メルスト短編集   作:横電池

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少数民族の国1周目のイベ関連





少数民族の国のお話(シャオリン、シージェ、リュンリー)

 

 

 その日、シャオリンは東屋で本を読んでいた。

 

 普段は読書など自ら進んで行わないが、この日はなんとなく手を出していた。

 もっとも、読まれている本は娯楽小説。勉学ではないが読書は読書だ。

 リウ族の村でもこのような娯楽の本が入るのも、あの騒動で知り合った商人のおかげである。今までは本と言えば村の歴史の資料だったり、シージェが用意した教材であったりと、シャオリンにとっては眠気を誘う重々しいものばかりであった。

 

 

「シャオリンが読書をしているなんて珍しいな」

 

「! シージェ! ち、違うの! これは勉学であってサボってたわけじゃなくて……!」

 

 

 声を掛けられてシャオリンは慌てた。

 休憩時間がもう終わっていたのだろうか。またスパルタ教育に火がついてしまうと恐れたからだ。

 

 

「何を慌ててるんだ。休憩時間まで僕が文句を言うわけないだろ。むしろ休むときはしっかり休むんだ。……、ユージア様は悪い見本だからな」

 

「あ、兄さまは村のことを思ってだから……」

 

「いいや、あれはもはや病気だ!」

 

 

 話題にあがったシャオリンの兄、ユージアはもう独りで何もかもをやる必要がないというのに、以前より仕事を求めるようになってしまった人物だ。仕事をしていないと落ち着かないワーカーホリックである。

 放っておいたら食事や睡眠もまともに取らない族長の生活改善が、現在のリウ族の村の最大の課題だ。

 

 

「あ……!」

 

「どうしたんだ?」

 

「まだ休憩時間なのね!」

 

「さっき言っただろう! ひとつのことしか認識できない訳じゃないだろうが!」

 

「休憩時間なのに文句を言った~っ!」

 

「文句じゃない! 教育係として忠言だ!」

 

「シージェの屁理屈屋~っ!」

 

「ふん、なんとでも言え!」

 

 

 いつもと変わらないやり取りをして半泣きのシャオリンは、何か別の話題を探した。

 

 

「そ、そういえばシージェは恋愛小説とか読んだことってある?」

 

「いや、ないな」

 

「そっかぁ……、ちょっと気になるところがあったから聞こうと思ったんだけど、他の人に聞いてみるね」

 

「待て」

 

「え? な、なに?」

 

「この超! 優秀! な僕がわからないと決めつけるのは早急すぎる!」

 

「で、でも読んだことないんでしょ」

 

「読んだことはないがわからないと決まったわけじゃない! 何が気になるのか言ってみろ!」

 

 

 ただ話題転換に出しただけのことだったが、シージェのプライドが刺激されたようだった。シャオリンは戸惑いながら気になった内容を言うことにした。

 

 

「え、えっとぉ……、この本に政略結婚って出るんだけどね」

 

「意外にどろどろしそうなものを読んでるんだな」

 

「政略結婚には愛がないって主人公の人が言ってるの」

 

「まあ一般的にはそうなるな。だがそれがどうしたんだ?」

 

「……のかな」

 

「なんだって? もっと聴こえるようにハキハキと!」

 

 

 うつむきだしたシャオリンに、シージェは叱りながら何を言ったのか促した。

 

 

「ユージア兄さまとリュンリー義姉さまにも愛はないのかな……!」

 

「何を……、ああ、そういうことか」

 

「だって二人は村の発展のために星読みの予言で婚約されたんだもの! これも政略結婚ってやつよね……!」

 

「まあそうなるが、あの二人は政略結婚のような冷えた温度はないだろう」

 

「じゃ、じゃあ二人は遺産争いとか離婚危機とかはないのね……!?」

 

「本当にその本は恋愛小説なのか? あの二人に限って離婚はない」

 

 

 シージェはシャオリンの読んでいた本の内容が少し気になったが、今は置いておくことにした。

 とにかくユージアとリュンリーの離婚危機はまずないということを教えることにする。

 

 

「良かったぁ……。でもなんで? 政略結婚なのに」

 

「それは……」

 

 

 なんで、と問われるとなかなか難しい。

 政略結婚ではあるが、互いに責任感が強く、それだけでない関係もあるだろうが、なんと言えば良いのかと言葉に詰まるシージェ。

 

 

「あ、わかったわ! この本に出てくる泥棒猫が言ってた!」

 

 

 言葉が出てこないシージェをよそに、シャオリンは手にもつ本の内容から予想をつける。

 泥棒猫という単語が出るあたり、姫君が読むものとしてどうなのかとシージェは疑問に思ったが、呑み込むことにした。

 

 

「どろどろした本だな……。それで、なんて言ってたんだ」

 

「うん、あのね。『私とあの人はカラダの相性が最高なの』って! 兄さまと義姉さまの二人もそういうことなのかな」

 

 

 シャオリンはその言葉の本当の意味をわかっていない。カラダの相性を、気の相性と読み替えて理解に務めていた。

 シャオリンの年齢は16歳。だが今まで予言で凶兆と読まれ、他者との接触がひどく少なかった影響もあり、年相応の知識はなかった。

 そして、シャオリンの勘違いをシージェは───

 

 

「そうだな。あの二人は互いに周囲への気の影響が強すぎるから、体質的に相性は最高だろう」

 

 

 ───正すことなく、シージェもシャオリンと同じ勘違いをした。してしまっていた。

 だってシージェの年齢は11歳。政治などの勉学ばかりに励んでいた彼に、その手の知識はまだなかった。

 

 

「でも……、それだとやっぱり二人の間には愛はないのかな……」

 

「直接聞いてみたらいいんじゃないか」

 

「ええ……? いいのかな?」

 

「二人ともそんなことで怒るような人じゃないことは知ってるだろう」

 

「そっか……、そうよね。シージェだったら怒るけどユージア兄さまもリュンリー義姉さまもやさしいもの」

 

「リウ族の姫君としての自覚がまだまだ足りないようだな。明日は朝から礼節の授業をみっちりやるぞ」

 

「シージェのいじわる~っ!」

 

「なんとでも言え! そんな言葉で僕の教育方針は変わらないからな!」

 

 

 明日の予定を組み立てながら、シャオリンとシージェの二人は目先の疑問解決のため、ユージアかリュンリーを探しに執務室に向かった。

 

 

「私に聞きたいこと、ですか。私に答えれることならなんでも聞いてください」

 

 

 執務室にいたのはリュンリーだけだった。ユージアは丁度席をはずしていた。

 

 

「やっぱりリュンリー義姉さまはやさしい~!」

 

「そうでしょうか」

 

「だってシージェだったら……」

 

「僕だったらなんだ」

 

「な、なんでもない……!」

 

「まあいい。質問が終わったら休憩時間も終わりだからな。僕は次の授業の準備をしてくる」

 

「はぁい」

 

「返事は優雅に! それでいてはきはきと!」

 

「は、はい!」

 

 

 執務室からシージェが出ていき、シャオリンはリュンリーと二人きりになった。

 

 

「それで、聞きたいこととはなんでしょうか」

 

「え、えっと……、変なことを聞きますが」

 

「はい、気になさらずなんでも聞いてください」

 

 

 リュンリーは不安そうな表情を浮かべるシャオリンに、優しく穏やかな表情で質問を促した。

 

 

「ユージア兄さまとリュンリー義姉さまは……、カラダの相性が良いから結婚されたんですよね……!」

 

「………………はい?」

 

 

 リュンリーは目を点にして思考が停止した。

 

 カラダの相性。

 それはつまり、アレなことなのだろうか。アレとはつまり夜伽なアレで。

 なぜそんなことを。というか義理とはいえ妹のシャオリンにその話題はどうなのか。

 

 リュンリーの脳内は絶賛混乱中だった。

 

 

「政略結婚だけど、二人の仲がよろしいのはカラダの相性で……、二人の間に愛がないのかなと不安に……」

 

「か、カラダの……」

 

「義姉さま?」

 

 

 リュンリーは未だに混乱中である。

 カラダの相性という単語からそのような営みを想像して顔を赤らめ、そしてそんなことを聞いてくる妹のシャオリンに顔を蒼白させて。

 よってシャオリンの質問の意味を理解はできないまま、そもそもの原因を探ることにした。

 

 

「シャ、シャオリンさま、なぜそのようなことをお聞きに……?」

 

「? シージェが聞いてみたらって」

 

「シージェさまが……?」

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、シャオリンの礼節の授業は行われなかった。

 シージェが何故か執務室に呼ばれてその日戻ってこなかったからだった。

 

 

 

 

 

 

 

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