雪の皇女と、彼の物語   作:氷桜

9 / 9
気が向いたので


18.

【18.日は巡り、時は止まらず】

 

朝、鳥の声と薄暗いカーテン越しの光が視界に入る。

目覚め、腕になにか違和感を覚えてそちらに視線を向けた。

薄い布に包まれ、腕を抱きかかえるようにしたナーシャの姿。

布から外れた部分から見えるのは、彼女の真っ白い、と形容しても良いような肌色。

つまりは、何も身に着けていないということで。

 

小さく首を振って、囁きかけるか悩むことになった。

 

未だ、早いとは言え。

今日から、また大学が始まる。

それを考えるのなら――――。

 

少し、彼女を揺すった。

ん、と唇から声が漏れた。

朝だよ、と声をかけた。

再度、少しだけ揺れた。

 

ゆっくり、ゆっくりと目を開いた。

 

おは……よう?

うん、おはよう。

え、っと……今は……。

シャワー浴びてきたほうが良いと思うよ。

しゃ、わー……ああ、そう、ね。

ナーシャの後に、僕も浴びるから。

 

身体に纏わり付いたモノ。

汗と、互いの体液と。

そういった不快感と。

同時に感じる、妙な背徳感を感じる混ぜこぜになった感覚を抱きながら。

反対側の腕から、暖かな感覚が擦り抜けていくのを同時に感じながら。

手元にあった、ミネラルウォーターを一口煽った。

 

※※※

 

料理らしい料理をするわけでもなく。

此処最近は、前日の夜に作ったものを暖めるか。

或いは、幾つか作り置きしておいた料理と共にパンを食べるかのどちらか。

今日は後者、時間としては六時半――――まだまだ、余裕がある時間帯。

 

ちん、とトースターから聞こえる音。

同時に出てくる、焼けたパンが二枚。

無言で、互いが好む味付けを手渡し合う。

何故か、自分でやらずに。

相手のものをする、というのが朝の無言のルールになっていた。

 

僕は、ナーシャの為のジャム。

幾つかある中から、毎日中身を切り替えて。

ナーシャは、僕の為のバター。

時折は相手のものを真似してみるけれど。

嗜好は違うから、結局はいつものものに戻ってしまう。

同じものがあるとすれば――――。

 

はい、と差し出されて。

はい、と差し出して。

 

意図したつもりはないのに、そのタイミングは毎回噛み合う。

そして。

互いに小さく微笑を交わして、その手のものを交換して食べ始める。

 

意図しないところでばかり、噛み合って。

意図したところでは少しだけズレて。

けれど、互いにその場所にいて落ち着きを感じる。

だからこその、今の僕達なのか。

だからこその、繰り返されるような日常に飽きを感じないのか。

そんな思考は、後の僕等に任せるとしよう。

だから、今は――――少しでも、この時間に浸って。

 

【Episode19に続く……?】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。