魔法科高校の絹旗最愛   作:型破 優位

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文章ががたがただったら申し訳ありません。

意訳 私は睡魔に負けました


知らない実力

 ランプが全て点った瞬間、クレーが空中に飛び出した。

 得点有効エリアに飛び込んだ瞬間、それは粉々に粉砕された。

 次のクレーはエリアの中央で、その次はエリアの両端で次々と粉砕されていく。

 その豪快な範囲魔法に観客からは嘆声が漏れる。

 順調な滑り出しだ。

 

 

「……もしかして有効エリア全域を魔法の作用領域にしているのですか?」

 

「そうですよ。雫は領域内に存在する固形物に振動波を与える魔法で標的を砕いているんです。内部に疎密波を発生させることで、固形物は部分的な膨張と収縮を繰り返して風化します。急加熱と急冷却を繰り返すと硬い岩でも脆くなって崩れてしまうのと同じ理屈ですね」

 

「より正確には、得点有効エリア内にいくつか震源を設定して、固形物に振動波を与える仮想的な波動を発生させているのよ。魔法で直接に標的そのものを振動させるのではなく、標的に振動波を与える事象改変の領域を作り出しているの。震源から球形に広がった波動に標的が触れると、仮想的な振動波が標的内部で現実の振動波になって標的を崩壊させるという仕組みよ」

 

「深雪とほのかは超当然のように言っていますけど、簡単に言っちゃえば各ポイントを番号で超管理していて、展開した起動式に変数としてその番号を入力するだけで魔法が超発動するというわけです。立ち位置、得点有効エリアとの距離、方向、エリアの広さが超同じだからこそ、起動式は不変。位置情報である番号を超入力すれば魔法が打てるというわけです。勿論色々な要素がある分起動式は超大きいので、雫の処理能力があってこそですけどね」

 

 

 美月の質問に深雪、ほのかが詳細に、最愛が要約する形で答えた。

 つまるところスピード・シューティングの予選を絶対に突破する魔法と言っても差し支えないのだ。しかもこの魔法は『能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)』という達也のオリジナル魔法。感情表現が乏しい雫が興奮気味にこの魔法について話してくれたのは記憶に新しい。

 

 

「わお、流石雫。パーフェクトじゃない」

 

「ただでさえ超突出している雫の力に達也が加わったら、パーフェクトも当然ですよ」

 

「それは言えてるな」

 

 

 そのまま席を立って競技場を出ようとしたのはエリカやレオ、美月、幹比古、深雪だ。恐らくに労いの言葉を投げかけるのだろう。だがその必要はない。

 

 

「行かないの? ほのか、最愛」

 

「いえ、この後の予選Bブロックに超気になる選手がいると雫が言っていたので、折角なら一緒に見ようと話していまして」

 

 

 雫のブロックは予選Aの始め、その気になる選手というのは予選Bブロックの始めだ。まだ時間があるとはいえ次に競技を行うのは男子の森崎だけだから別に見に行く必要はない。

 

 

「深雪達も良かったらどう? 達也さんはエンジニアの仕事があるけど雫はここに来るって」

 

 

 納得した様子で全員が席に戻る。

 だがここで問題が一つ発生した。

 席が足りないのだ。

 雫によればエイミィも一緒に来るらしく、席は二つ必要とのこと。

 だが同列には席が残っておらず、少し後方に四人分の空きがある。

 

 

「席が空いていないなら超仕方ないです。行きましょう、ほのか。少し上の方に四人分の席があります」

 

 

 迷っていても意味が無いと早々に立ち上がった最愛は、ほのかに声だけかけて階段を上がっていく。レオやエリカ等のEクラスはエイミィと面識が無いための配慮だ。少女探偵団の再結成―――形だけ―――である。

 問題があるとするなら、二席が空くように両端にそれぞれ座ることになるのだが、変な輩が下心丸出しで言い寄ってくることだろうか。一応ほのかを内側に座らせて最愛は階段横に陣取っているが、それでもほのかが気になる。強気に出られたら委縮してしまいそうだ。

 

 

「ねえ君、横の席空いてる?」

 

 

 ほら来た。

 何処の高校かも分からない男二人組。

 

 

「残念ですが超先約がいます」

 

「ならその先約が来る間でいいからさ」

 

「少しだけ話そうぜ」

 

 

 はぁ、とため息をついてそっと手を差し出す最愛。

 唐突な謎の行動に固まった男二人組だが、どうやら手を握れというジェスチャーであることは理解できたようだ。

 さっと手を掴んできた男に対して、ゆっくりと、確実にその力を強める。

 

 

「私は超言いましたよね。先約がいると」

 

「は、はいででででで!」

 

「お、おい。どうしたんだよ」

 

「手が、手が!」

 

 

 ミシっと手から音が鳴った。

 男の悲鳴に近い叫び声に周囲の目も集まってくる。

 そろそろ塩梅だ。

 スッと手を放す。

 

 

「次は手加減しません。分かったらさっさとこの場から超消えてください」

 

「はいっ!」

 

 

 良い返事と共に逃げ帰っていく男たち。これで最愛達に下手に話しかけるとどうなるかよくわかっただろう。

 ほのかはどうしていいか分からずアタフタしており、深雪達は苦笑を浮かべていた。

 これが最愛の答えだ。

 ほのかに声がかけられないようにするためには、話しかけてはいけないと()()()()()()()()

 強引だが一番手っ取り早い方法だ。

 事実それから一切声がかけられることは無く、非常にゆっくりと試合観戦ができた。

 

 

「お待たせ最愛……どうしたの?」

 

「パーフェクトを取った雫がいるから……という訳でも無いよね」

 

「最愛、何をした?」

 

 

 Aブロックの試合が全て終わったタイミングで声をかけてきたのは、メンテナンス等の次の試合の準備を終えた雫とエイミィ、そして達也だ。

 周囲を見渡し、何があったのだろうという困惑顔付きで。

 

 

「席を超取っていただけです。それ以上でも以下でもないですよ。超うるさい輩がいたと言えばいましたが」

 

「そうだが、これは少しやりすぎたんじゃないか?」

 

「軽く手を握ってあげただけです。むしろ超喜んで欲しいくらいですよ。あ、達也の席は下です」

 

「あの、達也さん。最愛は私に声がかけられないようにしてくれただけで……」

 

「……次からはもっと穏便に済ませてくれ」

 

「むっ、私は超穏便に済ませようとしましたよ。向こうがしつこかっただけです」

 

 

 達也と最愛の受け答えで、雫やエイミィにも何が起きたか大方察しがついてしまった。

 最愛が見せつけるように一人を生贄を捧げて、強硬手段で席を確保したのだろうと。

 だが理由が本当にほのかに声をかけられないようにするためであり、方法は確かにそれしかなかったのかもしれないという気持ちもある。

 雫は無表情で、エイミィはあははと苦笑しながら、死守して取ってくれた席に有難く座った。

 下の列に座っている深雪達はこちらに手を振りながら雫に祝辞を送っており、達也はその輪の中へと入っていった。

 

 

「雫、予選突破超おめでとうございます」

 

「雫、おめでとう! 凄かったよ!」

 

「流石雫って感じだったよね」

 

「三人ともありがとう」

 

 

 珍しく満更でもなさそうにはにかむ雫。

 九校戦愛が止まない雫にとって初戦突破は何よりも嬉しい結果だ。

 

 

「次はエイミィの番」

 

「うわぁ思い出させないでよ雫! 考えないようにしてたのに!」

 

「エイミィ、もしかして超緊張してきました? まあ当然ですか。雫がパーフェクト取ってエイミィが超予選落ちなんてしたら……」

 

「やめてやめて! 魔法師にとってイメージは現実そのものなんだから!」

 

「冗談ですよエイミィ。エイミィなら予選ぐらい超余裕で行けます」

 

 

 うがあと反応するエイミィのなんと微笑ましいことか。本当に緊張しているはずなのだが、その緊張を一切感じさせない。

 試合が始まっていたら白い目で見られていたところだが、今はブロックとブロックの境目。少しだけインターバルがある。

 

 

「始まる」

 

 

 だが多少の談笑時間にしかならないような本当に短い時間だ。

 Bブロック最初の選手。

 三高、十七夜栞。

 百家に連なる十七夜家の令嬢でスピード・シューティングとアイス・ピラーズ・ブレイクの優勝候補の一人だ。そして順調にいけば、雫と準決勝で戦う相手でもある。

 見ておきたいという気持ちは当然だ。

 静まり返る競技場には、少しずつ緊張感が生まれていく。

ランプが一つずつ点っていき、その全てに光が宿った。

 同時に、クレーが発射された。

 

 クレーの一つに振動魔法が発動し、破裂。その飛び散った破片が次のクレーへと当たり、その破片がまた別のクレーへと当たる。破壊したクレーの破片がクレーを破壊する連鎖が、完成していた。

 『数学的連鎖(アリスマティックチェイン)』。

 その異様な光景に、観客が騒めく。

 

 

「一つ目のクレーを壊したのは振動魔法として、どうして破片が他のクレーに飛ぶんだろう」

 

 

 エイミィの疑問に明確に答えたのは、最愛だった。

 

 

「移動系魔法ですね。それぞれのクレーの破片に移動魔法がかけられていて、それらが原子配列みたいに超綺麗に繋がるようになっています」

 

「え、待って。最愛あれ見えるの?」

 

「完全ではありませんが、ある程度は見えます」

 

 

 驚愕。ハッキリと言って、最愛の空間把握能力と演算能力がここまで高いと雫たちは知らなかった。

 三人にはただクレーの破片が意思を持っているかのようにぶつかり合っているようにしか見えないが、最愛はその全てが原子配列のように綺麗に繋がっているといったのだ。つまり破片の数を正確に把握し、更には移動する物体の位置まで把握しているということに他ならない。しかもそれをコンマ秒で、この遠距離から認識している。

 しかしそんな三人を意に介した様子も無く、最愛は淡々と試合の批評を始めた。

 

 

「確かに超優勝候補と言われるだけあります。雫も超苦戦するでしょう。しかしあの連鎖は一度外せば必ず一つのクレーを逃してしまう魔法です。場合によっては外した場所から連鎖が一気に崩れてしまうような超脆いところも多々あるので、確実にクレーを破壊すれば雫なら勝てると思いますよ」

 

 

 試合終了。

 栞のポイントは100点。

 つまり雫に引き続きパーフェクトとなる訳だが、そんなことどうでも良かった。

 確かにその片鱗はあった。

 魔法の覚えが早かったり、理論の成績は優秀だったり、達也のオリジナル魔法である『能動的機雷』の理論をすぐに理解していたり、頭が非常に良いという事は理解していたつもりだった。

 だが最愛は、頭が良いという次元を超えている。雫たちは友人の全く知らなかったとてつもない能力を目の当りにして、試合どころではなくなってしまっていた。

 




最愛の力を実は全く知らない雫たち
本当の力知らないと不安よな。
物語、動きます。
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