大怪獣バトルレジェンド Gの伝説   作:キューマル式

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久しぶりの投稿となりました、キューマル式です。

今回は仮面ライダーRXに守られ、一度もゴジラが降り立つことができなかった四国の地にゴジラが降り立ちました。

そしてこの物語のラスボスの登場。
そのエースは当然ながら……。



第9話 集結 四国の死闘(前編)

 グォォォォォォ!!

 

 

 轟く雄たけびと、バシャリと大きな水音を響かせながら、それは夜の海から上陸した。

 それは巨大な人型……まさしく巨人だ。巨大な体躯に、その体表をびっしりと覆うウロコのようなものが、それが怪獣の類であると物語る。

 この巨人の名前は『ガイラ』、この周辺に出没する海棲の怪獣である。

 ガイラはその血走った目を陸地へと向けた。その視線の先には、ポツポツとした明かりがある。

 そこには好物……『人間』がいるということをガイラは知っていた。

 その人間そのものの顔が、愉快そうに歪む。だが、その顔はすぐに驚愕に染まった。

 

 

 ズドン!

 

 

 地響きを響かせ、空から影が降り立った。

 それはガイラと同じく完全な人型のシルエットをした怪獣である。しかしその体表はガイラのウロコとは違って生物としての臭いのしない、鋼鉄の鈍い輝きを放っていた。

 赤や黄色というカラフルな色、そして口のような部分が威嚇するかのように点滅する様は、間違いなくロボット怪獣である。

 そしてそこに鋭い声が響いた。

 

「行きなさい、ジェットジャガー!!」

 

 

 マ゛!!

 

 

 響く女の声……絵美の声に答えるように電子音を響かせてロボット怪獣……絵美の使役する電子ロボット『ジェットジャガー』は動き出した。

 ガイラに素早く接近すると、その両のパンチのラッシュを浴びせかける。

 その攻撃に一瞬怯んだガイラだったが、すぐに怒りの雄たけびを上げるとジェットジャガーに飛び掛かった。

 そのまま2体はガッチリと組み合い、力比べのような体勢になる。その力はほぼ互角だ。

 

 

 グォォォォォォ!!

 

 

 先に動いたのはガイラだった。ガイラはそのまま口を開けると、組み合ったままジェットジャガーの肩口へと噛みつく。

 

 

 マ゛!?

 

 

 その鋭い牙はさして厚くないジェットジャガーの装甲を貫き、内部機構にダメージを負わせた。そのことで組み合いの力が緩むジェットジャガー。

 

 

 グォォォォォォ!!

 

 

 それを好機と見たガイラはジェットジャガーを持ち上げると、その怪力でジェットジャガーを投げつけた。それと同時にガイラは追撃のために走り出す。

 ガイラは投げつけ倒れたところで馬乗りになり、その拳の連打を浴びせようというのだ。

 だが……。

 

「ジェットジャガー!!」

 

 

 マ゛!!

 

 

 絵美の声に答え、ジェットジャガーはクルリと空中で反転すると見事に地面に着地する。

 ジェットジャガーの持つ反重力を利用した『飛行能力』と、そして人間特有の知識とその完全な人型形状をしているところからくる『受け身』……絵美に使役されることによって、この2つを効果的に使用できるジェットジャガーにとって、地面に叩きつけるような投げ技ならまだしも、ただ力任せに遠方へ放り投げるだけの投げ技は効果を為さないのだ。

 これに面喰ったのはガイラである。

 ジェットジャガーと同じ完全な人型形状をしていてもそこは怪獣、そこまで賢くなどないのだ。

 ガイラにとって受け身をとって着地など考えも及ばぬことである。

 追撃のために全力疾走だったガイラは急には止まれない。そして、そんな加速のついたガイラに、素早く体勢を立て直したジェットジャガーの渾身の回し蹴りがその喉を捉えた。怪獣版レッグラリアートである。

 ジェットジャガーのレッグラリアートをモロにうけたガイラは、その衝撃でもんどりうって倒れた。

 

「ここよ、ジェットジャガー!!」

 

 

 マ゛!!

 

 

 ふらふらと立ち上がるガイラに、ジェットジャガーが手刀の連打を浴びせ、強烈なキックによってガイラが吹き飛ばされる。

 

「とどめよ、ジェットジャガー!!」

 

 

 マ゛!!

 

 

 絵美の声に答え、ジェットジャガーがダメージによって棒立ちのガイラに向かってその両腕を突き出した。その両手にバチバチというスパークが発生すると、そのまま光線となって飛んでいく。

 ジェットジャガーの電磁光線である。

 電磁光線の直撃を受けたガイラはバチバチとまるで電撃にでも撃たれたように二度三度と痙攣し、ドゥッと倒れ込むと爆発四散した。

 

「よくやったわ、ジェットジャガー!!」

 

 

 マ゛!!

 

 

 絵美の言葉にどこか嬉しそうに頷くと、ジェットジャガーは光の粒子に姿を変えて絵美のバトルナイザーへと戻っていくのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「こ、これは……」

 

 初老に差し掛かった海の男といった風貌の彼……沢村は目の前の光景が信じられなかった。それは彼の他の町の人々も同じだろう。

 彼らの目の前には、元は怪獣だっただろう破片が転がっている。そして、それは憎き怪獣である『ガイラ』のものであることは間違いないなかった。

 彼らはこの海辺にある、港町の者だ。

 この世界は多くの人々がその生活圏を地下都市へと移したが、様々な理由から地上に残り続けている人々もいる。港町というのも地下に置けるものではなく、どうしても必要にかられて地上で暮らし続ける人々の筆頭だ。

 彼らは海での漁業や貴重な輸送手段である海運で生きていたのだが、そんな港町にある怪獣が襲い掛かった。それがこのガイラである。

 餌である人間が近くにいることを知ったガイラは漁に出た人間を襲い、夜には町にやってきては人を喰らった。

 ガイラの狡猾なところは、決して人間を狩り過ぎなかったことだろう。人間は狩り過ぎるとすぐには増えないということが分かるぐらいの知恵はあったようだ。または人間など主食ではなく嗜好品の類、人間で言うところの『お菓子』感覚なのかもしれない。

 1人また1人と喰われていく町の人々。しかし町以外のどこにも行くことができず、震えながら夜を過ごす日々だった。

 しかしその元凶は今、目の前で物言わぬ肉塊になっている。

 突然のことに感情がついて行かず、喜ぶということもできずに呆然とした彼ら。そんな彼らの後ろから、明らかにこの場には場違いな声が聞こえた。

 

「へぇ……こいつが町を襲ってた怪獣かぁ」

 

 沢村が振り返れば、そこには若い男女が立っていた。つい数日前にやってきた流れのトレイダーの2人組である。

 

「どういうわけかは知らないが、いなくなって良かったな」

 

「あ、ああ……」

 

 男の方の、肩を叩きながらの言葉に沢村は頷くのみだ。

 すると、今度は反対の肩を叩きながら女の方が言ってくる。

 

「そ・れ・でぇ……『約束』は覚えているかしら?」

 

「……」

 

 その言葉に、沢村は苦虫をかみ殺したかのような顔をする。

 ガイラによってほとんど漁に出れない状態が続いたため、酒場で管を巻いていたときに酒の勢いで言ってしまったのだ。

 

 

『俺は一流の海の男だ。 ガイラさえいなきゃ、どこへだって何だって運んでやらぁ!!』

 

『……その言葉、本当だな?』

 

 

 この2人を前に、そう言ってしまったのである。

 

「さて……それじゃ約束守ってもらおうか。 なに、報酬は払うぜ」

 

「そうそう。 ただちょっとあんたの自慢の船……LCACだっけ?

 あのホバークラフトみたいな奴で、私らを車ごと四国に運んでくれればいいのよ」

 

「で、でも四国は噂の……」

 

 四国の噂を知る沢村はブルリと身体を震わせるが、再び2人は抜群のタイミングで肩を叩く。

 

「まさか怖気づいたとかないよなぁ、海の男さんよ」

 

「まさかぁ。 あれだけ言ってたんだし、そんな訳ないじゃない。

 ねぇ、海の男さん?」

 

「わ、わかったよ……」

 

 ニヤニヤと笑いながら2人に退路を塞がれた沢村には、もう頷くしか選択は残っていなかった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……やっとだな」

 

「ええ、これで四国に行けるわね」

 

 漁師の男を頷かせ、翔と絵美は移動の準備に入っていた。

 『四国』……怪獣によって橋が落ち、孤島と化したそこが2人の目的地である。

 何故なら……。

 

「四国……そこにあの『悪魔』がいる!」

 

 翔の父の仇であるあの赤い『悪魔』のような怪獣が四国にいるという噂を聞いたからだ。

 そのため是が非でも2人は四国に渡らなければならないが、港町に辿り着いてみれば『ガイラ』によって海上は完全に閉鎖されている状態だった。

 別段、海を超えるだけならジェットジャガーなりにハンヴィーを抱えさせて飛行していけばいいのだが、極力目立つような真似はしたくはない。そのため、ガイラを倒して船で海上から上陸という廻りくどいことをすることにしたのだ。絵美がジェットジャガーでの対怪獣戦をしたいというのもある。

 とにかく、これで準備は整った。

 

「行こう、絵美……四国へ!」

 

「ええ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ここは日本のどこか。

 炎に焼かれ崩れ落ちていく怪獣。その前でそれを為したカメのような怪獣……ガメラが勝利の雄たけびを上げる。

 

「戻れ、ガメラ」

 

 

 キュォォォォォォォン!!!

 

 

 彼……草薙栄一の声に答え、ガメラは光の粒子となってバトルナイザーの中に戻っていった。

 

「ふぅ……」

 

「お疲れ様です、栄一さん」

 

 一息をつく栄一に彼女……手塚雅は労いの声をかける。

 

「……これでこの辺りの怪獣は一掃できたな」

 

「ええ、そのようです。

 でも……」

 

 そう言って雅はその形のいい眉を潜めた。

 この荒らされた土地が以前のように戻るのには一体どれだけの時間がかかるのだろうか……?

 改めて、怪獣による被害を目の当たりにすると雅の胸中には何とも言えない思いが渦巻いた。

 そんな雅の胸中を知ってか知らずか、栄一は努めて明るく雅に言った。

 

「とにかく、これでやることは終わった。

 合流して『島』に戻ろう」

 

「ええ……」

 

 そんな風に頷き合う2人。しかし、その時、2人の持つ通信端末が着信を知らせる。

 すぐにそれを取り出し、その内容を確認した2人は揃って顔を見合わせた。

 

「これは……『奴ら』が!?」

 

「栄一さん!!」

 

「……ああ、行こう。

 場所は……四国だ!」

 

「ええ!!」

 

 雅は頷くと、バトルナイザーからモスラを召喚し、栄一と供にその背に乗った。モスラがゆっくりと、それでも確実に目的地へと向かっていく。

 その先にあるのは……四国。

 

 

 今、ここに怪獣使いたちが集結することになった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 翔と絵美が四国に上陸して早4日、未だ目的の『悪魔』は見つかっていなかった。

 しかし、運命の邂逅の時は刻一刻と迫る。

 そして……遂にその時が訪れた。

 

「何だあいつは?」

 

 それを見つけたのは、山中の採石所だった。

 そこではまるでテトラポットのような岩石が鎮座している。しかし、その岩石はまるで心臓のように脈打ち、どう考えても普通では無かった。

 そう、その岩石に見えるそれは怪獣なのだ。

そして……。

 

「!? もう一体の怪獣!?」

 

 絵美が思わず声を上げる。

その岩石のような怪獣を守るように、1体の怪獣が徘徊していた。その怪獣はまるでフランケンシュタインの怪物のようなチグハグな造形だ。顔・腕・胴・足とどう見ても『別々の怪獣のパーツを継ぎ合わせた』ような印象を受ける。

 そして、そのチグハグ怪獣と2人は目が合ったのを感じた。

 

 

 キシュォォォォォン!!

 

 

「やべぇ! 気付かれた!!」

 

 ドシンドシンと振動を響かせながら迫る怪獣を前に、翔はバトルナイザーを構える。

 そんな翔の額から汗が一筋流れた。

 この怪獣は並大抵ではない……それが分かる。

 だから翔は、最初から切り札をきった

 

 

『バトルナイザー、モンスロード』

 

 

「来い、ゴジラ!!」

 

 

 ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 雄たけびと供にゴジラが降り立った。

 

 

 キシュォォォォォン!!

 

 

 そしてその相対するチグハグな怪獣も、迎え撃つように雄たけびを上げる。

 

「行け、ゴジラ!!」

 

 

 ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 翔の声に答えたゴジラが突進し、チグハグ怪獣とぶつかり合う。

 しかし……。

 

「ッ!?」

 

「あのゴジラと、まともに拮抗した!?」

 

 あの超パワーを誇るゴジラに一歩も引かぬチグハグ怪獣。そしてチグハグ怪獣は鉄球のような形状をした左手をゴジラに叩きつけようと振りかぶった。しかし、それをゴジラは右手で受け止める。

 だが、それがチグハグ怪獣の狙いだった。間髪いれずに、鎌状になった右手がゴジラに振り下ろされ、ゴジラに火花が散る。

 その衝撃に一歩退いたゴジラは、怒りの雄たけびを上げると背ビレを青く光らせながら放射熱線を放つ。

 しかし……。

 

「何ぃ!?」

 

「ゴジラの熱線を……吸収した!?」

 

 ゴジラの放射熱線が直撃した……そう思ったが、直撃したはずの腹の部分が開閉し、ゴジラの熱線を吸収していく。

 

 

 キシュォォォォォン!!

 

 

 チグハグ怪獣は得意げに雄たけびを上げると、お返しとばかりにその腹の部分から白いガスが勢いよく吐きかけられる。それを浴びたゴジラが動きを鈍らせた。

 

「これは……冷凍ガス!?」

 

 ゴジラは寒さは苦手としているらしく、その動きが見る見る鈍っていく。そしてそこに口からの火炎放射が加わった。

 勢いよく放たれる冷凍ガスと火炎は互いに渦を巻き、強力な攻撃力をともなってゴジラに襲い掛かる。

 

 

 ガァァァァァァァァァァァァ!!?

 

 

 その威力にゴジラが吹き飛ばされ、もんどりうって倒れた。

 

 

 キシュォォォォォン!!

 

 

 チグハグ怪獣は勝機と見たのか、倒れたゴジラに接近してくる。しかし、それはゴジラを甘く見過ぎている。

 

「ゴジラァァァ!!」

 

 

 ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 翔の声に応えるようにゴジラは咆哮すると接近してくるそのチグハグ怪獣の顔面に、その太い尻尾を叩きつける。鞭のしなやかさとハンマーの強靭さを兼ね備えるそれにしたたかに顔を殴られたチグハグ怪獣はたまらず体勢を崩した。

 

「ここだ! ゴジラァァ!!」

 

 

 ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 その隙に立ち上がったゴジラは、そのままチグハグ怪獣へと突進。その巨体でぶつかり、がっぷりと組み合う。

 その瞬間、ゴジラの背びれが青白く発光し始めた。

 

「この距離で全体になら、さっきの腹からの吸収はできないだろ!

 やれ、ゴジラ!!」

 

 

 ガァァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 ゴジラの接近戦での必殺技、体内放射が発動した。放射熱線のエネルギーがゴジラを中心に拡散し、周囲くまなくその破壊エネルギーをまき散らす。その奔流を全身でモロに浴びてしまったチグハグ怪獣が派手に吹き飛び、倒れた。

 

「やったか……?」

 

 チグハグ怪獣が倒れたことによってもうもうと舞い上がる土煙、そのせいで視界が悪くなってしまいその向こうに目を凝らす。そしてその土煙の向こうではチグハグ怪獣がゆっくりと立ち上がっていた。

 その辺りの怪獣なら勝負がつくほどの威力を今の一撃は持っている。それで倒れないのだから、やはりこのチグハグ怪獣は強い。

 翔は再び、意識を集中させながら手にしたバトルナイザーを一層強く握りしめた。

 その時だ。

 

 

 パチパチパチッ!!

 

 

 この場に似つかわしくない、拍手が響いた。

 

「素晴らしい力ですね、君は」

 

 見れば、1人の男が手を叩きながらこちらに近づいてくる。

 歳は40から50といったところか、髪には白いものが混ざっている。こんな荒廃した世界には似つかわしくないくらい、綺麗な身なりだ。細身の身体に神経質そうな顔、そして眼鏡。着込んだドブネズミ色の外套らしきものも見方によっては白衣のようにも見え、そのせいでどうしてもインテリな印象を受ける男である。

 

「まさか私の『タイラント』とここまで戦えるとは……。

 いやはや、君の力は素晴らしいですよ!」

 

「ッ!? お前……!?」

 

 その言葉と、そして男の手にするバトルナイザーを見て翔は今戦っているチグハグ怪獣……『タイラント』はこの男の使役する怪獣なのだと悟る。

 翔は注意深く、男の表情を探る。その男の顔には敵意のようなものは無く、純粋に翔のことを称賛しているのがわかる。だが……翔も絵美も、男から背筋の凍るような感覚を味わっていた。

 威圧感や覇気といった、それに類するようなものではない。しかし、この男の危険な『何か』を2人は長年の経験からの危険に対する嗅覚で見抜いていた。

 翔はそれを努めて表に出さないようにしながら、男へと話をする。

 

「……どういうつもりだ?

 いきなり襲って来たかと思えば、今度は顔を見せるなんて……」

 

「いえいえ、あなたとお話したいことができましてね」

 

 すると、男は優雅に礼をとる。

 

「私は……そうですね、仲間からは『教授(プロフェッサー)』と呼ばれております。

 そちらのお名前は?」

 

「……芹澤翔だ」

 

 翔はしばしの逡巡の後、『教授(プロフェッサー)』へと名を名乗った。するとそんな翔に『教授(プロフェッサー)』は満面の笑みを見せる。

 

「翔くん、まずは突然襲い掛かった無礼をお詫びしましょう。

 今はデリケートな時期でしてね……」

 

 そう言って『教授(プロフェッサー)』は視線を、あの岩石のような怪獣へと向ける。

 

「『ブルトン』の成長は我々の悲願にも繋がるものですから、少々過剰に反応してしまったのですよ」

 

「『ブルトン』? あの岩みたいな怪獣のことか?」

 

「ええ、私の『同志』の怪獣でしてね。

 今の私は言わば護衛ということですよ」

 

 『同志』……その言葉から察すると、どうやらもう1人怪獣使いがいるらしい。

 翔は慎重に言葉を繋ぐ。

 

「それで、俺に一体何の話なんだ?」

 

「そうですね、単刀直入に言いましょう。

 私たちの『同志』になってくれませんか?」

 

 『教授(プロフェッサー)』の言葉、それは仲間にならないかという勧誘の言葉だった。その言葉に、翔は胡散臭げに眉をひそめる。

 

「『同志』ねぇ……。

 俺はアンタの目的を知らない。それすら知らずに『はい、わかりました』と頷くわけないだろ」

 

「私の目的ですか?

 それはもちろん……『宇宙の支配者』となってこの宇宙に平和をもたらすことですよ」

 

「……笑えねぇ冗談だな。

 おまけに……その『宇宙の支配者』ってフレーズ、聞き覚えがあるぞ。

 アンタ……『早坂(はやさか) (まさる)』って名前に心当たりはないか?」

 

 翔が思い出すのは、少し前に戦った怪獣使いだ。

 翔との戦いに敗れ消えていったが、彼はいくつも不可解な言葉を残している。そのうちの一つがこの『宇宙の支配者』というフレーズだ。

 そして案の定である。

 

「ああ、彼なら知っていますよ。

 なかなかに見込みがあり私が『同志』として誘っていたのですがね、どうも力を付けたいと言ってどこかに行ってしまいまして……。

 行方をご存知で?」

 

「……この間、戦ったよ。

 野郎の言ってた、『彼』ってのはアンタか?

 『宇宙の支配者になれる』みたいなことを言われたってほざいてたぞ」

 

「その可能性があることはお教えしましたね。

 しかしそうですか……。

 レイオニクスバトルで彼に勝ったということですか……」

 

 それは同時に早坂勝が死んだという話に他ならない。これで交渉決裂かと、翔も絵美も最悪の場合を考えて、逃げの体勢に入る。

 しかし……。

 

「まぁ、彼のことはどうでもいいでしょう。

 それでどうでしょう、『同志』になってはくれませんか?」

 

 それまでと全く変わらぬ微笑みで『教授(プロフェッサー)』は翔を誘った。『教授(プロフェッサー)』の表情、それは無理をして作っているような類の顔ではないことが分かる。

 

「アンタ……早坂勝の仲間なんだろ?

 それを殺した俺を仲間に誘うっていうのは、どういうことだ?

 仲間が死んで、悲しくはないのか?」

 

「彼の想いはこの胸に残っている。

 私の胸に残り続けている限り、彼の想いは死なない……つまり私の中で生き続け、彼は死んでいないのです。だから、何の問題もありません。

 それよりも彼を下すほどの優秀な方が『同志』となってくれるほうがとても喜ばしいことです」

 

 そんなことを迷い無く言ってくる。この『教授(プロフェッサー)』、心の底からこれを言っているのである。それも一片の迷いも無ければ曇りもなく、だ。

 その時、翔と絵美はずっと感じていた背筋の凍るおぞけの正体に気付いた。

 この『教授(プロフェッサー)』という男……思考が普通とは完全に狂っている。そしてそのことに何の疑問も抱いていない。正真正銘、混じりっ気なしの本物の『狂人』なのだ。

 それがわかりながら、誘いに乗るという気はどうしても起きない。

 

「悪いが断る。

 アンタの言う『宇宙の支配者』とかいう妄言には付き合いきれないからな。

 それに……俺たちは目的があってここに来たんだ」

 

「ほう、目的ですか?

 一体どんな目的ですか? 差し支えなければ教えてほしいのですが……」

 

「……怪獣を探している。

 赤い色で羽の生えた悪魔のような形状のやつだ。

 この四国でそいつを見たっていう話を聞いて、俺たちはここに来た」

 

「赤い色で、羽の生えた怪獣ですか……ふぅむ……」

 

 何事かを『教授(プロフェッサー)』は考え込むと、『教授(プロフェッサー)』はおもむろに自身のバトルナイザーを掲げた。

 すると、タイラントのそばに光とともに2体の怪獣が降り立った。

 一体はスラリとしたシャープな体躯の怪獣だ。色は赤く、昆虫の羽根のような透き通る羽を持っている。その身体から何本もの触手が伸びているのが特徴的だった。そこから感じる震えあがりそうになる威圧感もタイラントと同格かそれ以上、途方もなく強力な怪獣であることを嫌でも分からせる。

 しかし、翔と絵美はその怪獣に意識が行っていなかった。

 

 何故なら……『教授(プロフェッサー)』の呼び出したもう一体の怪獣に視線が釘付けだったからだ。

 それは赤い色をしていた。コウモリのような羽を背負うその姿はまさしく『悪魔』そのもの。その面構えも凶悪で、まるで目に見えるすべての生命体に生存を許さないかのような、殺戮者の相貌だ。

 その禍々しいまでの姿、そして他の2体を凌駕するほどの圧倒的な強者の風格……すべてがこの怪獣こそが『教授(プロフェッサー)』のエース怪獣なのだろうということを示していた。

 

「……一つ聞くがアンタ、そいつはいつから使役してるんだ?」

 

「彼ですか?

 私の最初の怪獣ですからね、怪獣出現と同時に私と供にいましたよ」

 

 あごでその赤い怪獣を指して問う翔に、『教授(プロフェッサー)』が答える。俯き加減の翔の握りしめた拳が震えた。

 そして顔を上げた翔の目には、怒りの炎が宿っていた。

 

「あ、あははは……アハハハハハ!!

 見つけた……見つけたぞ、『悪魔』ァァァ!!!」

 

 そう、『教授(プロフェッサー)』の使役するその怪獣こそ、翔と絵美の故郷を焼き払い、翔の父を目の前で殺したあの『赤い悪魔』だったのである。

 だが、そんな激情を露わにする翔を前にして『教授(プロフェッサー)』はにこやかに笑った。

 

「その様子ですと……お探しだった怪獣は私の『デストロイア』だったんですね」

 

「ああ、そうだよ。 父さんの仇が!!」

 

「? それはどういう……?」

 

「俺は……俺たちはその『悪魔』に故郷を焼かれ、家族を目の前で殺された!

 富士山の麓のあの街を焼いたこと……忘れたとは言わせないぞ!!」

 

 翔の言葉にしばし考え込む『教授(プロフェッサー)』。

 

「ジャパニウムのエネルギーを『ブルトン』に吸収させた時でしょうか……?

 すみませんがよく覚えていません」

 

「てめぇ……俺たちのすべてを奪っておいて、覚えてないだと……?」

 

「それは認識の違いですよ、翔くん。

 その日は君にとっては人生でもっとも印象深い日かもしれませんが、私にとっては何でも無い、いつもの一日に過ぎません。

 君は一年前の今日の夕食を覚えていますか?

 同じことですよ」

 

 怒り狂う翔に対して、『教授(プロフェッサー)』はにこやかに語る。それは別に翔を怒らそうというのではなくまるで物分かりの悪い子供にやさしく諭すように、だ。

 その様子は、翔の怒りに油を注いだ。

 

 

『バトルナイザー、モンスロード』

 

 

「来い、アンギラス!! ラドン!!」

 

 

 フォォォォォン!!

 

 

 キシャァァァァァァァァ!!

 

 

 翔の呼び声に答え、翔のすべての怪獣が召喚される。

 

「父さんの仇……てめぇは殺す!!」

 

「やれやれ……私の仲間にはなってもらえないのですか、翔くん」

 

 だが、その翔からの殺気を向けられても『教授(プロフェッサー)』は顔色を変えない。

 

「当たり前だ! 父さんの仇の仲間になんぞ、何でなるんだよ!!」

 

「私は自分の殺してしまった人たちには、本当に申し訳ないことをしたと思っているのですよ。

 だからこそ、私は私の目的を達しなければならない。私はそれが自分の殺してしまった人たちに報いることだと信じていますから。いわば私の目的は、今まで自分の殺してしまった人たちを糧に成長した果実のようなものです。

 それを考えれば、翔くんはそのお父さんのためにも私に協力すべきではないですか?」

 

「……もう喋るんじゃねぇよ、イカレ野郎!」

 

 翔と絵美にとっては全く理解できないほどに狂った理論を叩き斬るように叫ぶと、翔は宣言するように言った。

 

「今、この場でブチ殺す!!

 絵美!!」

 

「私ももう、我慢の限界よ!」

 

 

『バトルナイザー、モンスロード』

 

 

「来なさい、メカゴジラ! MOGERA! ジェットジャガー!」

 

 

 キシャァァァァン!!

 キュィィィィィン!!

 マ゛!!

 

 

 絵美の求めに応じて、すべての怪獣たちが召喚された。

 

「おや、お嬢さん。 あなたも怪獣使いでしたか。

 どうですか、お嬢さん。 あなたも私の同志になってくれませんか?」

 

「冗談!  私にとってもアンタは親の仇よ!!

 アンタみたいなイカレ野郎の仲間なんか、誰がなるもんですか!!」

 

「やれやれ……お嬢さんもですか……」

 

 『教授(プロフェッサー)』はまるで駄々をこねる子供を前にしたような顔をし、それがさらに翔と絵美の怒りを煽る。

 

「行くぞ!!」

 

「行くわよ!!」

 

 翔と絵美の声に反応して、ゴジラたちが動き始めたのだった……。

 

 




四国にゴジラ降臨はこの小説を書き始めた時からやろうとしていたネタでした。

遂にラスボスがお目見えとなりました。
主人公の宿敵は第一話でもうバレバレだったと思いますが『デストロイア』です。
まぁ、この物語のゴジラは『メルトダウンした親のエネルギーで復活したゴジラジュニア』ですからね、その怨敵はやはり『デストロイア』以外は考えられません。

しかし……『デストロイア』に『タイラント』に『イリス』……私がレイオニクスなら即座にまわれ右して逃げますね。

次回もよろしくお願いします。
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