機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike   作:見ルシア

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PHASE-14 オルレアンの旗

 へリックスはクローアームの手の部分を自機を上から掴むように展開し、防御体制を取った。

 

<囲まれている今はこうするしかありません>

 

 そこにグーンから多数のミサイル、そしてフォノンメーザー方が降り注がれる。

 へリックスのコックピットの中が大音量のアラート音で満たされた。計器も異常を示している。

 

「く……アタランテ、次の指示を」

 

<今さら動く事もできません、想定よりも残っていた敵機の数が多いですね、これは誤算でした>

 

「そんな!?」

 

<ミサ……イルはまだ……フオ…………メーザー……が……>

 

 敵の攻撃は収まりそうにもない。

 アタランテの音声が途切れ途切れになる。

 大音量と振動で頭が割れそうだ。

 

「く……まさかここで……」

 

 アレンの意識が朦朧とする。

 

 初めは別の基地から連れてこられて……

 

 そもそも何で戦って……

 

 先に機体制御に影響が出たのか、クローアームの中にいたへリックスは体制を崩してうつ伏せに倒れた。

 

「やけに頑丈な奴だったな」

 

「ああ、もう少しでこちらも銃口が熱でやられる所だった」

 

 ザフト兵達が感心した様に言う。

 そこにビームライフルの閃光が走る。

 

「あの1機、やはり隠れていたのか!」

 

「私……言いましたよね……その戦法は実戦では通用しないと」

 

 そう言ってノエルは流血しながらも必死に操縦幹を握る。

 

 グーンが出てきた穴からボロボロのストライクダガーが這い上がってきた。左肩部は既に失われている。

 

 それに止めを刺そうとグーン達は両腕を挙げるが、ふと別報告からのアラートを確認する。

 バクゥが数機、こちらに向かって駆け出して来ていた。

 

 キャミッサーも空中からそれを認めると、グーン隊に警告する。

 

「作戦開始時にも伝えていたと思うが、ここにいるバクゥは全て敵の鹵獲機だ。だが、注意してくれあいつらは普通とは違う」

 

「そりゃ違うだろうさ、「リード付き」とは本当にいたんだな。やはり連中の趣味は悪い」

 

「あれも操縦しているのはナチュラルだろう。何を怖がる必要がある?」

 

 キャミッサーの警告を無視し、グーン達は各々が攻撃を行うが、どれも後少しという所で当たらない。

 こうしている間にもバクゥとの距離は縮まっていく。

 

「く、やけに統制が取れているな」

 

「奴等のリードを狙え、あれがおそらくは動力源と繋がって……何!? うわあああ!!」

 

 バクゥの頭部両側から展開されたビームトーチがすれ違い様に1機のグーンを切り裂いた。

 

「さっきのバクゥ、空中で一回転しなかったか?」

 

「見間違いだ、ナチュラルにそんな曲芸が出来る奴がいるわけないだろう!」

 

 グーンは本来水中戦を想定して作られており、MS戦を行うことを考えられておらず、そのため格闘用の武装を持っていない。戦況は再びザフト側の不利となった。

 

 キャミッサーは思案する。

 

「言わないことではない、しかしここで加勢するにはもう一押し欲しいな」

 

「キャミッサー隊長、カラサワ隊長がローエングリン砲1台の破壊に成功しました。現在残り2台の方に向かわれています。我々はこちらの援護に向かえと言われました」

 

「アネット、ようやく来たか」

 

 このタイミングで別動隊であるカラサワ隊にいたアネットのディンとグゥル搭乗ジン3機との合流を果たす事が出来た。

 

「弾薬とバッテリーの残量はまだ大丈夫か?」

 

「はい、我々もあまり多いとは言えませんが、まだ戦況を挽回するのに充分な量は残っています」

 

「よし、であれば話は決まりだな。バクゥを排除し司令部を攻撃する。私に付いてきてくれ」

 

 覚悟は決まった。

 たしかに地上はバクゥの登場で劣勢であるが、ここで空中部隊が加勢すれば充分に逆転の可能性はあると言える。

 

 しかし、ここで水を差すような通信が入った。

 

「隊長、緊急通信です。バルドフェルド隊が撃破されたとの情報が入って来ました。至急「エール・リベルタ」にお戻りください。これはロス機長の指示でもあります」

 

「何、あの「砂漠の虎」が……しかし、撤退命令だと!?」

 

 オペレーターからの通信にキャミッサーは憤慨する。

 

 バルドフェルド隊がやられた事は、たしかにキャミッサーを驚かせた。

 しかし、今の作戦を中止せよというのは何かまた別の理由があるようにキャミッサーには思われた。

 

「本当の理由はこっちか? 彼女を危険な目にあわせたくないと」

 

 アネット機の方を見る。

 

「既に「十字架」のMSは無力化し、後はバクゥと敵司令部を残すのみと言う所で……しかし、やむを得ん」

 

 キャミッサーが地上の生き残りに「殿は我々が務める」と伝達するとグーン達もそれぞれ侵入してきたルートを通り、撤退した。

 

――――

 

「アレン中尉! 大丈夫ですか、しっかりして下さい!」

 

 アレンは気がつくとストレッチャーの上に横たわっていた。傍らにシャルルと衛生兵の姿が見える。

 

「シャルル少尉か……他の皆は……?」

 

「「ヴェンデロート」も、うちの基地の連中はほとんど被害が出ていませんよ。バクゥ隊の面々も全員生き残りました」

 

 そう言った後、「ただ……」と言いにくそうに付け加える。

 

「オルレアン基地の方は被害が甚大ですね、固定砲台も戦闘車両もほとんどがやられています。MS隊に至っては全機が大破しています。乗っていたパイロットも何人生き残れたのやら」

 

「そうか……」

 

「シャルル少尉、付き添いはここまででお願いします。後は我々にお任せください」

 

 アレンはまだまだシャルルに聞きたい事があったが、衛生兵に半場強引に引き離されてしまった。

 

 医務室に付くと、そこには少しぼさぼさとした感じの人物が待っていた。

 

「アレン君、これまたこっぴどくやられたね」

 

「ソール軍医」

 

 ソールは「ヴェンデロート」の軍医を任されており、階級は大尉である。

 

「アレン君、これから君に少し眠ってもらう事になるが心配はいらない。いつもアタランテがやってるメディカルチェックと同じ気持ちで構わないよ」

 

「……分かりました。よろしくお願いします」

 

 アレンは助手の衛生兵から注射を受けると眠りに入った。

 眠った事を確認するとソールは助手達に手早く指示を出す。

 

「予備の「ゆりかご」の準備は良いな?」

 

「はい、すでにスタンバイ状態です」

 

「よし、はやく披検体を「ゆりかご」に入れろ」

 

 その姿には先程までの余裕は感じられない。

 

「良いな、くれぐれも緊急マニュアル通りにしろ。特にブロックワードに関しては絶対に口に出すな。また、アタランテシステムが復旧しない場合も考えねばならん」

 

 そう言って「ゆりかご」に入れられたアレンの方を見る。

 

「これでも薬づけよりは本当にましと言えるのかねえ……」

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