メルスト短編集   作:横電池

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妖精の国1周目関連

アニメ化してるんだしと急いで突貫。ほのぼの路線。





妖精の国のお話(サローディア、ゼフュロダイ)

 

 

 

 

 妖精の国、春の丘に存在する黒の森。

 その森の一軒家にて

 

 

「帰れ」

 

「なんでよー! せっかくお土産に蜂蜜茶持ってきたのよ!」

 

「頼んでない。帰れ」

 

 

 春の丘の王女サローディアと黒の森に住まう地を知る者ゼフュロダイが言い争いをしていた。

 正確には一方のみが喚いているだけだが。

 

 

「ちょっと扉を閉めないでよー! 地を知る者の知恵を借りたいのよ!」

 

「断る。他をあたれ」

 

「お願いしますー! ほかに頼れる人がいないんだもの!」

 

「お前と同じ年齢のエトにでも頼れ。わかったら帰れ」

 

「帰れ帰れって言わないでよ! パリストスとメネライアについて相談したいから、二人のことを知っているあなたしかいないの」

 

「……」

 

 

 ため息をつきながらゼフュロダイは扉を開けた。

 パリストスとメネライア。竜の一件で王女の護衛として張り切っていた剣士の妖精。その二人のことも、ゼフュロダイとしてはどうでもよかったが、このまま扉の外で騒がれるのも鬱陶しく感じたため中に入れることにした。

 

 

「ようやく開けてくれたわね……」

 

「さっさと要件を話せ。そして帰れ」

 

「口癖になってるの?」

 

「帰れ」

 

「わーっ! ごめんなさいごめんなさいー!」

 

 

 オホン、とわざとらしく咳ばらいをしながらサローディアは身を正した。

 竜の一件から何度も黒の森に訪れてはいるため、雑な扱いには若干慣れつつあったりする。

 

 それにゼフュロダイも、春の丘に何度も訪れるようになったのだ。サローディアに勉学を教えるために。

 そのためサローディアは以前ほど毛嫌いはしていない。

 

 

「あの二人なんだけど、いっつも喧嘩してるじゃない?」

 

「だろうな」

 

「以前ほどではないにしても、やっぱり喧嘩はよくないと思うのよ」

 

「そうか」

 

「だから二人の仲をよくする方法を一緒に考えて!」

 

「断る。話は終わりか」

 

 

 あの二人も以前ほど険悪ではなくなった。このゼフュロダイも以前ほど取っつきにくさはなくなったが、それでもこれである。

 

 

「せめて何かアドバイスしてよー! この蜂蜜茶をあげるから!」

 

「……」

 

 

 ゼフュロダイはため息を大きくついた。

 いやそうな雰囲気を一切隠そうとしないため息である。

 

 ちなみにゼフュロダイは蜂蜜茶を好きではない。

 家にたくさんあるのはサローディアの母フロイレイダの悪戯の結果である。そのことをサローディアは知らず、たくさん蜂蜜茶を持ってることだし大好きなのだと勘違いしているのだ。

 

 

「……、あの二人についてどこまで知っている」

 

「え? えっと、ガランドルとスガロルの末裔でしょ?」

 

「そうだ。ガランドルとスガロル。どちらもかつては同じ者に忠義を捧げていた」

 

「うん。じいやから聞いたわ。ちゃんと覚えてるのよ」

 

「威張るな。道を違えるまではガランドルとスガロルはともに良き友だった」

 

「うん」

 

「……、あの二人もかつてのように、忠義を捧げる相手を同じくすれば良き友となるのではないか」

 

「……、二人とも、こんな私に忠義を捧げてくれてるわよ」

 

「ふん、かつての王のように、王たる器を身につけなくてはならないということだろう」

 

「うっ……」

 

 

 サローディアは痛いところを突かれたといわんばかりに呻いた。

 その様子をゼフュロダイは少し面白く感じた。

 

 

「あの二人に喧嘩をしないでほしいなら、早く城に帰って勉学に励むのだな。王たる器を持ちたいのであれば、だが」

 

「わ、わかったわよ! 帰ってもっと勉強して、昔の王様みたいにすごーい立派な女王になるんだから!」

 

 

 威勢よく啖呵をきるサローディア。あの一件以来王女としての自覚から、癇癪を起さないようになっていたが、たまにこうしてその癖がいまだに顔を出す。

 そのまま家を飛び出そうとして、

 

 

「ありがとね! また城に来たらとびっきりの蜂蜜茶を用意しておくわ!」

 

「……、私は蜂蜜茶は好きでは……。もう行ったか」

 

 

 癇癪を起しつつも礼を言えるようになったあたり、じきに悪癖もなくなるだろう。以前であれば礼を求めこそすれど、自ら礼をすることはなかったのだから。

 

 

「だが落着きがないままなのは問題か。それに、あの二人の仲が険悪と勘違いしたままとはな」

 

 

 二人の仲はすでに険悪などでなく、互いを認め合い、高めあう好敵手となっていることは大多数の者が知っている。

 あの二人にとっての王はサローディアで、互いに成長していくサローディアにふさわしい臣下となるべく競い合っているだけなのだが、それがサローディアの目には相変わらず喧嘩しているように見えているのかもしれない。

 

 それを言わなかったのは面倒臭かったというのもあるが、ちょっとした仕返しの悪戯である。

 

 黒の森にも少しずつ春が来ているのだ。春を知らなかった以前は、悪戯などしようと思わなかった。何かを面白がるなんてことはなかった。

 

 

「勝手に春を齎してくれたのだ。これくらいの意趣返しは許されるだろう。王たる器ならな」

 

 

 誰もいなくなった部屋で一人穏やかに蜂蜜茶を飲む。

 

 やっぱり好きになれない味だと思いながら。

 別の茶葉とブレンドしてみるか。そんなことを思いながら台所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 




 



たまにはオチなし。
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