メルスト短編集   作:横電池

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お菓子の国2週目、機械の国1週目、死者の国1週目、2週目のイベ関連のお話。

一緒くた。







パパ友の会(デイヴィッド、ジャントール、ターネス、リュシアン)

「ぱぱ~」

 

「どうしたマーガレット。腹減ったのか? 晩菓子の時間まであとちょっとだから我慢できるか?」

 

「うー、わかったー」

 

 

 ヤバイ。うちの娘が良い子すぎて可愛すぎてヤバイ。

 ターネスはすぐさま誰かに自慢したかったが、ホイッパーも同じことを想っている目でこちらを見ていた。

 

 種族は違えど親のような気持ちは一緒だった。アイコンタクトでマーガレットの可愛さを互いに認識し合う。

 

 

 あの異形の森での一件以降、ターネスの思考は親馬鹿全開である。共についてきたホイッパーもまた、親馬鹿全開である。

 どちらもそれを隠すことなく、周囲に娘の可愛さを自慢して回るのでよく生暖かい視線を向けられるそうだ。

 

 マーガレットは晩菓子の時間まで積み木で遊ぶことにしたようだ。

 

 かつては食べることと寝ること以外に興味を持たなかったというのに、今では歳相応な面を見せてくれるようになった。

 積み木で無邪気にお城を作っている姿に自然と頬が緩む。そりゃもう緩みまくる。マーガレットのあの愛らしさを見て緩まない方がおかしい。

 ホイッパーもだらけ切った表情を浮かべていた。マーガレットの可愛さは人もモンスターも共通して感じるのだ。この国一、いや、世界一の可愛さだ。

 

 晩菓子の準備をしながら今後も天使のように育っていくマーガレットを想像する。

 

 ゆくゆくは美女になるに違いない。今でさえすでに超美少女なのだ。今はまだ愛らしさの面が突飛しているし、幸い周りのやつらもまともだからマーガレットの身は安全だが、いつ不埒な考えを持つものが出るか……。いや、確実に出てしまうだろう。マーガレットは魔性の女になる。それも無自覚に。だってあれほど可憐なのだ。

 まあ、メレンゲ達が一緒にいるから大丈夫だろう。いやまて、もしメレンゲがマーガレットに変なことをしたらどうすればいいのだ。今でこそ友達として仲良くやっているが、それはまだ子どもだからだ。思春期に入れば……

 

 

『ぱぱ、紹介したい人がいるの。マーガレットの彼氏』

 

『な……』

 

『ぱぱも知ってるメレンゲだよ』

 

『ホギャアアアアアアアア!』

 

 

「ホギャアアアアアアアアアア!!」

 

「ぱぱ?」

 

「あ、すまねえ。大丈夫だ。ちょっと目に砂糖が入ってな。もうちょっと待ってろよ。もうすぐ出来上がるからな」

 

 

 ターネスはつい想像しただけで叫んでしまった。心配げに見てきたマーガレットにそれっぽい理由で誤魔化す。

 

 うちの娘、心までも優しい。

 

 ターネスはまたも表情がデレデレになった。

 そして先ほどの想像を、悪夢を忘れるために別のことを考える。

 

 マーガレットの今後の教育方針について。

 

 マーガレットの特異な体質を治すのは当然として、習い事や交友関係について考えようと思ったようだ。

 しかし、どこまで育ての親が口を出していいかわからない。今でこそ素直で可愛いマーガレットだが、いずれは反抗期を迎えるかもしれない。ぱぱの服と一緒に洗濯しないで、とか言われたら最悪死ぬ。

 ダメだ。死んでは誰がマーガレットを養うというのだ。ホイッパーでは菓子が作れない。ティーガーにはまず任せられない。あいつが誰かの世話をできるはずがない。メレンゲ? 不純異性交友はまだ早い。ということは、死ぬわけにはいかない。

 反抗期を迎えた子に対して、パパたるものはどうすればいいのか。

 ……、ダメだ。ひとりで考えても全くわからない。

 パパ友の力を借りるしかない。きっと他のパパも悩んでいることだろう。

 

 ターネスはそこまで考えて、そして気づいた。

 

 自身の今までの交友関係の狭さに。

 

 今までターネス自身の体質のため、この町以外では長居しなかったのが仇となった。

 町のパパ友は正直あまり参考にならない。パパ友の会を誘ってみてもだいたい断られたのだ。ママ友の会はあるのにパパ友の会はあまり普及されていないようだ。

 

 しかし、今更焦っても交友関係が拡がるわけでも、町のパパ友の会が出来るわけでもない。

 

 ターネスはこの状況を打開できる方法を必死に考えた。晩菓子を大量に作りながらそれはもう必死に考え、そしてひらめいた。

 

 

 晩菓子の後、ターネスはある人物に手紙を送ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数ヶ月後、メフテルハーネのどこかの国の某所の小さな部屋の中で、ある人物たちの会合が行われた。

 

 その部屋の扉には張り紙が貼られている。

 

 

【第一回パパ友の会】

 

 

「……、全員揃っているっぽいな? あー、本日はお忙しい中? お集まり、いただきありがとう、ございます」

 

 

 第一回パパ友の会。それの第一声は、お菓子の国出身のターネスだった。

 普段このような挨拶をする立場でないため、そしてこのような会とも無縁だったため、どこか拙い挨拶を行った。本当なら自分より確実にパパとして先輩であろう、そして年上であろう人に任せたかったが、この召集のきっかけはターネス自身。ならば自身がやるべきだと考えての行動だった。

 

 

「全員共通の知り合いがいるだけで、初対面同士だよな……ですよね? とりあえず、まずは自己紹介でもするか……しますか」

 

 

 全く慣れていない言葉遣いにボロが出まくる。これでは立派なパパになれない、と胸中穏やかでないターネス。

 

 この場にいる全員の共通の知り合い。それはある癒術師の少年だった。

 ターネスは以前世話になった癒術師に、知り合いのパパを紹介してほしいと手紙で頼みこんだのだ。訳あって世界中を旅している少年は交友関係も広い。歳は若いためそれほどパパな人物とは知りあってないかもだが、ターネスよりは知り合いが多いだろう。そして国を超えたパパ友の会を作ることを考えたのだった。娘への愛(暴走)がなせる技である。

 

 

「……えっと、自己紹介って何言えばいいんだ?」

 

「それぞれ国も違うようだ。簡単に名前と出身でいいんじゃないか? ……、ああ、あと年齢もせっかくだし頼む。他の細かいことはその後に話し合えばいいだろう。それと話しやすい喋り方でいいだろう。今日は仕事などでなく、パパ友の会なのだから」

 

 

 もたついていたら助け舟を出された。助け舟をだした人物は、ターネスから見ても出来るビジネスマンと言った風貌の金髪の男性だ。おそらく集まった人物の中でも最年長のような気がする。

 

 

「じゃあお言葉に甘えて……、俺はターネス。23歳でお菓子の国のグミ・ワールド出身だ。……、よろしくお願いします」

 

 

 少し物足りない気がなんとなくしたが、かといって何を言えばいいかわからなかったためターネスはそこで言葉を切り、着席した。

 続いて先ほどの金髪の男性が席を立つ。

 

 

「それでは次は私が……。私はデイヴィッド。機械の国のバンクスシティでビジネスマンをやっている。歳は42.パパ友と言うのは初めてで拙いところがあるかもだが、よろしく頼む」

 

 

 そう言ってデイヴィッドは席に着く。やっぱりビジネスマンだったんだ、とターネスは思いながら覚える。出来るビジネスマンな風貌や先ほどの助け舟から、一番頼りになりそうな人物なのだ。

 デイヴィッドの自己紹介が終わったので、次はその隣の男性が席を立った。青い髪で、目の下に隈がある男性だ。

 

 

「次は私だな。私はジャントール。死者の国のレーヴの村で神仕をやっている者だ。年齢は33歳。一人娘のことで最近悩みがあったから、こういった会は正直とてもありがたい。よろしく頼むよ」

 

 

 一人娘のことで悩み、というワードにターネスは親近感を凄まじく覚えた。そして目つきは悪いが雰囲気がどこか優し気なので、ジャントールもまたパパ友の会で頼りになる先輩だと認識。

 ジャントールの自己紹介が済み、集まったパパ友の会のメンバー、最後のひとりが席を立った。

 

 ターネスはついに来たか、と思いながら自己紹介を一言一句逃さぬように聞く姿勢に入る。デイヴィッドもジャントールも同じように、席を立った人物に意識を深く傾けていた。

 

 おそらくその人物以外、ずっと言葉をこらえていたからだ。デイヴィッドが自己紹介に年齢を追加したのもそのためだろう。

 

 三人の注目が強く集まっているのを知ってか知らずか、その人物は自己紹介に入った。

 

 

「最後に僕ですね。リュシアンっていいます。僕も死者の国で、サクレーの村の神学校の学生です。12歳です。えっと、よろしくお願いします」

 

 

 線の細い少年はそう言って席に着く。

 

 ターネスはもう叫びたい気分だった。

 

 12歳て。学生て。

 その年齢でパパ友の会て。

 

 ただ異常に若く見えるパパ友かと思えばマジで異常に若いパパ友だったことにターネスは戸惑いまくる。

 

 混乱しているターネスをよそにデイヴィッドが恐る恐る挙手をした。

 

 

「す、すまない……、確認したいんだが、リュシアン君は父の代理だとかだろうか?」

 

「いえ、代理じゃなくて僕が父です」

 

「そ、そうか……」

 

 

 デイヴィッドはもう叫びたい気分だった。

 

 死者の国はおおらかというか、神の前では皆平等な考えから差別意識など全くない国と聞いていたが、まさか年齢すらも関係ないとは。

 

 文化の違いに世界の広さを感じ、デイヴィッドはただ途方に暮れる。

 

 呆けているデイヴィッドをよそにジャントールが恐る恐る尋ねた。

 

 

「それは……、その、ペットとかの父とかではなく……?」

 

「いえ、ペットではないです。僕の自慢の子どもです。あの子も、僕のことを自慢の父だと言ってくれました」

 

 

 ジャントールはもう叫びたい気分だった。

 

 12歳で父親ということにすでに驚愕しかないのに、その子どもが喋れる年齢だということにももう驚きしかない。自身の娘が8歳で、15歳の少年に好意を持たれていることの相談に来たのにとんでもない逸材の登場で不安が一気に募る。

 

 神学校はこのことを知っているのか、知っているなら自分の知る神学校とは大きく変わってしまったことに、ジャントールは恐怖に震える。

 

 しばらくリュシアンを除く3人は、気持ちを切り替えるのに時間を費やしてしまった。

 

 

「あー……と、とりあえず! それでは! パパ友の会を開催する!!」

 

 

 ターネスは半ばやけくそに宣言した。

 よそはよそ、うちはうちである。

 

 やけくその宣言を他の3人は拍手で迎える。

 

 そうだ、よその家庭の事情に首を深く突っ込まなくてもいいだろう。もし相談があれば当然乗る。こちらも相談をする。パパ友の会はパパたちの助け合いのための場なのだ。

 

 

「さっそくだけどよ。俺の娘のことで、不安なことっていうか……、ま、相談があるんだ」

 

「娘さんか。いくつなんだ?」

 

「実は何歳かわかってねぇ。養子? みたいなもんなんだわ。だいたい13歳……、くらい……」

 

 

 ジャントールの質問に対し、マーガレットとよく遊ぶメレンゲ達が13歳なので、それくらいだろうと考えてターネスは答えた。言ってる途中で12歳のパパの存在を思いだし、やや言葉尻が弱くなったのは仕方のないことだった。

 

 

「そ、それでだな。今はやたらと可愛いんだけど、いや、この先も絶対可愛いけど。……、そのうち反抗期とか来るわけじゃねぇか。それを思うと不安で不安で、それでパパ友の皆にどうやってその不安と戦えばいいか、アドバイスをもらいたくてよ」

 

 

 さりげなく娘自慢を混ぜ込んでターネスは相談内容を言った。12歳のパパはともかく、他の2人は頼りになる先輩パパだ。そんな期待を込めて返答を待った。

 

 最初に返答をしたのはジャントールだった。

 

 

「反抗期、か。私の娘はまだ8歳だから、その不安とどう戦えばいいか私もわからない。力になれなさそうですまない」

 

「あ、いや、いいって頭を下げなくても」

 

 

 ターネスはジャントールが、自身と同じく娘の反抗期に怯えるパパ友仲間だと認識を改めた。

 そしてデイヴィッドが言葉を発する。

 

 

「私には17歳の一人息子がいて、丁度反抗期の真っただ中、だと思う……」

 

「おお」

 

 

 出来るビジネスマンは相談相手としてもやっぱり出来るパパなのかもしれない。ターネスはそう認識した。丁度悩みのタネである反抗期の息子を持つとは、どんな感じなのか知りたいものであった。

 

 しかし、デイヴィッドの表情は始めこそキリッとしていたが、どんどんと弱々しくなっていく。

 

 

「……、私も知りたい。今まで仕事ばかりしていたせいで息子と全然うまくいってないんだ……。反抗期だと思う……思いたいんだがルクレティア、妻に対しては素直で優しい子なんだ。何故か私には……私には……」

 

「お、おお……」

 

 

 なんだか雲行きが怪しい。

 どんどんデイヴィッドの言葉が弱くなっていくし表情も自信がすっかりなくなっている。全然できるビジネスマン感がなくなっていっている。

 

 

「いや、家族に構わず仕事ばかりの私が悪いんだ……。今はもう仕事より家族との時間を優先しているが、それでも気づくのが遅すぎた私は所詮ダメダメのダメおやじなんだ……。ブランコでひとり揺れてるのが似合うくらいのダメおやじなんだ……」

 

「デ、デイヴィッドさん? お、落ち着いてくださいっ」

 

「仕事しか取柄のない私なんて……、はっ! ……、ごほん。その、なんだ」

 

「今更取り繕っても遅いと思うぜ……」

 

「そうか……」

 

 

 どうやらデイヴィッドも反抗期に対してどうすればいいかわからないようだ。もしかしたら将来の自身の姿かもしれない。デイヴィッドの取り乱し様を見て、ターネスとジャントールは戦慄した。

 

 そんな中リュシアンが発言する。

 

 

「デイヴィッドさんの息子さんは奥さんに対しては素直なんですよね?」

 

「あ、ああ……」

 

「それなら、反抗期と言うよりも、ただデイヴィッドさんとどう接したらいいかわからないだけかもしれません」

 

「そうなんだろうか……」

 

「たぶん、ですけど。接し方がわからないなら無理に距離を詰めようとしたりせず、かといって突き放したりせずに、息子さんのあり方を受け入れるのがいいと思います」

 

「あり方?」

 

「はい。息子さんだって、自分の考えが、ペースがあります。少しずつ、溝を埋めていきましょう。デイヴィッドさんがこれだけ息子さんのことも好きだって、必ず伝わりますから」

 

 

 この間ターネスとジャントールは何も喋れない。一番年下のパパが一番しっかりしていることにただ愕然とした。

 

 

「あ、ありがとう……リュシアン君。若いのに、しっかりしているんだ、な……?」

 

 

 デイヴィッドはお礼を言いながらも、疑問形になってしまった。しっかりしているけど12歳でパパになるのはしっかりしているのだろうか。そんな疑問が胸中に渦巻いたからだ。

 

 

「僕も以前、子どもの考えを無視したことがあったんです。その後いろんな人に出会って、教えられて……、だから」

 

「そうなのか……」

 

 

 いつの間にかターネスの相談からデイヴィッドの相談に切り替わっているが、それについて誰も特に触れない。

 なにはともあれデイヴィッドの相談したいことが済んだのだ。

 

 

「わ、私も相談していいだろうか」

 

「あ、ああ。どうぞ」

 

 

 ジャントールが切り出した。それに対しデイヴィッドが言葉を促す。

 

 

「最近、8歳の娘に指輪が贈られたんだ……」

 

「ちょいとませてる感じだな。でも微笑ましいんじゃねえかな」

 

 

 ターネスが思ったことを言った。ちなみにマーガレットが同じ目にあった場合はおそらく相手の子に激怒する。

 

 

「子ども同士のおままごとの延長なら何も言わないが……、違うんだ……」

 

「だが8歳ならまだ無邪気な年頃だろう。子ども同士のじゃれあいにとやかく言うのは危険だ」

 

 

 デイヴィッドもジャントールが考えすぎだと感じて発言。自身の失敗は棚にあげ、子離れを促す。

 

 

「子ども同士……、なんだろうか……。相手は15歳の男なんだ……」

 

「……きわどいな」

 

「……ああ、きわどいな」

 

「……僕より歳上だ」

 

 

 8歳の女の子と、15歳の男。どちらも成人済みなら7歳差の恋愛、受け止めることは簡単だ。子離れ出来てるかは考慮しないものとする。

 しかし8歳だ。言ってしまえば幼女だ。

 そして15歳だ。思春期まっただ中だ。8歳にプロポーズをするなどロリコンだ。

 

 

「ま、まあ一時の気の迷いかもしれねぇし……」

 

「そ、そうだ。もしくはその子にただ純粋に喜んでほしくて、深い意味をこめてない指輪かもしれない」

 

「30万の指輪がか……?」

 

「さんじゅう……」

 

 

 子どもへのプレゼントにしては高すぎる値段。これはガチ目のやつだ。思わず言葉を失うパパ友集団。

 頭を抱えているジャントールに、ターネスは何も言えない。

 何も言えないターネスはデイヴィッドに視線を向ける。

 ターネスの視線に気づいたが、デイヴィッドもいい言葉が出てこない。オロオロするしかない。

 言葉が出てこないデイヴィッドはリュシアンに助けを求めるように視線を向ける。

 

 

「え、えっと……、その娘さんがどう思うかが大事じゃないでしょうか。本人の気持ちが大事というか……、まだ愛とか、そういうのが難しいなら指輪の送り主の人に待ってもらうようにしたら……」

 

「待ってもらえるだろうか……。あんな高価なものをプレゼントに選ぶ相手だ……」

 

「本当に娘さんを愛してるなら、ちゃんと娘さんのことも考えてくれると思います。押しつけたりなんかせずに……」

 

「そうだな……、まずは相手と話してみるよ。ありがとう」

 

「い、いえ。あまり上手く言えずにすみませんっ」

 

 

 この最年少パパがいなければ、パパ友の会はどうなっていたか。ぼんやりとターネスはそんなことを考えた。そして自身の悩み、娘の反抗期をどう迎えるか答えをもらってないと気づいた。

 

 

「あー、リュシアン。子どもの反抗期をどう迎えたらいいか、なんかないか?」

 

「す、すまない。私がうやむやにしてしまっていたな」

 

 

 デイヴィッドが謝罪してくる。もうすっかり出来るビジネスマンには感じられないとターネスは思った。今は育児に悩む同じパパだ。パパ友の同志だ。そんな同志の謝罪に、気にしなくていいと返し、リュシアンの言葉を待った。

 

 

「……、僕自身も、僕の子も反抗期を迎えてないので想像でしか答えられないですけど、僕なら、支えていきます」

 

「子どもをか?」

 

「はい。反抗期って、素直に助けを求めたり出来ないと思うんです。だから嫌がられても、助けたい。あの子は僕ではないけど、あの子の一部は僕で、僕の一部はあの子だから」

 

 

 要はマーガレットに嫌われても、自身がマーガレットを好きでいるなら助けるべき、だろうか。

 途中ターネスにはよくわからなくなったが、リュシアンが自身の子どもを深く想っていることがなんとなくわかり、適当な答えではないと思えた。

 

 ターネスはアドバイスに感謝して、ふと思う。

 

 これでパパ友の会4人のうち、3人の相談が終わった。そしてそのどれも、リュシアンが答えた。

 もはやターネスの中ではリュシアンは大先輩パパさん。12歳だが。

 そんなパパさんもまた、悩みがあるのではないか。そしてその悩みを、ターネス含む他の3人のパパ友たちは解決に、もしくは力になれるだろうか。

 パパ友の会。同志が出来た会だ。一方的に蜜を吸わせてもらうなど、申し訳なさすぎる。

 

 そこまで考えてから、切り替える。そもそも悩みがあるだろうか、と。

 もうターネス評ではリュシアンはすごいパパだ。自身で育児の悩みを解決していきそうなくらいだ。

 もちろん決めつけはよくない。だが、そういった悩みはないのでは、という考えがターネスの気持ちを軽くした。

 

 

「ちなみにリュシアンはなんか悩みはねえのか?」

 

 

 ターネスは軽い気持ちで尋ねる。ないだろうな、と思いながら。

 

 

「実は……」

 

 

 それに対し、少し伏し目がちにリュシアンは喋り出す。

 あるんだ……。ターネス達はパパ力が未熟な自分達で力になれるか不安になった。

 

 不安になりながら、迷えるパパたちの力になってくれたリュシアンの悩みの内容が語られるのを待った。たとえどれほど難しい悩みであっても、真剣に考えて答えよう。

 3人のパパたちの気持ちはひとつになっていた。

 

 そしていよいよ、リュシアンの悩みが打ち明けられた。

 

 

「どうも僕の子が、僕のことを父と呼べばいいか母と呼べばいいか悩んでるみたいで……」

 

「「「あー」」」

 

 

 3人のパパたちは声はひとつになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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