雪の皇女と、彼の物語   作:氷桜

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11.12.13

 

【Episode11:なんでもない日だからこそ】

 

テレビが日常を知らせるニュースを流す。

鳥の声と、ストーブの上のやかんが沸騰する音。

ぺらり、と紙を捲る音と。

かちりかちり、とマウスを押す音。

 

休みの日、でかけていないなら僕等はこんな感じで過ごすことが多かった。

別室に置いてある、大量にある漫画や小説を読むナーシャ。

時折はそれを読み返すけれど、基本的にはパソコンを弄るかゲームをしている僕。

一度友人にこの事を告げたら、馬鹿か、という目で見られたのはいまだに忘れない。

 

今日はどうする?

パソコンを打ちながら、彼女に問う。

冷蔵庫の中身何が入っていたかしら。

ナーシャが問うてくる。

確か豚肉と野菜くらいかな。

なら、それで終わらせて明日私の家に戻りましょう?

そうだね、そうしようか。

 

そんな、いつもの会話。

炬燵の対角に座る、僕と彼女の日常。

顔をチラリ、と見れば視線が合う。

どうしたの? とばかりに首を傾げられて。

なんでもないよ、と小さく首を振る。

 

なんでもない、日常。

 

 

【Episode:12 象徴と、伝統と】

 

今、僕達は互いに互いを見て首をひねっていた。

僕は、手に炒った豆を入れた入れ物を持ち。

ナーシャは、何枚にも重ねた平たい物体を持って。

 

なにそれ、と僕は聞く。

ブリヌイ――――日本で言うところのクレープみたいなものかしら、と。

貴方のそれは、とナーシャは聞く。

炒り豆――――節分、という文化で使うものかな、と。

 

日本とロシア、やはり幾つもある文化は別のもの。

彼女が言うには、それは上に色々なものを載せて頂く食べ物で。

私の家にも独自のレシピは有るのよ。

家を出ていく時には、貴女も引き継ぐのよ。

そう、母親に習った文化の象徴なのだと呟いた。

 

互いの文化を阻害するつもりもなく。

寧ろ、互いのことを更に知っていく機会に過ぎない。

だからこそ、互いに互いの説明を聴きあって。

互いに、互いの文化への知識を深め。

互いに、それぞれを食べさせ合った。

 

――――もう少しで。

僕が、夢見た日がやってくる。

その、前準備のような時間だった。

 

 

【Episode13:二人は、そして。】

 

バレンタインデー。

聖バレンタインとかいう人がなにかしたらしい日。

日本では女性が男性にチョコを渡す日、とされており。

諸外国では男女問わず贈り物をする日、とされているらしい。

 

だから、僕達は互いに互いへの贈り物を持って彼女の部屋にいた。

僕は、彼女に似合うだろう白い花のアクセサリー。

ナーシャは、恐らく手作りだろうチョコとネクタイピン。

互いに、互いへの贈り物を渡し合う。

 

見ても良い?

僕も見せてもらうよ?

互いに開き、互いに見惚れ、互いに感謝の言葉を返し合う。

なんでもない、そんな日。

けれど、僕からすれば少しだけ変わる日。

 

ぽすん、と。

彼女が定位置に腰掛ける。

ぽすん、と。

僕は定位置に腰掛けず。

 

首を傾げる彼女。

そんな彼女を、そっと。

包み込むように抱きしめて。

耳元で、たった一言を囁いた。

顔が、耳が。

少しずつ紅く染まるのをじっ、と。

ただ、待った。

 

小さく、首を縦に振るのが見えた。

 

彼女を抱え、寝床へと。

そっと寝かせ、僕も、倒れ。

二人で、倒れたまま。

真赤な顔と。

真っ青な目を見て。

 

だいすき、と囁いた。

だいすき、と声がした。

 

――――三度目は、微かに甘く。

紅い血と。

蒼い目と。

白い月だけが、その日の終わりを見つめていた。

 

【Episode14に続く……?】

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