大怪獣バトルレジェンド Gの伝説   作:キューマル式

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第4話 海より来たる

 

 クワァァァァァン!

 

 

 怪獣が歩く……と形容してよいものか?

 その怪獣は顔を下に、そして尾を天高く立てたような姿をしていた。顔面で這いずる様なユーモラスな姿だがその尾の先は2つに分かれ、しなやかなムチとなっている。

 古代怪獣『ツインテール』である。

ツインテールはその尾のムチを振り回していた。

 怪獣同士にも縄張りというものがあるのか、怪獣同士が出会った場合にはほとんどの場合、戦い合うのが普通だ。

 ツインテールは今、2体の怪獣と戦っている真っ最中だ。

 バシンバシンと、そのしなやかな尾が地面を叩く。そう、『地面』をだ。

 ツインテールの素早いムチの連続攻撃が、その2匹の怪獣には当たっていない。その攻撃は2体の怪獣をかすり、2体の怪獣の皮膚から蛍光ブルーと形容されるような色彩の血が地面へと落ちるがただそれだけ、決定的なダメージには至らない。

 そんな間に1体の怪獣がツインテールへと飛びかかった。ゴリラのような体躯を利用しとびかかると、そのままツインテールの顔面をその巨大で硬質な拳で2度3度と打ち付ける。

 何とか鞭を振り回し振り払おうともがくツインテールだが、その尾をもう1体の怪獣の尾が止めた。その怪獣の先が三つに分かれた尾はまるで生きているかのように開閉を繰り返し、ツインテールのムチの尾をがっちりと挟み込む。

 そして大地を震わすかのような剛腕を何十発と受けたツインテールは遂に力尽きて倒れ込んだ。

 

 

 グオォォォォォォォォン!!

 

 

 2体の怪獣の勝ち鬨の声が響く。そしてそのまま2体の怪獣は、ツインテールという獲物を引きづりながら海へ、自分たちの棲家へと運んで行くのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 怪獣によって人類の生存権は一気に縮小、そのほとんどは各地に建設された地下都市でひっそりとした生活を余儀なくされていた。

 しかし、けっして地下都市だけが人類の生存する場所というわけではない。

 海に面する港は地下には造れないから、港町というものは存在する。それに食糧を生産する農場も地下都市内だけでは足りないため、危険を承知で地上に造られることだってある。

 

「よっ、と!」

 

 翔が茎を引っ張ると、ボロボロと見事なジャガイモが土から顔を出した。

 

「お兄ちゃんすごーい!」

 

「へ、こんなの朝飯前だ」

 

 そんな翔を見た幼い少女……みどりが歓声を上げると、翔は得意そうにそのジャガイモを掲げる。

 それを見て、その農場の隅で絵美は呆れたように苦笑した。

 

「まったく……子供なんだから」

 

 そう言った直後、絵美はケホケホと咳をする。

 翔と絵美は今、地上の巧妙に隠された農場にいた。何故ここに居るのかというと、あの故郷を出てからすぐ、絵美が体調を崩してしまったからだ。

 なんとか休ませる場所を探す翔は偶然、この農場主の家を発見、藁にもすがる思いでその家を訪ねると、困っている2人を農場主の家族は家に上げ、休む場所を与えてくれたのである。

 こんな時代だ、騙し騙されしながら生きてきた2人にとって、純粋な人の優しさは本当にありがたい。

 2人は久しぶりに『人間』に会った気がしていた。

 無論翔もタダでとは言わない。トレイダーの仕事で見つけた金になりそうな貴金属類を宿代の代わりに受け取ってもらったが、それだけでは気が晴れなかった。

 そこで翔は絵美の体調が戻るまで、農作業の手伝いを買って出たのである。今は朝から晩まで身体を土で汚しながら、農作業に勤しんでいた。

 

「お疲れ様」

 

 収穫したものを作業用のトラックに積み込み終わると、絵美がタオルを差し出す。それを受け取り、翔は滴る汗を拭った。

 

「ふぅ……農作業ってのはトレイダーとは違う意味で疲れるな」

 

 コキコキと体中をほぐす翔に、絵美はフフッと笑う。そんな絵美に翔は尋ねた。

 

「絵美、体調はどうなんだ?」

 

「ばっちり、もう2~3日も休めば元通りよ。

 ここの食事のお陰ね」

 

 ここでは小規模ながら畜産もされており、貴重とも言える卵や乳製品も作られていた。

 

「ああ、昨日のシチューは美味かったな」

 

 滅多にお目にかかれない御馳走だ。そんな栄養ある食品のお陰で、絵美の体調は快方に向かっている。

 そんな絵美とみどりを連れて、翔はトラックに乗り込もうとしたその時、翔はその視界に奇妙なものを見た。

 

「なんだあの青い液体は……」

 

 翔の眺める視線の先には、何やら蛍光色の青い液体で穢された土地が映っている。まるで子供が悪戯で絵具でもぶちまけたような感じだ。

 そして、その青い液体のぶちまけられた土地は、草花の無い不毛の大地になっていた。

 

「酷い……土壌がこんなに荒れ果ててる」

 

 その悲惨な光景に、絵美は思わず口を抑える。

 

「あれね。 怖い怪獣の血なんだって」

 

「怪獣の?」

 

「うん、こわーい怪獣の血で、あれがかかると食べ物が育たない土地になっちゃう毒なんだって。

 だから絶対近付いちゃいけないっておとーさん言ってた」

 

「ふぅん……」

 

 みどりは父から聞いた話を胸を張って言い放ち、翔と絵美は若干目を鋭くしながらその話を聞いていた。

 その時だ。

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

「なんだ!?」

 

「翔、あれ! 海!!」

 

 突然の轟音、絵美に言われるまま海を見た翔はそこに海からゆっくりとやってくる怪獣の姿を見た。しかも……。

 

「怪獣!? それも2体だと!?」

 

 そう、やってくる怪獣は1体ではなかった。2体の怪獣が連れだって陸へ向かっていく。

そして向かってくる進路上には、この農場が、そしてこの農場の主たちの暮らす家がある。

 

「お、お兄ちゃん。 お姉ちゃん……」

 

 不安そうに揺れるみどりの瞳、それを見た翔は絵美へと目配せをする。

 

「……行けるか?」

 

「ええ。 それぞれ1体ずつでいいわね?」

 

 すでに絵美はバトルナイザーをとり出していた。それにならう様に、翔もバトルナイザーをとり出すとそれを掲げた。

 

 

『バトルナイザー、モンスロード』

 

 

「来い、アンギラス!!」

 

「来なさい、メカゴジラ!!」

 

 

 フォォォォォン!!

 

 キシャァァァァン!

 

 

 どこか抜けたような咆哮と金切り声のような咆哮の二つが響くと、そこには2体の怪獣が並んでいた。

 

「また新しい怪獣……?」

 

「大丈夫、あの子たちはここを守ってくれるいい怪獣だから……」

 

 絵美は怯えるみどりの頭を一撫ですると、キッと迫り来る怪獣を睨む。

 

「アンギラスはあのトカゲみたいなのをやる」

 

「OK、ならあのゴリラは任せて!」

 

 最後にお互い頷くと、翔と絵美は同時に互いの怪獣へと命じる。

 

「行け、アンギラス!」

 

「行きなさい、メカゴジラ!!」

 

 主の声に、アンギラスとメカゴジラが動き出した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 キシャァァァァン!

 

 咆哮と共にメカゴジラの口から極彩色の光線、メガバスターが放たれる。だがその怪獣は俊敏な動きでその光線を避けた。

 このゴリラのような形をした怪獣は『レザーバック』。人型に近い形をしたその体躯で素早く横に跳んではメカゴジラからの攻撃を避け続ける。

 

「この、チョコマカと!」

 

 そうしている間にも隙をついてレザーバックはメカゴジラへと飛びかかってこようとするが、メカゴジラはスラスターとブースターを駆使したホバー機動でかわしながらさらなる砲撃を加える。

 しかし、そんな時レザーバックの足が突如として止まった。そして、レザーバックの後頭部が発光と帯電を繰り返す。

 

「光線!? でもメカゴジラのダイヤモンドコーティングなら!!」

 

 レザーバックの行動に警戒はするが、絵美はメカゴジラの力を疑ってはいなかった。むしろ必殺のプラズマグレネイドのエネルギーにしてやると息巻いていたのだ。

 だがしかし、レザーバックが咆哮と共に放ったそれは光線ではなかった。放たれたエネルギーがまるで波のようにレザーバックから周囲に拡散していく。そして、そのエネルギー波に巻き込まれたメカゴジラの目が不規則に点滅しブースターとスラスターが停止、メカゴジラが着地すると、ヨロヨロと不規則に揺らめく。

 

「どうしたの、メカゴジラ!?」

 

 絵美の困惑の声。レザーバックはその隙をつきメカゴジラを引き倒すと、メカゴジラに馬乗りになってその拳の連打をメカゴジラへと叩きつける。

 しかし、メカゴジラはほとんど動けず、為すがままにされていた。

 

「どうしたの、メカゴジラ!? どうして動かないの!?」

 

 目の前であのメカゴジラが為すがままにされる姿に、絵美が悲鳴のような声を上げる。

 レザーバックの放ったものの正体、それは強力な電磁波エネルギー攻撃、EMPウェーブである。

 この攻撃は生物には影響はほとんど無いが、電子機器に対して絶大な力をもつ。ロボット怪獣であるメカゴジラはその力で内部の電子機器をショートさせられ、ほとんど身動きが出来なくされたのである。

 そうしている間にも、レザーバックの剛腕がメカゴジラの分厚い装甲を叩く。このままでは遠からず動けないメカゴジラはレザーバックに破壊されてしまうだろう。

 

「くっ!? こうなったら……」

 

 メカゴジラの危機に、咄嗟に絵美はバトルナイザーの2つめのウィンドウを見た。そして、意を決して新しい怪獣を召喚する。

 

 

『バトルナイザー、モンスロード』

 

 

「来なさい、MOGERA!!」

 

 その召喚の声に応えて現れたものは、メカゴジラと同じロボット怪獣だ。銀のボディに所々に青が混じる装甲、腕はメカゴジラのような指は無く、口にはまるでくちばしのようにドリルが輝いている。

 これが絵美の使役する第二の怪獣、『MOGERA』である。

 

「行きなさい、メカゴジラを助けるのよ!!」

 

 

 キュィィィィィン!!

 

 

 絵美の声に応える咆哮のかわりに、くちばしのドリルが高速回転する音が響くと、MOGERAの脚部のローラーが大地を噛み、MOGERAの巨体を滑るように動かす。

 脚部のローラーとブースターによって移動するMOGERAのローラーダッシュである。その速度でMOGERAはメカゴジラに攻撃を続けるレザーバックへと接近、そのまま体当たりをした。

 MOGERAの巨体を受け、レザーバックが派手に吹き飛ぶ。

 そこに追い打ちをかけるようにMOGERAの目が輝くと、光線が飛んだ。MOGERAのプラズマレーザーキャノンである。

 プラズマレーザーキャノンを受けたレザーバックは素早く立ち上がった。そしてMOGERAがメカゴジラと同じロボット怪獣だということに気付いたのか、レザーバックは再びEMPウェーブをチャージするとそれを放つ。

 電子機器に対して絶大な攻撃力を持つそれの直撃を受けたMOGERA。しかし、MOGERAはそれを意に介さぬように再び目からのプラズマレーザーキャノンを放ち、それに直撃したレザーバックがもんどりうって倒れた。

 

「MOGERAは対電磁波能力を持ってるのよ。

 そんな攻撃、効くもんですか!」

 

 そう、本来ロボット怪獣に対して絶大な威力を誇る電磁波エネルギー攻撃を受けてもMOGERAがその機能を失わないのはそのお陰だ。

 起き上がったレザーバックは破れかぶれのように正面からMOGERAへと突進を始める。しかし、その時すでにMOGERAは迎撃の準備を整えていた。

 MOGERAの右手がパカリと開くと、そこには巨大なミサイルが装填されている。

 

「スパイラルグレネードミサイル、発射!」

 

 その言葉と共にMOGERAの右腕からミサイルが発射された。

そのミサイルはドリルのように回転し、迫るレザーバックの左肩に突き刺さった。そして巻き起こる大爆発。

 絶叫のような雄たけびを上げるレザーバックの左腕が、肩からゴッソリともげ落ちている。

 このミサイルこそMOGERAの必殺兵装の一つ、ドリルによって相手の装甲を砕き、内部を確実に破壊するスパイラルグレネードミサイルである。

 そして、動きを完全に止めたレザーバックにトドメを刺すべく、絵美の声が飛んだ。

 

「トドメよ、プラズマメーサーキャノン!」

 

 その言葉に応えるようにMOGERAの腹から、パラボナアンテナのような形状の砲がせりあがる。

 

「最大出力、連続発射!!」

 

 そして、そこから極彩色の光線が連続して放たれた。その奔流に、傷ついたレザーバックは為すすべがない。

 

 

 グォォォォォォォォォン!!!??

 

 

 レザーバックはその光の奔流の中に、断末魔の雄たけびと共に倒れたのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「やれ、アンギラス!!」

 

 

 フォォォォォン!!

 

 

 アンギラスはどこか抜けたような雄たけびを上げる。その目の前にはすでに相手の怪獣が接近中だった。

 手足を使い、まるでトカゲのように高速で大地を走り回るこの怪獣の名は『オオタチ』である。オオタチはその素早さを生かしてアンギラスと距離を詰めると、アンギラスの顔面をそのしなやかな手で叩きつける。

 だが、アンギラスも負けじと前足をオオタチへと叩きつけた。その素早さはオオタチにも劣らない。今回、翔がゴジラではなくアンギラスを召喚したもの、陸上での素早さに関してならゴジラよりもアンギラスが上であり、オオタチにも引けを取らないと判断したからだった。

 素早い動きでのアンギラスとオオタチの乱打戦、そのさなかオオタチの両手がアンギラスの顎を捕まえる。そのまま顎を引き裂こうとするオオタチだが、その横面をアンギラスの尾が直撃した。

 アンギラスの強靭な尾はその先端がスパイクボールのように堅く重く、そして鋭い棘に覆われている。その一撃をモロに受けたオオタチはたまらずもんどりうって倒れた。

 

 

 フォォォォォン!!

 

 

 好機とみたアンギラスはそのまま接近し喉笛を噛みちぎろうとしたがオオタチもさるもの、倒れたオオタチの尾が近付くアンギラスの頭を強打した。それだけではなく、オオタチの尾の先端がまるで口のように開くとアンギラスの頭を捕まえ、そのまま地面へと叩き付けた。

 突然の逆襲にたまらず距離をとるアンギラス、そしてその隙に起き上がるオオタチ。両者は相手を威嚇しながら、ゆっくりと距離を図る。

 しばらく様子を見ていた両怪獣だが、先に動いたのはオオタチだった。雄たけびを上げたオオタチはその喉についた袋を膨らませると身体を震わせる。

 その姿に何かを感じた翔は叫んでいた。

 

「避けろ、アンギラス!!」

 

 その言葉に従い咄嗟に横に跳んだアンギラス。そして一寸置いてオオタチが吐きだした青い液体が、先ほどまでアンギラスのいた大地を汚す。

 この青い液体は強力な酸だ。強力な強度を誇る金属の装甲ですら、この酸の前ではストーブの前のチョコレート同然である。もしも直撃すればアンギラスとて無事では済まない。

 オオタチはアンギラスに遠距離攻撃の類が無いことを悟ったのか、酸を執拗に吐きかけてくる。だが、そのすべてを俊敏にアンギラスは避けていく。その姿に焦ったのか、オオタチは再び自分のカードを切って来た。

 オオタチがその両手を広げると、その手と身体との間に皮膜が現れる。それは紛れもない翼だ。そしてその強力な羽ばたきで、オオタチの巨体が空へと浮かび上がる。

 

「あいつ、今度は飛びやがっただと!?」

 

 飛び道具を持たないアンギラスにとって、空中の敵は天敵だ。いくら俊敏だと言ってもアンギラスは陸の怪獣、空からの攻撃をいつまでも避けきれるものではない。

 アンギラスを助けるため、翔はバトルナイザーを掲げた。

 

 

『バトルナイザー、モンスロード』

 

 

「来い、ラドン!!」

 

 

 キシャァァァァァァァァ

 

 

 咆哮と共に現れたファイヤーラドンは一目散に空へと飛び上がっていく。

 オオタチは空中で新たに現れたファイヤーラドンを見上げるが、その速度はオオタチとは比べ物にならない。

 陸海空と場所を選ばぬオールラウンダーであるオオタチだが、空での戦いでは空戦特化のファイヤーラドンには及ばないのだ。

 

 

 キシャァァァァァァァァ

 

 

 咆哮と共に加速したファイヤーラドンの体当たりがオオタチを襲う。空中でその攻撃をかわし切れなかったオオタチは大きくバランスを崩した。

 そこにすかさずファイヤーラドンがウラニウム熱線を放つ。ウラニウム熱線がオオタチの右の翼の皮膜を焼き尽くす。

 バランスを崩し、きりもみしながらオオタチが大地へと叩きつけられた。今の攻撃と墜落で右の腕が折れ曲がるが、無事な左手でオオタチは懸命に立ち上がろうとする。だが、それを待つほど翔はお人よしではなかった。

 

「トドメだ、アンギラス!!」

 

 

 フォォォォォン!!

 

 

 翔の声に応えアンギラスが咆哮すると加速、身体を丸めてボールのようになる。これこそアンギラスの必殺技、『暴龍怪球烈弾(アンギラスボール)』だ。

 自分の体重・加速、そしてその身体の常軌を逸した硬度をフルに活用した、必殺の体当たりである。それが動けずにもがくオオタチに直撃する。

 その一撃で身体中の骨を砕かれたオオタチは泡を吹きながら、ついに息絶えたのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 怪獣を倒し終えた翔と絵美は、怪獣の様子を確認するために近くまで来ていた。1人にする訳にもいかないので付いてきているみどりが、怯えた様子で翔の影に隠れながら怪獣を見ている。

 

「しっかし、怪獣が徒党を組んで動いてるっていうのも珍しいな」

 

 翔はオオタチの死骸を見上げながらそう口にする。

 怪獣は基本的に同族でなければすべて敵として戦い合うのが常だ。翔たちもそんな光景は何度も見て来ている。それが別種の怪獣が徒党を組んでというのは珍しい。

 

「おとーさんがね、きっとボスがいるんだって言ってた」

 

「ボス? この怪獣どもを纏め上げてる親玉がいるってこと?」

 

 絵美の言葉に、みどりが頷く。

 なるほど、分からない話ではない。怪獣とは、結局は巨大で凶暴な獣だ。野生動物のように力の強い強力なボスが群れを纏めているというのは十分にありえる話だろう。

 そんな風に翔が頷いているその時だ。

 

 

ドドドドド……

 

 

「何だ、この音!?」

 

 近くのようで遠くからするようなおかしな音に、翔と絵美はバトルナイザーを手に辺りを警戒する。

 そして……。

 

 

 キシャァァァァ!

 

 

 咆哮と共にオオタチの死骸から、小さなオオタチが飛び出してきた。オオタチは妊娠しており、その子供が体内から出てきたのである。

 人であればそれは未熟児だろうがそこは怪獣、この状態で10m近い大きさだ。

 

「ちぃ!?」

 

 翔は咄嗟にバトルナイザーで怪獣を召喚しようとするが、思いとどまる。

 

(この距離でゴジラなんて召喚したら、全員ペシャンコだ!?)

 

 距離が近すぎる。この距離で巨大な怪獣を召喚したらオオタチの子供もろとも自分たちもペシャンコだ。

 翔はみどりを抱きかかえ逃げようとするが、そんな中絵美がバトルナイザーを掲げた。

 

 

『バトルナイザー、モンスロード』

 

 

「バカ、絵美やめろ!?」

 

 叫び、すぐに来るだろう衝撃に備えて翔はみどりをその身に庇う。

 

 

 ガキッ!?

 

 キシャァ……!?

 

 

 しかし衝撃は一向に訪れず、代わりに響いたのは何かを殴る様な重い音とオオタチの子供の悲鳴であった。

 翔はゆっくりと絵美の方へと振り返る。

 するとそこには10メートルほどの巨人が立っていた。完全な人型だが、その身体の金属の輝きが、この存在がロボットであると示している。その巨人が迫り来るオオタチの子供を殴り飛ばしたのだ。

 そんな巨人を前に、絵美は得意顔で翔に言った。

 

「誰が馬鹿よ、誰が。

 あんな距離で、でっかい怪獣呼んだら危険だって言うのは分かってるわ。

 だったら……大きくない怪獣を呼べばいいのよ」

 

 その絵美の言葉に応えるように巨人がみるみる縮んでいくと、2mほどの身長になって絵美の前に並んだ。

 

「どう? この子はサイズを自在に変えれるのよ。

 下はこのサイズから、そして上は……」

 

 そこまで言うと、絵美はバトルナイザーを掲げてその怪獣に命じた。

 

「行きなさい、ジェットジャガー!

 巨大化してあいつを蹴散らすのよ!!」

 

 その言葉に応えるようにジェットジャガーは駆けだすと、見る見るそのサイズを変化させていく。やがて、絵美の操る他の怪獣と遜色ないサイズまで巨大化したジェットジャガーは、オオタチの子供をその足で踏み潰した。

 その光景に安心した翔は、冷や汗を拭う。

 

「ふぅ……肝が冷えたぜ。 助かったよ」

 

「ふふっ、もっと褒めてもいいのよ」

 

「調子のんな、アホタレ」

 

 緊張がとけ、じゃれあいながら絵美の頭をコツンとチョップする翔。

 

「やれやれ、ただのイモの収穫作業がちょっとした重労働になっちまったな」

 

「ホントね。 それじゃ早く戻りましょう。

 きっとみどりちゃんのこと、心配してるわ」

 

 そう言って絵美はバトルナイザーを掲げてジェットジャガーを戻そうとしたその時だ。

 

 

 ドォォォォォン!!

 

 

「!? ジェットジャガー!?」

 

 何処からか飛来した破壊光線、それがジェットジャガーに直撃すると凄まじい勢いでジェットジャガーが吹き飛ばされる。

 

「くそっ! どこからだ!!」

 

 慌てて周囲を見渡した翔はすぐにその存在に気付いた。

 海からゆっくりとやってくる1体の怪獣……今の光線を放ったのは間違いなくあの怪獣だ。その姿は一目見て、先ほどのレザーバックとオオタチとは格が違うということが分かる。そして、こいつこそが先ほどのレザーバックやオオタチたちのボスなのだということを直感した。

 

「嘘……メカゴジラやMOGERAほどの防御力じゃないにしても、一撃でジェットジャガーをここまで……」

 

「絵美、回収だ! 急げ!!」

 

 吹き飛ばされたジェットジャガーは破壊光線の直撃した胸部の装甲が派手に吹き飛び、バチバチと内部機構をスパークさせていた。

 あまりのことに呆然とした絵美だが、翔の言葉に慌ててジェットジャガーをバトルナイザーへと戻す。

 そして続けて怪獣を呼び出そうとしていた絵美を、翔が手で制した。

 

「翔?」

 

「……あいつは普通じゃない、俺と……ゴジラがやる!」

 

 その言葉と同時に、翔はバトルナイザーを掲げた。

 

 

『バトルナイザー、モンスロード』

 

 

「来い、ゴジラァァァァァ!!」

 

 

 ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 翔の声と共に召喚されたゴジラが咆哮を上げる。

 

 

 フオォォォォォォォォォォン!!!

 

 

 そして、そのゴジラの咆哮に応えるようにその怪獣も雄たけびを上げた。

向かい合うのは2体の怪獣。

 かくして怪獣王と大魔獣帝との激突が今、始まるのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

次回の大怪獣バトルレジェンドは

 

「くっ……強い!?」

 

「ゴジラを相手に……あの怪獣、何てパワーなの!?」

 

「ゴジラ、お前の本当の力を見せてやれ!!」

 

 

 ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 

次回、大怪獣バトルレジェンド第5話『怪獣王VS大魔獣帝』

 

 

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第4話怪獣紹介

 

 

古代怪獣『ツインテール』

出典:『帰ってきたウルトラマン』他

 

解説:頭が下、尾が上という独特な形状が特徴の古代怪獣。名前の由来でもある2本の尾を鞭のように使用して戦う。

   

   その独特な形状から知名度の高い怪獣。金のシャチホコのような天に伸びた尻尾は怪獣に詳しく無くても知っている人は多い。

   その肉はエビの味がするらしく、捕食ネタでよく使われる。だが実際に捕食したのは『ウルトラマンメビウス』の時にボガールに捕食されたぐらいでグドンには食べられていなかったり。

   非常に美味だがよく火を通さないと食中毒の可能性があるらしいのでこれからツインテールで一杯……と考えてる人は注意しよう。

 

   

 

電磁波暴獣『レザーバック』

出典:映画『パシフィック・リム』

 

解説:ゴリラのような体躯の怪獣。

   そのパワーは並大抵ではなく、その剛腕から繰り出される攻撃は強力。

   また背中の発光器から高出力のEMPを放つことで電子機器を麻痺させることができる。

 

   ポータルから地球へと送り込まれる侵略生物兵器『Kaiju』、その中でもとてつもなく強力な『カテゴリー4』に該当する怪獣。

   オオタチと共に香港を襲い、人類側の超巨大人型決戦兵器『イェーガー』の1体、オオタチの酸攻撃でダメージを受けたロシアの『チェルノ・アルファ』にトドメを刺した。

   その後、最強のイェーガーである『ストライカー・エウレカ』をEMP攻撃で行動不能にするが主人公たちの乗る『ジプシー・デンジャー』と交戦、凄まじい乱打戦を繰り広げた末、至近距離からプラズマキャノンの連射を叩き込まれて倒された。

   映画においてオオタチとともに一番暴れまわった怪獣で、ある意味では主役とも言える怪獣である。

 

   

 

凶悪翼獣『オオタチ』

出典:映画『パシフィック・リム』

 

解説:爬虫類型の怪獣。スピードの優れており、俊敏な動きをする。

   さらに腕の皮膜を展開し翼にすることで飛行も可能。陸海空と場所を選ばぬ活動ができる。

武器は噛みつくように開閉する尻尾と、超強力な酸攻撃。

 

   ポータルから地球へと送り込まれる侵略生物兵器『Kaiju』、その中でもとてつもなく強力な『カテゴリー4』に該当する怪獣。

   レザーバックと共に香港を襲い、人類側の超巨大人型決戦兵器『イェーガー』の1体、中国の『クリムゾン・タイフーン』を尻尾で瞬殺。ロシアの『チェルノ・アルファ』の分厚い装甲を酸で溶かし致命傷を与える。

   その後香港で暴れまわるがレザーバックを倒した『ジプシー・デンジャー』と対戦、翼を展開し上空から『ジプシー・デンジャー』を地面に叩きつけようと空中に持ち上げるが翼を斬られ地面に墜落して死亡した。

   作中では人類は超巨大人型決戦兵器『イェーガー』での怪獣迎撃を捨て、巨大な壁を造ってそこに籠るという政策をとろうとしていたか、そのすべてをあざ笑う(純粋なパワーで壁を破壊できる、酸で壁を溶かせる、そもそも飛べるから壁が無意味)超スペックな怪獣である。

 

 

 

究極対G兵器『MOGERA』(通称Gフォースモゲラ)

出典:『ゴジラVSスペースゴジラ』

 

解説:本作ヒロイン、三枝絵美の2体目の怪獣。対ゴジラ迎撃組織『Gフォース』にて造られた対G兵器。

   正式名称は『Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type』。

   日本語訳では『対ゴジラ作戦用高機動型ロボット』でその頭文字をとって『MOGERA』と呼ばれる。

   プラズマグレネイドが無くなった分メカゴジラに比較して瞬間火力と防御力に劣るが、機動ロボットの名にふさわしく運動性と機動性に優れている。

   脚部に装備されたローラーシステムで大地を滑るように移動しながら、遠距離・近距離と高速に動き回りながら攻撃する。

   メカゴジラと同じく、全兵装を一斉発射するオールウェポンアタックが必殺技。

 

   目からの『プラズマレーザーキャノン』、腕の『自動追尾レーザー砲』、口の格闘戦用『クラッシャードリル』、腹からの『プラズマメーサーキャノン』、腕のドリルミサイル『スパイラルグレネードミサイル』と、メカゴジラと同じく全身これ武器の塊。

   メカゴジラほどの瞬間火力は無いが、信頼性と安定性が高く、兵器としての総合評価はメカゴジラより高いという。

   またこの機体はスペースゴジラの電磁波対策として電磁波防御も施され、ますます安定性が高い。

   その癖、ドリル装備に変形合体機構搭載と、夢とロマンも盛りだくさん。

   胃もたれするほどの特盛り超兵器、それがこの『MOGERA』である。

 

 

 

電子ロボット『ジェットジャガー』

出典:『ゴジラ対メガロ』

 

解説:本作ヒロイン、三枝絵美の使役する第3の怪獣。

   本来は日常生活のアシスト用として開発された等身大の人型電子ロボット。

   等身大のサイズから怪獣サイズまで自在に大きさを変える能力(ゲーム準拠)を持つ。

   パワーや装甲といった戦闘能力はメカゴジラやMOGERAほどではないが、人型ゆえの運動性と自在に大きさを変えることができる能力によって、生身での護衛から対怪獣戦にまで使える抜群の器用さを持っており、様々な局面で絵美たちの窮地を救う。

 

   ゴジラシリーズ屈指の迷キャラクター。

   どう見ても光の国とかが似合う姿形をしており、『良心回路』というどこかで聞いたことがある回路を搭載し、自我に目覚めて巨大化できる能力を得た。

   ……自分で書いていて、何を言っているのかまるで分からない。

   元が生活アシスト用のため、武装は肉弾戦と電磁光線(ゲームにて使用)のみと至ってシンプルだが、そこが良い。

   色々黒歴史風味なキャラクターですが、作者としては好きなキャラです。

 

 

 




今回・次回は映画『パシフィック・リム』の怪獣たちとの日米対決です。
『パシフィック・リム』は特撮怪獣好きならオススメの映画、デルトロは本当に凄い映画を作ってくれました。

ヒロインの怪獣早くも判明。
MOGERAはまだしも、怪獣小説でジェットジャガーを出し、あまつ主役級のお供に持ってくるのはこの作品だけだろうなぁ……。

次回は序盤戦のボスキャラ戦。
『怪獣王VS大魔獣帝』の戦いをお楽しみに。
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