ワイワイガヤガヤ、お気に入りの飲み屋は大盛況のようで0時を過ぎても人が絶えることはなかった。
店主のリヨンさんはテーブルからテーブルへ移動してせっせと接客をしている
うーん、まだ飲んでいたいけどそろそろ帰るべきか?
重い体をよっこらせ、と起こして帰ろうとする。
カラン、コロン。
「いらっしゃいませ〜」
また新たなお客様が来たようだ。
本当に今日は大盛況だな
「ここのお酒が絶品とユウナ姫様からお聞き致しまして。少しお邪魔してもよろしいでしょうか?」
「あっらぁ!ユウナ姫様からの推薦っ?!どうぞどうぞ〜!」
ん?あれは隣国の最強魔法使いの……
漆黒のフードで顔を隠しているから顔が見えないが、あのなんとも言えないオーラはきっとそうだろう
「お隣、宜しいですか?」
「え、ああ。どうぞ」
他にも席はあったはずなのにわざわざ俺の横にやってきた
やっぱり魔法使いさんだなこれ。
「シックザール国の魔法使いさんですよね?」
「はい、デファンスと申します。王子は姫君と2人きりでいたいとの事でしたので、暇を持て余してしまって…」
「デファンスさんね。勇者って呼ばれてます。護衛はしなくていいんですか?」
リヨンさんがデファンスさんへほのかに甘酸っぱいお酒とおつまみ、俺にお代わりを渡して去っていく。
「が、ん、ば、れ」って口が言ってた気がした。
「護衛などしなくてもあのお城全体には強力な【守備】と
「え??あの城全体に?確かに大臣のリュシオルさんは魔法使いだけど…」
リュシオルさんは確かに魔法使いだ
でも確か魔法薬を主とした戦い方で、
他の魔法いたちもきっとそこまで強くないはずだ
「リュシオルさんがきっとお強いんですね。最強と呼ばれる私ですらあの広範囲に魔法をかけるなんて不可能です。それこそ
「え、う、うーん。そうだね」
それにこの勇者の俺ですら気付かない?
あの城全体に【守備】と【騎士】がかかっているだなんて今日初めて知ったぞ。
みんな気付いていたのか??俺だけ?
勇者って肩書きだけで訓練を怠っていたせいなのか…明日からはしっかり鍛えよう。
少し動揺してしまった、酔いが覚めかけている。追加で飲まなければ。
「ふふ、ここのお酒はとても美味しいですね」
ひっく、と言いながらデファンスさんが笑う。
…漆黒のフードが赤く見えてきたのは気のせいだろうか?
というかそれ、まだ一杯目だよね?お酒弱いのに飲みにきたの?
リヨンさんに慌ててお水を要求する。
「デファンスさん、もうお酒やめましょ!!酔ってますって!ほらお水!」
「いいえぇ、よってらいのです。さいひょーのまほうつかいのわらひが!」
「待って、酔ってるから!酔ってますってば!」
きぇー!とかしぇー!とか言って火花魔法を放つ。
酔ってるのにちゃんと加減しててすごいなー、綺麗だなーって現実逃避しかけたけど、慌てて止めに入る。
ほらそこのお客さん、火花魔法を背景に写真撮らない。はい、ピース!じゃない危ない!
「んもう、酔っ払いは【転移魔法】!行先は自分の寝床!」
しゅん、と魔法陣が展開され、デファンスさんが包まれて消えてゆく。
無事に寝床へ転送されたのだろうか?というかリヨンさん魔法使えるんだね
「転移魔法くらいなら朝飯前よん♪」
るんるん、と奥の厨房へ消えてゆく
それから少ししてリヨンさんが伝票を持って帰ってきた
「リヨンさんありがと…」
「はい、お会計。10万ルピね♪」
「たかいよ?!」
どうやら今日はお財布が寂しくなる日らしい。
すっからかんになりかけた財布を見ながら、明日からどう生活しようか頭を悩ませた。
……お酒なんて飲むんじゃなかったや。
勇者だってきっとお酒は強くないはず(たぶん)
リヨンさんがお代わりにお酒を入れなかったりして調整しているのです
そして10万ルピはきっと転移魔法の料金込み