魔法科高校の絹旗最愛   作:型破 優位

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やはり何人かテニヌ方向に持っていきましたね。
勿論予測はしていましたので面倒ごとになる前に早めの投稿。
昨日も投稿していますので見ていない方は是非昨日分からどうぞ。


承諾

 真由美が硬直を解いたのはボールを視認してから二秒程後、点数にして四ポイント分だがこれは真由美が悪いわけではない。不意打ちという効果も付加されたとはいえ視認できないレベルの球を打ってくるなど思わなかったのだ。

 しかし猶予も無い。急いで移動魔法でボールを持ち上げ加速魔法とマルチキャストで最愛の居ない場所目掛けてボールを打ち込んだ真由美だが、魔法の兆候無しで弾丸のようにボールに追いついた最愛に動揺を隠しきれていない。そして最愛の二打目。先程と同じように移動の勢いそのままに打ち出されたように感じたが、少し手加減されたのだろうか。視認は出来た弾速で真由美の横を通り過ぎるボールだが、突如として声が上がったことにより真由美の意識はボールの行方から移動した。

 

 

「超申し訳ないですが、試合終了です」

 

「ああ、そのようだな」

 

「え? え?」

 

 

 それは試合終了の合図。最愛から発せられ、克人も認めたもの。状況を理解できていないのは真由美ただ一人だ。

 

 

「七草、絹旗のラケットを見てみろ」

 

「えっと……ああ、そういうことなのね」

 

 

 そして最後に真由美も言われて理解した。最愛の持っているラケットは既に原型を留めていないのだ。それも当然だろう。ライフル弾の如く放たれたボールの発射口となっているのだ。ガットは中心を避けるかのようにフレーム側へと広がっており、所々切れている。持ち手は最愛の能力に耐え切れずスクラップのようになっていた。二打目は単純にラケットが耐えられず威力が出なかっただけなのだ。

 クラウドは真由美の勝利、試合()最愛の負けとなった。

 しかし真由美の表情は浮かない。明らかに不機嫌だ。

 

 

「……絹旗さん、一ついいかしら」

 

「なんでしょうか」

 

 

 そして不機嫌だということを隠そうともしていない。

 

 

「貴女、最初からこうなることを知っていたわね?」

 

「何言っているか超分かりませんが、私は約束を超守りましたからね」

 

 

 理由は簡単。ものの見事に嵌められたからだ。最愛はしっかりと試合は行い、能力も使用した。達也の監視も当然ある。条件は全てクリアしているのだ。

 口頭とはいえ相手が条件を守った、それもマナー違反である魔法の詮索まで行っていることを許容したというオマケ付きなのに真由美たちからその話を有耶無耶にすることは出来ない。試合には勝ったが駆け引きには大敗を喫したのだ。

 

 

「確かに絹旗は条件を守った。当然こちら側も守る義務がある。だが今回の試合の最優先事項はあくまで絹旗が九校戦を戦うに相応しい力を持っているかどうかだ」

 

「その通りです」

 

「俺と七草は今から審議に入る。明日朝一番に結果は報告しよう」

 

「そうですか。では私は超失礼します」

 

 

 だから克人は最愛を帰すことにした。これ以上最愛のペースに持っていかれるのは非常に不味いからだ。しかも最愛にとってはどちらも都合が良い。

 最愛が更衣室へ向かうのを見送った三人は、真由美の一言により意見を交わし始める。

 

 

「達也君、絹旗さんの魔法について何か分かった?」

 

「残念ですが本質的なものは全く分かりませんでした」

 

「些細なことでもいい。考えていることでもだ。何かあるか?」

 

 

 結局達也は最愛の能力を見破ることは出来なかった。挑戦は見事失敗したわけだが、達也もただで起きる程可愛いわけでもない。

 

 

「そうですね。まず彼女の魔法に想子(サイオン)の兆候は全く感じられませんでした」

 

「俺もだ」

 

「そしてラケットを持つ手ですが、どうやら直接持っていない様に見えます」

 

「どういう意味だ」

 

 

 達也の目はしっかりと捉えていたのだ。二試合目のラケットの持ち手部分と掌に一定間隔の空間があることに。

 

 

「持ち手部分と絹旗の手が密着していないということです。そして魔法や銃火器などが効かないことを加味すると、空間に何かしらの作用をもたらす魔法であることが推察されます」

 

「なるほど。俺も司波の考えが一番近いと思う」

 

 

 大雑把なものだが一歩には違いない。しかし判断材料があまりにも少なかった。しかもこれは真由美や克人に限った話ではなく、達也にとってもかなりの痛手だ。

 今回この場に来たことにより最愛の魔法を直接第三者側から視る事が出来たわけだが、逆に最愛からの頼みごとに対して可能な限りは受け入れなければならなくなった。

 口約束だからと蔑ろに出来るほど最愛は甘くない。融通を利かせるとも言ってしまっているため、依頼はかなり重いものになると達也は感じているのだ。

 

 

「だがこの話と九校戦の話はまた別だ。この試合を受けた時点で絹旗は九校戦メンバーに選ばれたらそれを受け入れる義務がある」

 

 

 だが克人もそんな簡単に丸め込まれるほど浅い人生経験をしてはいない。先程も最優先事項と言ったように、目的は九校戦だ。これを最愛があやふやにするのなら前提条件が不成立となり条件は破綻する。

 そしてこの結果を見るなら、結論は一つだろう。

 

 

「俺は絹旗の九校戦メンバー入りを支持する。七草はどうだ」

 

「ええ、私も賛成よ。自慢じゃないけど私がこの三年間クラウドで得点を取られたのは初めてだもの」

 

「そうか。司波はどう思う?」

 

 

 ここで達也に振るあたり、克人は監督者として非常に優秀であることが伺える。

 

 

「そうですね。あのラケットの性能で人智の範囲を超えた速度の球を打てるというのは非常に大きなアドバンテージです。しかもまだ本気ではない可能性もあります。それとあまり良いことではありませんが、もし選手がその球に当たった場合怪我をしてしまいますので防壁魔法を展開しながら試合をしなければならなくなります。しかしクラウドは複数の魔法式を使う必要がないため特化型を使う傾向にあります。そういう意味も含めて有効だと思います」

 

「決まりだな」

 

 

 真由美のクラウドの実力は新人戦パーフェクト、前年の本戦パーフェクトと無類の強さを誇っていた。その真由美が初球というアドバンテージを含めたとしても反応できない球を打った最愛は九校戦三連勝を狙う真由美たち三年生にとっても是非とも欲しい人材だ。

 それに達也と克人は気がついていた。打球は直角に壁に当たるのではなくスマッシュ気味の軌道でボールが破裂することを抑え尚且つネットに当てることでボールを転がすという技を見せていたことに。

 

 

「司波も今日はご苦労だった。突然呼び出してすまなかったな」

 

「いえ、では自分もこれで失礼します」

 

 

 克人の労いを素直に受け取った達也は一礼したのち退席する。克人が言外に含んだ「今からの話は二人きりでしたい」という意味を汲み取ったからだ。

 そして達也の内心はかなり複雑なものだ。同学年、同じクラスの少女が魔法、心理戦の両方に於いて十師族二人を相手に有利に進めているという事実。手札が多いというより、使い方が非常に上手い。

 だからこそ裏に存在する事情がかなり闇の深いものということも理解している。時期が来たら踏み入れるか、それとも話してくれるのを待つか。前なら前者を選んだだろうが、今の達也は後者を選ぶ。だからこそ複雑なのだ。

 だが一つ言えることもある。非常に高度な心理戦と交渉戦を見た達也は、より一層絹旗最愛という脅威に興味を持ったということだ。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 翌日最愛が教室に入ると騒がしかった話し声が急激に収まり、コソコソと噂するような声音へと変化した。

 その反応をされることに最愛は心当たりがある。

 

 

「おはよう、最愛」

 

「オハヨー、聞いたよ最愛! 九校戦メンバーに選ばれたんだって!?」

 

 

 達也とエリカに挨拶を返した最愛は苦笑気味だ。

 その噂とは最愛が九校戦メンバーに選ばれたというもの。噂というものは本当に怖い。あの内密に行われた試合から半日ほどしか経っていないのにもう広まっているのだから。

 しかも確証のないものに肯定するわけもいかない。

 

 

「そういう話は超ありますが、まだ分かりませんよ」

 

「でも二科生が選ばれるかもしれないっていうだけでも一大事だぜ。すごいな最愛」

 

 

 だがレオの言う通り二科生にはそもそも選手としての話は舞い込んでこない。その話があるという事実を話したまでだが、最愛は九校戦についてそこまで知る余裕がなかったがためにその重大さに気がついていないのだ。

 そしてその熱は、一人の来訪者によって更に加速する。

 

 

「絹旗さん、ちょっと良いかしら」

 

 

 真由美だ。生徒会長が一年の、それも関わりがないはずの二科生に対して直々に出向く。これだけでも噂の信憑性は一気に高まる。

 授業が始まるまで後十分程。話す場所は恐らく生徒会室だがそれでは授業に間に合わない。だがありがたい(?)ことに二科生は先生が居ないため、そんなこと気にするはずもなく最愛は教室を出て行った。

 

 生徒会室までの道のりは二人とも無言。社交的な真由美には珍しいことだがこれは下手に話して不利益を出さないための手段だ。実のところただただ会話のネタに困っているというだけなのだが。

 結局何も話すことはなく生徒会室へと着いた二人はセキュリティを解除して中へと入り、適当な場所に腰をかけた。

 

 

「絹旗さん、噂は耳にしていますか?」

 

「そうですね。噂というのは超怖いです。いつの間にか超一人歩きしてますからね」

 

 

 真由美はほんとね、と苦笑している。そして表情をキリッとした真面目なものに切り変えて、話題を切り出した。

 

 

「今日ここに来てもらった理由はもうお分かりだと思いますが、私たち生徒会及び部活連、そして風紀委員は絹旗さんが九校戦のメンバーとして入ってもらうことを望んでいます。引き受けてくれますか?」

 

 

 生徒会と部活連は分かっていたが、まさか風紀委員まで入れてくるとは最愛も思ってなかった。風紀委員を入れる意味はそこまでないが、それだけ最愛をメンバー入りさせることに本気だという証明になっている。

 

 

「超乗り気ではありませんが、仕方ありませんね。能力まで見せたのに話が無くなっては超損しかありませんから」

 

 

 そして昨日のあの場においての駆け引きは最愛の圧勝だが、今後の事を考えるならまだ辛勝と言ったところだ。九校戦で勝てとは言われないが、手を抜くことは許されない。

 結局能力はまた見せなければならないのだ。その点で言えば真由美と克人は上手く交渉を終わらせたと言えるだろう。

 

 

「ありがとうございます。それではこれからよろしくお願いしますね、絹旗さん」

 

 

 何事もなく了承が貰えたことに内心ホッとする真由美。最愛が九校戦メンバーに正式に選ばれたことはまだ秘密だ。しかしその日のうちに校内全体へと広がることになったというのはご愛嬌というべきだろう。

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