機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike 作:見ルシア
PHASE-11 VSストライクダガー
へリックスは基地での整備を終えてヴェンデロートの艦内に戻された。
<ビームトーチは次の戦闘でさっそく使ってみたいものですね、大型クローアームよりも小回りが効きそうですから、これでPS装甲にも対応できるでしょう>
アタランテは新しい武装に興味津々と言った所である。
たしかにPS装甲を持ったMSに対して実体武器を使うよりは戦果を得ることが出来るだろうとアレンは思った。
「しかし、この前の戦闘では結局白兵戦に持ち込む事が出来ませんでした。これ以上近接武器を増やしてもという気もします」
<この間の対ディン戦の事を考えていたのですか、たしかにそれも分かりますが>
アタランテは気分を少し害した様である。
<基地内の戦闘では同士討ちを起こしやすい射撃武装よりも、近接武器の方が重要になります。ディンへの対処はまた別に考えているのでご心配なく、それより、ビームトーチに異常はありませんか?>
アレンはコンソールからビームトーチに異常が無いかどうかを確認する。
たしかに、これまで飛行型MSを相手にする事がたびたびあったので射撃武器を優先したい気持ちはあった。
それももう一つの関心事はなぜノエルをヘリックスに乗せたのかである。
「ところでなぜノエル中尉をヘリックスに乗せたのですか?」
<彼女がコーディネーターかナチュラル、またはそれ以外かどうかを確認したかったのです、このコックピットは座るだけで体重、血圧などの健康状態を測れるので、結果はもちろんナチュラルでしたが>
コーディネーターを警戒するのは分かるが、それ以外というのは少し気にかかった。
<それよりもこの基地の配置図はちゃんと把握できていますか?基地内での戦闘が迫っていますよ>
「基地内での戦闘?」
<ええ、次の戦場はこの基地になります。万全の状態で迎えるためにも、しっかりと睡眠を取って下さいね>
ーーーーー
オルレアン基地司令部
ホバートはオルレアン基地司令のライゼルから基地内の施設の説明を受けていた。
最後にMSの格納庫へ案内されるとそこには5機のMSが鎮座していた。
「これが我々が大西洋連邦から譲渡されたGAT-01 ストライクダガーだよ」
ストライクダガーは青いゴーグルフェイスと胴体部、白い手足、赤い脇部と踵のトリコロールカラーのMSである。
「これがパナマ基地で開発されていたという大西洋連邦のMS……」
「MS同士の模擬戦もお互い不慣れなためか未だにぎこちなくてね、それに君の隊にはバクゥも数機いるではないか、ぜひ演習の仮想敵役を買ってくれるとありがたいのだが」
「我々はアグレッサー部隊という訳ではないのですが……そこまで言われては、もちろんお請け致しましょう」
ライゼルの頼みにホバートは渋々承諾した。
ーーーーー
オルレアン基地内 演習場
「仮想敵ならバクゥの方が適正だったのでは?」
<バクゥは1対1の戦闘には不向きですから>
武装は出力を押さえた57mmビームライフルとビームトーチである。
今回は基地施設も戦艦のバックアップもない
文字通り1対1と言った所であった。
<アレン、この模擬戦で新しいビーム兵器の感触を掴んで下さい。貧弱な重粒子砲とは勝手が違いますよ>
「……了解」
たしかにアタランテの言うとおり、レールガン等の実弾兵器を使うことが多かったヘリックスにとって実戦前にビーム兵器の感触に慣れるには絶好の機会である。
しかし、不馴れな装備でどこまで動けるかという不安の方が先にあった。
「双方準備は出来ていますか?では、始めて下さい」
オペレーターから開始の合図が告げられる。
お互いに睨みあった状態から先にノエルのストライクダガーが動く。
左右に移動しつつ、ビームライフルをセミオート射撃で撃っていく。
アレンは回避行動を取ろうとレバーを動かすが、それをアタランテが止め、変わりにパラサイトストライカーのクローアームを全面に出す。
巨大な腕が盾となって、本体への被弾判定を防ぐ。
<アレン、まずは相手の出方を見る事が先決ですよ>
「しかし、このままでは……」
開幕の均衡状態から一転して守勢の状況に移行した。
「パラサイトストライカーに被弾判定、ですが有効ではありません」
「既にこちらが10発以上当てている。実戦ならビームライフルの威力でストライカーパックごと吹き飛んでいるはずですよ」
オペレーターからの無効判定にノエルが苦言を言う。
これだけ当てていても部位破壊の判定すら出ていなかった。
耐ビーム・コーティングがされている事は知っているが、ここまで耐久値が高いとは言われていない。
「有効打を与えてやらないとね」
ストライクダガーがへリックスの右側面に回り込み、武装をビームトーチに持ちかえて接近戦を仕掛ける。
へリックス側はクローアームを右側に移動し、まだ防御の構えを見せるが、ノエルはその動きを盾で押さえるとビームトーチを突き出す。
「まだだ!」
アレンもへリックス本体が持っていたビームトーチで迎え撃つが、逆に相手から柄の部分を使って払い退けられてしまう。
光を失った剣が宙を舞い、地面に転がる。
「く、そんな……」
「本体の両手が残ってる事くらい、お見通しですよ」
アレンの行動は既に読まれていた。
ノエルはビームトーチを片手で持ちかえて再度突き出す。
ピピッ
が、突然のロックオンアラート音に驚いて飛び退く。
右肩部と腰部に被弾判定、パラサイトストライカーに隠されていたビームライフルの掃射により、ストライクダガー本体にダメージ判定が入ったのだった。
「な、ストライカーパックにビームライフルを隠していたというの!?」
<こちらも、あなたの行動くらいお見通しですよ>
ノエルは態勢を立て直し、ビームライフルとビームトーチを構え直す。
完全に一本取られた感じになってしまったが、まだ戦闘を続行する意思を見せた。
「それまで、今回はここまでとしよう」
「司令!」
「何故です?まだ決着はついていませんよ!?」
ライゼル司令による終了の宣言。
ノエルや見学していた他のストライクダガーのパイロットからは抗議の声が挙がる。
「もう双方の実力は十分に見せて貰った。私はどちらかが倒れるまでやれと言ってはいない」
ライゼルがそう言って周囲を黙らせると誰も抗議する者は居なくなった。
「今回は退きますが、実戦ではこうはいきませんよ」
ノエルはそう言い残すと、整備のためストライクダガーをハンガーに移動させる。
<お疲れでした、ビームトーチの扱いに関してはこれから習練していきましょう。今までは砲撃と引き撃ちがメインでしたから仕方がありません>
アタランテの戦闘分析にアレンは力無く頷く。
ノエルに自分の動きが全て読まれていた。
始めに防御に徹せず、回避行動を取っていたら本体に被弾判定を受けていただろう。
アレンにとっても今回の模擬戦は課題の残る結果となった。