緒にやっていたからだとか。

当日に俺を驚かすため、と言うのもあったらしい。

確かに驚いたけどね・・・。

てか生徒会長もよく許可したなオイ。

 

「とりあえず、俺をここに呼び出した理由・・・聞いて良い?」

 

成功を祝うならこんな所ではなく、他の場所の方が良いだろう。

にも拘らず俺をここに呼び出したのは、多分他人(ひと)に聞かれたくない事があるのではないかと予想は出来る。

 

「・・・私達さ、初めて会った時からそれなりに経つよね。」

「最初はこなたさんに、使い古した昔の恋愛漫画のネタみたいな出会いをしたっけ」

「その日の放課後に、泉さんからの紹介で私やつかささんと自己紹介をして・・・」

「ウチのクラスのホームルームが終わった後に、つかさ達と一緒に帰るつもりで教室をのぞいたら男子(まさきくん)と一緒にいるんだもの。内心、かなりビックリしたわよ」

「その後は一緒に帰って、実はご近所さんって事が分かったんだよね?」

 

そこから俺の日常が、約1ヶ月・・・いや、半月か?

とにかく、足早に変わっていったのを覚えている。

 

「私は直接面識を持ったのは修学旅行の時だったよな?」

「・・・その後何故か枕投げで因縁つけられたような気がするけど(苦笑)」

「その後になるんですよね・・・こうに連れ出された私と、先輩達に出会ったのは」

「学校違うのに何故か会う機会が・・・大体がこうさん絡みだったような気がするけどね」

「そう、ですね・・・」←ちょっと苦笑気味

 

2年生になってから俺の日常が変わり、いつの間にか女性陣と一緒にいても違和感も何もかも無くなっていった。

そして彼女達に対する想いが少しずつ変わっていったのもある意味では当然かもしれない。

その変化が、この中にいる『誰か1人』だけだったら、とも思う。

だけどこの世に『if』は無い。

現実を受け入れてしっかりと答えを出さなければいけない。

 

「実際の所、バレンタイン前後から・・・ひょっとしたらもっと前から、私達は殆ど同じ感情を持っていたのよね」

「それも、ものの見事に全員の意見が一致して」

「うん・・・その事に関しては痛いくらいよく伝わった」

「・・・まーくんに、ちゃんと伝わってたんだね」

「まさきが鈍いわけじゃなかったんだな・・・」

 

()()()に関しては気付いてはいた・・・気付いてたからこそずっと考えていた。

けどまだ答えが見えてこないまま、現在(いま)を迎えてしまった。

きっと俺に愛想を尽かすか、失望するだろう。

覚悟を決めた上で、俺はみんなに話そうと口を開く。

 

「俺は「ストップ!」・・・へ?」

 

思っていることを素直に言おうとしたらこなたさんに止められてしまった。

 

「そんな暗い顔で言われても気まずくなるだけだよ」

「そういう訳で、私達の方から言わせてもらいますね?」

 

・・・ゑ?

理由はどうあれ、こういうのは普通、男から言うもんじゃ・・・それも偏見なのかね・・・じゃなくて!

 

「まさき」

「まさきくん」

「まーくん」

「まさきさん」

「まさき」

「まさき先輩」

 

みんなが俺の名前を呼ぶ。

そしてその後に紡ぎだされる言葉も、俺は多分知っている。

 

『私達は、あなたの事が大好きです!』

 

1言1句、完全に重なったみんなの言葉が俺に向けて伝えられた。

複数の女子から告白されるという、普通に考えたら絶対にありえない様な体験。

恋愛に対して多少の知識はあっても、この状況はまったく予想していなかった。

そして改めてそう言われることで、俺の頬が自然と熱くなって来た。

 

「ちなみにまさきの事だから何を言えば良いのか分からないんでしょ~?」←(=ω=)ニヤニヤするも少し赤い

「は、初めて告白されて、それが女の子6人から一斉になんて状況、普通は考え無いでしょ!?」←顔面真っ赤で狼狽中

「そうかもしれないけどさ、これからは色々と覚悟してた方が良いんじゃない?」←顔が少し赤い

「・・・一応聞いておくけど、何の覚悟?」

 

俺が何かを言う前にニヤケ顔のこなたさんやかがみさんが畳み掛けて来る。

 

「ふふふ。ちょっと方針を変更するだけですよ♪」←赤くなりつついつもの笑顔

「方針って・・・?」

「あの夏休みの旅行の時に、今まではあまり目立たないようにって決めてたんだけど・・・」←モジモジしてる

「これからは学校以外では全員全力全開でいくぜ♪」←赤くなりつつ拳を握る

「ぜ、全力全開て(汗)」

 

さすがに昼ドラのようなドロドロした展開は避けなければ・・・。

 

「恋を賭けた戦いは何も修羅場だけじゃありませんよ? それに、私が一番立ち位置的に不利ですから・・・。それこそ本気で、まさきさんにアタックします!」←珍しく熱くなってるもやはり赤い

 

どうやらその心配は杞憂に終わりそうだ。

・・・今のやまとさんの言葉、前にいのりさんから聞いたような気もする。

てかさりげなくやまとさんが俺の呼び方、変えてるし。

 

「ちなみに学校以外なのは、やまとさんが圧倒的に不利になってしまうからです」

「この時期に変な噂が流れてもお互い困るし、恋敵はみんな親友だし、やっぱり勝負は公平にしなきゃね」

 

ここまで聞いてて疑問が1つ。

 

「なんで・・・みんな、こんな優柔不断な俺を怒ったり愛想尽かしたりしないでいられるの・・・?」

 

普通に考えたら、状況的に今から最悪、地獄絵図になっててもおかしくは無い。

でも彼女達はそんなそぶりも見せず、むしろ自分自身をもっとアピールして俺を振り向かせようとしている。

 

「・・・つまりまさきは私達に愛想尽かされたり、ここで今すぐ血で血を洗う修羅場になったほうが良かったって事?」

「いやいやいやいや!」

 

こなたさんの言葉に俺は首を横に振る。

自分から修羅場になる事を望むやつなんてそういないだろう。

何事も平和的解決が一番だ。

 

「ならいいじゃねぇか。私達の事をまさきは受け入れてくれて、なお且つ答えを探そうと必死になってくれてるんだろ?」

「まさきさんは優しい方ですからね♪」

「・・・優しいかはともかく、俺ってそんなに分かりやすいの?」

『うん(はい)』

 

全員一致ですか(汗)。

自分で『優しい』とか思ったことは1度も無いんだが。

微妙に凹みつつ、彼女達も目的を達したため、今はみんなで桜籐祭を楽しむ事となった。

ちなみにこの時、両方の手は必ず誰かと繋がっていたため、既に彼女達の戦いは始まっているようである。

これから、どうなるのかね・・・?

 

 

 

 

 

桜籐祭(そ れ)から既に約1ヶ月。

学校では受験のために多少ピリピリしているものの、いつもと変わらない日々を俺達は送っている。

朝はいつものようにランニングをして、学校ではいつものように登校して授業を受けて、昼休みにはいつものメンバーで他愛の無い会話をしながら昼食を食べて。

そして放課後を迎えるのだが・・・。

ここからは桜籐祭より前の日々とは明らかに変わった。

話をしながら下校するのは良いのだが、校門を出た後は彼女達との距離が今までとはまるで違う。

 

「えい♪」

「てい!」

「いやだからさ、2人とも・・・ちとくっつきすぎだってば(汗)」

 

現在右にはみゆきさん、左にはこなたさんが腕を組んでくる・・・その密着度は正直冷静を保つので精一杯。

特にみゆきさんのモノ(あえてどことは言わない)が密着するとかなりやばいんですけど・・・。

そして下校途中、いつも同じ場所で俺達を待っているやまとさん。

そこでこなたさんが名残惜しそうに俺から腕を放し、俺達を見つけたやまとさんが開いた腕に飛び込んでくる・・・満面の笑みで。

 

「こんにちは、まさきさん♪」

「・・・お~っす」

 

やまとさんも表情豊かになったよなぁ、なんて思いつつ(ついでに言うと周囲の好奇やら嫉妬やらの視線を浴びながら)みんなで駅まで会話をしながらのんびり歩く。

ちなみに最初のうちは『手を繋ぐ』くらいだったがいつの間にか『腕を組む』にバージョンアップし、現在は『体を密着させる』にさらにバージョンアップしていた。

ちなみにみゆきさんとやまとさんが今、腕を組んでくるのは住んでる場所の都合上、1番早く別れるからだ。

そして駅に着いたら別々の電車に乗るため、かなり寂しそうな表情(かお)をするもんだから必ず俺は『また明日ね?』と声をかける。

この言葉が結構効くらしく、この2人に限らず、みんなに対して有効だ。

その後、電車に乗って席に座ると・・・。

 

「隣もーらい♪」

「う~、なんかチビッ子が1番得してるような気がするぞ!」

「喧嘩するなよ~・・・頼むから」

 

両隣にこなたさんとみさおさんが(密着状態で)座って、真正面に柊姉妹が立つ。

立ち乗りの場合は四方を囲まれてたりする。

てか座れる方が珍しいんだけどね・・・。

そしてこなたさんとみさおさんとも途中で別れる(やっぱり寂しそうな顔をする)と、後に残ってるのは・・・。

 

「えへへ~♪」

「・・・・・・」

 

嬉しそうなつかささんと顔が真っ赤になっているかがみさんが腕を組んでくる。

ちなみにご近所さんからあらぬ噂が囁かれるんじゃないかと覚悟していたが、今のところそういう話は聞こえてこない。

1度偶然通りかかった柊夫妻に見つかった時はどうなるかと思ったが・・・。

ついでに言うと、休日はみんな何かしらの理由をつけて俺の家に集まるようになった。

 

 

 

「何だか時間が経つのってあっという間ですね」

「そだね~。もうすぐ12月だもんね♪」

「そっか。もうそんな時期なんだな~・・・」

「12月と言えばクリスマス! 去年みたいにかがみ達に独占させるつもりは無いからね~。むふふ、まさき、覚悟したまえよ~? クリスマスの後も年末年始、バレンタインにホワイトデー! イベント目白押しなのですよ♪」

「こなたさ~ん・・・過剰な行動はなるべく控えてくれよ?」

「節度くらいわきまえるよ~・・・多分」

「大丈夫よ。こなたが馬鹿な事したらちゃんと止めるから。大体、いつまでも今の状況に甘んじてるつもりも無いしね」

「ふふふ、そうですね。去年まではあまり気に留めませんでしたが、今年はそうも言ってられませんから♪」

 

女の子達が笑顔でそろって頷く。

え~っとつまり、こなたさんが言ってたクリスマス云々の度に彼女達は今まで以上の、何らかのアプローチを俺に仕掛けてくる、と言う事なのだろうか?

 

「目指せまさきの第2ボタン! そのためにも、私達はあらゆる努力を惜しまないのだ~!」

 

自分で言うのも何だけど、恋する女の子達ってたくましいなぁ。

そう思いながらも出来るだけ早く、そして焦らずに答えを見つけよう。

出した答えによっては傷つく娘が中にはいるかもしれないけど、全員を泣かせるよりよっぽど良い。

そして大人になって高校生活を振り返るようになったら、迷わず『最高の高校生活だった』と胸を張って言えるように。

 

 

 

『私達は、あなたの事が大好きです!』

 

 

 

桜籐祭でみんなに告白された時の、あの言葉を思い出しながら。

絶対に後悔をしないように・・・。

 

 

 

終わり・・・


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