雪の皇女と、彼の物語 作:氷桜
【18.日は巡り、時は止まらず】
朝、鳥の声と薄暗いカーテン越しの光が視界に入る。
目覚め、腕になにか違和感を覚えてそちらに視線を向けた。
薄い布に包まれ、腕を抱きかかえるようにしたナーシャの姿。
布から外れた部分から見えるのは、彼女の真っ白い、と形容しても良いような肌色。
つまりは、何も身に着けていないということで。
小さく首を振って、囁きかけるか悩むことになった。
未だ、早いとは言え。
今日から、また大学が始まる。
それを考えるのなら――――。
少し、彼女を揺すった。
ん、と唇から声が漏れた。
朝だよ、と声をかけた。
再度、少しだけ揺れた。
ゆっくり、ゆっくりと目を開いた。
おは……よう?
うん、おはよう。
え、っと……今は……。
シャワー浴びてきたほうが良いと思うよ。
しゃ、わー……ああ、そう、ね。
ナーシャの後に、僕も浴びるから。
身体に纏わり付いたモノ。
汗と、互いの体液と。
そういった不快感と。
同時に感じる、妙な背徳感を感じる混ぜこぜになった感覚を抱きながら。
反対側の腕から、暖かな感覚が擦り抜けていくのを同時に感じながら。
手元にあった、ミネラルウォーターを一口煽った。
※※※
料理らしい料理をするわけでもなく。
此処最近は、前日の夜に作ったものを暖めるか。
或いは、幾つか作り置きしておいた料理と共にパンを食べるかのどちらか。
今日は後者、時間としては六時半――――まだまだ、余裕がある時間帯。
ちん、とトースターから聞こえる音。
同時に出てくる、焼けたパンが二枚。
無言で、互いが好む味付けを手渡し合う。
何故か、自分でやらずに。
相手のものをする、というのが朝の無言のルールになっていた。
僕は、ナーシャの為のジャム。
幾つかある中から、毎日中身を切り替えて。
ナーシャは、僕の為のバター。
時折は相手のものを真似してみるけれど。
嗜好は違うから、結局はいつものものに戻ってしまう。
同じものがあるとすれば――――。
はい、と差し出されて。
はい、と差し出して。
意図したつもりはないのに、そのタイミングは毎回噛み合う。
そして。
互いに小さく微笑を交わして、その手のものを交換して食べ始める。
意図しないところでばかり、噛み合って。
意図したところでは少しだけズレて。
けれど、互いにその場所にいて落ち着きを感じる。
だからこその、今の僕達なのか。
だからこその、繰り返されるような日常に飽きを感じないのか。
そんな思考は、後の僕等に任せるとしよう。
だから、今は――――少しでも、この時間に浸って。
【Episode19に続く……?】