メルスト短編集   作:横電池

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エレキの国2周目関連。

アニメ化とは無関係ライン。




エレキの国のお話(ラッドストー、アメトリン)

 

 

 

 

 

『ラッドおじさんへ

 

 お元気ですか? 私は今、死者の国にいます:)

 名前は怖そうな国だから、おじさんが心配するといけないのでちょっと説明すると、エレキの国と同じで、太陽の光が届かない国ですが障壁に囲まれているわけではありません。

 地下に存在する国です。ですが、エレキの国と似ている部分は太陽がないことだけで他は全然違います。

 

 それと、この国を旅している最中に知りあった男の人がとても親切でおすすめの観光スポットを教えてもらいました。今度帰ったとき、お土産を期待しててください:)

 あ、頭蓋骨とか苦手だったりするかな?(もしかしたらお土産にビックリするかも)

 パンフレットも譲ってもらっちゃいました。配送料が少し高くなるけど同封しておきます。無駄遣いじゃないから許してください。

 

 それとまた別の知りあった男の人がいるのですが、この人の持ち物がすごかったです。

 その持ち物は、なんと喋る剣でした!:○

 外の国には本当に知らないものがいっぱいで楽しいです。剣にも性別があるのかな。男の人みたいな喋り方だったからもしかしたらあるのかも:3

 いつか喋る銃とかとも会えるかもしれません。

 

 次は植物の国に行ってみようと思います。そこでもお土産を探してみるね。

 

                   カルセより』

 

 

 録字用エレメントではなく、この国ではまだ貴重な紙を使ったカルセからの知らせ。同封されていた〈死ぬまでに行ってみたい!死者の国の名所100選〉を机に置いて手紙を読み終える。

 それを読んだのは宛名のラッドストーではなくアメトリンだった。

 

 勝手に読んだわけではない。アメトリンの向かいにはラッドストーが神妙な顔をして座っていた。

 

 

「楽しそうに旅をしてるわね。特に心配することはなさそうだけども……」

 

「……本当にそう思うのか!?」

 

「ええ。まあ、頭蓋骨とか書いてあったのは何事って思うけども……。落ち着きなさい、また顔が怖くなってるわよ」

 

 

 人相の悪い刑事の形相を指摘する。

 彼自身の人柄は正義感と面倒見の良さがあって善良なものだが、目つきの鋭さが内面を知らないものを遠ざけてしまう。

 刑事の試験を受けるために幾度となく世話になったお礼に、今度何かプレゼントをしようかとアメトリンは思った。

 

 

「あなたはこの手紙の何がそんなに心配なの?」

 

 

 人相については今は置いておくとして、アメトリンは突然相談があると言って手紙を渡してきた刑事にストレートに聞いた。

 手紙で気になる点など全くない。頭蓋骨はよくわからないけど大丈夫だろうきっと。旅先で知りあった人とも仲良くしているようだ。

 

 

「それは……、この手紙に出てきた知り合いがだな……」

 

 

 ラッドストーが貧乏ゆすりをし出す。緊張したり心配事があったりするとついしてしまう癖とは聞いた。その癖が出るほどのものらしい。

 

 

「全員男だ……」

 

「……」

 

「カルセちゃんはまだ14歳だ! 下心で近づいてきた奴かもしれないだろう!? それ3人だぞ! 一つの国で3人も男って!!」

 

「2人だけじゃない?」

 

「剣も男っぽいだろう!?」

 

「剣もカウントするのね……」

 

 

 言われてみて納得する。14歳の少女の一人旅と言うだけでもこの過保護の刑事は心配なのだろう。

 それなのに手紙に書かれた知り合いはすべて男だからなおさらのこと。

 

 アメトリンは自分の弟と逃避行をしかけた少女を思うと、この心配も仕方ないことだと思った。

 

 

「護身は教えてるんでしょう? 今はあの子を信じなさい」

 

「うぅ……カルセちゃん……」

 

「それとも今から迎えに行く?」

 

「……それはできん」

 

「じゃあ信じて待ってなさい」

 

「カルセちゃぁん……」

 

 

 なんとも頼りない刑事の姿である。しかし気持ちは大いにわかる。

 とにかく待つことしかできない状態、それはアメトリンも同じなのだ。

 

 アメトリンはうちひしがれているラッドストーにカルセからの手紙を返し、もう一つ、別の紙を渡した。

 

 

「ん? こいつは?」

 

「アメシストからの手紙よ」

 

「俺が読んでいいのか?」

 

「ええ。読んでちょうだい」

 

 

 アメトリンに促され、手紙を読み開く。

 

 

『姉さんへ

僕は今日も生きているよ。もうすぐ刑事の試験を受けるんだよね。頑張って。姉さんならきっと大丈夫。嘘じゃないよ。そうそう、僕は今雪の国にいるよ。雪っていうのは上から降ってくる白く冷たい綿みたいなものでね。ひとつひとつはとても軽いけど、積み重なるととても重たくなるんだって。すごいよね。それからオーロラというものを見たよ。エレメントを使ってないのに、虹色のカーテンが輝く夜空はとても綺麗だった。姉さんにも見せたいなって思ったよ。悩んでたら僕と同じように旅してた人がいてね。その人は空の国から来たんだって。背中に翼があったんだ。スケッチが趣味らしくて一枚譲ってもらったんだ。各国を巡って旅をする人が多いのかな。その空の国の人以外にもすごい人がいたよ。嘘みたいに思えるかもしれないけどカボチャ頭の人だったんだ。その人も友達と世界中を旅しているんだって。なんだか雪の国にいるのに他の国の人のことばかり書いちゃってるや。雪の国でも知り合いができたよ。その女の人はよく「10歳差か……」って呟いているんだけど、偽恋屋を紹介してあげたら喜ぶかな。書きたいことがいっぱいすぎてもう書くところがなくなりそうだ。また手紙を書くね。冬想祭が終わったら次は植物の国に行こうと思うよ。それじゃあまたね。アメシスト』

 

 

 紙の余白を埋め尽くす勢いの文字で少し読みにくさがあったが、なんとも旅が楽しいという気持ちが伝わってくるものだった。

 そしてこの手紙をラッドストーに読ませた気持ちがわかった。

 

 

「……アメシストの奴、ナンパでもしたのか?」

 

「いつものように思わせぶりなことを言ったのかもしれないわ……」

 

「……しかも成功しかけてないか?」

 

「……」

 

 

 悪い虫がつかないか心配になっている刑事と、悪い虫になりかねないことを心配している刑事志望。

 

 二人の間に微妙な空気が流れた。

 

 

「……あなたとは別の意味で心配だわ」

 

「お前さんも苦労してるんだな……」

 

 

 旅に出た者を見送った立場の二人は、ただ信じて待つしかできなかった。

 

 

 

 

 

 数週間後、ディーベルテスマーの偽恋屋に雪の国からの客人が複数、依頼があったらしい。

 

 ちなみにうち一名は辺境調査隊とやらの隊長。その男性は異例の出禁となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


雪の国の女性の行き遅れ率が高いのはなんでなの?

これは顔文字です→:)

パユも手紙に出そうと思いましたがちょっと刺激が強すぎるのでやめました。
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