魔法科高校の絹旗最愛   作:型破 優位

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誤字報告で気づきましたが、まさか「こんばんは」を「こんばんわ」にしていたとは……やばい。これはやばい。


新入部員勧誘

 ほのかや雫の話によると、今日から新入部員勧誘期間となるようだ。その規模と言えば、毎回風紀委員出動必至、お祭り騒ぎの魔法が飛び交う無法地帯になるとのこと。

 それをふぅん、と他人事のように流していた最愛だったが、その評価を改めざるを得なかった。あちこちで新入生がもみくちゃにされており、既に魔法が飛び交っている場所もある。そして何より、ほのかと雫は一科生の中でも特に成績が優秀な生徒である。

 

 最初は最愛に連れられてなんとか人目が無いようなところを抜けて見学しようとしたのだが、校内全域で行われているためか、やはり人目についてしまうところは出来てしまうし、何より見たい部活が見れないということもある。

 そのためある程度の勧誘は覚悟でその中に飛び込んだのだが――現状が結果だ。

 

 最愛はほのかと雫という喉から手が出るほど欲しい人材の隣にいたということに加え、二科生で小柄なためなんとか抜け出せたが、それでも能力は解除しての状態。心臓の鼓動が早くなる程度には苦労をした。

 

 だがたまに合間から見える二人はあまりの強引な勧誘に若干迷惑そうな表情をしている。このままここで見ているわけにもいかないのは確かだった。この人の量なら多少能力を使ったって構わないだろう。ほぼ即決で決めた思考を行動に移そうとしたその時、運良くというべきだろうか、その集団の中に颯爽と割って入るジャージ姿の二人の女性。恐らく生徒ではない。

 彼女らはほのかと雫を抱えると、そのまま走り去ってしまった。

 

 

「バイアスロン部だ!」

 

「取られた!」

 

 

 周囲には優良な新入生を取られてしまい落胆する生徒ばかり。だが助けようと思っていた最愛にとっては非常にラッキーだ。人目を避けるために校内でどの部活がやっているかは網羅しているし、何より能力を見られる人数が減ったのだ。どうやらあの二人はバイアスロン部らしい。練習場所は校舎裏だ。

 最愛は小走りでバイアスロン部の練習している場所へと先回りした。

 

 

◆◆◆

 

 

 校内では現在、カーチェイスならぬスケボーチェイスが行われていた。逃げるはほのかと雫を抱えているジャージ姿の女性二人。追いかけるのは風紀委員長の渡辺摩利だ。魔法の技能的には摩利の方が上なのか、距離は少しずつ詰められていく。

 だが二対一というのもあり、距離を詰めては離されるというのが続いて数分。追いかけられているために遠回りにはなったが、次の角を転回するように曲がればバイアスロン部の下につく。

 

 

「あの角曲がるぞ」

 

「OK」

 

 

 魔法による妨害により再び距離を離した摩利を横目に、華麗なボード捌きで角を曲がる。身体を傾け上手く遠心力を発散させながら転回していく二人。そして視界にバイアスロン部の部員の姿を捉えたことによる二人のご満悦な表情は、だが突然制服姿の少女が二人の前に飛び出してきたことにより驚愕のものへと変わる。

 

 

「不味いッ!」

 

「危ないッ!」

 

 

 その差数メートルも無い。

 自動車並みのスピードで滑走していた彼女らにそれを対処する術はなかったが、運良く二人の間を少女が通り抜けていった。内心ほっとする二人に、だが違和感。

 先ほどまで有った人の温もり、重さがない。

 転回を終えて体勢を直しながら確認してみると

 

 

「――ッ!?」

 

「あれっ!?」

 

 

 綺麗に二人ともいなくなっていた。

 振り返ると少女の手には先ほど奪ってきた二人の少女が抱えられている。取り返そうか(?)と悩んだのだが、摩利がすぐそこまで来ているために取り返しにいく時間はない。仕方ない、とその勢いを保ったままバイアスロン部の下まで行き、

 

 

「あそこにいる新入部員、逃がすなよ!」

 

「ちゃんと可愛がってあげて!」

 

 

 それぞれ一言ずつ、唖然としている現役バイアスロン部に残していき、OBである二人は勢いそのままに逃走していった。

 

 

◆◆◆

 

 

「超大丈夫ですか、ほのか、雫?」

 

「あ、ありがとう最愛ちゃん……」

 

「……大丈夫」

 

 

 明らかに疲れているほのかと何処か楽しげな雫を下ろしながら確認を取った最愛だが、普通に立てるほどには大丈夫なようだ。そして数秒後にやって来た風紀委員長。今回は「助かったぞあの時の女子!」とだけ言い残してバイアスロン部の下へ、部員と少し話した後直ぐ様逃げていったあの二人の後を追いかけていった。

 

 

「それにしてもよく分かったね」

 

「いえ、ほのかと雫の道案内ついでに覚えた地図が超役に立ちました」

 

 

 二人が向かった方向から逆算して辿っていった訳だが、見事にビンゴだった。最愛としてもあの速度で突っ込まれるのは少し肝に来たが、生憎あの程度で冷えるほど肝は弱くない。冷静にほのかと雫だけを掴んで能力と身体全身をフルに活用して受け止めただけの話だ。

 少しシワが出来てしまった制服を直しつつ、こちらに向かってきているバイアスロン部の部員らしき女子生徒を見つめる。向こうは向こうで申し訳なさそうな感じだ。

 

 

「ごめんなさい、先輩たちが迷惑を掛けて。貴方たち、新入生よね? バイアスロン部部長の五十嵐(いがらし) 亜実(つぐみ)です――もしかして、光井 ほのかに北山 雫さん……えーっと……」

 

 

 話しかけてきたのは、バイアスロン部の部長だった。彼女はほのかと雫の顔をみた瞬間ハッとして名前を呼んだが、次に目に入った最愛を見て言い淀んでしまった。

 

 

「絹旗最愛です」

 

「……ありがとう、絹旗さん。あの様子だと入部希望ってわけでもなさそうだけど、一応聞いてくれる? 私たちはバイアスロン部。正式名称、SSボード・バイアスロン部よ」

 

「SSボード……バイアスロン部?」

 

「正式名称って言っても、SSボード自体が省略語なんだけどね――」

 

 

 そこから部長の説明が始まった。どうやらスケートボードとスノーボードの頭文字を取ってSSらしいのだが、春夏秋はスケートボード、冬はスノーボードを使ってコースに設置された的を魔法で撃ち抜く競技らしい。

 その()()()()という部分に興味を持ったほのか。聞き返した瞬間に部長の目付きが変わった。声音は興奮した様子で、だが速度はなんとか保ちながら行われる説明。簡単に言えば、自分の色の的だけを移動しながら撃つ競技のようだ。

 一通り説明を終えた五十嵐はほのかの手を掴み、勧誘をかける。そして更に追撃をかけるかのようにデモを進めてくる部長。ほのかが困惑しているため止めようかと思った最愛だが、五十嵐の援護はまさかの身内から放たれた。

 

 

「ほのか、私ここ入りたい」

 

「ええ!?」

 

「ほんと!? 北山さん入ってくれるの!?」

 

 

 目を輝かせながらそう言った雫。どうやら感化されるものがあったようだ。有力な新人が入ると言ってくれたことにより、五十嵐の目もキラキラと輝いている。

 

 

「ほのかと最愛がいいなら」

 

「えっと……」

 

 

 決定権を委ねられたほのかは、言い淀んだ。向けられる、二方向からの期待の視線。逃げるように、チラッと絹旗を見る。困っているのは明らかなため、最愛は道を作ることにした。

 

 

「私は魔法が超苦手なので競技はしませんが、数合わせ程度で良ければ超構いませんよ。あの勧誘から超逃げる口実にもなりますし」

 

「……私も雫と最愛ちゃんと一緒なら」

 

「ありがとー! やった期待の新人ゲットよ!」

 

 

 最早諦めたかのような口調で答えたほのかに雫は目を輝かせ、五十嵐はサムズアップをしながら部員へと嬉しそうに報告を行っていた。それを他人事のように見つめる最愛。彼女の表情は子供二人を見つめる保護者のようなものだった。




成り行きで入部。ただし開幕から幽霊部員宣言。
次回は赤髪のあの子が出ます。今回は区切りの良いところがここまでのため約3000字です。
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