見なくても物語に影響はないはずです
不愉快すぎて、不愉快すぎて…!
猛ダッシュで厨房へ走る。
こういう時は甘いものがいいんだよ!
「ルシアンさん!おやつのあとのおやつ!」
「わうっ!そういうと思ってタルト焼いてるよ〜待ってね姫様♪」
厨房でえっさこらさと料理を作っているルシアンさんに会いに来た。
私の心を読んでいたかのように、タルトを焼いていたなんて!
やっぱり私を分かってくれているね!!
ウキウキしながら出てくるのを待つ
「ユウナ姫…!申し訳ありません、気分を害してしまったでしょうか…」
ハァハァ、と息を切らしてルーヴ王子が追いかけて来た。
…別におやつが無くなったから不機嫌なだけで、他は何も無いよ?
「いいえ、私こそ申し訳ありませんでした。ルシアンさんがタルトを焼いているの。一緒にいかがです?」
「ユウナ姫様はよくお食べになりますね。その小さな体のどこに入るのやら…」
はは、と笑って横に座る。
女の子の胃袋は無限大!ぶらっくほーるだよ?
ゆうしゃとかが小食なだけなの!
「ルシアンさんの作る料理が絶品なだけですう〜」
「確かに美味しいですからね。私もルシアンさんの料理が好きですよ。…ああ、そうそう姫」
「んにゅ?」
もぎゅもぎゅ、と余ってたクッキーを貪る。
桜の花びらが入ってるんだよね、美味しい美味しい。
タルトはまだ焼き上がらないのかな、美味しい匂いはするのだけど。
「デファンスから預かっているものがあります。どうぞ」
コトン、と小瓶をデーブルに置くルーヴ王子。
なんだろう?とても良い香りがする。
「これはなに?」
「"お試し用"と言っておりましたが…ちょっと私にもわからないのです」
小瓶に入った液体を眺める
透き通った綺麗なエメラルドグリーンの液体だ
きゅぽん、と蓋を外して匂いを嗅ぐ
リュシオルさんの作った魔法薬みたいな得体の知れない匂いはしない!
それにとてもこれは……
「
ぺろり、と口の周りを舐め回す。
よだれが出そうになるほどとても美味しい匂いがする
あア……これハ……
「…ユウナ姫?」
タルトを焼き上げたルシアンさんがしかめっ面でこちらを見ているが気にしない。
ルーヴ王子は不気味な笑顔でこちらを見ている
もう、この欲求を止められない……
ゴクゴクとその液体を飲み干す。
喉なんて乾いていないのに、欲しくて欲しくてたまらない
美味しい、とてもおいしい。オイシイ。
「…だいじょうぶ、ありがとう」
「魔法を使った後や使っている最中はオーラが出ますからね。バレないようにしたいなら匂いなどで隠さないといけませんし、それこそずっと使い続けると体力が減りますよね」
さあ、タルトを食べようか
とってもおなかがすいた
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆
夕食を食べた後、ルーヴ王子は私と2人きりになりたいと言ってきた。
さっきの小瓶のお礼もあるし、悪い人じゃ無いからそれくらい良いかな…
部屋に呼ぶのは少々間違いだった気もするけど、まあいざとなったら転移魔法で逃げれば良い。
「お邪魔しますね。…うん、とても良い香りだ」
「うん、どうぞ〜」
甘い匂いに包まれる私のお部屋
ゆうしゃからもらったぬいぐるみ
ゆうしゃがくれた色々なもので部屋は飾られている
「ん、この写真に写っている方は?」
「ゆうしゃ!わたしのゆうしゃ!」
その写真ね、わたしが10歳のときに一緒に撮ったやつだね
すごい嫌がってたけど、ラパンママが無理矢理グイグイって押し付けて撮ったんだ
唯一2人で写ってる写真だから大事なものなの!
「勇者?魔王もいないのに勇者が存在する?」
「ゆうしゃはゆうしゃ!私だけのゆうしゃだよ!ほら、護衛でいたでしょ〜」
「ああ…デファンスがやたら警戒していましたね。名はなんと?」
写真をまじまじと眺めながら、ルーヴ王子はそう聞いてくる。
そんなに眺めたら写真に穴が開いちゃうよ?
それに……
「ゆうしゃは…ゆうしゃだもん」
「勇者、は職業であって名前では無いでしょう?彼にも名前があるはずですが」
「…ゆうしゃだもんっっ!!」
聞かないで、彼の名前を。
わたしだけのゆうしゃなのに
そう叫んだ瞬間、いきなりの突風が吹き荒れ窓ガラスが割れた。
おかしい、天気予報は晴れのはずだったのにいきなり空が黒くなって強風が吹き荒れるなんて
「姫様!何事ですっ!?お怪我はありませんか?!」
リュシオルさんが割れた音に気づいたのか大慌てで部屋へ入ってくる
ルーヴ王子もいきなり窓ガラスが割れた事にビックリして、うまく動けないようだ
「だいじょうぶ、怪我はしないよ」
「にしてもいきなり天気が荒れるなんて…」
ほんとだよね、ビックリしちゃった。
窓ガラスが割れるくらいの強風なんて今までなかったのになあ
「…城の上にだけ黒い雲」
ルーヴ王子の呟きは聞こえてなかったことにしてあげるね。