大怪獣バトルレジェンド Gの伝説   作:キューマル式

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対『教授』後編です。

やっと……やっとデストロイアが出せました。



第10話 集結 四国の死闘(後編)

「行け、メカゴジラ! MOGERA! ジェットジャガー!」

 

 

 キシャァァァァン!!

 キュィィィィィン!!

 マ゛!!

 

 

 絵美の声に、絵美の使役するメカゴジラたちが一斉に動き出した。その狙いは『タイラント』だ。

 

 

 キシャァァァァン!!

 

 

 金切り声のような機械の咆哮と供に、メカゴジラの口から極彩色の光線、メガバスターが放たれる。同時に、内部エネルギーによってプラズマグレネイドも放った。

 しかし、その強力な光線をタイラントは腹の口を開閉させて吸収していく。ゴジラの熱線と同じく、そのエネルギーを腹から吸収されていた。

 だが、それこそが絵美の狙いだ。

 

「今よ、MOGERA! 後ろに回り込みなさい!!」

 

 

 キュィィィィィン!!

 

 

 絵美の鋭い声が飛び、MOGERAが地面を滑るような滑らかなローラーダッシュによってタイラントの背後に回り込んだ。

 そしてその背中目がけてMOGERAのすべての武装が火を噴く。プラズマレーザーキャノンにプラズマメーサーキャノン、そしてスパイラルグレネードミサイルの一斉発射によってタイラントの背中で爆炎の華が咲いた。

 絵美は先程のゴジラとの戦いをしっかりと見ていた。このタイラント、腹部分でゴジラの熱線すら吸収してしまうという恐るべき能力を持っている。しかし、その吸収可能部分はあくまで腹だけなのだ。だから絵美は2体の前後からの同時攻撃によってダメージを与えることにしたのである。

 背中からの攻撃にたまらずタイラントはMOGERAに振り向こうとするが、そこに今度はジェットジャガーが割り込んだ。

 

 

 マ゛!!

 

 

 その身軽さを利用した見事な飛び蹴りがタイラントの顔面を打つ。たまらず後ずさるタイラント、その背後に今度はホバリング機動で回り込んだメカゴジラのメガバスターが直撃する。

 その間にジェットジャガーは離脱し、MOGERAも背後からの攻撃に加わる。メカゴジラとMOGERAのどちらかが必ず背後をとるようにし、もしメカゴジラとMOGERAに攻撃をしようとすれば残ったジェットジャガーが素早くカットに入って隙を作る……数の差を最大限に生かした見事な戦術だ。

 

「どんなに強くても慎重にダメージを与え続ければ必ず勝機はあるはずよ!」

 

 絵美はこのタイラントが恐るべき怪獣だということを理解していた。そして、残念ながら自分の怪獣たちがそれを一撃で倒すようなパワーがないことも自覚している。

 だからこそ絵美は、戦術を駆使して持続的に慎重にダメージを与え続ける手段に出た。

 しかし……残念ながら絵美はまだ、このタイラントという怪獣の脅威の認識が甘い。

 

 

 キシュォォォォォン!!

 

 

 タイラントの咆哮、そして自身に巻き起こるダメージを無視してその鉄球状になった左手を突き出すように構える。

 その先にいるのは……MOGERAだ!

 そして、その左手の鉄球が飛び出した。本体と繋がった鎖が尾を引きながら、鉄球がまるでロケットのような勢いで飛ぶ。

 

「な、なんですって!?」

 

 予想外の攻撃に驚いたのは絵美である。そして、そのことで指示を出すのが遅れてしまった。

 

 

 ズガァァン!!

 

 

「モ、MOGERA!!?」

 

 タイラントからの鉄球がMOGERAに直撃した。しかも運が悪いことにMOGERAのウィークポイントである腹のプラズマメーサーキャノン部にである。

 全身を強力な装甲で覆ったロボット怪獣のMOGERAだが、その腹にパラボナアンテナのような形で収納されるMOGERAの主力兵装『プラズマメーサーキャノン』を展開して攻撃する時には、そこが装甲がもっとも脆弱な部分になってしまうのだ。

 プラズマメーサーキャノンが粉々に砕かれ、そればかりか鉄球がMOGERA内部にまで深く突き刺さる。

 

「メカゴジラ! MOGERAの援護を!!」

 

 メカゴジラがタイラントの背後に回り込み、再び攻撃を開始しようとする。しかしその時、タイラントは渾身の力で身体ごと左手を振るった。

 鎖によって繋がれた鉄球、そしてそれをめり込ませたMOGERAがそれに引きずられ宙を舞った。ロボット怪獣であるMOGERAは途方もない重量を誇るはずなのに、タイラントはそれを放り投げたのである。

 そしてそのMOGERAの先には……。

 

「メカゴジラ!?」

 

 投げつけられたMOGERAを叩きつけられ、メカゴジラが吹き飛んだ。

 衝撃ともうもうと立ち込める土煙、その向こうには折り重なるように倒れたメカゴジラとMOGERAの姿があった。

 MOGERAは鉄球の直撃によって内部機構に深刻なダメージを負っていた。メカゴジラの方も、MOGERAという超重量による衝撃によって装甲がところどころ吹き飛んでいる。2体とも体中から不規則なスパークの火花を散らせ、黒煙を上げていた。

 タイラントはそのまま狙いをジェットジャガーに変える。耳のような器官が発光したかと思うと、そこからアロー光線が連続して放たれていた。

 まさしく斉射とも表現できそうな勢いの攻撃が連続して地面に着弾し、派手な爆発が巻き起こる。そして、さして装甲の厚くないジェットジャガーはその衝撃によって吹き飛ばされ、地面に転がった。

 

「つ、強い……!?」

 

 数の差をものともしないタイラントの強さに、絵美の背に冷たいものが伝った……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 透明の羽根を持ち、多くの触手を携えた赤い怪獣『イリス』……その力は圧倒的だった。

 イリスに向かっていったのは、翔のアンギラスとラドンである。

 

 

 フォォォォォン!!

 

 

 猛然と突進したアンギラスは、そのまま身体を丸めると必殺の『暴龍怪球烈弾(アンギラスボール)』となってイリスに向かって飛び掛かる。

 しかし、イリスはそれを素早い動きでヒラリとかわした。

 

 

キシャァァァァァァァァ!!

 

 

 だが、その瞬間に空からラドンの援護のウラニウム熱線がイリスに突き刺さった。その衝撃に、イリスは空のラドンを見上げる。そして、その大量の触手を空のラドンへと向けた。次の瞬間、文字通りその大量の触手が火を噴く。触手1つ1つが砲門となり、濃密な対空砲火となってラドンに襲い掛かったのだ。

 予想外の攻撃に、ラドンは対応が追い付かなかった。イリスから放たれた火球が2発3発と直撃していく。

 ラドンの防御力は決して高い方ではない。その攻撃にラドンは耐えきれず、地面に向かって真っ逆さまに墜落した。血の混じった泡をブクブクと口から吐くラドン。そんなラドンにトドメとばかりにイリスは触手を向けた。

 放たれる濃密な火球の弾幕。しかし仲間の危機に飛び込んだアンギラスが、ラドンに覆いかぶさるようにしてそれを受け止めた。ゴジラすら超えるアンギラス自慢の背中の甲羅は、その火球の弾幕にも微塵も揺るがない。

 それを見て、イリスは火球では威力不足だと感じたようだ。今度は触手に、火球とは違う光が灯る。そして、それは放たれた。

 まるでレーザーのようにも見えるそれは、アンギラスの強靭な装甲を傷つけ、鮮血が流れる。それはギャオスの必殺技ともいえる『超音波メス』だ。それが大量の触手から、弾幕のごとき密度で放たれたのだ。

 その鋭利な切れ味が、アンギラスの分厚い装甲を少しずつ削っていく。

 

 

 フォォォォォン!!?

 

 

 血を流し、苦悶の咆哮を上げるアンギラス。しかしラドンを守るために動くわけにはいかない。

 アンギラスは血塗れになりながらも、その攻撃にジッと耐えていた。

 アンギラス単体での逆転はもはや不可能、せめてラドンの回収さえされれば幾分やれることもあるのだが……その時、アンギラスの主である翔は手一杯の状態だったのである。

 それは……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「やれ、ゴジラァァァ!!」

 

 

ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 翔の怒りが乗り移ったかのように、ゴジラもまた今までに聞いたことのないほどの鋭い咆哮を上げて目の前の敵……デストロイアに突進していく。

 ゴジラの体重の乗った体当たり、しかしデストロイアはそれに真正面からぶつかると受け止めるどころか跳ね返すような勢いで押し流す。まさしく化け物じみたパワーだ。

 だが、そのくらいなら翔も予測済みだ。

 

「今だ! 体内放射をブチかませ!!」

 

 

ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 ゴジラの至近距離での必殺技、『体内放射』が炸裂した。

 並の怪獣なら一撃で致命傷、タイラントクラスの強力怪獣ですら派手に吹き飛ぶだけの威力を有しているそれの直撃を受けたデストロイアは……。

 

「何……だと……!?」

 

 2、3歩後ずさった。ただそれだけである。

 ダメージなど微塵も感じられない。それどころか……どこか活発さを増しているようだ。

 翔は知る由もないことだが、『デストロイア』は熱エネルギーに反応し、身体機能を活性化させるという特性を持っている。つまり熱エネルギーを受ければ受けるほど活発になっていくのだ。それはつまり、熱エネルギー攻撃を中心とした相手には一方的な戦いができるということに他ならない。タイラントの『吸収』やメカゴジラの『反射』を足したような、『吸収・強化』という厄介すぎる特性を持っているのだ。

 

 

 グォォォォォ!!

 

 

 活性化したデストロイアが咆哮を上げると、その角が怪しく輝き出す。

 そしてその角が振り下ろされると、鋼鉄の刃すら傷一つ付けることの叶わないゴジラの強靭な皮膚が切り裂かれ、火花が散った。

 そのあまりの衝撃に、たたらを踏むゴジラ。

 ただの格闘戦は不利だとゴジラはその尻尾をデストロイアに叩きつけようと振るう。しかしその尻尾は同じくデストロイアの尻尾と空中でかち合い、弾き返された。

 そのままデストロイアの尻尾はまるで蛇のようなしなやかさをもってゴジラに襲い掛かる。デストロイアの尻尾の先端は、まるでクワガタのように左右に開閉する。それによってゴジラの首を掴んだのだ。

 

 

 グォォォォォ!!

 

 

 デストロイアが背中の悪魔のような羽をはためかせる。ゴジラの超重量がゆっくりと宙に浮き始めた。

 ゴジラはデストロイアの尻尾を外そうともがくが外れない。そして完全にゴジラの身体が地面から離れたところでデストロイアは尻尾を振り、ゴジラを投げ飛ばした。

 大きく吹き飛ばされ体勢を崩すゴジラは、何とか立ち上がるもののそのダメージは決して小さいものではない。

 そんなゴジラの正面に降り立ったデストロイア。そしてその口の周辺に青白い発光現象が起こり始める。その光景に、翔にはうっすらと覚えがあった。

 目の前で父を殺し、街の人々を塵も残さず消し去った、あの光線だ。

 

「やばい!!?」

 

 しかし、もう遅い。

 デストロイアから光線が放たれ、それがゴジラに直撃した。

 オキシジェン・デストロイヤー・レイ……対象の分子間に入り込み、物質を完全に破壊し尽くすという『オキシジェン・デストロイヤー』を光線化して放つという最大級の必殺光線である。

 

 

ガァァァァァァ……

 

 

 そのあまりの威力にゴジラが揺らぎ、そして……。

 

「ご、ゴジラぁぁぁぁぁ!!?」

 

 ゴジラの巨体がドウっと倒れ込む。

 

 

 グォォォォォォォォォォ!!

 

 

 デストロイアの勝ち鬨の雄たけびが響き渡った……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「バカな……あのゴジラが手も足も出ないなんて……」

 

 父の仇であるデストロイアの圧倒的な力の前に、ゴジラは倒れ伏した。

 ラドンとアンギラスも、もうやられる寸前だ。絵美の方もメカゴジラたちは3体とも、タイラントによって大破寸前の状態である。

 勝ち目を見出すことがまったくできない状況だ。

 

「しょ、翔……これ以上はもう……」

 

 不安そうな絵美の声に、翔は我に返る。

 このままでは本当に負ける。そして、怪獣使いが使役するすべての怪獣を失った時にはどうなるのか、それは早坂勝の一件ですでに知っていた。

 死んでは父の仇はとれない。どうあってもここで死ぬわけにはいかない。翔も絵美も、逃げの手段を考える。

 そのとき、再び『教授(プロフェッサー)』が2人へと話しかけてきた。

 

「やはり君はつよいですね、翔くん。

 私のデストロイアとここまで戦えるとは……並の怪獣なら最初の角の一撃……『ヴァリアブル・スライサー』だけで勝負は決していたはずですよ。

 そちらのお嬢さんも私のタイラントを相手に、お見事な連携攻撃でした。

 やはり惜しい。

 お二人とも、やはり私の同志になってくれませんか?」

 

 そう言って大仰に手を広げる『教授(プロフェッサー)』。

 この圧倒的な力の差を見せつけられては、もはや屈するほかない。

 しかし……。

 

「……ふざけんな」

 

 翔のポツリと呟く言葉に反応するように、倒れたゴジラが立ち上がった。ボロボロになりながら、しかし闘志はいまだ萎えていない。

 翔と同じく、まるで『親の仇』でも見るかのようにゴジラはデストロイアを見る。

 

「俺たちのすべてを炎の中で塵に変えて訳わかんねぇ理屈並べ立てて……それで仲間になれだと?

 お前は! お前だけは!! お前だけは!!!

 絶対にブチ殺す!!」

 

 

ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 翔の燃え滾るような怒りに呼応するように、ゴジラが雄たけびを上げた。

 そして、そんなゴジラに変化が現れる。

 ゴジラの内側から連続して光がほとばしる。そして徐々にその光が青から、燃え滾るような灼熱の赤に変わっていく。

 そして、それに合わせるようにゴジラの体色が変わっていった。

 その黒い身体のところどころに、まるで煮えたぎるマグマを思わせる真っ赤な色が浮かび上がる。

 そしてゴジラはその真っ赤な、血走った視線をデストロイアへと向けた。

 

「やれ、ゴジラァァァァァ!!」

 

 

ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 ゴジラの咆哮、そして放たれるのはマグマの如き灼熱の光線だ。今まで幾多の怪獣たちを葬ってきた必殺光線、バーンスパイラル熱線を遥かに超える熱量と貫通力。それがデストロイアに迫る。

 しかし、その光線の狙いは微妙に外れていた。

 その光線は、デストロイアの顔の右を通り過ぎる。そのときに、デストロイアの顔面横の強靭な皮膚を吹き飛ばしていた。

 

 

 グォォォォォ!!?

 

 

 蛍光色の血を滴らせ、苦悶の悲鳴をデストロイアが上げた。

 熱を受ければ受けるだけ活性化するはずのデストロイアが、処理できないほどの光線熱量によって焼かれたのだ。

 

「……ぐぅ」

 

「翔!?」

 

 何かを吸い取られるような疲労に立っていられなくなった翔が倒れかかり、それを絵美が慌てて支えた。

 その後ろでは同じく、力をすべて出し切ったように元の黒の身体に戻ったゴジラが膝をついている。

 

 

 グォォォォォ!!?

 

 

 よほどの痛みなのか、デストロイアはいまだに苦悶の悲鳴を上げていた。

 しかし、自身のエース怪獣に大きなダメージを負わされたというのに『教授(プロフェッサー)』の顔に怒りは無かった。

 そこにあったのは……『歓喜』だ。

 

「まさか、まさかまさか!

 瞬間的にとはいえ『レイオニックバースト』にまで辿り着くとは!

 翔くん、やはり君は素晴らしい!!

 やはり、やはり君は私の同志になるべきだ!!」

 

「勝手……ぬかしてんじゃ……ねぇ……」

 

 怒鳴りつけてその耳障りな歓喜の声をかき消してやりたいが、息も絶え絶えでそれも出来ない翔。

 そこに新たな声が響いた。

 

「『教授(プロフェッサー)』……」

 

「おお、千晶くん!」

 

 そこにいたのは女だ。歳は翔や絵美と同じくらい、肩までの銀髪が特徴的な美人である。しかしその目はどこか虚ろで、その感情の底が見えない不気味さがその美貌の中には漂っていた。

 その手の中には怪獣使いであることを示す、バトルナイザーが握られている。

 

「こちらは終わりました。

 それに……皆さんも到着です」

 

 そして千晶と呼ばれた女がその背後を指すと、そこには4つの人影あった。

 それは全員男。

 1人は20代前半から後半と思われる、黒づくめの鋭い目つきの男だ。

 もう1人は明らかに10に届くかどうかという男の子。そして残り2人は翔たちと同じくらいの歳の同じ顔……双子である。

 全員が、怪獣使いである証のバトルナイザーをその手にしていた。

 

「千晶くん、そちらはどうだったかな?」

 

「予定通り、私のブルトンに『サタニウム』のエネルギーを吸収させるのは終わりました。

 ただ……残念ながら『EX化』には至りません」

 

「そうですか……。

 何、時間はいくらでもあります。焦らず行きましょう。

 次は『ルビークリスタル』か『テキスメキシウム』にでもしましょう」

 

 にこやかに『教授(プロフェッサー)』は言うと、「それよりも」と翔たちを指した。

 

「彼らを同志として迎え入れたいのですが、なかなか「うん」と言ってくれずに困っています。

 何かいい手はないでしょうか?」

 

「私たちの仲間に、ですか……?」

 

 そして、その場のすべての視線が翔と絵美に集中した。

 

「そんな……新手が5人も……」

 

「くっ……」

 

 状況はあきらかに最悪だ。

 『教授(プロフェッサー)』だけでも手に余るというのに、新手の怪獣使いが5人である。傷ついた2人の怪獣たちでは、勝つことはおろか逃げることも難しい。

 だが、その場の混沌はそれだけでは済まなかった。

 

「悪いがスカウトの交渉権はこちらが先だ、『教授(プロフェッサー)』!!」

 

 その言葉とともに、翔と絵美の頭上を影が覆う。何事かと見ると、そこにはいつぞやの極彩色の羽根を持つ、蛾の怪獣の姿があった。

 

「来い、ガメラ!!」

 

 

 キュォォォォォォォン!!!

 

 

 掛け声とともに現れたのは、これまた以前ゴジラと互角の戦いを演じた、あのカメのような怪獣だ。

 そして、蛾の怪獣から2つの影が翔と絵美の前に降り立つ。

 

「お前らは……」

 

 それは以前に戦った、あの怪獣使いの男女だったのである。

 その2人とも旧知なのか、『教授(プロフェッサー)』はにこやかに対応した。

 

「おや、栄一くんに雅さんではありませんか?

 あなた方も気が変わって、私の同志になってくれるのですか?」

 

「相変わらずだな……。

 あいにくと気は変わってもいなければ、気が違ってもいない。

 お前のようなやつの同志などなる気は無い」

 

「ではどんなご用事で?」

 

「貴様を倒しに……といいたいところだが、無理だろうな。

 本当なら『ブルトン』だけでも倒したかったが……今日はこいつらのスカウトだ」

 

そう言って翔と絵美を顎で指す栄一。

 

「横取りですか? 関心しませんね……」

 

「目を付けたのはこっちが先だ。

 それに……『宇宙の支配者』うんぬんの話を知らない以上、こいつらは最初から『こっち側』の人間だ」

 

 『教授(プロフェッサー)』と栄一の話の内容に、翔と絵美はついていけずに困惑するばかりだ。

 そんな2人のもとに女……手塚雅が近付いてくる。

 

「大丈夫ですの?」

 

「……あんたは?」

 

「わたくしは手塚雅。

 あそこにいる栄一さんと同じく、『教授(プロフェッサー)』たちに敵対する者ですわ」

 

 そう言って差し出された手を、絵美は胡散臭げに見返す。

 

「あんたたちも微妙に信じられないわね。

 なんたって、いつだかいきなり私たちに襲い掛かってきたんだから」

 

「すみません。

 あの時はお2人が『教授(プロフェッサー)』の仲間だと疑っていたもので……」

 

 絵美の言葉に、どうも自覚はあるらしく雅もすまなそうな顔をした。

 そんな時、倒れかかっていた翔が言う。

 

「……行くぞ、絵美」

 

「いいの、こいつら信じて?」

 

「このままじゃどちらにしろ、俺たちだけじゃ逃げられない。

 だったら、こいつらに着いて行ったほうがマシだ。

 あの野郎に……『教授(プロフェッサー)』の野郎のところだけは死んでもごめんだね」

 

「……話はまとまったな」

 

 その様子を窺っていた栄一が、ちらりと2人を見る。

 

「そういうわけで、こちらのほうで連れて行く。

 今回は運が無かったな、『教授(プロフェッサー)』」

 

「うーん、さすがにそれは紳士的ではないのではないですか?」

 

「知るか。 雅!!」

 

「はい、栄一さん!!」

 

 栄一の言葉に答えるように、雅の使役するモスラが大きく羽ばたき、金色の燐粉がまき散らされる。

 

「来い、バトラ!!」

 

 そして間髪いれずに栄一が2体目の怪獣を呼び出した。それはモスラと近い形をした、巨大な蛾のような姿だ。モスラと同じく、羽は良く目立つ派手な色彩をしている。モスラと比べると全体的に黒くゴツゴツと角ばっており、顔も非常にいかつく攻撃的だ。

 これがモスラの亜種ともいえる戦闘特化型バトルモスラ、『バトラ』であった。

 

「バトラ、プリズム光線だ!!」

 

 

 ギュォォォォン!!

 

 

 バトラの目から、極彩色の光線が放たれた。

 それが先ほどのモスラの燐粉によって広範囲にわたって拡散し爆発する。

 

「『教授(プロフェッサー)』!!」

 

「大丈夫、見た目が派手なだけのただの目くらましですよ」

 

 その爆発に慌てて『教授(プロフェッサー)』を庇いに行こうとする千晶だが、それをやんわりと『教授(プロフェッサー)』は制する。

 その言葉通り、その爆発の土煙が消えた後には誰も残っていない。

 翔のゴジラたちも、絵美のメカゴジラたちもすべて消えている。そして、空の彼方にはずいぶんと距離の離れたモスラの姿があった。

 

「……追いますか?」

 

「別に追う必要はありません」

 

 バトルナイザーを構える千晶の問いに、『教授(プロフェッサー)』は首を振る。

 

「次に会う時には同志になってくれるかもしれない、明日の友人たちです。

 それより、私たちは次の目的地に行きましょう」

 

「わかりました……」

 

 曇り一つない、微笑みすら浮かべた『教授(プロフェッサー)』の言葉に、千晶は素直に従ってバトルナイザーを下ろす。

 すでにモスラの姿は、視界の空どこにもなかった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 モスラはしばらく飛び続けると、海岸沿いにゆっくりと降下した。

 モスラが光の粒子とともに消え去ると、そこに残ったのは4人の男女だ。

 

「……一応、初めましてというところか。

 俺は草薙栄一、お前たちと同じく怪獣使いだ」

 

「改めまして。

 わたくしは手塚雅、同じく怪獣使いですわ」

 

「……俺は芹澤翔だ」

 

「三枝絵美よ」

 

 未だ急激な疲労が抜けず絵美に身体を支えられたまま、翔は目の前の2人と話す。

 

「……ありがとよ、助かった。

 正直、あの時の俺たちじゃ、あのクソ野郎はどうしようもなかった……」

 

 父の仇である『教授(プロフェッサー)』に完敗した悔しさから、憎々しげに翔が言う。

 

「もっとも、本当に助かったのかは疑問だがな」

 

「以前襲い掛かったことは悪かった。

 あの時は『教授(プロフェッサー)』の仲間じゃないかと疑っていたのでな」

 

「あの時はごめんなさいね」

 

 2人に向かって皮肉を言うと栄一は肩を竦め、雅の方はすまなそうに言ってくる。

 

「あの戦いの一件や今日の『教授(プロフェッサー)』との戦いで、お前らは奴らの仲間ではないとわかった。

 それどころか……反応からして、どうやら『こっち側』だということもわかった」

 

「『こっち側』? それはどういう……?」

 

 そうして疑問を口にするが、栄一は手でその言葉を制する。

 

「疲れているのだろう? 話の続きは『中』でしよう」

 

「『中』?」

 

 奇妙な言い回しに翔と絵美が小首を傾げる。

 そのとき、視線の先の海が盛り上がっていく。すわ怪獣かと身構える翔と絵美。

 そこに現れたものは……それは巨大なドリルを装備した巨大戦艦だった。

 

「な、なんだあれは!?」

 

「あんな巨大兵器、見たことも聞いたこともないわ!?」

 

 トレイダー稼業で色々なものを見る機会の多い2人、しかも物の価値を判断するためにも必要なため、実は武器・兵器など幅広い分野にかけてかなり博識だったりする。

 しかし、目の前のドリル戦艦はそれらの知識を持ってしても見たこともなければ聞いたこともない。

 

「ようこそ。

 俺たちの艦、『轟天号』へ」

 

「お2人とも歓迎いたしますわ」

 

 そんな驚きを露わにする翔と絵美に、栄一と雅は幾分芝居がかったように言うのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

次回の大怪獣バトルレジェンドは

 

「初めまして、私はこの『轟天号』の艦長、神宮寺だ」

 

「どこへ向かってるんだ?」

 

「我々の拠点、緯度0島……『ヴィンセント島』だ」

 

「すげぇ!」

 

「まさかこんな都市がこの世界にまだ残ってたなんて……!?」

 

「これから2人にはある人と会ってもらう……」

 

「何だこれは……。 これは……巨人か?」

 

『私の名は……ウルトラマン』

 

 

次回、大怪獣バトルレジェンド第10話『緯度0の島 ヴィンセント島へ』

 

 

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第9話怪獣紹介

 

 

フランケンシュタインの怪獣『ガイラ』

出典:フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ

 

解説:緑色の体毛とウロコに覆われた、完全に人型の怪獣。怪獣というよりは巨人。海をその住処としており、船や港町を襲い人間を捕食していた。

   四国へ行くための船を出させるために討伐が必要となり、絵美のジェットジャガーにより倒される。

   その怪力を最大の武器とする。

 

   『原作』では人肉食の獰猛な怪獣として、捕食シーンがしっかりと映像化されているためにトラウマになっている人も多いのではなかろうか?

   実は作者も、子供のころに見てトラウマになりかけた怪獣である。

   またガイラを語るうえで外せないのは、東宝の定番超兵器シリーズである『メーサー』が初めて登場したことだろう。

   様々な意味で印象を残す怪獣である。

 

 

 

暴君怪獣『タイラント』

出典:ウルトラマンタロウ他

 

解説:とてつもなく強力な怪獣。

   全身が様々な怪獣の特徴的なパーツで構成されており、それを継ぎ合わせたまるでフランケンシュタインの怪物のような造形をしており、一度見たら忘れられない。

   本作のラスボスである『教授(プロフェッサー)』の使役怪獣の1体。

 

   まさに『ぼくのかんがえたさいきょうのかいじゅう』を地で行く合成怪獣。ウルトラ怪獣において最強の一角としても名高い。

   ウルトラ兄弟たちを普通に圧倒する戦闘能力のためその後もいわゆる『ボスキャラ』として登場することが多い、人気怪獣である。

 

 

 

邪神『イリス』

出典:ガメラ3 邪神覚醒

 

解説:スラリとシャープな体型をした、人型に近い形状をした怪獣。両腕が槍状の手甲であり、多数の伸縮自在の触手を携えている。

   その触手は相手の遺伝子を吸収し成長するための『口』であると同時に、『超音波メス』などを放つための『砲口』でもある。

   ギャオスの必殺技である『超音波メス』を放つことからも分かる通り、実はギャオスの亜種にあたる。

   本作のラスボスである『教授(プロフェッサー)』の使役怪獣の1体。

 

   平成ガメラにおけるラスボスといっても過言ではない怪獣。

   とても美しい形状をしているのだが……触手での人間の捕食描写など、トラウマシーンを大量に量産してくれた。

   怪獣に少々打たれ弱さの目立つガメラシリーズのご多望に漏れず、『原作』ではガメラの『バニシングフィスト』の1発直撃で沈んでいるものの、その戦闘力は完全にガメラを上回っており、まさにガメラ最大の敵である。

 

 

 

完全生命体『デストロイア』

出典:ゴジラVSデストロイア

 

解説:『悪魔』のような形状をした赤い怪獣。本作の主人公、芹澤翔の父を殺した犯人であり、本作のラスボスである『教授(プロフェッサー)』の使役怪獣の1体にしてエース怪獣。

   その戦闘能力は圧倒的で、すべての攻撃が並の怪獣であれば一撃で致命傷になるほどに重い。

   特に最大の必殺技である『オキシジェン・デストロイヤー・レイ』は如何なる物体も分子結合のレベルから破壊する、まさしく必殺技である。

 

   ゴジラの『VSシリーズ』におけるラスボスであり、ゴジラ怪獣最強の一角として必ず名前の上がる怪獣。

   初代ゴジラに使用され、歴代で唯一ゴジラを殺した兵器『オキシジェン・デストロイヤー』を使いこなすという、ゴジラにとっては天敵ともいえる怪獣である。

   『原作』では、ゴジラも最強の形態である『バーニングゴジラ』となっていたためゴジラに敗れ去ったが、ゴジラが普通のままならゴジラに勝ち目は無かっただろう。

   それほどに強大かつ、人気の怪獣である。

 

 

 

戦闘破壊神『バトラ』

出典:ゴジラVSモスラ

 

解説:巨大な蛾の怪獣。その形状からも分かるが、モスラの亜種ともいえる存在であり、より戦闘に特化した『バトルモスラ』。

   極彩色の羽根と黒く厳つい体つきをしており、モスラとは逆に刺々しい印象を受ける。

   必殺技は目から放たれるプリズム光線。怪獣使い『草薙栄一』の第2の怪獣である。

 

   モスラと同じく地球の守護神的な立場の怪獣ではあるが、モスラが『守護』なのに対し、バトラは『破壊』を司る『荒ぶる神』という立ち位置。

   そのため、地球にとって害悪と判断したものを容赦なく破壊し尽くす。

   『原作』では過去にモスラとの戦いに敗れ封印されていたが、復活後にゴジラとの戦いのためにモスラと和解するなど、『ゴジラVSモスラ』の見どころの一部だったりする。

   極度のツンデレという説も……。

 

   ゲームなどで登場することも多いが、結構な確率でプレイヤーにトラウマを植え付けるトラウマメーカー。

   SFCの『超ゴジラ』では2体と戦わなければならない上、ハイパー放射熱線以外の攻撃があたらないという仕様。

   同じくSFCの『ゴジラ大怪獣決戦』ではモスラのガード不可超必殺技に登場。

   そしてセガサターンの『ゴジラ列島震撼』ではラストステージを超える、最強のトラウマステージの番人として登場し、多くのプレイヤーをクリア不可に追い込んだ。(Gフォースのみの戦力で、怪獣同士の同志討ちが基本的になし。頼みのスーパーメカゴジラはNPCのため役に立たず。おまけに2体のバトラの幼虫+成虫の『都合四体の怪獣を人類戦力だけで撃破せよ』という無茶仕様)

   良くも悪くも印象に残る怪獣である。

 

 

 

四次元怪獣『ブルトン』

出典:ウルトラマン他

 

解説:手足が無く、形状が完全に『テトラポッド』や『岩でできた心臓』という姿の特異な怪獣。

   体から『四次元繊毛』という器官を出し、それによって時空間に干渉し様々な『四次元現象』を巻き起こして攻撃をする。

   『教授(プロフェッサー)』の同志である女怪獣使い『寺沢千晶』の使役怪獣の1体。どうやら『教授(プロフェッサー)』の企みの無くてはならない存在らしいが……?

 

   あまりに特徴的で一度見たら決して忘れられない怪獣。

   怪獣が動物型でも人型でもなく、岩のような無機物でもいいという『怪獣』の幅を広げた第一人者。

   また『空間を操る』という特殊能力のため、その後の作品でも何度も登場し物語の設定の重要なカギであることが多く、重要な存在である。

   当然、この作品においてもその存在は重要な意味を持つことになる。

 

 

 

超エネルギー物質『ジャパニウム』

出典:マジンガーZ

 

解説:富士山麓でのみ採掘可能という物質で、超エネルギーを生み出すものらしいが……?

   翔たちの故郷を襲ったのはこれが原因だったらしい。

 

   『マジンガーZ』シリーズの光子力エネルギーのために必須の物体。その研究と採掘のための施設が光子力研究所らしい。

 

 

 

超エネルギー物質『サタニウム』

出典:仮面ライダーV3

 

解説:四国において採掘されるという物質で、超エネルギーを生み出すものらしいが……?

   今回四国に『教授(プロフェッサー)』たちが来ていたのはこれが原因だったらしい。

 

   『仮面ライダーV3』において悪の秘密結社『デストロン』が手に入れようとしていた物質。

   マンガの『仮面ライダーSPIRITS』でも四国を月にまで吹っ飛ばしても採掘しようとしていたあたり、物凄い物質だったらしい。

 

 

 

超エネルギー物質『ルビークリスタル』

出典:トランスフォーマーG1

 

解説:ミャンマーにおいて採掘されるという物質で、超エネルギーを生み出すものらしいが……?

 

   トランスフォーマーシリーズの第一期において登場した超エネルギー物質。赤い水晶のような形状をしており、これだけでセイバートロン星のエネルギーを賄えるらしい。

   同話は有名な『コンボイ司令官の崖落ち』の話のため、知っている人も多いのではないだろうか?

 

 

 

超エネルギー物質『テキスメキシウム』

出典:ガンヘッド

 

解説:超エネルギーを生み出す物質らしいが……?

 

   特撮ロボット映画『ガンヘッド』に登場した超エネルギー物質。『原作』の舞台となったカイロン5の全力稼働に必須らしい。

   小説版では『テキスメキシウム』を手に入れたカイロン5は地球を破壊可能だと説明されており、とんでもないエネルギーを生み出す物質だったようだ。

 

 

 




RPGで言うところの負けイベントでした。
書いてて思ったけど……この3体はもう別次元でつえぇ……。

次回はまるまる説明回の予定。

次回もよろしくお願いします。
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