現代神話──ただのラブコメ──   作:PRD2

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突然書きたくなってしまった。
砂糖補給……いや、なんか違うなコレ。

読んでやって下さい。


二人きりの生徒会室

 生徒会室のドアを開けた先の一番奥に鎮座(ちんざ)するマボガニー製の高級机、脇にスタンドを置きファイルや辞書を立て掛け、黒いプラスチックの三角柱に白で『生徒会長』と書かれたそこにいたのは、不健康そうな女だった。

 腰まで伸ばした白髪混じりの黒髪を後ろで一つにまとめ、気分の悪そうな顔に隈をつけたダルそうな目。机に向かって仕事をしていなくても、自然と伏し目がちになるのは想像に固くない。自然とそれが似合ってしまうのは彼女の元々の顔立ちが大層良いのと、脆弱(もろ)そうな彼女を守りたくなってしまう庇護欲に他ならない。

 昨日の事件の報告書でも書いているのか、お世辞にも気力に溢れているとはいえさそうな彼女だが、横の紙の束とペンが止まることは無いのを見るに相当集中しているようで、現に入ってきた俺の存在にも気付いていない。

 二分ほど経った頃、深く息を吐きながらペンを置いた彼女は漸くこちらに気付いたようで、俺の顔を見詰め、

「――お帰り、シロ。早かったね」

 そう言って彼女――綾川梓は嬉しそうに笑った

「……」

 それに俺は「ああ」と短く返し自分の席に向かう。梓は俺の態度に静かに破顔して「素直じゃないね」と呟いた。

 彼女から見て右側、向かい合わせになるように二列並んだ机の一番端、会長席から最も離れた四列目にある机に鞄を置いた。机の右端に立っている会長席にあるのと同じ黒いプラスチックの三角柱には『庶務』と書かれている。

 俺は安物の回転式の椅子に座りつつ梓に話しかけた。

「他の役員はどうしたんだ」

「カラス君とカガリちゃんは昨日の後始末、まどかちゃんとミキヤ君は便利部に依頼の話を聞きに行ってる。他の子はみんな、今日は部活に顔を出したいらしくて。カラス君達も片付けたら直帰するし、今は私とシロの二人きりだね」

「……それでお前は一人で報告書か」

「それに加えて始末書もだね。化け物(サッカー)が壊したのは省くけど、カガリちゃんが勢い余って壊しちゃったお店の修理代とか色々。権限があるのは嬉しいけど、仕事が増えるのは困るよね」

「俺は肉体労働しかできないから、大して仕事はないが」

「それにしたって大変でしょ? 昨日は大活躍だったじゃない」

 梓は得意気に笑った。まるで我が事のように、嬉しそうに。そんな彼女を見ていると、どうにも気恥ずかしく顔を背けてしまう。

「……そういう照れの仕草とか、シロは意外とあざといよね」

「はあ?」

「いや、悪い意味じゃないよ。シロのそういうところが、私は大好きだって話」

「……」

 彼女の言葉に何か言い返そうにも言葉が見つからず、結局黙った俺を見て、梓は笑っていた。

 さっきからずっと笑っている梓がどうにも奇妙で、けれど悪い気はしないのは、きっと惚れた弱味というやつなんだろう。

 梓は我慢できない、といった風に音をたてて立ち上がると、軽やかな足取りでこちらに向かってくる。端から見ると具合の悪そうな病人にしか見えない梓だが、ふらついてはいないし、今日の調子は良いようだ。

 俺は次に彼女がする行動を予測しつつ息をはきつつ、椅子を回して彼女に向き直った。

 ぴょーんと、或いはどーんと。

 もっと軽い衝撃ではあったものの然程間違ってはいない。兎に角彼女は俺に抱きついてきた。勢い良く、けれど病的なまでに軽い体重のせいか優しい衝撃のあと、腕を首に回され、首筋に頬をすり付けてくる。ゆっくりと、少しずつ染み込ませるように動かす頭からは甘い香りがした。女の子特有の良い匂いが鼻孔(びこう)をくすぐり、嫌でも体を緊張させる。

 然り気無く脚を後ろに回され、少しだけ、少しだけだが動かした腰から伝わる柔らかい感触と(ほの)かな暖かさが顔を更に熱くする。

 俺は何時ものように少し梓の好きにさせておいた。梓は俺が上げた手を右往左往させて、結局下げたのを見て、耳元で「抱いてくれないの?」と囁いた。

 抱き締めて、とは言わないのは確信犯だろう。俺はそれに返答はしなかったが抵抗もしないのを見て、俺の首に頬をすり付けた彼女が薄く笑った気がする。

 梓は顔を上げて俺に合わせると、躊躇なく唇を近づけてきた。彼女の乾いた、けれど柔らかな口は、俺の口と静かに接触する。

 優しい温もりを感じた。一瞬の感触がとても心地よかった。

 彼女は一度目を開けて俺ともう一度目を合わせると、薄く笑って唇を舌で濡らし、また顔を近づけてきた。

 くちゅ、という水音が静かな部屋に響く。今度は何度も(ついば)むように、幾度も()むように。

 やがて我慢できなくなったのか、それとも気持ちが昂ったのか。軽く息を吸った後、俺の唇をこじ開けるように舌を入れてきた。(なまめ)かしく濡れた舌を、俺のと擦り合わせてくる。離さないようになぞったかと思えば、焦らすように遊ばせたり、舌で歯の裏を一つ一つなぞっては、顔を傾けて奥まで舐めとろうとしたり、巧みに舌を入れてくる。興奮しすぎているのか、荒くなった鼻息も上唇にあたって仄かな暖気が惑わしてくる。

 数秒、数分、或いはそれ以上そうしていたかは分からない。梓はゆっくりと名残惜しそうに唇を離した。

 両方の唇にかかった唾液の糸が橋のように渡って、彼女はそれを舌で巻き取り、最後に一度、優しくキスをした。

 見れば彼女は疲れたように口で息をしつつも笑っていた。病的なまでに白かった頬を今では赤くなり、隈のついた目元は(とろ)けていた。薄く開いた口から漏れる吐息の暖かさや、先程まで押し付けられていた唇が妙に気にかかってしまい、顔を背けてしまう。

 とても高校生がする顔ではなかった。

「……満足したか?」

 少し刺のある声でぶっきらぼうに言ってしまった。

 彼女は大きく息を吸うようにして息を整えながら、俺の胸に顔を当てるようにしなだれかかってきた。

「君の味がしたよ」

「……感想を聞いてる訳じゃねえ」

「ふふ、冗談だよ。満足した、というよりは疲れたね。もう少し堪能していたかったんだけど、昨日の疲れも残っているから」

 梓はそう言って力なく笑う。どうにも生徒会室に入って、彼女が笑っているのが目に留まる。わざとらしさは感じない。楽しくて仕方がない、といった笑顔だ。

 彼女が顔を胸に埋めてきて、今更ながらに彼女の重さを感じた。羽のようになんて可愛らしいものではない、現実的で病的なまでの軽さがとても儚くて、俺は躊躇(ためら)いながらもしっかりと左手で彼女を抱いた。少し驚いて体を震わせた彼女は、俺の手を見ると、こちらに顔を合わせて嬉しそうに笑って、顔を少し近づけ目を閉じる。

 俺はそれが何を待っているのかすぐに気づいて、そうして今度は俺からキスをした。

 啄んだ唇は、とても甘い味がした。

 

 

 

 

 

 

(……うわー)

(流石に……これはちょっと。入れない雰囲気だな)

(便利部での話が終わったからさっさと報告しようと思ったんだけど……これに突入できるメンタルはウチにはないわ)

(帰ろうにも鞄を中なんだけど……どうするまどちゃん)

(んー……もうちょい見てよう)

(まどちゃんのそういうところ、どうかと思うな―)

(いやいやミッキー、これは覗かなくてどうするんですか。あんな乙女飛んで女の会長見なくてどうなのミッキー。それでも男?)

(僕は女の子だよまどちゃん)

(男子制服来てれば男だよ)

(横暴すぎるよ)




桐山白夜
あんまり普通じゃない高校三年生。元不良。
学校で授業をサボっていたところを梓に捕まり、それ以来交遊が増え、とある事件を契機に付き合うことに。三年から生徒会にさせられた。
基本ぶっきらぼうだけど面倒見は良い方。生来の目付きの悪さと、突然起こる破壊衝動のせいで人が寄りつか無かったせいで半ば不良化、地頭は悪くないので大学進学を考え、梓に勉強を教えてもらっている。


綾川梓
あんまり普通じゃない高校三年生。現生徒会長。
校内を見回り中に白夜を発見、注意しても上手くかわされ、それが続いていたところにとある事件が発生。それを期に付き合い始めた。
品行方正、眉目秀麗を絵に描いた性格だが、幼い頃からのとある体質のせいで自分の体を苛めぬいていたため、病的なまでに体が弱い。現在は白夜の影響で少しずつ改善され、最近体重が増えた。



一応SFでファンタジーな現代物なのにラブコメしかないのは作者もどうかと思ってるので新規で同じ世界観の話を書くかも。期待しないで待っててください。

ダウナー系で不健康属性で結構グイグイ来る、けど最後は受けに回っちゃって喜んじゃう。
そんな女の子が書きたかったんです。
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