吹き荒れる風、荒れ狂う空
さっきまであんなに晴れていたのに…
「あーあ…明日も行きたかったのに止むかな雨」
ゴロゴローとふかふかなベッドに転がる。
ゆうしゃが「女の子なんだから…」って言ってたけど、今はどうでも良い
明日の楽しみが潰れてしまったショックはでかい。
「晴れなかったらまた次に行けばいいじゃん、楽しみは後でってのもいいもんだよう」
食後のワイン、ワイン〜♪ とさっきとってきたフルーツで作ったお酒とワインを飲んでいるラパンママ。
気がつくといつもお酒飲んでるなぁ…
ご飯しっかり食べてるのかしら。
「うん…でも…お花が」
「あー、この風じゃ散っちゃうかもね」
「あうー……」
だよね、だって窓ガタガタいってるもん。
台風のような天候だから散っちゃうよね…
明日楽しみだったのにな…泣きそう…
「ユウナ姫…」
「ばばーーん!食後のデザートの後のデザートだよー!いえーい!」
ゆうしゃの言葉を遮るように、ドアをばーん!と開けて入ってきたルシアンさん
ゆうしゃの目は「ルシアンさん、さっきデザート食べたでしょ?」って訴えかけている
さっきのはデザートであってデザートじゃないんだよゆうしゃ。
これからが本番なのに勿体無い!
「わあ、綺麗なゼリー!」
「姫がとって来てくれたオレンジとリンゴのゼリーだよ。摘んで来たお花も入れてみたんだ、これで元気出して?」
やっぱりルシアンさんは天性の料理人だなぁ
ゼリーなのにキラキラ光り輝いて…
「宝石みたいだね」
青い顔をして、お腹をさすりながらゆうしゃはそう言った。
もうお腹空いたの?私と一緒だね!
「うん、綺麗!ありがとう!」
「もうすぐ姫の誕生日だからさ、色々なデザート作っておきたいんだ。どんなのが喜ぶのか分からないし」
ああ、そっか。すっかり忘れていた。
もうあと数日で私の誕生日がやってくる
「デザートだデザート〜」とシャーさんやリュシオルさんもやって来る。
「姫ももう大人かあ、って事は…」
「……………」
ラパンママの言葉にハッとする。
忘れていたかったのにな、今日だけは
今日は楽しい1日にしたかったのに。
「隣国の王子が会いたいとの手紙を出してきました。そろそろ結婚相手を決めねばなりませんよ姫様」
隣国……ああ、あの優しい笑顔の人。
名前はなんだっけ、思い出したくない。
だって結婚する気なんて一ミリも無い。
ずっと、ずっとこのままゆうしゃと…
「……だ」
「ユウナ姫?どうしたの」
したくない、結婚なんて。
この国のためだとしても
「やだっっっ!!!!!」
ぱしん、と肩に置かれたゆうしゃの手を思わず叩く。
そんな気は無かったのに……
「あ……」
「ユウナ姫…?」
「ごめんなさい、ゆうしゃごめんなさい、ちがうの」
ビックリした顔をしてゆうしゃが名前を呼ぶ。
慌てて違う、と言ったけれどゆうしゃの表情はどんどん雲っていった
「ゆうしゃ……?」
ブツブツと何かを呟く、私の声は聞こえないみたい。
何か物凄い殺意のようなものを感じる…
…わたしに?
「ユウナ姫、ここは私に任せるんだ」
え?と思った瞬間、とうっ!とラパンママが飛び上がりゆうしゃへキックをする。
止めようと思ったけど一足遅く、ゆうしゃはラビットキックで気絶してしまった。
「ゆうしゃ…」
「眠ってるのさ、ふふん!」
ラパンママ、これは眠ってるんじゃなくて気絶って言うんだよ。
「相変わらずお酒の入ったラパンさんは危険ですね。仕方ない、勇者を部屋へ運びましょう」
「うん…リュシオルさんお願いします」
「ラパンさんはこっち〜」
「いーやーだー!ラパンを食べ物扱いするシャーさんいーやー!」
リュシオルさんは気絶した勇者を、シャーさんは酔っ払って手が付けられないラパンママをズルズル引きずって部屋から出ていった。
残ったのはみんなの食べかけたゼリーと、ルシアンさんだけ。
「姫、とりあえずゼリー食べよっか」
「うん…」
食べかけたゼリーを口に運ぶ。
でも美味しく無い。
ゆうしゃがさっきいた時は美味しくて美味しくて止まらなかったのに
「姫は、勇者が好き?」
そう聞かれたってわたしにもわからない。
みんな大好きなのだ
「勇者がいないって考えたら、どう感じるの?」
「…さみしい。胸がいたい。泣きたくなる」
ほら、いまだって泣きたい。
ゆうしゃがそばにいないだけで胸が張り裂けそうだ
「うん、姫は勇者が大好きなんだね。俺らよりも大好きなんだよ。結婚ってワード聞いた時の勇者の顔見た?すごく嫌だって顔してた。勇者も姫が大好きなんだよ」
そう言ってルシアンさんはみんなの食べかけたゼリーをぺろり、と平らげ
「デザート後のデザート後のデザート作って来るね〜、わふっ」
と、厨房へ消えていった。
まだ外は嵐が吹き荒れている。
まるでわたしの心のようだ
夜明けまでに止んでくれるだろうか、明日も晴れがいい
静かに、枕へ顔を埋めた。
「ごめんね、ゆうしゃ」
小さな呟きは、風の音でかき消されて消えた。