大怪獣バトルレジェンド Gの伝説   作:キューマル式

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リアルが忙しく、久方ぶりの更新です。



第11話 緯度0度の島 ヴィンセント島へ(前編)

 輸送用のへリから甲板に降り立った翔と絵美は辺りを見渡す。

 

「こいつあすげえ……」

 

「こんなの見たことないわ……」

 

 翔と絵美は改めて、このドリル戦艦『轟天号』の威容に感嘆の声を上げた。

 

「お気に召してくれたかな?」

 

 そんな2人は声のした方を振り向くと、そこには軍服のようなものを着た40~50ほどの男が立っていた。

 柔和そうな笑顔を見せているが、その内に秘めた精惇さが溢れ出ている。まさに『戦う海の漢』といったところか。

 

「あんたは?」

 

「この艦、海底軍艦『轟天号』の艦長の神宮寺という。

 本艦への乗艦を歓迎しよう」

 

「ああ、ご丁寧にどうも」

 

 翔は少々ぎこちない動きで、神宮寺から差し出された手を握ったのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 絵美に支えられた翔は、神宮寺艦長の案内で『轟天号』内部を歩いていた。

 軍艦だというのに思った以上に広く明るい内部に、2人は物珍しそうにあたりを見渡す。その様子に神宮寺に言った。

 

「こういう艦に乗るのは初めてかね?」

 

「ああ……というか普通は初めてだろ?

 水中に潜れるような戦艦なんて……」

 

 翔はさきほど水中から浮上してきた『轟天号』を思い出しながら言うと、神宮寺は苦笑交じりに言った。

 

「水中程度なんて序の口だよ。

 この『轟天号』は空中飛行に地中潜航が可能な、陸・海・空のすべてをゆく万能戦艦だよ」

 

 その言葉に絵美が驚きの声を上げる。

 

「そんな馬鹿な! そんなことができるエネルギーなんて一体どこから……」

 

「この『轟天号』には『重力炉』という、高出力の永久機関が搭載されていて、その超エネルギーがそれを可能にしているんだよ」

 

 そんな信じがたい話に、翔はヒュゥと口を鳴らす。

 

「……とんでもねぇな。

 おまけにさっきから全然人とすれ違わないところを見ると、かなり高度な自動化がされてるんだろ?」

 

「……鋭いね。

 この艦の乗員は153名、ほとんどの部分は自動化がされているよ」

 

 神宮寺が示した人数はこの規模の巨大戦艦にしては少なすぎる人数だ。それはよほど高度なコンピューターに支えられているという証拠である。

 

「聞いたことのない技術ばっかり……。

 こんな高度な兵器が、怪獣どもに荒らされた地球にまだ残っていたなんて……」

 

 そんな絵美の感嘆の声に、神宮寺は少し肩を疎めた。

 

「もっとも、この本艦の力を持ってしても怪獣相手は1体2体の相手が精々だがね。

 怪獣は色々と規格外だよ」

 

「だからこそ、そのときには俺たちのような『怪獣使い』の出番だ」

 

 神宮寺の言葉に、翔たちの後ろを歩いていた栄一が言った。

 やがて、一行は一つの部屋の前に辿り着く。

 スライド式の自動ドアを開くと、そこには2つのベッドの並んだ個室だ。奥にはユニットバスが備え付けられており、居住環境はかなりいい。

 

「目的地に着くまではこの部屋を好きに使ってくれていい。

 食事は後で運ばせよう」

 

「ああ、ありがとうよ」

 

 そう言って部屋に入る翔と絵美、その途中肩越しに翔は振り返ると聞いてみた。

 

「この艦はどこに向かってるんだ?」

 

 それには神宮寺のかわりに栄一が答える。

 

「目的地は緯度0度の島……俺たちの拠点、『ヴィンセント島』だ」

 

 それだけ言うとスライドドアが閉まる。

 室内には翔と絵美の2人だけだ。

 

「さて……と……」

 

 絵美に支えられながらベッドに腰掛けた翔、絵美も対面にあたるベッドのふちに腰掛ける。

 

「翔、どう思う?」

 

「どうも何もなぁ……」

 

 この連中が信用できるのかと言外に問う絵美に、翔は仰ぐように天井を見る。

 

「今のところ選択肢なんてないだろ?

 俺たちの荷物はこれだけ、あとはすっからかんだ」

 

 そう言って2人はいつも背負っているバックパックを降ろす。当然ながらハンヴィーは捨ててきたため、そこに残っていた荷物はすべて無い。

 翔はバックパックの中に一番大切な、父との写真が入っていることにホッとしながらバックパックを床に下ろす。

 

「それに……この状態じゃなぁ……」

 

「……そうよねぇ」

 

 翔が取り出したバトルナイザーを見つめながら言うと、同じく絵美もバトルナイザーを見つめながら領く。バトルナイザーにはお互いの相棒たる怪獣たちがいるが、『教授(プロフェッサー)』との戦闘を経た怪獣たちの怪我はひどい。

 

 まず翔のアンギラスとラドンは、瀕死といってもいい重傷を負っていた。

 そして翔のエースであるゴジラも酷い深手を負い、昏々と死んだように眠り続けている。

 絵美の方も、内部機構をズタズタにされたMOGERAは大破、MOGERAを叩きつけられたメカゴジラも、装甲やメインフレームにまでのダメージを受け中破以上の状態だ。

 2人とも見事なまでにボロボロである。

 唯一、絵美のジェットジャガーが比較的損傷が軽く戦闘も可能な状態だが、ジェットジャガーだけでは戦力として心もとないのが本音だ。

 

「どっちにしろ、俺たちもゴジラたちも少し休まないと動けもしない。

 もう今は休めるだけ休んで 、なるようになることを祈るしかないな」

 

「そうね……」

 

 2人は揃ってため息をついた。

 

 

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「あの2人の様子は?」

 

「シャワーで簡単に汗を流した後、すぐに横になりましたよ」

 

「ほぅ……」

 

 ブリッジに入った神宮寺がクルーに問うと、返ってきた答えに感心といった感じで神宮寺が言う。

 

「あの状態では休養は必要だろうが、それを敵地かもしれん場所でできるのは凄い。

 あの若さでそれができる胆力はなかなかのものだ」

 

「あるいは何も考えていないだけかもな」

 

「栄一さん、さすがにそれは無いのでは?」

 

 神宮寺の感心の言葉に対する栄一の言葉を冗談の類と受け取り、雅が品よくコロコロと笑う。

 一しきり聞を置いて、艦長席に座った神宮寺は栄一と雅に問う。

 

「彼らは我々の味方かな?」

 

「『光の巨人』と引き合わせなければ、まだ断言はできないが……」

 

「『宇宙の支配者』や『レイオニクス』についての知識の無さ、そして『教授(プロフェッサー)』たちと敵対していますし十中八九、かなり高い確率で『こちら側』だと思いますわ」

 

「もっとも『教授(プロフェッサー)』との敵対に関しては、個人的な怨みみたいだった

がな」

 

「どちらにしろ島に着かなければ何とも言えんか……。

 507! 状況はどうだ!」

 

 その言葉に、どこからともなく機械音声が答えた。

『OKボス。

 機関・ 船体ともに問題なし』

 

 『轟天号』のメインコンピューターである『GH507』の答えに神宮寺は領くと、艦長席から立ち上がってブリッジに指示を響かせる。

 

「これより本艦はヴィンセント島に帰還する! 出航!!」

 

「「了解!」」

 

 ブリッジクルーがあわただしくコンソールを操作しだし、『轟天号』はゆっくりとその巨体を進ませ始める。

 『轟天号』は順調にゆっくりとした航海で2日後、ある島へと辿り着いた。岩山や手付かずの密林の残る、パッと見では未開の島である。

 『轟天号』はその外周に辿り着くと、潜航を開始した。すると、どう見ても海底としか見えなかったそこが割れると、明らかな人工物が現れた。それは偽装された艦艇用のドックだったのである。

 そのドックの中に『轟天号』は入り込むと、ゆっくりとハッチが閉まっていく。後には変わらぬ海底がそこにあるだけだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「すげぇな、これ」

 

「ホントよね……」

 

 翔と絵美は辺りを見渡しながら、もう数えるのも馬鹿らしくなるくらいの感嘆の声を上げる。

『轟天号』の入ったドックでは、『轟天号』が固定されると人が忙しなく動き回り、『轟天号』の整備に取りかかっている。その光景は翔の父がまだ健在だったころ……怪獣たちが現れる前の自衛隊の様子のように見え、何とも言えない懐かしい思いが去来した。

そんな2人の後ろから、神宮寺と栄一、そして雅の3人が声をかけた。

 

「『轟天号』の旅はどうだったかね?」

 

「ええ、とっても快適だったわ」

 

「風呂に入れてベッドに寝れて、おまけに飯まで出てくる。

 ここは天国かと思っちまったぜ」

 

 『轟天号』の艦内での環境は、この怪獣によって荒廃した世界のものとは思えないほどのものだった。

 その言葉に幾分誇らしげに神宮寺は胸を張ると、2人に言う。

 

「すまないが、君たち2人にはどうしても会ってほしい人物がいてね。

 そこまで行ってもらおう」

 

「案内は俺と雅がする。 ついてこい」

 

「どうぞ、こちらに」

 

 すると、神宮寺の部下らしき人物が車を持ってきた。

 栄一と雅は車の運転席と助手席に、そして後部座席に翔と絵美が乗り込むと車は滑らかに動き出した。

 

「……翔、私たちをどうする気なんだと思う?」

 

「さぁな。 もう、なるようにしかならんだろう。

 たぶんイキナリお偉い誰かさんのケツにキスして忠誠を誓え、とかいう展開にはならんだろうさ。

 だからもう、俺は今は深く考えないことにした」

 

 後部座席で小声で絵美は翔に耳打ちするが、翔はもう完全に開き直り、グデンと後部座席でくつろいでいる。

 そんな2人に栄一と雅は苦笑した。

 

「お前ら、どうでもいいが丸聞こえだぞ。

 警戒も分かるがせめて聞こえないように話してくれ」

 

「わたくしたちも、あなたたちは『こちら側』なのではないかと思っていますので、そんな失礼なことはいたしませんわ」

 

 やがて車は暗いトンネルのようになった通路を抜けた。

 そこには……。

 

「うわぁ……!」

 

「なにこれ! なにこれ!」

 

 そこには光溢れる、整った街並みがあった。高層建築と道路、街には多くの人々の姿がある。その姿に、翔と絵美は興奮を隠せない。

 2人はトレイダーという仕事もあり、しかも旅をしていたことで多くの地下都市を見てきた。しかし、この地下都市はそのどれとも、文字通り『格が違う』ということを一目で見抜く。

 

 まず、この地下都市は明るい。

 普通の地下都市は薄暗い感じなのだが、ここは地上だと言われても納得できてしまえるような明るさだ。光を取り入れるための採光システムの性能が段違いなのだろうことは確実である。

 

 次に快適な空気。

 地下都市は空調・温度調整などの不備のために、寒かったり暑かったりジメジメしていたりとお世辞にも快適な環境であるとは言い難い。しかし、この地下都市はまるで初夏のようなカラリとした心地いい空気で満たされていた。

 

 そして道路や建物。

 普通の地下都市の建物や道路などは整備もおざなりでボロボロのものをだましだまし使っているが、ここは建物にも道路にもヒビの一つもない。

 

 何もかもがあり得ない次元の地下都市であった。そんな翔と絵美の驚きに、栄一と雅はどこかしてやったりといった感じだ。

 

「ここが俺たち組織『ノア』の拠点、『緯度0度の島 ヴィンセント島』だ。

 気に入ってもらえたか?」

 

「ああ、ここはすげぇ都市だ。

 他の地下都市がまるでただのおもちゃに見えるぜ」

 

「でもここ……エネルギーは大丈夫なの?」

 

 素直に褒め称える翔、絵美の方はこれらの快適な環境を生み出す設備を動かすだけの膨大なエネルギーに少し疑問を覚える。

 

「大丈夫ですわ。

 ここでは『アークリアクター』によってエネルギーを賄っています」

 

「『アークリアクター』? 聞いたことのない機関なんだけど?」

 

「『アークリアクター』は水素を無限に発生させ続ける、半永久機関ですわ。

 それによって電力を生み出し、この都市の維持や食糧生産に充てています。

 さらにその水素を加工した水素燃料は、この車を始めとしたものの燃料にもなっています」

 

「ああ、なるほど……さっきからやけに静かな車だと思ったら、水素燃料の自動車だったのねコレ」

 

「地下で空気を汚すわけにもいきませんので」

 

 雅が都市を支える『アークリアクター』の説明をし、感心する絵美。

 

「ここの人口は?」

 

「もう少しで5万人、といったところだ」

 

 一般的な地下都市など1万いれば十分、2万で結構な大都市である。そこからもこの都市の凄さがうかがえる。

 いや、それ以上に……あまりに不自然に『凄すぎる』。

 怪獣出現によって、人類の文明はかなり衰退した。今ではすでに失われてしまった技術もいくつもある。それなのにこんな、怪獣出現前よりも明らかに高度な技術の都市など普通には築くことは不可能なはずだ。

 あの『轟天号』しかり、ここの技術は不可解すぎる。

 

「……不気味に思うのも分かる。 ここは、あまりにも外とは違うからな」

 

 翔の疑問は顔に出ていたようだ。運転しながらバックミラーを覗き込んでいた栄一が言ってくる。

 

「だが、それにも理由がある。

 その辺りの話もこれからされるだろう」

 

「で、そのありがたいお話をしてくれる相手はどこにいるんだい?」

 

「もう到着だ」

 

 目的地に到着らしい。巨大なドーム状の建物……そこが目的地のようだ。

 車を降りると、ドームに足を踏み入れて行く。

 どうやら栄一と雅はここではかなり有名人のようだ。ドームの前にも当然のように衛兵のような立ち番がいたが、顔一つで通過である。

 翔たちも栄一たちが何かを説明すると、真面目な顔で敬礼してから通してくれた。

 

「……何言ったんだ、お前ら?」

 

「何、ちょっと『怪獣使い』だと教えてやっただけだ」

 

 何ともなしに栄一は言う。どうやらこの街では『怪獣使い』という存在は広く知れ渡っているようだ。それも不快ではない方向で。

 やがて、栄一たちによって翔と絵美はそこに来た。

 ドームだと思ったがこの建物は、構造としてはミサイルのサイロに近い施設だ。中は空洞になっており、外周部をぐるりとテラスのように手すり付きのタラップが囲んでいる。

 ドーム内側は薄暗く、ライトのついたタラップ部分だけが闇の中に浮き上がっていた。

 そして翔と絵美は指示されるまま、タラップがまるで広場のように突き出た場所へとやってくる。

 

「で、ここで何しろってんだ?」

 

「今、明かりをつける」

 

 言われて待つことしばし、ドーム内がまばゆい光で照らしだされる。

 そして……そこには『彼』がいた。

 

 身長は怪獣並み、胸に当たる部分にランプのようなものがついた、『巨人』である。

 そして翔と絵美の立つ場所は丁度、その『巨人』の顔の前の場所だった。

 

「こいつはっ!?」

 

「まさか怪獣!?」

 

 驚き、咄嗟にバトルナイザーを手にしながら飛び退く翔と絵美。しかし、『巨人』はピクリとも動かない。

 その時になって2人はその『巨人』が石像なのだということに気付いた。

 

「何だよ、驚かせやがって……」

 

 翔は額の汗を拭いながら、バトルイナイザーをポケットにしまおうとした。

 その時だ。

 

『驚かせてすまなかったね』

 

「「っ!?」」

 

 どこからともなく、声がした。

 それは年老いた老人のようでもあり、精悍な大人のようでもある不思議な声だ。

 それが翔と絵美の2人の、『頭の中に直接』響いたのである。

 

「翔、今のは!?」

 

「脳みそに直接響く声……テレパシーか何かか?

 一体何が……」

 

 そして、翔の視線が目の前の『巨人』へと注がれる。

 

「まさか……あんたなのか?」

 

『その通り、私は君たちの目の前の石像だよ』

 

 翔の疑問に答えるように再び頭の中に声が響き、翔と絵美は目の前の『巨人』を呆けた顔で見上げる。

 

『自己紹介をさせてもらおう。

 私の名は……ウルトラマンだ……』

 

 石像となった光の巨人『ウルトラマン』は、ゆっくりと2人に名乗ったのだった……。

 

 

 




……おかしい、怪獣が出ていない。

来週あたりには後編を投稿します。
リアルが忙しいので、10月の更新はこの作品だけになりそう。

次回もよろしくお願いします。
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