『目覚…さ………て……』
…だれかの声がする。
『目覚めなさい……』
もう動けないや
洞窟狼強すぎるんだよ
勇者でも倒せないって何事だよ
『目覚めなさい、【勇者】として…』
何をいってるんだ?
俺は勇者だぞ?
『いいえ、貴方は勇者として目覚めていない…』
あれ?じゃあなんで俺は勇者って言ってたの?
目覚めるってなに?
これ夢なの?
『良いから早く起きるのです!!』
ぱこーん!と頭にタライが落下してきて、意識を戻される
いたい、いたいよう母ちゃん。でかいたんこぶできたよう
というかさっきから話しかけてくるこの人は何者なんだ
真っ暗闇をキョロキョロして探してみるが見つからない
そりゃそうだ、見えないもん。
「
ぱぁっと明るくなった俺の目の前に現れたのは……
「……コンニチハ。」
「グルルルァ…」
うん、竜だよね。
どう見ても竜だよね、終わった。俺の人生終わった。
ああ、お酒飲みたかったな…キララベリー食べたかったな…ははは……
戦えるほどHPは回復していない、逃げ切れる自信もない
もうおしまいだぁ…
最後に…最後に姫に会いたかったな…
「勇者…ヨ…目覚メナサイ…」
「しゃべった?!」
ねえ、この子喋ったよ竜が喋ったよ。
とうとう俺の頭おかしくなったのかな
『…名前はなんと言うのです』
「…竜が念話使ってる…」
さっき喋ったと思ったのも念話か
なかなか高度な呪文を使える竜だなおい。
怒らせたら一瞬でお陀仏だわこれ。
とりあえず怒らせる前に質問に答えよう
『名前は?』
「勇者」
『違う、それは名前じゃない』
「あれ?じゃあ俺の名前はなんだ?」
うん?勇者は名前じゃない???
え、じゃあ俺はなんでずっと勇者って言ってたんだ?
あれ?あ…れ?名前なんだっけ…名前は…
『フォル・ゲリー』
「え?」
その名前を聞いた途端、ちくんと胸のあたりが痛み頭痛が起きはじめた
とてつもなくイタイ
その名前は聞いちゃいけない、その先は聞いちゃいけないと頭が心が拒否している
『…ゲリーの匂い、でもあなたはちがう』
「…っ!だ、れのことを…」
『
「……っ?!あっ…!?」
『どうか…あの子を…
あたまがいたい、いたいいたいいたいイタイイタイ
よばないでくれ、よばないで
名前をよばないで、たのむから
あまりの痛みに耐えられず意識が遠のいていくのを感じた
また意識は闇の中へ沈んでいく
次に目覚めたら、俺は俺でいられるのだろうか
遠のいていく意識の中で嗅いだことのある安心する匂いを感じた気がする
ああこれは……
◆◇◇◇◇◇◇◇◇◆◇◇◆
「勇者ー!」
「にゃ…見つからないねぇ」
ゴールデンゴーレムに洞窟スライムにくわえて洞窟狼…
リュシオルはこんなに活発化してる洞窟だって言ってなかったのに!
おまけに勇者は狼に攫われるし、ほんと何やってんの!!
シャーさんが猫化し、素早く洞窟内を動き回って探しているけど見つからない!
私もさっきからこのよく聞こえる耳を動かして、声がしないか聞いているけど…
スライムのぷるるーん!ばっか聞こえてきてイラっとする!
もう!お酒飲んじゃうよ!!
「ラパン…リュシオルが来るまで待ったほうがいいかもしれない。このままだと僕らまで迷子になってしまうよ」
「でもっ!勇者はさらわれて…」
「ラパン」
「…っ!」
シャーさんの金色の目がこちらを見ている
暗闇の中で光る金色の目
このままとって食われそうだ、怖い
「大丈夫、勇者は強いから」
「ユウナちゃんに怒られちゃう…」
「ユウナ姫は優しいから大丈夫だよ」
「ちゃんと勇者と無事に帰るって言ったのに…」
ダメだ、勇者の護衛失格だ
いやむしろユウナ姫のママ失格だ…
約束を守れなかった、いくら囲まれていたとしても守れたかもしれないのに
悔しい、悔しい……
「…ラパン大丈夫、きっと見つかる」
「勇者…ごめんね…」
今はおとなしく、ここでリュシオルを待つしか出来ない
疲労しきった私たちはその場で休憩することにした
ぷるるーん、洞窟スライムの声がする
……酔拳で八つ当たりしてやる。
ぐびっと一杯飲んで戦闘態勢に入った。