メルスト短編集   作:横電池

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雪の国1週目のイベ関連





雪の国のお話(バルトロメイ、ヴァレリー)

「最近、彼女が冷たいんだ……」

 

 

 真剣な表情の隊長、バルトロメイの言葉をヴァレリーはかわいそうなものを見る目で眺めた。

 

 

「隊長、彼女なんていないでしょ……」

 

「いる! 両想いの彼女いるっての! リュビーで出来たんだよ! お前がリア充になったときに!」

 

「そうっすか……、それで?」

 

 

 隊長の妄言に付き合わなくてはいけないような雰囲気。ため息をつきながらヴァレリーは続きを促した。

 

 

「それからデートとかしたりしたんだが、日に日に冷たくなっていってな……。怠慢期ってやつかもしれない……」

 

「隊長、雪だるまを彼女って言うのはやめた方がいいですよ……」

 

「むなしい!! 雪だるまじゃねえよ!」

 

 

 バルトロメイは嘘をつけるほど器用なタイプではない。となると、雪だるまでもなく本当に彼女ができたのだろうか。その結論はヴァレリーにとっては信じがたいものだった。

 

 

「奇特な人もいるんですね」

 

「モンスターだけど」

 

「なるほど。モンスターなら納得で……、はい? モンスターの彼女?」

 

「おう!」

 

 

 嬉しそうな返事をするバルトロメイに、どうしてこんなになるまで放っておいたのか、と自責の心がほんの少し芽生えた。

 

 

「冬想祭の日にお前も会ったことあるだろ。名前がわからねーからヒポ美って呼んでるんだけど」

 

 

 ヴァレリーは冗談だと期待したい。したいが、脳まで筋肉に侵食されている目の前の隊長は、本気だ。そのヒポ美を思い出したのかニヤニヤした表情がウザい。

 

 

「いくらなんでも見境なさすぎですよ……」

 

「大事なのは当人達の気持ちだから。オレ達すげー熱々カップルだから」

 

「冷たくされてるんじゃなかったんですか……」

 

「そうだった……!」

 

 

 すっかり忘れていた。そう言うかのような反応にまたもため息をついてしまうヴァレリー。

 もうこの際モンスターと付き合ってることは気にしないことにした。

 

 

「聞いてくれよ! このままだとまたフラれるかもしれねーんだ!」

 

「さらに記録更新ですね。しかも今度はモンスター相手ってすごいですよ」

 

「そ、そうか? フフ……」

 

 

 適当に褒めたら上機嫌になった。この単純さはある意味羨ましくもある。

 

 

「って違う!! 記録更新したくねーよ!!」

 

「それでその、彼女さん? はどう冷たいんですか」

 

「それが最近……、チューしてくれねえんだ……」

 

 

 バルトロメイの言葉にヴァレリーは停止してしまった。 チューて。23歳がチューて。

 そして何気に自分とソフィーヤより進んでいる関係に、謎の敗北感を感じてしまった。

 

 

「まさか……、オレに愛想をつかしたんだろうか……」

 

「まあ隊長ですしね。何かやらかしたんじゃないんですか? 前もナンパしようとして『君のことを想うと、胸が高鳴るんだ』とか言いながら服脱いで胸筋見せつけて、悲鳴あげられてましたし」

 

「オレの失敗談を蒸し返すのはやめろ……! でもちょっとだけ心当たりはある!」

 

 

 やらかした自覚があるというのは、この隊長としては奇跡のようなものだ。ヴァレリーはナチュラルに失礼なことを考えてしまった。

 とにかく心当たりとやらをヴァレリーは聞くことにした。自分も同じようなことをしてソフィーヤに嫌われないためにも。

 

 

「それで、心当たりってなんですか」

 

「この前、デートしてたらよ……。ヒポ美が疲れたみたいでよ、ここは男を見せるときって思ってお姫様抱っこしてやろうって思ったんだよ」

 

「あ、もうオチ見えました」

 

「オチってなに!?」

 

「いくら隊長でもモンスターをお姫様抱っこ出来なくて落としたとかですよね」

 

「お前……、すげえな……!! エスパーってやつか……!?」

 

 

 ふざけて言っているのではなく、本気でエスパーだと思い始めているバルトロメイに、説明しても無駄だろうから流すことにした。

 

 

「それ以来冷たくなってよ……、でも仕方ねーじゃん!? オレの腕の長さじゃ支えきれないのは仕方ねーじゃん!?」

 

 

 腕の長さが問題なければお姫様抱っこが可能だと言外に言っているのが恐ろしい。

 

 

「とにかくなんとかして機嫌をとりたい……! けどオレはあまり頭よくねーから、お前のアドバイスが欲しい……!」

 

「そうはいっても、オレも癒術師とかじゃないですから、モンスターの恋愛事情に関してはさっぱりですよ」

 

「そこをなんとか!」

 

「なんとかって言われても……、なんかプレゼントするとかどうですか。喜びそうなもの」

 

「喜びそうなもの……、ひらめいた……!」

 

 

 適当なアドバイスではあったが、バルトロメイは何か思いついたのかニヤニヤしだした。プレゼントするものに何やら自信満々な様子。ヴァレリーには、その姿が逆に不安を感じさせた。

 

 

「ちなみに何をひらめいたんですか」

 

「フフ……、幸せってやつさ」

 

「そうっすか。頑張ってください」

 

 

 そっとしておこう。ヴァレリーはそう決断した。

 

 

「指輪なら喜ぶよな……」

 

「…………指輪のサイズがまず難しそうですね」

 

 

 続きを聞いてないのに言い出されたヴァレリーは、とりあえず無難な返しを選んだ。

 本気でモンスターとゴールに向かっていることについては気にしないことにした。いつかもバルトロメイ自身が言っていた。大事なのは当人の気持ちだと。

 

 ヴァレリーは正直なところ、指輪のプレゼントも駄目な気しかしてない。サイズが異様にでかくて、デリカシー0のバルトロメイが余計なことを言って怒らせるとかそんなオチが見える。

 かといって代案も思いつかない。というか真剣に考えるのが面倒臭い。真剣に考えた内容などいつもバルトロメイはぶち壊すのだから。

 

 

「さっそく作ってくる!」

 

「え、買いに行くんじゃないんですか」

 

「料理とかは手作りのほうが愛が伝わるだろ? 指輪ならもっと伝わるじゃねーか!」

 

 

 珍しく隊長が考えての行動なのだ。そう思うことにして、ヴァレリーは何も言わないことにした。

 

 

「それじゃーな!」

 

 

 山に向かって走っていくバルトロメイを見送り、気持ちを切り替えてソフィーヤへのプレゼントを探しに行くことにした。

 

 

 

 

 





オチが思いつかなかったけど、お蔵入りさせるのもあれなんで投下。
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