機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike 作:見ルシア
キャミッサーが駆るディンはヘルダート・ミサイルランチャーの弾幕を掻い潜り、基地内への侵入を果たす。
「フランキーめ、やってくれたな」
H.L.Vによる落下の衝撃の様子はその時基地の外周にいたキャミッサーの方からも確認できた。
しかし、その後の推移は少し不穏と言っても良い。当初の予定では既に基地中枢部を掌握できているはずである。
ひとまず状況を掌握するためにも、母船である「エール・リベルタ」に連絡を入れる。
「こちらキャミッサー、あれから他の部隊から何か連絡は来ていないのか?」
「グーン隊の方は地球連合軍の複数の
例の
「ザウート隊からの連絡は? そろそろ時間だろう」
「いえ、そちらの方はまだ何も来ておりません」
「そうか……私はこのまま作戦を継続する。何も戦果を得られないまま帰る訳にはいかんのでね」
更に基地の奧へと飛ぶと中心部付近に黒煙が立ち込めていた。
その中に味方機の信号も確認できる。
「あれは……『十字架』か?」
煙の隙間からザウートの傍らにまるで墓標のように十字架が建っているのが見えた。
キャミッサーは瞬時に状況を理解するとその目標に向かってディンを加速させる。
「してやられたか、フランキー」
――――
<アレン、例の隊長機ですよ。ヘルダートの弾幕網を掻い潜って来たようです>
アタランテが警告する。
アレンはザウートを蹴り出し、ヘリックスから引き離すと、接近してくるディンに向かい合った。
相手は飛行型
ビームトーチを膝部のサーベル・ラックに戻すとヘリックスの今持てる全ての火器をフルオープンさせる。
頭部の75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルン、300mmレールバズーカ「ゲイジャルグ」、4連装ミサイルポッド、更に隠し腕の76mmビームライフル
全ての照準がたった1機のディンを捉える。
「当たれぇぇぇ!!!」
ヘリックスのあらゆる火器が一斉に牙を向く。
その過剰とも言える攻撃をキャミッサーは冷静に判断し、数発のミサイルを撃ち回避行動を取った。
そこに2発のミサイルが妙な軌道で飛んでくる。
「ミサイルが300度曲がるのか!?」
思わず右手に持っていた76mm重突撃機銃を投げつけ誘爆させるとその爆風が戦場を覆う。
これを利用し、ひとまず建物の影に隠れる。
「手数が多いな、あれだけの兵器管制が出来るナチュラルがいるとは驚きだが」
キャミッサーは通信を入れる。
「こちらキャミッサー、グーン隊に支援を要請する。誰かいないか?」
おそらく近くに来ているはずであるグーンに援護を要請する。
予定では地下水路から潜行し、基地地下部の破壊工作を行っているはずであった。
「こちらグーン1番機、あと1機連合の
「こちら2番機、先ほど手応えがあった。あと1機でエースなんだ、ちゃんと撃墜させてくれ」
どれも戦果や武勲欲しさにまだ地上へは出てこようとしない。
「手柄なんてくれてやると言うのに」
キャミッサーは思わず毒吐く。
ディン1機では対処しきれない獲物である事は既に先の戦闘で分かっている。
音波兵器であるグーンのフォノンメーザー砲であればあの剛腕にも効果があると思ったが、この状況では期待できそうにない。
「既に降下したザウート隊は全滅だ、このままではそちらも共倒れだぞ」
「何、やられたのか? 分かった、こちらもすぐ地上の支援に向かう」
グーンのパイロット達はようやく事の重大さに気づいたのか態度を一変させた。
ピピピッ!!
突如、ディンの警報アラートが鳴る。
位置を察知されたので、キャミッサーは仕方なく機体を空へと飛翔させる。
直後にさっきまでいた足元の地面にミサイルが着弾し爆発した。
「奴のミサイルは一体どういう誘導方式を使っていると言うのだ。まるでこちらの位置が把握されているように……」
キャミッサーは敵の異様な雰囲気を再確認せざるを得なかった。
――――
<基地への被害をその都度考えている暇はありません>
「了解……くっ!」
アタランテに言われるまでもなく、既に目の前のディンを落とすのに精一杯である。
しかし、敵機の位置は把握できているが、攻撃を当てる事が出来ない。
周囲には味方の戦闘車両もいないため、援護射撃をしてもらう事も望めなかった。
「ここだとよく狙えない、移動するべきでは?」
アレンの焦りは募るが、それをアタランテがたしなめる。
<こちらから出向く必要はありません。まもなくバクゥ部隊が来ます。それからでも遅くはありません>
援軍の話を聞いて、アレンは咄嗟にもう1部隊の援軍の方を思い出した。
「そう言えば地下水路の方は、まだかかりそうなのか?」
その時、近くの地面で次々と爆発が起こると、巨大なイカの姿をした
「あれはザフトの
<UMF-4A グーンですね、ザフトの水陸両用
――――
降下してきたザウートが撃破され、ひとまず安堵していたオルレアン司令部は再び現れた敵機に混乱していた。
「また敵の
「こちらの防衛部隊は、
「施設防衛部隊はまだ外周にいるディン2機と交戦中、
オペレーターからの報告に参謀達は狼狽えた。
「何だと?」
「まさか、全機撃墜されたのでは?」
「それはありえない」
憶測が憶測を呼び、もはや収拾が付きそうにない。
「もはや、彼らに託すしか無いと言うことか」
ライゼルは両手を組むとそれに顎を埋めた。