メルスト短編集   作:横電池

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相変わらずのアニメ記念だけどアプリ版準拠
死者の国1周目関連





死者の国のお話(ジャントール、コゼット、ルチアーノ、シトルイユ)

 

 

 

 

 死者の国、レーヴの村のあるお家にて。

 ジャントールが教会から帰宅した時のことだった。

 

 

「大きいカボチャ。パパ、それどうしたの?」

 

「ああ、信徒の人がくれたんだ。ひとつでいいと言ったんだが、二つももらったよ」

 

 

 コゼットの言葉が示す通り、ジャントールは両手に大きなカボチャを二つ抱えていた。

 二つともとても大きく、シトルイユの頭の大きさに匹敵するようなサイズだ。

 

 

「しばらくはカボチャ料理にしないといけないな。ルチアーノも呼んで一緒に食べようと思う」

 

「三人でも食べきれるかな……」

 

「そうだ、せっかくだしカボチャをくりぬいて顔を作ろうか?」

 

「! ミスターみたいな?」

 

「ああ、パパは器用だからな」

 

 

 コゼットの言うミスターとは、あの城で出会ったカボチャ頭の自称紳士、シトルイユのことだ。

 シトルイユは友達と3人で共に世界中を旅すると言ってそれきりである。その旅路はきっと愉快なことになっているだろうなとジャントールは思う。

 案外観光名所へ行けばそのうち再会できそうなカボチャ紳士を思い浮かべながら、夕飯の準備と工作の準備を始めることにした。

 

 

「ミスターはね、私と一緒に紅茶を飲んだの」

 

「カボチャ頭でも飲めるものなんだな」

 

「頭に流し込んでたけども……」

 

「味はわかるのか、それで……」

 

 

 カボチャを見たことによってか、あの当時を振り返るかのようにコゼットが父に話をする。

 ジャントールも娘の言葉のひとつひとつを聞いて、一緒に笑ったり、疑問に思ったりと親子は良好な状態だ。

 

 

「あ」

 

「どうしたの……?」

 

「カボチャのお尻までスープにいれてしまった。ランタンにでもしようかと思ったんだが」

 

「ランタンはミスターからもらったものがあるよ、パパ。それにこの方が、被れてミスターとお揃いみたい」

 

 

 カボチャのお尻部分がなくなり、被りもののようになってしまった。

 とはいえ手で支えないとまともに被れないものだが。

 

 

「もう一つのカボチャも被れるようにしようか」

 

「うん」

 

 

 夕飯作りもそこそこに、二人はカボチャ頭作りに夢中になっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルチアーノは鼻歌混じりに村の中を歩いていた。

 未だにまともな家事能力を備えていない33歳にとって、夕飯をお呼ばれすることは嬉しいイベントなのだ。一番うれしいイベントはお嫁さんができることだが、今のところその見通しはない。

 

 お嫁さんは相変わらずいないが、ルチアーノはここのところ良いこと続きである。

 以前から心配だったジャントールとコゼット。それがあの古城での一件でもう大丈夫だと思えるようになったのだ。

 

 

「しかし結局、あのカボチャはなんだったのかねぇ」

 

 

 思いだすは古城に向かった時、すれ違った大きなモンスターとカボチャ。

 事情を知っているらしい親子からは、結局教えてもらうタイミングを逃してしまった。

 

 呪われた城とまで噂が流れていた場所から飛び出てきたモンスターとカボチャ。モンスターはともかくカボチャ。頭こそカボチャだったが、首から下は人間のようでもあった。かなり大きな体だったが。カボチャのオバケか何かだろうか、と考えて身震いする。

 

 

「それともカボチャに呪われてカボチャ頭になった人間……なーんてな……」

 

 

 ひとりで想像して、ひとりで怖がる33歳。

 

 頭から怖い妄想を追いだして、明るい何かを考えることにした。

 

 結果、お嫁さんがほしいということになった。

 そのためにもモテるために必要な何かを考えることにした。今度出会いを求めて外の国へ旅行に行くのもいいかもしれない。

 なんでも雪の国ではすごくモテない男がいるらしい。その男を反面教師として探しに行くのもいいかもしれない。

 その旅行に行くときはジャントールとコゼットも呼ぼうか。いや、目的が子供の教育にあまり良くない。

 

 

「お、いいにおい」

 

 

 目的の家の前まで近づいて、小窓から漂ってくる香りから夕飯の予想をつける。

 カボチャの濃厚な香りだ。カボチャ料理か何かだろうか。そういえば信徒の誰かが大きいカボチャがたくさんあるから持って帰ってくれと言っていた。ルチアーノは自炊能力的に辞退したが、ジャントールが何個か引き受けたのだろう。

 

 

「カボチャ、かあ……。古城の件は関係ないよな! うんうん!」

 

 

 一瞬、先ほどの怖い妄想が頭によぎる。

 関係ない関係ないと言い聞かせて扉を叩いた。

 

 

「おーい、俺だー。入れてくれー」

 

「ちゃんと名前を言え……」

 

「ルチアーノです!」

 

 

 扉の向こうからしかめっ面を浮かべてそうな声が聞こえた。くすくすと笑うコゼットの声も聞こえる。

 

 入っても大丈夫そうなのでルチアーノは扉に手を掛け、中へと入った。

 

 するとそこには、

 

 

「…………ほ」

 

「ほ?」

 

 

 カボチャ頭がいた。

 

 カボチャ頭の人間がいた。

 

 

「ほぎゃぁぁあああああ!?!?!?」

 

「ルチアーノ!?」

 

「おじさん!?」

 

 

 先ほどの妄想がまるで現実になったかのような光景に悲鳴をあげる33歳。

 しかしその耳に、友人の娘の声が聞こえたためやや理性を取り戻す。

 

 コゼットがいる。コゼットを守らなくては、とコゼットを探して室内を見渡し、

 

 

「おじさん、どうしたの……?」

 

「コゼッカボチャぁぁあああ!?」

 

「おじさん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうサプライズは怖いからやめてくれよ……やめてくれよ……」

 

「す、すまない。そこまで怖がるとは思ってなくて」

 

「ごめんね、おじさん……」

 

 

 やや青い顔になっているルチアーノに謝る親子二人。

 すぐにカボチャの被り物が原因だとわかり外したが、ルチアーノの心の傷は大きかったようだ。しばらく落ち込んでしまった33歳を二人で必死に慰めているのだ。

 

 

「ま、まあ俺も驚き過ぎたし悪かったよ」

 

 

 さすがに友人と8歳の女の子に慰められるのは恥ずかしく思えてきたのか、少しずつ自分を取り戻していく。

 

 その日のカボチャスープはとても暖かい味がした。

 

 しかしルチアーノはしばらくカボチャは見たくないと思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくして。

 

 ルチアーノはしばらく休暇を取った。

 休暇の理由は旅行と言う名のお嫁さん探し。

 

 観光名所をとにかく巡れば同じように、お婿さん探しをしている素敵な子と出会えるかもしれない。そんな期待を胸にルチアーノは馬車の寄り合い所で待つ。

 

 待っている最中もルチアーノはわくわくしていた。

 馬車は相乗りである。どんな人と相乗りになるかわからないが、もしかしたら素敵な女の子かもしれない。運命の相手となりえるかもしれない。相乗りとなるということは、目的地も一緒かもしれないのだ。そこからどんどんと仲良くなるとか。

 

 道中にも、目的地にも期待を感じるルチアーノはとても浮かれていた。

 

 馬車の御者からもうすぐ出発だと告げられる。

 まだ相乗りの人が来てないのでは? と思ったがすでに寄り合い所に来ているらしい。その人が乗りこんだら出発だとか。

 

 なんでもその人はモンスターと一緒に旅をしているそうだ。

 ということは王国の人だろうか。癒されたモンスターと旅をする人というのは最近増えつつある。

 

 とにかく紳士的に心掛けなくては、とルチアーノは思いその時を待った。

 

 

「おや、確か君はレーヴの村にいた……」

 

 

 ぐるる、というモンスターの鳴き声と共に、男性の声が聞こえた。

 

 レーヴの村はルチアーノがいた村だ。もしや知り合いだろうか。

 

 女性でなかったことは残念だが、ルチアーノはくじけない。男性の知り合いを紹介してもらうという打算もありだし、そもそも新しい友情を築くというのもありだ。

 さらにいえばレーヴの村の知り合いかもしれないのだ。失礼などしようと思わない。

 

 

「同じ馬車ということは目的地も一緒かもしれないね。せっかくだ! 君も一緒に旅をしよう!」

 

「ええ、そうです……ね…………?」

 

 

 男性の提案に、振り向きながら答えたルチアーノの語尾はどんどんと弱くなっていった。

 

 

「旅と言うのは素晴らしいね! 出会いと別れを繰り返すが素晴らしい思い出となりそうだ!」

 

「ぐるる! ぐるるる!」

 

 

 レーヴの古城で見た巨大なモンスターと、カボチャ頭がそこにいた。

 

 

「…………ほ」

 

「ほ?」

 

「ほぎゃぁぁあああああ!?!?!?」

 

 

 ルチアーノは悲鳴をあげた。

 

 以前ジャントールの家で叫んだ時と全く同じ悲鳴をあげた。

 

 だが、その時と違い、カボチャ頭の下から友人の顔が出てくることはなかった。

 

 

 

 

 カボチャ紳士たちと旅を少しの間共にしたルチアーノは、終始青い顔をしていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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