意識が闇に落ちる瞬間、嗅いだことのある甘い匂いがしたんだ
でもここにいるはずがない、いるはずがないんだ彼女が
遠のいていく…
「目覚めちゃったのね、ゆうしゃ…」
目が覚めた時、俺は俺のままでいられるだろうか。
………
……
…
「ねえ、ゆうしゃとまおうのお話って知ってる?」
「うん知ってるよ!勇者が魔王を倒すんでしょ?」
「ふふっ、あなたさっきとても強かった。まるでゆうしゃみたいかっこよかった!だからこれからは"ゆうしゃ"ってよぶね?私だけのゆうしゃさま♪」
ああ…これは……姫と会った時の………
「わたしのぱぱとままは、ちいさいときになくなったの。でもさみしくないよ、ラパンママがいるから!」
「これからは僕もいるよ」
「やくそくして、やぶらないで?ずっとまもってね」
「うん、ずっと守るよソレイユ」
「だいすきよ、リューヌ。わたしだけのゆうしゃさま」
『アンジュ、愛してるよ』
『…こんな私に愛してるなど、貴方は変な人だ』
『変な人かもしれないね、それでも君を愛してる』
『…魔獣の私に恋などして、どうなっても知らないぞ』
これは…??
ああ、だめだ、意識が途絶えていく……
『…村が壊された、魔獣の仕業だ』
『あいつのせいだ!アンジュのせいだ!』
『ま、まて!アンジュはそんなことしない!』
『アンジュをころせ!殺せぬのならお前も同罪だ!ゲリー!』
『アンジュ…逃げるんだ…』
『ゲリー、私はお前を置いて逃げたり出来ぬ。愛しい人を置いたまま自分だけ助かるなんて…』
『いたぞーー!アンジュをころせ!この村を破壊した手助けをした裏切り者だ!やっぱり魔獣の仲間なんだ!』
『ゲリー、お前もこちらにつかぬのなら…わかっているな?』
『アンジュ…ごめん…』
『…ゲリー?なんの冗談だい?』
『ごめん…ごめんよアンジュ』
『どうして…ゲリー、裏切ったの?』
『……ゆるさない、ずっと恨んでやる!ずっと!ずっと守ってきたのに!この村も!人間も!!どうして!!あなたさえいればよかったのに!あなたさえ愛してくれるなら!魔王として目覚めないままでいられたのに!』
『アンジュ…その姿……』
『ああ、そうさ。私は魔王の血を引く者。そしてお前は勇者の血を引く者!最初から釣り合わなかったんだ!!さあ、終わらないゲームを始めよう。永遠に続くゲームを。一生、ずーっと…』
『アンジュ、もうやめよう俺は君と戦いたくない。』
『それは叶わぬ願いだゲリー。もう始まってしまったのだよ。今更…
『戦いたくない…アンジュ俺はお前を……』
『聞きたくないッ!お前は私を裏切った!裏切ったのだ!!一生…いつまでもいつまでも恨んでやる…』
『アンジュ……俺は勇者としてお前を倒さなければいけないのか?』
『我はアンジュ、現魔王だ。
…………
……
…
『わた…しが…しんでもおわらない…永遠に続くゲームだこれは…ずっと恨んでやる…』
『アンジュ…守れなくて、守れなくてごめん…村の皆の意見を鵜呑みにして、君を信じ切れなかった…せめて、一緒に、一緒に逝かせて…』
『次に生まれ変わった時は、どうか目覚めぬままで…例えゆうしゃとまおうの血をそれぞれひいていたとしても…』
………
……
…
「…消さなくちゃ、いけないね」
かわいそうに、せっかく
思い出したらもう、勇者としての能力も目覚めちゃうね
また…前世と同じ道を辿っちゃうんだろうね。
『…勇者は目覚めた、抑えてるとはいえ、もう貴女の血も…』
「うるさいよ、神竜。アナタ消されたいの?」
本当に、うるさい。
魔法も戦いも知らない、笑顔の可愛い女の子を演じてるのよこれでも
『飲んだだろう、魔王の血を』
「……っ」
めんどくさい、めんどくさいけどまだ消さないであげる
わたしの役に立ちなさい、神竜。
「……っあ…」
「ゆうしゃがおきた、わたしは帰るね」
きっといろいろ思い出して暴れ狂うだろうから。
私がここにいたらダメね
とりあえずまた暫くしたら記憶を消してあげなきゃ
「愛してるわ、わたしのゆうしゃさま」