モンハンのムフェトがソロ体力実装ということでモチベダダ下がりしてます。
Twitterでこの作品を推している方に出会ってしまったことでこちらのモチベが上がりました。
懇親会が前々日に催されたのは、前日を休養に充てるためだ。
夕食を終えた最愛は誰もいないベッドに再びごろんと横になり、寝るまでの時間を漫然と過ごしていた。雫やほのか、同室である深雪は達也の部屋に行っているため非常に静かな時間を過ごせ、心休まる時間だ。
今日は一日この調子のため考え事もその分多い。九校戦のことは勿論のこと、魔法のこと、そして嫌でも考えてしまうのがやはりこれからのことだろう。何度考えても答えは見つからないが、それでも考えずにはいられない。どうしてこの世界にいるのか、これからどうすれば良いのか、学園都市はどうなっているのか、そもそも最愛は本当に生きているのか―――勿論、考えるのをやめてこのままこの世界で生きていくことも考えた。
だが今後最愛が暴走しないとも限らない。知られていないならまだ対処はできたが、達也や深雪、そして七草や十文字にもその異質性は認知されてしまった。いつかは話さなければならない時が来るのだろうが、それは最愛にとって―――
そこで不意にノックが三回鳴った。
恐らく深雪だろう。
身体を起こして髪を梳かしながら返事をする。
「超開いていますよ」
「ただいま最愛。もしかして起こしちゃった?」
「起きていたので超安心してください」
「お邪魔します」
「お邪魔します」
どうやら達也のところには雫とほのかもいたようだ。時刻は八時前。
達也は明日からエンジニアとして動かなければならないため少し早めに切り上げたのだろう。その思考はほんの数秒だったのだが、いつの間にか最愛を含む円陣が組まれていた。あまりの早さに最愛は普通に驚いてしまったが、顔には出さなかったため何も突っ込まれることなく女子会というものが流れで始まった。
ほのかはともかく、最愛に深雪、雫といった面子では「普通」の女子会みたいに夜通しお喋りをするのが物珍しくも感じるが、そういう面では三人とも「普通」と評しても良いだろう。恋愛話も意外に得手としている四人だが、話題の方向性は最終的にやはり九校戦、特に懇親会で出会ったとある人物に対する話題だった。
「昨日だとやっぱりあの人だよ!」
ほのかのそれは憧憬や尊敬とは違い、若干の嫌悪が混じった言葉だ。
雫は窘めているが意見には概ね同意と言った感じで、深雪はただただ苦笑いしている。
最愛はその場にいなかったため知らないが、どうやら三高の生徒が深雪に対して名家の出身だと思い声をかけたのだが結果として「ただの一般人」と認識されたようなのだ。
当然それを聞くだけあって質問者は
「昨日も言ったけど実力は本物だよ。一年生ながら今大会ミラージ・バットの本戦にも出ることで注目を集めている」
「一年なのに上級生を押しのけて……!?」
「確かに超凄い魔法師ですね。でも話を聞いている限りでは深雪が超負けるとは思えませんが」
他人事のように聞いて客観的に評した最愛。しかしこれは最愛にとっても重要なことだった。
「深雪なら私も勝てると思う。けど彼女の出場種目は本戦ミラージ・バットともう一つ―――新人戦クラウド・ボールだよ」
「―――それは超面白そうですね」
本当に面白そうだという感情を多分に含ませたその笑みからは、全く動じていないことが良く分かった。最愛がそれくらいで怯むとは考えていなかったが、むしろ好戦的になってしまった点については流石の一言。そこでふとあることが気になったのかほのかがそういえばと切り出し、
「深雪と最愛ってクラウドの練習試合をやっていたよね。結果聞いても大丈夫?」
深雪の出場種目は新人戦のアイス・ピラーズ・ブレイクとミラージ・バットだが、最愛の練習相手という名目で何度かクラウドの相手をしていたこと、そして最愛は練習試合を人前でやることはないという二点は周知の事実だ。練習試合に関しては最愛が可能な限り見られないようなスケジュール管理を行った成果だが、あまりの秘匿性故に生徒会等が動いていると噂が流れた程である。
だからその質問はある意味必然的なものであり、
「……私の超全敗です」
「正直なところお兄様の力が無ければ勝てなかったわ」
深雪が目配せをした後、最愛が苦虫を潰したような顔で答えたことでその勝敗が明らかとなった。やはり、という感情が二人の脳内を支配したが、深雪が何も知らなければ本当に勝てなかったという真剣な顔を見て今度はまさか、という感情が押し迫る。
「深雪、それは―――」
どういう意味という言葉は、小気味の良いノック音によって発せられることはなかった。
不意を突かれた雫は若干不満気にドアを見つめ、一番近かったほのかが立ち上がった。現在の時刻は十時前であり、消灯時間も無いため慌てるようなことはない。
「こんばんは~」
「あれ、エイミィ。他のみんなもどうしたの?」
開いたドアから顔を覗かせたのはエイミィだった。その後ろには三人の同級生。第一高新人戦女子メンバーがほぼ揃っていることとなる。
「うん、あのね、ここって温泉があるの」
「超入れるんですか?」
「十一時までなら良いって言っていたよ」
「……すごい」
息ぴったりというか、最愛の欲と噛み合ったというか、奇跡的に理由が判明したことにその場の全員が感嘆してしまった。いや普通のホテルならば温泉があるなら入りたいし何も考えずに入るだろうが、ここは軍の施設。勝手に使っていいものでは無いため許可を得ているかどうか等の会話はあっていいものだろう。それを全て飛ばして全容が把握できてしまった。
「タオルも湯着も貸してくれるって。四人ともどう?」
「じゃあ、ご一緒させてもらおうかしら。着替えを取ってくるから先に行っておいて?」
そして最愛は元より、他の三人も温泉には興味があったのだ。
深雪の快諾にエイミィは嬉しそうに頷いた。
「オーケー。急がなくても大丈夫だよ」
地下の大浴場は一高一年女子の貸し切り状態だった。偶然ではなく十時から十一時まで本当の貸し切りにしてくれたのだ。
貸し与えられた湯着は締め付ける部分が皆無のゆったりとしたデザインであり、入浴という用途には相応しいが水着等と比べたら着心地が非常に心許ない。
「やあ最愛。こうやって喋るのは練習試合以来だね」
湯船に浸かって気持ちよさそうに目を閉じていた最愛に、ハンサムな声が届いた。
「スバルですか。クラウドの調子は超大丈夫ですか?」
一年D組の里美スバル。ハンサムな口調がとても様になっているボーイッシュな少女で、最愛と同じクラウドの選手だ。当然何度か対戦することがあったため、お互いに会ったら―――基本的にスバルから―――話すぐらいの仲にはなっている。
「おかげさまで万全だよ。最愛はどうだい?」
「超良い感じですよ。ただ相手もそれなりの実力があるみたいですから、慢心はしないように超気を付けています」
対戦相手は仮にも師補十八家の令嬢にあたるのだが、それをそれなりの実力と評するのはさすがというべきか。その胆力に最愛に尊敬の念を抱きながら、スバルも隣で湯船に身を委ねた。
ここは大浴場というには少し小さく、人工的な温泉ということもありどちらかといえば個室サウナ付きの大きなお風呂という感じもあるが、実際は軍の療養施設。演習の筋肉痛や関節痛の療養を目的としており、医者の指定した時間お湯に浸かるだけのもの。そのため身体を洗うのは手前のシャワーブースだ。
現状はシャワーブースを深雪が使っており、雫は個室サウナ、ほのかとエイミィがじゃれあっているため―――ほのかが身の危険を感じ始める程には―――それなりに騒がしくなっていた。
しかし普段の入浴よりも心地よい気がするこの場所は、二人のじゃれあいも含めて温泉と形容できるものだろう。その騒動もエイミィが満足したことで段々と収まっていき、再び温和な雰囲気が漂い始めた浴場。だがその雰囲気は一瞬にして緊張感溢れるものへと変貌した。
「な、なに?」
シャワーベースで身体を洗い終えた深雪が現れたと同時に訪れる沈黙。その場の全員の視線は深雪へと注がれており、思わず深雪もたじろいでしまう程だ。
足を止めて紡がれた質問に答える者はおらず、注がれる視線の数も変わらない。
「ダメよ、みんな。深雪はノーマルなんだから!」
「ほのか?」
悲壮感たっぷりのほのかの言葉の意味も、深雪には理解ができない。だが先程のやりとりを見た後のこれでは、早とちり気味なほのかがこう言ってしまうのも無理はないだろう―――というよりも、今回はあながち間違っていないかもしれない。深雪に集められた視線は、その魅力に惹かれてしまっている視線なのだから。
「いやぁ。ごめんごめん。つい見とれてしまったよ」
湯船から出て浴槽の縁に腰をかけていたスバルに相変わらずハンサムな口調でそう言われたことにより、ようやく深雪もその視線の意味を理解する。
「ちょっと……女の子同士で何を言っているの?」
「そうですよ。深雪の貞操が超危なくなったら達也がここまで飛んできますよ」
「最愛も何を言っているの!?」
目を閉じて相変わらず浴槽に身体を預けており、唯一この雰囲気に飲み込まれていない人物だが、故にそこから放たれる冗談は鋭利なものだった。
視線の意味を理解して焦りを感じていた深雪を更に揺さぶる最愛の冗談。少し顔を赤らめながら否定してくるその姿もまた鮮烈な色香を醸し出しており、さらに奇妙な緊張が浴場に漂う。しかし普通なら冗談で済むのだが、この兄妹なら―――と思えてしまうのは日頃の行いだろうか。
この緊張感は雫がサウナから出てくるまで続き、むしろ疲労感が生まれてしまったのはこういった場での愛嬌というべきだろう。
原作は二日目のイベント、優等生は懇親会後のイベントです。
今回は原作沿いです。