「それでは作戦会議を始めます」
落ち着いた声で久保が話し始めた。
俺達攻略パーティは今洞穴の前に居る。
そしてもうすぐボスとの戦いが始まろうとしている。
「まずE隊が前へ出てボスのタゲを取ってください」
「了解した」
がっしりとした体つきで普通の盾よりも大きい大盾を持っているE隊のリーダー、木村が返事をした。
「D隊は基本的にE隊の支援を行ってください」
「分かりました」
「A、B、C隊の人はボスに攻撃を」
「特にA隊とC隊はボスの特殊攻撃を見ていますのでその予兆があったらすぐに教えてください」
「分かった」
「了解」
俺と虚原が返事をした。
「B隊は魔法攻撃に特化していますのでE隊の後ろから遠距離魔法を使用してください」
「了解です」
葉桜さんが返事をした。
「最後に一つ」
久保は少し間を取ってから言葉を口にした。
「生きて帰りましょう!」
「「「了解!」」」
作戦会議をしていた全員がしっかりと返事をした。
「では・・・行きましょう」
全員が配置に着いて洞穴の中へ入っていった。
洞穴は広いところまで少し道がありそこまでは熊は来ない。
少し歩くと広い部屋の手間まで来た。
熊はそこに居た。ここを超えたらすぐにでも襲ってくるだろう。
ほとんどがボスを始めて見たので少しざわめいた。
当然だろう。鋭そうな爪、凶暴そうな目、何より自分達の二倍はあろう体格。
さっきより断然士気が落ちていた。
データ上では何の変化は無いが、これはゲームではなく本物の戦闘だ、当然士気は大事になってくる。
「皆聞いてくれ」
俺はざわめいてる皆に話し始めた。
「みんな今すげービビッていると思う。それは仕方ないと思う・・・でもさ」
俺は少し間をとってから話した。
「俺たちはこのゲームの中の代表なんだ。俺たちが今逃げたらさ、もう誰も戦うことなんてできなくなる!」
「そしたらさ、最初のほうにこのゲームに入って死んでいったやつらに申し訳が立たないと思うんだ」
ここに来る前、俺はあの学園のある一室に案内してもらったことがある。そこはとっても広かった。大きさは体育館と同じぐらいの広さだ。
そこはまさに庭といっても過言ではないぐらいにたくさんの花が咲いていた。あたり一面緑だった。だが・・・・・
そこにあったのは墓石だった・・・しかも数が10や20そこらではなく軽く100人分はあった。
案内してもらった教師からここはこの世界の中で死んだ人の墓だということを聞いた。この世界で死ぬと自動的に墓石が立てられるということだった。
実際に墓石には人の名前が刻まれてあった。
「俺はそこを見て思ったんだ。絶対にこのゲームをクリアしようと。たとえどれだけかかっても。死んでいった人たちはもっと生きたかったはずなんだ!
このゲームを普通に楽しみたかったと思うんだ!」
俺はかみ締めるように言葉を紡いだ。
辺りからは「がんばらないとな」とか「そうだね・・・そうだよね」などと言うようになった。
さっきまで怯えてた目は覚悟を決めたような強い眼に目になっていた。
皆がこのゲームをクリアしようと思っている。
「みんな、用意は良いか?」
俺の言葉に皆が頷く。
「攻撃開始!!!」
俺の言葉に呼応するように一斉に声をあげながら飛び出した。
また熊も、それに応えるかのごとく雄叫びを上げてこちらに向かってきた。
「E隊、コネクトシールド用意!」
俺の言葉にE隊の皆が「了解!」と応えて熊の真正面に立った。
そして横一列になり。大盾をしっかりと構えた。
熊は真正面のE隊に攻撃したが、E隊は何事も無く、対して熊は大きく弾き飛ばされた。
これが大盾スキルコネクトシールドの効果だ。このスキルは相手の攻撃を弾き飛ばす効果がある。なおかつこのスキルは複数人が同時にスキルを発動するとその効果を上乗せできる。いくらボスクラスだろうとこれには勝てない。
熊が弾き飛ばされている間にB隊が葉桜さんの「放てぇ!」の声と共に弱点属性の火属性魔法を繰り出していた。
その魔法は全弾命中したがやはりボスなのでたいしたダメージにはなってなかった。
魔法はMPがあれば放てるが連続で打つと命中率が下がるため少しの間待たなければならない。
その間に俺たちA,C隊は攻撃をしていくのだ。
まず俺が片手剣スキルアクセルスラッシュを発動させる。
一瞬で敵の懐に入りそのまま剣で切りつけ、俺はすぐ後退しそのまま拓海がファイアバレットを撃ちこむ。
そのおかげで少し熊が怯んだためユランも攻撃を加えることができた。
その後も順調に攻撃を加えて熊のHPが約半分まで減らすことができた、だが。
「グルァァァァァ!!!」
熊は大きな雄叫びを上げてきて、見てみてみると爪が光ってきている。
瞬時に俺はE隊に指示を出した。この行動は特殊攻撃の前触れだと。
E隊の増村に向かって熊は攻撃を繰り出した。
E隊の増村はシールドを構えていた
俺の予想では熊が弾き飛ばされるだろうと思ってた・・が
事態は予想を大きく裏切ったのだ。
攻撃を受けたE隊の一人、増村は盾ごと垂直に打ち上げられた。そして熊はジャンプして増村を地面にたたきつけた。
この一回の攻撃だけで増村は・・・・・・・・・・死亡した。
HPもぜんぜん減ってなかった、レベルも推奨討伐レベルまで達していた。考えられるのはクリティカルダメージだろう。
つまり運悪く死んだだけなのだが、今の俺たちに恐怖感を植え付けるには十分すぎるものだった。
「てっ!、撤退!!、撤退しろ!!!」
久保が焦って撤退の指示を出した。洞穴の入り口近くに居たやつがすぐに逃げようとしたが・・・・・透明な障壁に阻まれてしまった。
武器で攻撃してもその壁は壊れず、テレポートボールを使っても脱出できなかった。
そんなことをしているうちにまた熊がにじり寄ってきた。
誰もが恐怖していてまともに動ける人は誰一人いなかった。
B隊の葉桜さんに熊は攻撃してきた。
すかさず葉桜さんは、持っている杖で防御しようとしたが、簡単に杖は弾き飛ばされてしまう。
考えるよりも先に俺はアクセルスラッシュを発動させた。
走る速度よりも何倍も速い速度で葉桜さんの前に飛び出して、持っている剣を爪に突き出した。葉桜さんに振り下ろされた爪をギリギリのところで防ぐことができた。
葉桜さんは俺の剣と爪が鍔迫り合いをしているうちにすぐに後退してくれた。
そこで俺はほんの少し気を抜いたのだろう、爪が剣を弾き飛ばし、次の瞬間ユランが「司さん!」と叫んでいた。
無情にも熊はすぐに俺に爪を振り下ろしていた。
HPは3割弱、俺には死ぬという選択肢しか残されてなかった。
たまらず俺は目を瞑った。
ガキィィィン!!!!
次にきたのは、激しい痛みではなく、甲高い金属音だった。