機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike   作:見ルシア

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PHASE-10 ガンダムタイプ

 オルレアン基地

 

 追撃を受けつつもヴェンデロートはオルレアン基地へ入港する事が出来た。

 

「よく来てくれた。我が基地の防衛網の中にいる限りはもう安心ですよ」

 

 オルレアン基地司令ライゼル・フォントが自ら出迎えに来てくれていた。

 銀髪に長い白髭を蓄えた老将軍はそう言うと右手を差し出す。

 

「出迎え感謝します。色々とご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 

 ホバートは頭を下げ、恐縮しながら握手に答える。

 ライゼルの階級は少将、佐官のホバートの上にあたる。

 

「何、構わんよ。ところで例の防衛システムの方は上手くいってるのかね?」

 

 ライゼルが尋ねる。

 

「ええ、[アタランテ]が無ければ我々もここまではたどり着けなかったでしょう。「アタランテ」が開発したMSと合わせて後程お見せいたします」

 

 ホバートの返答にライゼルはフムフムと頷いた。

 

「君の基地で開発したMSか、大西洋連邦のMSと比べて見劣りするものでは無ければ良いがな」

 

 少し棘のある言葉にホバートは眉を潜める。

 

「お言葉ですが、既に我々のMSは実戦で何機ものザフトのMSを……」

 

「まあ、実物同士を比較した方が早いだろう」

 

 驚くホバートを他所に老将はさらりと言った。

 

「え、この基地に既に配備されているのですか!?」

 

「ホバート君、もはやMSはザフトと一部の者が扱う特殊兵器では無いのだよ」

 

 思いがけない返答にホバートは狼狽の色を隠せなかった。

 

ーーーーー

 

 オルレアン基地 格納庫

 

 アレン達は基地内の格納庫に来ていた。

 目的は供与されるビーム兵器の説明を受けるためである。

 また、既にへリックス等のMSも綿密な整備を行うためにここに運び込まれていた。

 

「こちらが準備していたレーザートーチです。本来は作業用の溶接装備ですが、先端を伸ばしてビームサーベルの様に使用することも可能です」

 

 オルレアン基地の整備員がアレンに説明する。

 ビームサーベルはミラージュコロイド技術を応用した刃状の兵器である。

 ビーム兵器であるため、実体剣であるジンの重斬刀とは違いPS装甲にも有効であった。

 

「白兵戦用のビーム兵器か」

 

「ビームサーベルはGシリーズに標準装備されている武装です。ザフト側もバクゥへの配備を進めているみたいですね」

 

 アレンには初めて見る物だったが、刀身が調整でき、小型で取り回しが効く点は興味がひかれた。

 

「そう言えばこの間の戦闘でも敵のバクゥの中で口元になんか咥えた奴がいたような気がするなあ、所で俺達のバクゥにもこいつと同じ奴を取り付けてくれるんだよな?」

 

 シャルルが口を挟む。

 

「バクゥ用の方も準備しております。それはこちらに……」

 

 整備員に連れられてバクゥ隊の面々が移動する。

 アレンも移動しようとするが、ふとへリックスの方を見た所、何やら少し騒ぎになっているようだった。

 

「ノエル中尉、お止めください、勝手に搭乗されては困ります!」

 

「コクピットに座る位なら別に良いでしょう?……起動させるには……」

 

「どうした?何を騒いでいる」

 

「アレン中尉!それがノエル中尉がどうしてもこのMSに乗せろと仰って……」

 

 整備兵がアレンに困惑した表情で話す。

 ヘリックスのコックピットを見ると黒髪の女性パイロットが座っていた。瞳の色は紫である。

 

「私はこの基地のテストパイロットです。この基地のMSに関しては全て自由に搭乗して良いという権限を持っています」

 

「だから、このMSはシルバニア基地の物です!この基地のMSではありません!」

 

 さすがに業を煮やしたのか、整備兵の一人が力ずくで引っ張りだそうとするが、アレンはそれを逆に止めた。

 

「そこに座っているという事はアタランテの許可が得られたと言う事、であればアタランテの判断に任せよう」

 

「私はこの機体の前に来たら勝手にハッチが開いたから乗せて貰っただけで、アタランテ何て知らないんですけど……ところであなたは?もしかしてこのMSのパイロット?」

 

「アレン・クエイサーだ、階級は中尉」

 

「それは階級章と名札を見れば分かります。」

 

 これ以上操作しても無駄と判断したのかノエルはコックピットから出てきた。

 

「システムの起動までは行ったんですけどね、まさかOSまでXナンバーと同じとは、たしかにガンダムフェイスっぽいなとは思いましたけど」

 

「ガンダム?」

 

「知らなかったんですか?この頭部形状の事をガンダムって呼ぶ事」

 

「いや、まったく」

 

 ノエルは呆気に取られた様な顔を浮かべる。

 アレンは逆に質問してみる事にした。

 

「ところでノエル中尉、あなたはこの基地のMSパイロットなのか?」

 

「ええ、この間大西洋連邦から譲渡されたんです」

 

「既にこの基地にもMSが配備されていたのか」

 

 どういった経緯で譲渡されたのか気になったが、それは聞かない事にした。

 

「ところでこのストライカーパック、本体よりも重いんじゃないですか?」

 

 ノエルは機体後方のパラサイトストライカーの方を覗き込みながら言った。

 

「いや、そいつの重量は本体の3分の1位ですよ」

 

  アレンが答える。

 ノエルはそれを聞いて少し首をかしげ思案するような仕草を見せた。

 

「それにしても、よくまあこんなMSで戦えましたねあなたは」

 

 ノエルがまた呆れたような表情をする。

 アレンがそれには答えなかったので、気を悪くしたのか背を向ける。

 

「まあ良いです。どっちにしろ私のMSにはストライカーパックは装備できませんから、それでは」

 

 そう言って出口の方へと立ち去っていった。

 

ーーーーー

 

 エール・リベルタ ブリッジ

 

「この長距離砲の情報がもっと早く届いていれば……」

 

 アネットは机上に置かれている電子パネルを見ながら言った。

 パネルには物々しい砲台が映っている。

 

 陽電子破城砲『ローエングリン砲』

 その名前の通り絶大な威力を誇り、あの「足付き」アークエンジェルにも搭載されている砲門である。

 

「諜報部への八つ当たりは止めて貰いたいな、オルレアン攻略作戦前に敵の陽電子砲の情報を得ることが出来ただけでも彼らの働きは称賛に値するよ」

 

 キャミッサーがたしなめる。

 とは言え彼も思う所が無い訳では無かった。

 

 先の戦闘ではヴェンデロートをあと一歩まで追い詰めたものの、オルレアン基地からの長距離砲撃を受けたためやむなく撤退を選択したのである。

 アネットの言う通り、オルレアン基地にローエングリン砲がある事が分かっていればまた別の作戦を取る事もできたはずであった。

 

「『オペレーション・ウロボロス』の柱の一つが『地上での支援戦力を得るための軍事拠点を確保』ですが、このオルレアン攻略はその内の作戦の一つに入っているとは思えませんね、ここにはマスドライバーも無いですし」

 

「たしかにマスドライバーは無いがヨーロッパ戦線においては重要な基地の一つだ、だからこそヨーロッパ戦線に投入されている戦力を結集している」

 

 アネットはあまりこの作戦が重要視されていないのではないかという危惧を吐露したが、キャミッサーはそれを否定した。

 そこに格納庫にいた兵から連絡が入る。

 

「キャミッサー隊長、ディンの整備が完了しました。さっそく試運転なされますか?」

 

「了解した。すぐに行こう。アネット、後は任せる」

 

 キャミッサーはブリッジを後にすると格納庫へと向かった。




5/10 基地名が間違っていたのを修正
誤 トゥファリス 正 シルバニア

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