原作であまり活躍できない、あの2体が頑張ってます。
怪獣の力は使い様です。
「しょ、翔!?」
絵美の目の前で、メガギラスのスピードに翻弄される翔のゴジラ。
「この霧さえなければ……」
この濃い霧のヴェールに隠れ、メガギラスがスピードを生かした奇襲攻撃を続けている。霧が無く、どこから来るのか見えていればいくら速くても対処のしようはあるというのに……。
「えっ? 霧?」
そういえば……と、絵美は気付いた。
よく考えれば、この霧は明らかにおかしい。
『霧で覆われて村から出られない』や『霧の中で向かっていた方向とは別の場所に来てしまう』など十分すぎるほどにおかしいが、もっと根本的な部分で霧としておかしな部分がある。
「あれだけの速度で飛び回って、なんで霧が薄くならないの?」
メガギラスほどの巨大な怪獣が羽をはためかせ、あれだけ高機動で飛び回っているにもかかわらず、霧は晴れるどころか薄くすらならないのだ。
これはすなわち。
「この霧……怪獣の仕業!?」
怪獣使いである絵美には分かる怪獣使いのルール、『怪獣使いの使役する怪獣は最大で3体』なのだ。ならば、この霧を作り出している怪獣が、どこかに居る。
それに気付いた絵美の行動は早かった。
『バトルナイザー、モンスロード』
「来なさい、MOGERA!!」
キュィィィィィン!!
絵美の声に答えて召喚されたMOGERAが、咆哮がわりにドリルを高速回転させた。
「MOGERA、この霧を調べるのよ!
セパレーションモード、スタンバイ!!」
キュィィィィィン!!
絵美の声に答えてMOGERAは空中へ飛び上がると、MOGERAに動きがあった。
MOGERAが腰のあたりで上下に分離すると、上半身はドリル戦車に、下半身は大型航空機に変形したのだ。
MOGERAは合体・分離機能を持っており上半身がドリル戦車『ランドモゲラー』に、下半身が高速爆撃機『スターファルコン』へと変形するのである。
スターファルコンはそのまま上昇、霧を突き抜けて上空へと達する。そして、スターファルコンのセンサーは、この霧の異常を捉えていた。
「この霧……やっぱりただの霧じゃない。
センサー類が阻害されてる!?」
この霧は強力なジャミング効果を持つものでセンサー類の阻害効果を持っている。それだけではなく、この霧は人間を始めとする生物の感覚すら狂わせる効果があるようだ。これでは完全に方向感覚が狂い、『村から出られない』という現象も頷ける。だが、種の分かった手品ほど容易いものはない。
「中にいたらセンサーが働かないけど……外からなら!!」
スターファルコンは上空から、霧の『ジャミングの一番強い場所』を割り出した。
「そこね!!」
スターファルコンは急降下で霧に突入、その場所にメーサーバルカンを撃ち込む。それを追うようにランドモゲラーもその場に急行し自動追尾式レーザー砲を撃ち込む。
キュァァァァ!?
爆発の閃光と共に、霧の中を怪獣の悲鳴が響く。その痛みに悶えているのは、『岩石怪獣サドラ』であった。
サドラは自身の体表から揮発性の分泌液を出して強力なジャミング効果のある霧『電磁セクリションフォッグ』を発生させ、相手を撹乱することができる。村を覆い村人たちを閉じ込めた霧の正体こそ、この『電磁セクリションフォッグ』だったのだ。
サドラは霧の中を逃げだそうと身を翻す。
「逃がすもんですか!!」
絵美はスターファルコンとランドモゲラーに追撃を命じるが、その瞬間横合いから電撃が飛来してスターファルコンとランドモゲラーに突き刺さり、火花が散る。
「今のは!?」
今のはサドラからの攻撃ではない。メガギラスの攻撃でもない。
それの意味するところは……。
「霧の中に、もう1体いる!?」
そう、『怪獣使いの使役する怪獣は最大で3体』なのだ。あのメガギラスはメガニューラの進化系であり、あの群れもひっくるめて1つの怪獣なのだろう。そうなれば勝の使役する怪獣は『メガギラス』と『サドラ』、そしてもう1体がいてもおかしくはない。
電撃を受けたスターファルコンとランドモゲラーはすぐに旋回して機首をそちらに向ける。しかしそこには何もいない、濃い霧があるだけだ。
「一体どこに……?」
今の電撃はかなりの近距離からの攻撃だった。それなのに霧が濃いとはいえ、巨大な怪獣の影すら見当たらないというのはいくらなんでもおかしな話だ。
そして再びの電撃がスターファルコンとランドモゲラーに襲い掛かる。
だが、普通の怪獣と違いロボット怪獣であるため痛覚などのないスターファルコンとランドモゲラーは攻撃を受けながらも、素早く旋回してその方向へと向く。
すると……。
「景色が、揺らいでる!?」
電光を纏ったようにスパークしながら、景色が揺らいだ。
すぐに揺らいだ景色は元に戻っていくが、小山のように巨大な『何か』がそこにいたことは間違いない。
それは……。
「怪獣!? 透明怪獣!?」
もう1体の怪獣は、不可視の透明怪獣だと絵美はあたりをつけた。
どうやらこの透明怪獣、攻撃の瞬間だけ景色の揺らぎのように姿を現すらしい。ただでさえサドラの霧で視界が劣悪な状況では、この上ない脅威だ。
「おそらくサドラの霧を絶やさないように、サドラを守るのが役目なのね」
怪獣使いという頭脳の指示のもと動いているだけあって、非常に厄介な戦術を駆使してくる。この『電磁セクリションフォッグ』のせいでMOGERAやメカゴジラの優秀なセンサー類でも透明怪獣の補足は不可能だ。
しかし……。
「手はあるわ!
ランドモゲラー、地中潜航モード!
スターファルコンは霧から出て、もう一度サドラを補足するのよ!!」
ランドモゲラーがドリルを高速回転させて、地面を掘りながら地中へと消えた。スターファルコンは再び霧から飛び出すと、ジャミングの一番強い場所を割り出す。
「来なさい、メカゴジラ!!」
キシャァァァァン!
続けて、金切り声のような咆哮とともにメカゴジラが召喚された。
「メカゴジラ、サドラを追いなさい!!」
キシャァァァァン!
絵美の指示通り、上空からのスターファルコンの攻撃によって見える着弾の爆発を目標に、メカゴジラはホバー移動で進み始める。
そうはさせじと、メカゴジラに霧の中から電撃が放たれた。
背中から電撃が直撃したメカゴジラは火花と内部機構がスパークした小爆発を起こすが、それでも意に介さずメカゴジラはサドラを追う。
その時だ。
ズンッ!
グォォォォン!!
何か巨大なものが落ちたような音、そして間をおかず怪獣の叫び声が聞こえた。それを聞き、絵美はニヤリと笑う。
「かかったわね!」
見ればそこには巨大な穴が開いており、その穴の中では何かがもがいている。そこにかかった土と風景のゆらぎ……そこでは透明怪獣が穴にはまってもがいていた。
そして、ドリルの音を響かせながら地中からランドモゲラーが顔を出す。
センサーの利かない『電磁セクリションフォッグ』の中に隠れた透明怪獣……それを見つけ出すのは容易なことではない。そこで絵美は罠を張ることにした。
仕掛けた罠は単純な落とし穴だ。
音や振動から、絵美は透明怪獣が歩行型の怪獣であることに気付いていた。
怪獣のその巨大な身体は、超重量を誇る。そんな巨体が空洞化した地面に足を突っ込めば、そこにはまるのは当然のことだ。そこでランドモゲラーが周辺の地中を掘り進み、地中に巨大な空洞の道を造り上げたのである。そしてホバー機動で地面を踏まないメカゴジラを囮に、その即席落とし穴に透明怪獣を落としたのだ。
穴にはまった透明怪獣……『ネロンガ』は土で汚れ、もはや透明怪獣とは呼べないほどに視認できた。
「今よ! MOGERA、ドッキング!!」
ランドモゲラーとスターファルコンが空中で合体し、MOGERAの姿になって降り立った。
「決めなさい、MOGERA!
オールウェポン、フルオープンアタック!!」
その瞬間、MOGERAのすべての武装が火を噴いた。
目からのレーザーキャノンが、腹部のプラズマメーサーキャノンが、両手のスパイラルグレネードミサイルが一斉に身動きのできないネロンガに襲い掛かる。
グォォォォン!!
その猛攻を受け、ネロンガは断末魔の悲鳴とともに爆発四散した。
一方、逃げるサドラをメカゴジラが捉える。
「逃がさないわよ! ショックアンカー、発射!!」
発射されたショックアンカーが、サドラの肩口に突き刺さった。
フォォォン!
流された高圧電流の痛みに悲鳴を上げながら、サドラは両手のハサミでそのワイヤーを断ち切ろうともがく。
だが、その前にスラスターを全開にしたホバー移動で接近したメカゴジラが体当たりをした。メカゴジラの重装甲ボディ、その重量すべてをのせた強烈な体当たりはサドラをはね飛ばす。
ショックアンカーのワイヤーが絡まった状態で地面に転がったサドラ。ここにサドラの命運は決した。
「メカゴジラ! フルオープンアタック!!
全武装、最大出力!!」
目からのレーザーキャノン、口からのメガバスター、肩と腰からのミサイル群、そして腹から最大出力のプラズマグレネイド……これらがすべてサドラに突き刺さった。その凶悪な破壊力を防ぐだけの防御力は、サドラにはない。
フォォォン!
断末魔の声とともに、サドラが爆発する。それと同時に、あれだけ濃かった霧が晴れだしていた。
「こっちはやったわよ、翔!!」
~~~~~~~~~~~~~~~
「サドラが! ネロンガまでやられたのか!?
せっかく僕が拾ってやったのにあの雑魚怪獣どもめ!!」
晴れていく霧に、勝は憎々しげに言う。
一方の翔は、霧が消えたことで姿が見えるようになったメガギラスに、ニヤリと笑った。
「助かったぜ、絵美。
霧さえ無けりゃこっちのもんだ!
おい、覚悟はいいか!
ここからは俺とゴジラの反撃の時間だ!!」
ガァァァァァァァァァァァァ!!!
翔の言葉に同意するように、ゴジラが咆哮する。
「ふん、霧が無くてもそんなドンガメに僕のメガギラスが負けるか。
いけ、メガギラス!!」
キシュァァァァァァァ!!
勝の言葉に答えて高速機動でメガギラスが両手のハサミを構えながらゴジラに迫る。
「ゴジラ!!」
翔の掛け声とともに、ゴジラは迫り来るメガギラスに向かって迎え撃つようにテールアタックを放った。だが、メガギラスは容易くそれをかわすとテールアタックのせいで隙だらけなゴジラを、横合いから斬りつけようとする。
「丸見えだ!
ゴジラ、右!!」
ガァァァァァァァァァァァァ!!!
翔の声、同時にクルリと首を向けるとゴジラは放射熱線を放った。最初からゴジラはテールアタックがかわされることを承知の上で、放射熱線の発射準備を整えていたのである。そして周囲を視認できる翔の指示のもと、メガギラスの動きに対応したのだ。
接近する中にカウンター気味に放たれた放射熱線がメガギラスを掠り、爆発の火花とともにメガギラスが苦悶の悲鳴を上げる。スピードを最重視した怪獣であるメガギラスは、そこまで強固な防御力は持ち合わせてはいないのだ。
この事態にうろたえたのは勝である。
「バカな、嘘だ!
そんなノロマな怪獣が、メガギラスのスピードに対応するなんて!?」
「生憎うちのゴジラは、そんじょそこらの怪獣とは違うんだよ!
ゴジラ、一気に行け!!」
再度のゴジラの放射熱線、それは舐めるように広域に放たれるが、メガギラスはほうほうの体でその射線から逃げた。
そして、長期戦で戦うことの不利を悟った勝は、短期決戦を選ぶ。
「メガギラス! やつの体液を、エネルギーを吸ってしまえ!!」
メガギラスは再度高速で動きながらゴジラに接近した。メガギラスの尻尾についた鋭い針……メガニューラにもあったその器官はさらに巨大に、凶悪な武器となっている。これをゴジラに突き刺し、その体液とエネルギーを吸収して勝負を決しようというのだ。
「ゴジラ!!」
ゴジラが放射熱線を発射するが、メガギラスはそれを避ける。そしてその鋭い針をゴジラの顔面へと突き立てた!
「しょ、翔!?」
その光景に絵美は悲鳴のような声を上げ、勝は勝利を確信して狂気の笑みを浮かべた。
しかし……そんな状況の中で翔は笑っていた。何故なら……。
「な、何ぃぃぃ!!?」
勝の勝利を確信した笑みが、驚愕に塗り替わる。
鋭い針を顔面に突き立てたはずのメガギラス、しかしその必殺の針はゴジラには刺さっていなかった。ゴジラがその針を噛みつき、口で止めていたのだ。
「こ、この!?
離れろ! 離れろぉぉ!!」
勝の声にメガギラスは激しく羽根をはばたかせ離脱しようとするが、ゴジラはその口で噛みついた針を決して離さない。メガギラスのパワーを、ゴジラはその顎の力で抑え込んでいた。そしてそこを、翔が鋭い声で命じる。
「やれ、ゴジラ!!」
ゴジラの内側から光が溢れだす。ゴジラの体内放射だ。がっちりと抑え込まれたメガギラスに、逃げ場はない。
「め、メガギラスぅぅ!?」
キシュァァァァァァァ!??
メガギラスの苦悶の声。
ゴジラに突き立てようとしていた針は根元から折れ、毒々しい体液を溢れださせる。熱と衝撃により片方のハサミが吹き飛んだ。その自慢のスピードを生む羽根も、所々に穴が空き見る影もない。メガギラスはその一撃で満身創痍になっていた。
ここに来て、ついに勝の尊大な、強気の態度が砕け散る。
「め、メガギラス!
逃げろ! 空に逃げろ!!」
勝が指示を出した。そこにあったのは純粋な怯えだった。
メガギラスにもその怯えは伝播したのだろうか、まだ動ける目一杯の速度で一目散に空へと逃げようとする。だが、そうはさせじと翔は追撃した。
「逃がすか!!
来い、ラドン!!」
キシャァァァァァァァァ!!
咆哮と共に現れたファイヤーラドンは一目散に空へと飛び上がっていく。そして、その速度でノロノロと逃げていたメガギラスに体当たりをした。
空中でバランスを崩したメガギラスに、反転したファイヤーラドンのウラニウム熱線が突き刺さった。羽根が焼け落ち、地面へと真っ逆さまに落ちていくメガギラス。
そして……地上ではゴジラが紅い光で背びれを発光させていた。
「決めろ、ゴジラァァァァァ!!」
ガァァァァァァァァァァァァ!!!
ゴジラの必殺の一撃、『バーンスパイラル熱線』が炎を上げて落ちていくメガギラスを直撃した。バーンスパイラル熱線はメガギラスを貫き、メガギラスが爆散する。
ガァァァァァァァァァァァァ!!!
ゴジラの勝利の雄たけびの中、メガギラスは炎を上げ、その破片は湖に降り注いだのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「さて……」
メガギラスを倒したことを確認した翔は、ゆっくりと勝の方へと向き直る。
「俺の勝ちだ。
さて、怪獣使いについて知ってることを教えてもらおうか?」
だがその時、翔は勝の様子がおかしいことに気付いた。
「ん?」
何やら光の粒子のようなものが勝の身体から立ち昇り、勝の身体が消えていっている。
「お、おい!?」
そして、勝の恐怖でひきつった悲鳴が響いた。
「ひ、ヒィィィィ!!? 僕が、僕が消える!?
い、嫌だァァァ!!
僕は『神』だ! レイオニクスバトルに勝って、宇宙の支配者になる男なんだ!!
『彼』だって! 『彼』だってそう言ってくれたんだ!!
そんな僕が! この僕が!
嫌だ! 嫌だ!! 嫌だァァァ!!
死にたくないぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」
その断末魔とともに、勝の姿が完全に消え去った。そしてその後には、壊れて砕けたバトルナイザーだけが転がっている。
「しょ、翔……今の……」
「……」
あまりのことに絵美も翔も呆然として言葉が出なかった。だがその時、ドタドタと何人もの人間の足音が響く。
「こ、これは!?」
それは翔たちを追ってきた村人たちだった。辺りのメガニューラの死体に、驚きで目を見開いている。
「か、『神』は!?
『神』はどこにいったんじゃ!?」
そんな村長の問いに、翔は冷たく言い放った。
「『神』? そんなもん最初っからいねぇよ。
ここにいたのは、『神』を称する詐欺師だけだ」
「『神』を……殺したのか……」
そのことに思い至った村人たちは全員が松明を取り落とし、ガクリと座りこむ。だが、すぐに村長は顔を上げると、縋るように翔たちに言ってきた。
「な、なら!
これからはあなた様方が新しい『神』じゃ!
『神』よ、女でも何でも差し出します!
だから、だからこの村に……!」
「ふざけるなっっ!!」
ガァァァァァァァァァァァァ!!!
ドンッ!!
「ひ、ひぃぃぃぃ!!?」
新しい『神』に翔と絵美をそえようとする勝手な物言いに、翔は思わず怒鳴り、それに反応するようにゴジラが雄たけびを上げながら、地面を踏み鳴らす。それによって腰を抜かした村長たちは後ずさった。
「『神』だの何だの……勝手にやってろ! 俺と絵美の知ったことじゃねぇ!!
……行こう、絵美」
「ええ……」
翔は絵美を促す。ゴジラはバトルナイザーに戻したが、ジェットジャガーは用心のためそのままだ。翔と絵美は3メートルほどにまで小さくしたジェットジャガーを護衛に、村人たちの囲いを出てくる。
「待ってくだされ。
ワシらは、ワシらはこれからどうすれば!?」
「勝手に生きろ」
そんな2人に、村長の縋るような声が響いた。だがそんな村長を、翔はにべもなく切って捨てる。そして、最後に放心したままだった淳へと声をかけた。
「君の家族の仇……とったぞ。
仇を憎むのは終わりだ。 これからの人生を精一杯、一生懸命に生きろ。
死んだ家族も、きっとそう思ってる」
それだけ言って翔と絵美は村人たちの囲いを抜けだし、隠していたハンヴィーへと向かっていく。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん……。
ありがとう……」
淳からのその言葉を背中で聞きながら、翔と絵美は振り返ることなく歩き出した……。
~~~~~~~~~~~~~~~
すっかり霧の晴れた道を、ハンヴィーが西へと向けて走る。そんな車内では翔と絵美が難しい顔をしながら、今回の事件を振り返っていた。
「『神』……かぁ……」
絵美がポツリと呟いた。
「ねぇ、翔。
あの怪獣使い、もしかしたらあの村人たちにとっては本当に『神』だったのかもね」
「……ああ」
その言葉に、翔は頷く。
この周辺には野生の怪獣がいる気配はなく、無人発電所は稼働状態で残っていた。これらは恐らくあの怪獣使い……早坂勝が周辺の怪獣を狩っていたのだろう。確かに勝の『女』を要求するのは思うところもあるが村人はその対価に、この世界では決して手に入らないだろうものを手にしていた。
それは『安全』である。
この荒れ果てた世界で食糧も豊富で、怪獣に怯えなくてもいいという『安全』……これはまさしく理想であり天国だ。それを提供する早坂勝は、確かに村人にとっての『神』で相違ないのかもしれない……。
「あの村、どうなるかな……?」
「さぁな」
絵美の言葉に、翔は肩を竦める。
当然用心棒役だった怪獣使いがいなくなった以上、怪獣がやってくる可能性もある。無人発電所が破壊される可能性もあるしそうなれば食糧プラントの生産量は減少、食糧的にも生活は苦しくなるだろう。
少なくとも、今までと同じということはありえない。
「俺たちを閉じ込めて、先に怪獣で殺そうとしてきたのはあっちだ。
殺らなきゃこっちが殺られる……俺たちの命とむこうの命……天秤に載せれば、取るのは当然俺たちの命だ。
そのせいで何が起ころうが、俺たちの知ったことじゃないよ」
あの村が今まで通りというのは、翔と絵美の死を意味していた。死に抗うのは当然の権利、その結果で村がどうなっても恨み事など聞く気はない……と、翔は言い切る。
「まぁ、その通りよね。
でも……あの私たちを助けようとした淳くんだっけ?
あの子には感謝してるから……」
「それは俺も同じだ。 でも……大丈夫だろう。
むしろ、大丈夫であってほしい。俺はそう願う。
だってあの子は……未来の俺かもしれないからな」
「……そうね」
絵美は翔の言葉に頷く。
翔は淳という少年に、自分を重ねていた。
強大な者を家族の仇とする者……決して自分では敵わないと思った仇を、淳は翔によって討ってもらうことになった。彼の復讐は終わったのだ。
仇が消え復讐の終わった後を考える翔には、同じように復讐の終わった淳には人並みに幸せになってもらいたい。
淳ができるなら自分も……そんな風に思えるからだ。
「でも今回は、本当に色々あったな……」
そう言って翔は手の中のバトルナイザーを見る。
早坂勝の口走った言葉……『レイオニクスバトル』、『宇宙の支配者』、そして『彼』……どれもこれもが謎だ。
いっそただの妄言か何かだと思いたいが……そうではないという確信がある。
「結局何にもわからねぇ。
でも……何かデカイことの渦中にいるってのは……間違いないだろうな」
「……」
天井を仰ぎ見ながらポツリと呟く翔に、絵美は何も言わなかった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
次回の大怪獣バトルレジェンドは
「四国? そこに『悪魔』が?」
「行こう、絵美……四国へ!」
「栄一さん、四国に『奴ら』がという情報が!」
「行くぞ雅。 『奴ら』を……倒す!!」
「あ、あははは……アハハハハハ!!
見つけた……見つけたぞ、『悪魔』ァァァ!!!」
次回、大怪獣バトルレジェンド第8話『集結 四国の死闘』
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
第7話怪獣紹介
有翼怪獣『チャンドラー』
出典:ウルトラマン他
解説:頭頂部に1本角、2本の牙を持ち、翼のような腕をもつ怪獣。
飛行はできないが、その翼からの突風、そして鋭い牙を武器とする。
特に牙は強力な武器で、『ウルトラマン』では多々良島に生息していた、かの有名な怪獣『レッドキング』に噛みついて痛手を負わせていた。
本作においては水を飲みに来たところを、サドラの霧、ネロンガの透明攻撃、メガニューラの集団攻撃に晒され、メガニューラに体液とエネルギーを根こそぎ吸い取られ絶命する。
長年ファンの間では冷凍怪獣ペギラの亜種とも言われていたが、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』で正式に亜種、または近い種として認定された。
こういった怪獣の生物的な側面をクローズアップさせた考え方も、怪獣特撮の楽しみであり、チャンドラーはその先駆け、とも言えるのでないだろうか?
岩石怪獣『サドラ』
出典:帰ってきたウルトラマン他
解説:本作第1話にも登場した怪獣。
原作では噛ませ犬状態の怪獣ではあるものの、体表から揮発性の分泌液を出して強力なジャミング効果のある霧『電磁セクリションフォッグ』を発生させるという能力は中々に強力。
本作においては、怪獣使い『早坂勝』の怪獣の1体として登場。
本作第7話は人の感覚を狂わせ村から脱出不能にしたり、対怪獣戦を有利に進める支援をしたりと、『舞台を整える』ことに活躍した。
その活躍は本作第7話の真の主役と言っても過言ではない。
怪獣の能力は使い様だと作者の考える、例の一つである。
透明怪獣『ネロンガ』
出典:ウルトラマン他
解説:電気を常食し、身体に含まれる電子イオンの効果によって透明化する能力をもつ怪獣。
頭についた角と触角を束ねることで電撃を放つことができる。
元祖透明怪獣とも言うべき存在で、透明であることを生かした奇襲戦術で戦う……はずなのだが、『ウルトラマン』では姿をあらわしたまま、一方的にウルトラマンにやられるという可哀そうな状態に。透明怪獣の名はどこに行った?
もっとも、ウルトラマンには電撃が直撃したのにまったく通じていなかったのだが……。
『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』ではその透明化能力で主役怪獣であるゴモラを苦戦させるという活躍を見せる。
本作においては、怪獣使い『早坂勝』の怪獣の1体として登場。
電気を常食するという特性で無人発電所の電気を喰い、村への電気供給をストップした。
早坂勝が村に取り入った発端であるが、実は完全な自作自演である。
その後もその透明化能力で湖にやってくる怪獣をサドラやメガニューラとともに奇襲していた。
サドラの護衛として霧に潜んで戦っていたが、ランドモゲラーの掘った落とし穴にはまって身動きとれないところをMOGERAのオールウェポンアタックで倒される。
ネロンガの面白いところは、ネロンガは江戸時代に侍によって退治されているという記録を持つ魑魅魍魎の類だということだろう。
当時は牛ほどの大きさだったらしく、現代に入って大量に電気を喰ったせいで巨大化したが、こういう歴史的な背景があるのも怪獣たちの面白みでもある。
古代昆虫『メガニューラ』
出典:ゴジラ×メガギラス G消滅作戦
解説:古代ヤゴ怪獣『メガヌロン』の羽化した姿。
巨大なトンボ型の怪獣で、常に群れで行動し尻尾の針を突き刺して対象の生物からエネルギーを吸い取る。
原作では対G兵器ディメンションタイド(ブラックホール砲)の試射によって空いた時空の亀裂からやってきた1匹が産んだ卵が渋谷の下水道で繁殖、人間を捕食し渋谷を水没させながら増えたメガヌロンが一斉にメガニューラに羽化した。
ゴジラのエネルギーを目当てに襲い掛かるが返り討ちにあい、生き残ったものが残った巨大メガヌロンにエネルギーを分けることで、『メガギラス』の誕生を助ける。
本作では早坂勝のエースである『メガギラス』の支援メカ的な存在として登場。
サドラの霧に隠れながらやってくる怪獣を集団戦術で倒し、そのエネルギーをメガギラスに与えることでメガギラスの成長を助けていた。
人を捕食し、虫らしい集団戦術は見事であると同時にトラウマもの。あの時ほどゴジラにVSシリーズの必殺技『体内放射』が欲しいと思った時はなかった。
ゴジラがやられていたら人類はかなりヤバかったのではないだろうか……?
超翔竜『メガギラス』
出典:ゴジラ×メガギラス G消滅作戦
解説: メガニューラの最終進化形態とも言うべき怪獣。
巨大なハサミ状の腕、尻尾の先についた針、そして高速飛行を武器にする。
特に高速飛行は瞬間移動とも見紛うほどで、トンボのように滞空からの急加速といった抜群の機動性を持つ。
反面、防御力に関してはいわゆる『紙』レベルであり打たれ弱さが目立つ。
原作においては一匹だけメガニューラに羽化しなかった巨大メガヌロンが、ゴジラを襲ったメガニューラたちから受け取ったエネルギーを受け怪獣化したメガニューラの最終進化形態。
お台場にてゴジラと対決し、その機動性を生かして戦っていたが尻尾の針を砕かれたことで形勢逆転、放射熱線の直撃を受けて爆死する。
本作においては湖に来た怪獣を片っ端からメガニューラで襲い、そのエネルギーを蓄えさせることで非常に強力な個体となった、怪獣使い早坂勝のエース。サドラの霧に隠れながらのヒット&アウェイは見事だったが、相手が悪かった。
メガギラスの羽化前の形態であるメガヌロンはラドンのエサとして有名で、ラドンとは中々に因縁を持つ。
本作ではそのラドンによって致命傷を負うが、万全な状態の両者ならどうなっていたか……興味深い話である。
レイオニクスバトルの決着でした。
『閉ざされた村』『生贄の風習』『神を自称する者』と怪奇色の強い内容になりました。
怪獣ものはプロレスだけじゃなく、こういうのもいいんじゃないかなぁと思ったり。
次回はゴジラを書いて必ずやりたかった一発ネタ、ゴジラの四国上陸です。
そして遂に大ボスとも言える仇、『悪魔』が登場します。
まぁ、勘のいい人は1話の段階で『悪魔』の正体はバレバレでしょうが(笑)
次回もよろしくお願いします。