小説順守で、優等生を入れていく感じでいきますね。
これ言っておかないとここ違うとかここはこの作品オリジナル?とか出てきてしまうので。
何処の世界も、明確なレベル区分があると上の者はどうしてもその実力を誇示したいらしい。しかもそういう者に限って、中途半端に実力を持ってしまっている。勿論、目的があってあえて誇示する者も居り、実際に学園都市にもいたが、それはその先にある自己保身という目的があってだ。
「いい加減に諦めたらどうなんですか? 深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう。別に、深雪さんはあなたたちを邪魔者扱いなんかしていないじゃないですか。一緒に帰りたかったら、ついてくればいいんです。何の権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか」
ではこの状況はどちらだろうかと言えば、当然前者である。普段は大人しい美月と一科生の男子生徒が言い合いをしているこの状況。隣にいる雫は無表情で、ほのかは止めなければ、という意志が見え隠れしている状態だ。二科生である最愛が一科生側にいるこの状況は何とも摩訶不思議ではあるが、一科生側は深雪に執着しているためその違和感に気がつかない。二科生の面子は、ちょくちょく視線を持ってきては戻している。
そもそも何故こんなことが起きてしまったのか。始まりは昼食の時だった。達也や最愛の後ろの席であった西城レオンハルトとの自己紹介を終え校内の見学をしばらく行った後、最愛は約束通り雫とほのかと食事を取ろうとしていたのだが、そこに追加でいたのは深雪とその他大勢。ほのかと雫は深雪との座席の位置関係もあって仲良くなったらしいのだが、深雪を狙っているその他大勢の男子生徒が深雪を強制的に昼食へと誘い、仕方なく一緒に食堂へ。その移動中に最愛が疎ましい目で見られたのは言うまでもないが、一行が食堂へと着いたとき幸か不幸かそこに居たのはエリカに美月、レオ、達也だった。当然深雪は達也の下へと駆け出してしまい、場を弁えているほのかと雫は別のところで食べることにしたのだが、あろうことか男子生徒はまだ食べている途中である達也たちに対して席を空けるように要求したのだ。そこに深雪の意思は介在しない。騒ぎになることを危惧した達也が席を空けたことによりその場はなんとか収まったが、この件はまだ終わらなかった。
二回目は午後の授業見学中。通称『射撃場』と呼ばれる遠隔魔法用実習室では、生徒会長、
彼女は遠隔精密魔法の分野で十年に一人の英才と呼ばれ、その実技を見ようと大勢の新入生が射撃場に詰め掛けたが、見学できる人数は限られており、一科生に遠慮する二科生が多い中で達也たちは堂々と最前列に陣取ったのだ。それに対して一科生が不満を覚えないはずがない。
そんな成り行きがあり、下校時刻。ついに両者の堪忍袋の緒が切れた。
美月が先程のような容赦ない正論を叩きつけるも、一科生は「彼女に相談することがある」とか「少し時間を貸してもらうだけ」など子供みたいなことを言うだけ。
「ハン! そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間がとってあるだろうが」
「相談だったら予め本人の同意をとってからにしたら?深雪の意思を無視して相談も何もあったもんじゃないの。高校生になってそんなことも知らないの?」
その一科生の言い分に対し、レオは威勢良く笑い飛ばし、エリカは皮肉たっぷりの笑顔と口調で再び正論を叩きつけた。レオは普通に言い返しただけ。だが、エリカは違った。明らかに相手を怒らせることが目的のようなセリフと態度。注文通り男子生徒が乗ってきた。
「うるさい! 他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!」
差別的な呼称と共に感情論で返してきた男子生徒に、真っ向から反対するのは美月。どうやら彼女は見た目に反して物事は言うべきときはハッキリというタイプらしい。
「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点で一体どれだけ優れているというのですかっ?」
だが、今回はそれが裏目に出た。
決して張り上げていたわけではない。張り上げたわけではないが、その言葉は不思議と辺りに響いた。今の状況で今の言動は明らかに拙い。
「……どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるぞ」
「ハッ、おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」
まさに、売り言葉に買い言葉。最早両者ともにやる気満々だ。だが、最愛は止めない。止めることに意味は無いが、実際に魔法を見ることに対しては意味があるからだ。
「だったら教えてやる!」
学校内でCADの携帯が認められているのは生徒会の役員と一部の委員会のみ。だが、校外でCADの所持が制限されることはない。自衛のために使うのは正当防衛として認められるし、何よりも意味がないからだ。
故にCADを所持している生徒は授業開始前に事務室へ預け、下校時に返却される手続きとなっている。つまり、下校途中である生徒がCADを持っているのは特におかしなことではない。
「特化型!?」
だがそれが同じ生徒に向けられるとなれば、非常事態。向けられたCADが攻撃重視の魔法が入れられる傾向の強い特化型なら尚更だ。
CADには汎用型と特化型の二種類があり、汎用型は最大九十九種類の起動式を格納できる代わりに使用者に対する負担が大きく、特化型は起動式を九種類しか格納できない代わり使用者の負担を減らすサブシステムがついており、魔法をより高速に発動することを可能とする。
その拳銃の形をした特化型CADの銃口は、レオに突きつけられていた。
その生徒は口先だけではなかった。
初心者の最愛から見てもCADを抜き出す手際、照準を定めるスピード、どちらも明らかに戦闘に慣れている者の動きだった。
「お兄様!」
深雪の言葉が終わるが先か、達也は右手を突き出していた。何かをしようとしていたのだろう。だが、その必要はなくなったようだ。
「ヒッ!」
悲鳴を上げたのは銃口を突きつけていた一科生の方だった。小型拳銃の形をした特化型は弧を描いて宙を舞っている。その眼前ではどこから出したのか、警棒らしきものを振り抜いた姿勢でエリカが立っていた。
「この間合いなら身体を動かした方が早いのよね」
「それは同感だがテメェ今、俺の手ごとブッ叩くつもりだったろ」
「あ~らそんなことしないわよぉ」
「笑って誤魔化すんじゃねぇ!」
敵の眼前でコントのような言い合いをする二人。これを見て一科生は舐められていると感じたのだろう。次々とCADを構えて魔法を発動しようとする。
「やめなよ!」
「うるさい!」
「きゃっ」
魔法を発動しようとしていた男子生徒を止めようとしたほのかだったが、力の差もあってか逆に突き飛ばされてしまった。丁度そこに雫がいたから良かったものの、居なければ軽傷を負っていたほどの飛ばされ方だ。最早二科生にしか目がいっていない。
そこでほのかが何か強い意思を持った表情で、無言でCADを操作し始める。
「何する気!?」
「私の魔法で皆を止めるの!」
「ダメだよほのか!」
雫の制止を無視して魔法式を展開するほのか。他の一科生の攻撃を止めるべく何かしらの魔法を発動しようと手を滑らせ、淡い光が彼女の腕を包む。
これが魔法か、と最愛が心のなかで呟いた瞬間、遠方から強力な力を持った誰かがこちらを、主にほのかを狙っているのを感じて一歩前へと出た。
ほのかは一科生を止めるために、遠方からは恐らくほのかを止めるための魔法が発動されると最愛は理解している。よって、危険は普通に魔法に当たるより少なく
魔法を発動しかけているほのかの右手を左手で掴むように、案の定飛んできたサイオンの弾丸を右手で薙ぎ払うように、それぞれを甲高い金属音と共に打ち消した。
それを確認した者全員がそれぞれ別の意味で驚愕に目を見開いたのを横目で確認したが、今は後回し。遠方から攻撃し、こちらへ駆け足で向かってきている人物を見る。
「止めなさい! 自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」
声の主を認めて、魔法を発動しようとしていた生徒は一様に顔を青ざめた。警告を発し、先ほどサイオンの弾丸を飛ばしてきたのは、生徒会長の真由美だった。
「事の経緯を聞きたいところだが、一つ確認だ。そこの女子。真由美の魔法が意図的にではあったが当たったな。大丈夫か?」
硬質な声で話しかけてきたのは、入学式の時に紹介があった風紀委員長、
「超大丈夫です」
「そうか。なら良かった。では今回どのような経緯でこのような事になったのかを聞かさせてもらおう。ついて来なさい」
未だに何が起きたか理解していない者ばかりだが、理解している者がいないわけではない。その中の一人、達也が胸を張るわけでもなく、項垂れることもなく、泰然とした態度で摩利の前へと歩み出た。突然出てきた一年生に、摩利は訝しげな視線を向ける。
「すみません。悪ふざけが過ぎました」
「悪ふざけ?」
唐突に思えるそのセリフに、摩利の眉が軽くひそめられる。
「はい。森崎家のクイックドロウは有名ですから、後学の為に見せてもらうだけのつもりだったんですが、あまりにも真に迫っていたため身構えてしまっただけです」
「では、その後に1-Aの女子が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」
視線を巡らせ、CADを操作しようとしていた一科生を確認した摩利は冷笑を浮かべながら達也を見た。その時主な対象となったほのかは、ヒッと小さく悲鳴を上げてしまったが、聞こえたのは雫と最愛だけだろう。
「彼女が発動しようと意図したのは目眩ましの閃光魔法です。それも、失明や視力
誰かが息を呑む。
それに伴うように摩利の視線は興味深いものを見つけたとばかりに達也を注視しはじめた。
「ほう……どうやら君は、展開された起動式を読み取ることができるらしいな」
「実技は苦手ですが、分析は得意です」
「……誤魔化すのも得意なようだ」
魔法式の存在は絹旗も勿論知っている。だが魔法式が読み取れるということがどれだけすごいのか、最愛には知識としては理解できるが経験的には理解できていない。だが周りの反応から察するに
「兄の申した通り、本当に、ちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」
達也を庇うように一歩前へ出て、胡散臭い達也とは対照的に微塵の小細工もない真正面からの謝罪をしたのは深雪。これにはさすがの摩利も毒気を抜かれたのか、目を逸らしてしまった。
「摩利。もういいじゃない。達也くん、本当にただの見学だったのよね?」
救いの手だろうか。ニコニコと達也を見る真由美に対して、また胡散臭い表情で頷く達也。どうやら、達也の作戦は上手くいったみたいだ。
「確かに、生徒同士で教え合うことが禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には、起動するだけでも細かな制限があります。このことは一学期の内に授業で教わる内容です。魔法の発動を伴う自習活動は、それまで控えた方がいいでしょうね」
「……会長がこう仰られていることでもあるし、今回は不問にします。以後このようなことの無いように」
真由美の言葉に、いまいち納得しないまま摩利がそう告げ、踵を返した。が、一歩踏み出したところで足を止めて、背中を向けたまま問いかけを発した。
「君の名前は?」
首だけ振り向いたその視線の先には、達也がいる。
「一年E組、司波 達也です」
「覚えておこう。そして、そこの女子。君の名前も聞いておきたい」
そして向けられた視線。チラチラと気にしていたことに加え、名前を聞く流れだったため来るのはわかっていたが、厄介事に違いはない。そんなもの願い下げだ。
「答える義理は超ないですね」
「……まぁいい」
あまりに明確な否定に不満げな表情を浮かべながらも、再び歩き出した摩利。どうやらこの世界、学園都市とは別の意味で面倒事が起きるだろうと、最愛は溜め息を一つ。座り込んでいるほのかの補助を行った。
おかしなところはドンドン言ってください。