機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike 作:見ルシア
C.E. 0071 ユーラシア連邦ルーマニア軍所属基地「シルバニア」
「ジン全機、降下完了、これよりシルバニア基地の制圧を開始する」
基地防衛に配備されていたリニアガン・タンクが弾幕を張る中、地表の開閉扉から何か人型の物が出てくる。
「出て来たぞ! 『カカシ』のおでましだ」
先陣を切るジンのパイロットが叫んだ先には同型機のジンの姿があった、しかしカラーリングは青と白であり、所々装甲が壊れている。
「キャットゥスを使え、あれは固定砲台だ、動く事はない」
M68キャットゥス 500mm無反動砲、対MSよりも艦船や施設等の破壊に向きの火器であるそれを使用する。
ジンの姿をした『カカシ』が直撃を受けて次々と爆破されていく、戦果は着実に挙げているのだがザフト兵達の士気はいまいち揚がらない。
「カモフラージュと言っても他にやりようがあったでしょうよ、何でこんな悪趣味な事を」
「敵兵の戦意を削ぎたかったんだろうさ、いかにも野蛮なナチュラルの考えそうな事だ」
そう言いながら、基地の奥へと更に進んでいく。
「しかし、これ程の数が鹵獲されていたとは、ジンだけでなくシグー、バクゥまでも……」
ザフト側の損害はゼロと言っても良い位であったが、戦場にはジンなどのザフト軍MSの残骸が散乱していた。
基地中枢部への入口と思われるゲートを見つけた時、もう1機、地面から十字架の様な物体がせりあがって来た。十字架には
「まだカカシが居たのか、しかも今度はポーズまで本物のカカシと同じじゃないか」
「あの頭部……クルーゼ隊がこの間奪取した
それに気付いたジンのパイロットはライフルを向けると一瞬、頭部部分のツインアイが光った様に見えた。と同時に十字架の後ろから巨大な手が出てくるとジンの体を機銃ごと鷲掴みにした。
「うわああああ!? 」
「フェイ!? 、く、このカカシ動くぞ! 隊長! 敵
正体不明の
もう1機のジンは味方が撃墜された事でスイッチが入ったのか、後退しながらライフルをフルバーストさせるが、地面から這い上がってきた防弾扉に全て防がれる。
「固定砲台と言う訳では無いのか、くそ! 」
後退を続けながらも手早く弾倉を入れ替え、銃を撃ち続けるが全て同じようにせりあがって来た防弾扉に防がれてしまう。
「これは……まるで地面があの
すぐ足元の地面にも振動があったので思わずその場からスラスターを吹かせて飛び上がるが、そこをいつの間にか接近されていたのか、大型クローアームの手に握られた重斬刀で右肩から斬られてしまう。
隊長機とD装備のジンが到着したのは丁度その時であった。
「隊長! ハンゼルが!」
「私が囮になる、その隙にキャニスでアイツを狙うんだ」
隊長機のジンはD装備のジンにそう指示を出すと突撃銃を構えながら正体不明の
が、弾は全て巨大なクローアームに防がれてしまう。
「ちぃ、効いていないのか!? だが! 」
横に回り込んでいたD装備のジンがミサイルを発射する。大小4発のミサイルが全て本体に吸い込まれ、大爆発を引き起こした。
「やったか!? 」
「まずい、下がれ! 」
隊長機は一瞬の判断でバックステップを踏む。
が、右腕が武装もろとも切り裂かれる。もう少し遅かったら本体ごと斬られていた。
「グゥルで離脱しろ! 帰って今回の戦闘データを伝えるんだ、次の作戦に活かせるように」
「はい! 」
D装備のジンは飛んできたグゥルに飛び乗るとそのまま離脱を図る。
隊長機は飛び去るグゥルと正体不明
「追わせるか! 」
「追わないよ」
突然の通信に一瞬、隊長機のパイロットは戸惑った。
「これも作戦通りさ、何機かは見逃してやる、そしてまた獲物が来るのを待ってるんだ」
「何だと……」
正体不明機は両手の76mm重突撃機銃をフルオートで撃ち鳴らす。先程撃墜した2機から奪った物だ。
隊長機は右に飛んで弾を避けようとするがそこに防弾扉が表れ、退路を防がれてしまう。
「この基地全体が罠だったと言うことか……」
銃弾が防弾扉ごとジンを包み込み、そして穴だらけになった機体は地面に崩れ落ちた。
正体不明機のパイロットはジンの残骸を見下ろすと基地に通信を入れる。
「こちらアレン中尉、侵入してきたジン4機の内、目標の3機を撃墜した。ヘリックス、パラサイトストライカー共に異常なし、これより帰投する」
5/19 推敲