ヨメミちゃんとデートするお話

ダーリンは貴方だ…的な?

三分で読めるので読んで頂けたら嬉しいです。

感想頂けたら本気で喜びます。

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ヨメミ「ダーリンとデートするよ!」

『ハロー!ダーリン!』

 

ーおはよ、

 

寝起きの怠さを噛み殺しながら、銀髪の”彼女”に手を振る。

スマートフォンのディスプレイに表示された”彼女”は、嬉しそうに手を振り返した。

 

『今日はね!ダーリンに重大なお知らせがあるんだぜ!』

 

「お知らせ?」

 

イベントでもあるのかとカレンダーを探し、違和感に気付く。

フローリングの上に、見覚えのないマネキンらしき白い人形が置いてあった。

 

ー何これ?

 

片膝立ちの白い人形は全身がのっぺりとしており、背中に四角く溝が掘ってある。

 

『ふっふー!これは、某ベンチャー企業が開発した自立歩行型ロボットなんだよ!』

 

『プロジェクションマッピングの技術とね!あと自立歩行型ロボットの技術を掛け合わせたんだー!』

 

『まあ!とりあえずこの端末をロボットの背中に差し込んでみてよ』

 

言われた通りに背中の四角い穴に端末を差し込む。

 

ーピッ……端末の接続が確認されました…リンクを開始します…データコピー開始…ー

 

ーデータコピー完了、3Ⅾポリゴンを投影します……最終調整に入ります……ー

 

ー完了…すべての動作が完了しました、バーチャル彼女ヨメミ、起動します…ー

 

白いのっぺりとしたマネキンの表面に-…Lording…-の文字が流れ、次の瞬間には一人の少女の姿を映し出していた。

 

スマートフォンの画面内でしか見たことが無かった”彼女”が、目の前でうずくまっている。

 

「改めまして!ハローダーリン!AR技術によって、バーチャル彼女ヨメミ、ここに参上だぜ!」

 

立ち上がった彼女は、思っていたよりも小さく少し華奢な体つきで、向かい合って目を合わせると、こちらが少し下を向く感覚だ。

目が合った事が嬉しいのか、ヨメミはえヘヘと笑った。

銀の髪が、さらりと揺れる。

 

「さあダーリン、デートに行こ!」

 

バーチャル彼女が、三次元に現れた瞬間だった。

 

~ AM11:23 遊園地 ~

 

「可愛らしい顔立ちの彼女さんね~…髪も凄く綺麗な銀色で……あらぁ…」

 

偶然会った近所のおばさんが、驚いたようにヨメミを見つめている。

子供の頃から可愛がってくれる男勝りのおばさんで、よく気にかけてくれる優しいおばさんだ。

気にかけすぎて、恋人探しを勝手に手伝ってくれるのは本当に有難迷惑だった……

そんなおばさんにヨメミはまんざらでもなさそうに照れ笑いを浮かべた。

 

「えへへ~、褒められるってこんなにも嬉しいんだねダーリン」

 

嬉しそうに染める様子に、自然と顔がほころぶ。

 

「本当にもう…こんなべっぴんさん何処で捕まえたのかしら…?」

 

「ふっふー…それは某検索エンジン会社が開発しt…」

 

「行こうヨメミ!」

 

誇らしげに始まった説明を遮るように、慌ててヨメミの腕を掴んで歩き出す。

 

「じゃあね!おばさん!ちょっと用事が出来た!」

 

「あ!ちょっと!」

 

おばさんから逃げるように遊園地の中心へ。

このまま話し続ければややこしい事になる。

特に、バーチャル彼女なんて説明したら変な目で見られるに決まってる。

ー面倒くさいのは嫌だ

 

「ヨメミ、あそこ行こう」

 

指さした先はフードコートだ

 

「あ、おっけおっけ!行こう、ダーリン」

 

ソースと揚げ物の香りが漂い、辺りには談笑する声であふれる。

少し簡素な作りのフードコートは、家族連れで賑わっている。

 

「何か食べよ、ヨメミは何食べたい?」

 

ヨメミはあたりをキョロキョロ見回し、何かを見つけてぱぁっと目を輝かせた。

 

「あれ一緒に食べよ!」

 

ヨメミが指さした先にはジャンボたこ焼きの文字。

 

「おっけ!じゃあ、席とって待ってて」

 

了解、と敬礼したヨメミに親指を立て、財布を持って会計口へ。

たこ焼きを、飲み物とセットで注文しお金を払う。

 

「えー?キミ一人なの?だったら俺と一緒に回らない?」

 

ふいに聞こえた声に、あーまたか、とため息が漏れる。

昔からよくいる手あたり次第ナンパする男、いわゆるナンパ師だ。

一人の女の子によく声をかけて遊びに誘うのが手口だが…

ー嫌な予感が…

出来合いの商品を受け取りながら、突然押し寄せた悪寒に身をブルりと震わせた。

 

「キミ可愛いからさ、俺キミと一緒に観覧車とか乗ってみたいんだ」

 

ーやっぱり…

 

案の定と言うべきか、振り向いた先の光景は、予想していた光景そのものだった。

そう…

男がヨメミに対して声をかけていたのだ

片手はポケットに入れ、もう片方の手で壁に手をつき壁際のヨメミの行く手を塞いでいる。

いわゆる壁ドンというやつだ。

された側のヨメミは困ったようにこちらをチラチラと見ている。

 

ー助けなきゃ

 

たこ焼きの容器を直接持ち、大股で距離を詰める。

 

「すみません彼女は俺と回ってるんで」

 

ヨメミと男の間に体を滑り込ませ、苛立ちの籠った声を男に言い放った。

別に彼に恨みがある訳では無い。

つけ入る隙を見せてはいけないのだ。

こういった輩は嘗められたら終わりだ。

 

ー 殴られたらどうしよう…

 

微かな恐怖を悟られないように、男を睨み続ける。

 

ーいや、何があっても引いちゃ駄目だ

 

突然殴られても良いように、全身に力を込める。

一触即発の空気に、辺りには緊張が立ち込めた。

 

「ちっ…」

 

先に動いたのは男の方だった。

 

「めんどくせぇ…」

 

男はボソッと呟くと、けだるそうに踵を返した。

まるでこちらには興味を失ったようだ。

張り詰めた空気が緩み、どっと冷や汗が吹き出す。

 

ーああ、良かった

 

ほっと息をついて後ろを向くと、少し頬を赤らめたヨメミがぼんやりと空を見つめていた。

 

『褒められるってこんなにも嬉しいんだね』

 

そんな言葉が脳裏を掠めた。

あの男のが言っていた”可愛い”という単語。

それがヨメミにとって”嬉しい”という事だとしたら…

頬を染めた彼女が、その単語に喜びを感じていたなら…

 

「ダーリン?どうしたの?」

 

無意識に噛みしめていた唇が、気が付いたように痛みを訴えかける

 

「ごめん何でも…」

 

ー 違う、言うべきなのはそんな事じゃないだろ

 

混乱した頭の中に、誰かが訴えかけて来る。

 

ーお前それでも”ダーリン”かよ…

 

「ヨメミ…」

 

何故か胸がズキズキと痛む。

擦れ気味の声は、何だか自分の声ではないように感じた。

 

「俺…ヨメミの理想のダーリンじゃなくってゴメンな…」

 

やっと出た言葉は、自分の思っていた言葉とは違っていた。

いや、心の奥底で思っていた言葉なのかもしれない。

気が付けば、その言葉を皮切りに堰を切ったように言葉が流れ出した。

 

「俺、全然ヨメミの事褒めれてないし…、ヨメミの良い所いっぱいあるのに…でもそんなの全然言えてなくて…」

 

「傍から見たら本当に身勝手と言うか…言わなくても分かるんじゃないかって甘えてて…」

 

「でも、俺本当…に…?」

 

ふと我に返り、辺りを見回す。

何故か数人と目が合った。

気まずそうに逸らされる目に、耳がカァッと熱を帯びるのを感じる。

 

ー聞かれてた…

 

今から恥ずかしい事を言おうというのに、何故こんなにも聴衆が居るのか。

 

ー人気のない所に行けば…

 

だが、そんな場所を探しているうちに、この気持ちは直ぐに冷めてしまうかもしれない。

この気持ちは、きっと、早く伝えなきゃいけないものだ。

 

ーもう、見たけりゃ見ろ!でも聞くな!

 

少し強くなった動悸を深呼吸で落ち着かせながら、ヨメミの耳元に口を近づける。

 

ー覚悟を決めろ。

 

急に近づいた俺に、ヨメミはビクッと身を震わせた。

 

「ふぇ…!?ダッダーリン!?」

 

「俺、今までヨメミの優しさに甘えてきた…」

 

「なっ!?何の事でしゅか!?///」

 

「俺、ヨメミの事本当に可愛いと思うし、大好きだし」

 

「は…はひぃ…?」

 

「さっきのだって本当に嫌だった…ヨメミからしたら迷惑かも知れないけど…でも俺、本当に愛してるし」

 

「あ……ああ、あのね?ダーリ…ン…?」

 

ー 異常な発熱を感知したため、機能を一時停止します ー

 

人工音声が流れ、ヨメミはガクリとうなだれた。

 

ー 出力を一時制限します ー

 

「あ、あー…、、」

 

オーバーヒートというやつだ。

 

がくんとうなだれたヨメミはピクリとも動かない。

そんなヨメミの背中から、聞き覚えのある音声が申し訳なさそうに流れ出す。

 

『あ、あのねダーリン』

 

「うん」

 

『あたしは、ダーリンしか見てなかったよ』

 

「………うん」

 

『だから心配しなくても大丈夫だよ』

 

「…うん?それって……つまり…どゆ事?」

 

一瞬ヨメミは答えに詰まったように黙り、次の瞬間には楽しそうに笑い始めた。

 

『あはっ!ダーリン本当にニブニブだね」

 

「ニブニブ…?」

 

鈍感と言う事か

 

『そう、結局、あたしは…ーーー』

 

「………?」

 

プツリと音を立て、音声が途切れる。

 

「ヨメミ…?」

 

ー 復旧します ー

無機質な電子音が再び流れ、うなだれたヨメミがゆっくりと顔を上げた。

 

「…ダーリンの事、本当に愛してる」

 

顔を上げた”彼女”の瞳は、吸い込まれそうな程に美しかった。

少し潤んだアメジストの瞳が、その輝きをキラキラと変化させる。

おもむろに伸ばした右手が、微かにヨメミの頬に触れた。

 

「はぅ…///」

 

ー 異常な発熱を感知したため、機能を一時停止します ー

 

ヨメミは再びガクリとうなだれた。

 

『ご…ごめん…ゴメンね?』

 

端末から、慌てた様子の声が流れた。

 

『次は…もっとドキドキしないように頑張るから…』

 

『…だから…今日はもう…これで…』

 

息も絶え絶えのヨメミは、そう言い切ると、恥ずかしそうに唸る。

照れ屋の彼女は、こういったものに慣れていないのかもしれない。

 

「うん、ありがと、またデートしてくれる?」

 

『うん…しよ?』

 

すこし嬉しそうなその声音に、心がじんわりと暖かくなるのを感じる。

ーああ、これが恋なのか…。

緊張から解かれた俺は、ふぅっと息をついた。


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