ある日の放課後
寧々「保科くん、ちょっと良いですか?」
柊史「ん、何?」
寧々「その…欠片の件なんですけれども、七緒からこの薬を飲んでみてほしいとお願いされて…」
柊史「……本当に大丈夫なんだよな?」
寧々「ええ…流石に七緒のことですから、大丈夫とは思いますが…」
柊史「まぁ、疑ってても仕方ないな……」
サッ、ゴクッ
柊史「特になんにも……んんっ!?」
寧々「ど、どうしました?」
柊史「うっ、かはっ……」
寧々「ちょっと、保科くん!保科くん!」
ピーポーピーポー
佳苗「それで、保科は」
医者「軽い貧血だと思われます。一応倒れ方が不安だったのでいろいろ検査はしておきましたが、特に異常は見当たりませんでした。ですが……」
佳苗「ですが……?」
医者「一時的とは思いますが、健忘が入っているようです……思い出すきっかけ…たとえば友人とかに会わせてみるなど、試みてもらいたいと思います。あとは念の為、両親に連絡もしておいてください」
佳苗「彼は幼い頃に母親を亡くしているので、とりあえずは父親に連絡を取りますが…今どうやら海外出張中のようですので…」
寧々「ほ、保科くん……」
柊史「初めまして、ええと、高校の同級生…ですか」
寧々「保科くんと同じ部活、オカルト研究部に所属している綾地寧々です、それでこっちが……」
めぐる「うわぁぁぁぁぁぁんセンパイ…!!本当にめぐるのこと覚えてないんですか!?またいっしょにモン猟やるって言ってたじゃないですか!」
紬「めぐるちゃん…保科くんも辛いだろうから…そんな迫らないでも……ううっ…」
柊史「うっ……ごめんなさい......本当に誰か覚えてないので……ウプッ」
寧々「と、とにかく、ここの三人は皆保科くんと同じ部活で、お見舞いに来ました」
めぐる「センパイ……センパイ……」
柊史「そ、それでオレはどうしてその部活に入っていたとか、教えてもらえないですか?」
寧々「!?......ええと、私と図書室で…いえ何でもないです。学院で、私がいろいろ相談しているというところから話しかけてきてくれたはずです」
紬(……どことなくぎこちない気がしたけれど…まぁ、綾地さんがウソなんてつかないよね)
紬「わ、私は後から入ってきたので…入ったときには保科くんがいました」
めぐる「めぐるも同じです…グスン……」
保科(二人からはめちゃくちゃ心配されてるのはわかるんだけど…さっきからこの銀髪の…綾地さんだったっけ、どうもウソっぽいのは……)
少しして…
寧々「そんな感じで、この前ちょうどハロウィンパーティをやって……」
めぐる「センパイが必死でギターをやっていた姿がめっちゃカッコよかったんですよ……本当に、どうしてこんな......」
紬「保科くん……」
柊史「ごめんなさい、今日のところは一旦帰ってもらえるかな。ちょっと気分も悪い気がするし……」
寧々「…そうですね。また改めて来ます」
めぐる「次会うまでにぜったい、ぜーったいに思い出してくださいよ!めぐるといっしょに新しいステージ攻略するって約束してたんですからね!!」
紬「じゃ……お大事に……」
柊史(結局あの部活に入った理由はわからなかった…あの感じだと、綾地さんという少女がなにか知っているような…いや、これ以上考えるのはやめておこう…)
翌日
和奏「保科、アタシのことは?」
海道「おい柊史、オレのことは覚えてるよな?」
柊史「……ごめんなさい」
憧子「ダメだねぇ……お姉さんのことも覚えてない?」
柊史「………はい」
和奏「…保科、昔の約束も忘れちゃったの?」
海道「って、和奏ちゃん、約束って?」
和奏「あのとき保科は『次に会ったら、絶対に幸せにする』って言ったよね?」
海道「ちょ、和奏ちゃん、正気か!?」
柊史「…!?」
柊史(なんかめちゃくちゃ嘘っぽい味がしてる気がしなくもないけれど…一応は信じて見るか…?)
憧子「あらあら……保科クンったら、私にもそんなことを言って…この前はあんなことを……」
和奏「保科……?」
海道「和奏ちゃん、目が笑ってないって……」
海道(でも、学生会長だよな…?それに目が笑ってるようだし…冗談で気を紛らわせようって算段でいいんだよな?)
海道「柊史……オレに言ってくれたあの言葉はウソだったのか?」
和奏「って、海道!?」
憧子「ほらほら、お姉さんともっと一杯あんなことや、こんなことをするために早く元気にならなきゃね?」
柊史「……オレ、もしかして修羅場を作ってたのかな」
和奏「アタシ、本気だから」
海道「お、オレだって本気だぞ?」
憧子「あらぁ…お姉さんじゃ満足できなかったのかな?」
和奏「しゅ、柊史……お願い…ね?」
海道(ちょっと待てよ…これ本当に演技か…?)チラリ
憧子(これ、もしかしなくても本気で吹き込もうとしているのかな)コクリ
海道「な、なぁ和奏ちゃ」
和奏「アタシ、待ってるからっ」トタトタ…バタン
海道「マジかよ……まあともかく、柊史、早く元気になれよ」
柊史「あぁ…ありがとう」
憧子「私にできることなら何でも言ってね、オカ研の皆も待ってるよ」
柊史「はい……できる限り……」
柊史(さっきまで漂っていたウソの香りはどんどん薄くなっていっているけれども……あれは本当なのだろうか…)
憧子「それじゃ、また来るね」バタン…
海道「オレも帰るわ。それじゃ、またな」バタン……ウワッナニヲスルヤメッ
柊史(なんか外からすごい音が聞こえたぞ…)
その後、病院のゴミ箱に三つ折りにされた海道が捨てられいるのが発見された。
更に翌日
七緒「本当にすまない!きっと私のことも覚えていないだろうけれども、この記憶喪失の原因は大体私だ!」
柊史「そ、そうなんですか…記憶を戻す方法は?」
紬「ええと…お医者さんからは『なにか衝撃的な出来事を思い出して、それをきっかけに』とは言われているけれども…」
アカギ「ふん、簡単に記憶が飛んでしまうとは、人の記憶はこうもアッサリ消えてしまうモノなんじゃな」
紬「ちょっと、アカギ…」
寧々「衝撃的な出来事……」チラリ
七緒「そういえば寧々、保科くんと知り合った理由は何だったかな」
寧々「ひゃ、ひゃい?そ、それは図書室で……」
七緒「図書室で……?」
寧々「お、オナニーですぅ……」
アカギ「何、お、オナニーだと?」
紬「ちょっと、声が大きいって!」
寧々「うぅ…お家帰るぅ…」
七緒「私が蒔いた種だけれども、そのことを伝えたら少しはきっかけになるんじゃないかな」
寧々「ちょ、ちょっと七緒、正気ですか!?」
七緒「試してみるしかない……」
寧々「…本当に、ダメですか?」
七緒「私は強くは言えないがな…ただ、思いつくのはこのぐらいだ…」
寧々「はぁ……」
寧々「わ、私のオナニーを見てください!」
柊史「…綾地さん?また見せるつもり…?」
七緒「おお!」
紬「保科くん!」
アカギ「ようやく治ったか」
ガラガラッ
太一「おい!柊史……柊史?」
柊史「親父…オレは一体」
太一「ええと、つかぬことをお聞きしますが、先程の発言はどの…」
寧々「もうやだぁ…お家帰るぅ…」