メルスト短編集   作:横電池

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アニメは少数民族大幅改変でしたね。

このお話はアニメ版というよりアプリ版です。

少数民族1周目関連。







少数民族の国のお話(ユージア、シャオリン、シージェ、リュンリー)

 

 

 

 

 少数民族の国のリウの村。

 村の長の執務室にて、真夜中とも言える時間に動く影があった。

 

 わずかな明りだけを灯し、机に向かう影、もといその人物は怪し気な笑みを浮かべている。

 

 

「そこまでです」

 

「……っ!」

 

 

 その背後から声をかけられた。

 誰もいないと思っていた人物は驚きに満ちた表情のまま振り返る。

 

 そこにいたのは、シャオリンの教育係であるシージェだった。

 

 

「ユージア様、もう就寝の時間です。仕事は終えてお休みになられてください」

 

「うう……。い、いや、待ってくれ。あと少し、あと少しだけでいい。もう少しでキリのいいところまで終わるんだ……!」

 

「駄目です」

 

「た、頼む……!」

 

「どれだけ言われようと駄目です。急ぎの仕事はもうないのですからお休みください」

 

 

 シージェはため息をつきながら、その願いを断固として拒否した。

 仕事を取り上げられた影、もといユージアは絶望の表情となってしまった。

 

 事情を話せばわかってもらえるかもしれないと思ったのか、ユージアは仕事をしたい理由を話しだす。

 

 

「せ、せっかくリュンリー殿がタオの村にいるため不在なんだ……。ここのところ休みがちだったから少しくらい仕事をしてもいいだろうに……」

 

「そのリュンリー様から仰せつかってます。ユージア様は夜分遅くにも仕事を求めて徘徊するから注意するようにと」

 

「そんなことしないが……」

 

「してるじゃないですか……」

 

 

 長の長らしくない姿にまたもため息がもれるシージェ。

 

 ひとりで長として村を導いてきたユージアは、気が付けば完全な仕事中毒となってしまった。

 今までは村全員が予言を妄信し、ユージアが独り激務をこなしていたが今は違う。紅い星が流れたあの日、吉兆も凶兆もなくなったあの日から全員で村を良くするように変わっていった。

 そのためユージアの激務を軽減するようにしたのだが、先も書いたように彼は完全な仕事中毒者。減った仕事の分を求めて夜な夜な徘徊する亡霊のようになってしまった。

 

 普段であればユージアの妻であるリュンリーも厳しく見張り、仕事を取り上げるのだが今日は不在。リュンリーの故郷であるタオの村に近況報告で帰省中なのだ。

 

 その間、ユージアが喜々として仕事に没頭しかねないということで、シージェが見張るように内密に頼まれていたのだった。

 

 

「もう遅いんですからお部屋で休んでください」

 

「……、確かにもう遅い時間だな。ちゃんと戻るから先に……」

 

「ユージア様がお部屋に戻られるのを見届けてから僕も戻ります」

 

「うっ……」

 

 

 ユージアの反応を見て、やはり、とシージェは思った。

 ユージアとシャオリン、二人は兄妹だがあまり似ていないと思ったが、こういうところはかなり似ている。今後もきっと似た姿を見せていくこととなるのだろう。星読みの予言を妄信しなくなったのだから。

 

 肩を落としながらトボトボと寝室に向かって歩いているユージアの後ろについていきながら、あることに気づいた。

 シャオリンの寝室から明かりが漏れている。

 

 その事にユージアも気づいた。

 

 

「シャオリン? まだ起きているのか?」

 

「え、兄さま!? シャオリンは寝ています~っ!」

 

 

 部屋ごしにユージアが尋ねると元気に寝ていると返事がくる。

 

 

「起きてるじゃないか……」

 

「シージェまで!?」

 

 

 何故兄妹揃って夜更かしをしているのか。シージェは何度目かわからなくなってきたため息をまたついた。

 

 

「シャオリン、こんな時間まで起きていては体に障る。ちゃんと寝なさい」

 

「ユージア様、その言葉をご自身にもお願いします」

 

「うっ……」

 

 

 どの口が言うのか。そんな気持ちを込めたシージェの言葉に呻くユージア。

 

 それはそうとシャオリンは何故起きているのか。

 ただ寝付けないだけなら明かりを灯す理由はない。

 

 

「それでシャオリン、何をしているんだ? こんな時間まで起きて……」

 

「少しだけ勉強を……」

 

 

 完全に起きているということがバレたと観念したのか、シャオリンは聞かれたことに素直に答えた。

 

 

「お前もか……」

 

 

 紅禍として見られなくなってから、より一層勉強に励むようになったシャオリンはあまり休まなくなった。そんなところもユージアに似ているなと思ったが、こんなところまで似なくていいとシージェは深く思った。

 

 

「私も……? ひょっとしてシージェも?」

 

「違う。ユージア様だ。こんな時間になっても仕事をしようとして……」

 

「私は長として……」

 

「長としてまずは休んでください」

 

「兄さま、遅くまで仕事なんてせずにちゃんと寝てください~!」

 

 

 何故この兄妹は己の発言を己に向けないのか。

 シージェはシャオリンの教育係のはずが、何故か二人の教育係のような気持ちが芽生えてしまいそうだった。この場にいる三人の中で最年少だというのに。

 

 問題の兄妹は互いの体を気遣って、互いに休めと言い合っている。二人とも休めばいいだけなのだが。

 

 その様子を眺めながら、シージェはひらめいた。

 

 

「シャオリン、入るぞ」

 

「へ?」

 

 

 返事を待たずに戸を開ける。

 部屋の中のシャオリンは勉強道具を片づけようとしていない。どうやら二人が去った後も勉強をするつもりだったようだ。

 

 

「ユージア様も、中へどうぞ」

 

「シージェ、ここ私の部屋なんだけど」

 

「あ、ああ」

 

 

 呆然としているユージアも中に招き入れ、シージェは明日の予定を思いだす。

 明日の正午にはリュンリーが戻ってくるはずだと。

 

 

「兄妹水入らずで一緒の部屋でお休みになられてはどうですか。寝具は僕が運んできますので」

 

「え? でも私はもう少し勉強してから……」

 

「いや、私は仕事を……」

 

「ええい! 二人とも休まないと僕が困るんだ! いい加減眠いんだ!!」

 

「だから先に寝るようにと……。シャオリンも勉強は明日にしなさい」

 

「兄さまこそ仕事は明日に回してください」

 

「二人とも休めと言っているんだ!」

 

 

 眠気もあったせいで、つい不満が爆発してしまった。

 だがシージェはすぐに二人は休むはずだと考える。二人は互いに互いを休ませようとしているのだ。お互いの目があれば、無茶せず一緒に寝るのではないか。そんなざっくりとした狙いである。

 

 そんなわけでシージェは、まだ不満気な二人を部屋に残し、ユージアの寝具を運ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 ユージアの寝具をシャオリンの部屋に運び入れた時、さすがに言い合って疲れたのかシャオリンが大きくあくびをした。これならもうすぐ眠るだろうとシージェが油断したときだった。

 

 

「ではユージア様、シャオリンが起きだして勉強をしないように、兄妹揃ってお休みくださ……、ふごっ!」

 

「シージェも、一緒に寝よ……」

 

 

 もう寝落ち寸前の様子のシャオリンに足を掴まれ、シージェは転んでしまった。

 

 

「僕は自分の部屋で寝る! ってもう寝入ってるだと……?」

 

「シャオリンの見張りは譲るとしよう。それでは私は……うおっ!」

 

 

 シャオリンはもう小さくいびきを立てている。

 さりげなく離脱を図るユージアの足をシージェは掴んだ。ここで逃がしてはまた仕事に向かってしまう。超優秀を自負する身として、頼まれたことを出来ないでいるわけにはいかないという執念がユージアを捕らえたのだ。

 

 

「ユージア様、妹君と共に寝るべきです……!」

 

「シャオリンは優秀な教育係と一緒に寝たいみたいだから……! 私は、遠慮しておく……!」

 

「妹君が異性と寝るのは問題でしょう……! 見張るためだと思ってここは是非残るべきです……!」

 

「村の者から教官と慕われている君なら大丈夫だと信じている……!」

 

 

 眠ってしまったシャオリンを起こさないように小声で言い争う二人。

 

 二人の攻防は、それから数十分に及んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 リュンリーは予定よりもかなり早くタオの村から戻った。

 本来であれば正午に戻るはずだったが、これはこれでいいかもしれないと考えた。

 

 抜き打ち検査のようだが、夫であるユージアの仕事中毒を抑えることが出来ているか心配なのだ。

 

 まずは執務室に向かう。

 

 

「あら? いませんね……」

 

 

 執務室は無人だ。どうやらちゃんとユージアを止めれたようだ。

 普段であればこの時間、すでにユージアは執務室で仕事に打ち込んでいるのだから。

 

 

「だとしたら寝室でしょうか」

 

 

 もしや日ごろの仕事中毒が今になって体に影響を及ぼしたのかもしれない。それでこの時間まで眠っているのでは、そんな心配がよぎる。

 

 ユージアの寝室に向かっている途中、シャオリンの寝室から声が聞こえた。

 

 

「……兄、様。ちゃんと、休んで……」

 

「超優秀な僕にかかれば……」

 

「仕事を……仕事を……」

 

 

 特徴的な単語があちこちにある声。

 

 そっと戸を開けて中を伺えば……

 

 

「あら……、少し妬いてしまいますね」

 

 

 三人が仲良く雑魚寝をしている姿があった。

 

 微笑ましい気持ちのまま、戸を閉める。

 

 

 

 

 

 寝言からユージアの中毒っぷりは酷いと改めてわかり、他の者にもユージアの仕事を取り上げるように頼みに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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