機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike 作:見ルシア
シルバニア基地 小隊本部
アレンは直属の上司である小隊長ホバート・バリー大尉に今回の戦闘の報告をしていた。
「アレン君、今回はヘリックスとパラサイトストライカーパックの運用も兼ねての実戦だったが、どうだったかねパイロットとしての感想を聞きたい」
「機体の操作に関しては問題ありません、次に武装に関してですが、大型クローアームの有効性について証明ができたと思います。近接戦で戦艦の装甲にも穴を開ける事が出来るあれに耐えられる機体が存在するとは思えませんし、ただ距離を取って戦う時の武装がバルカンと4連装ミサイルだけというのは気がかりですね、滷獲した武器頼りと言うのもいかがなものかと」
ホバート大尉は角ばった顔立ちをした如何にも気難しい感じの上官である。身長が172cmのアレンよりも高く、話す時は少し見上げる様になってしまう事も影響しているのかも知れない。
「また、こちらが突撃しようとした時に防弾扉が持ち上がったのは、まだ『アタランテ』との連携不足という感じがしました。あの時、防弾扉が持ち上がっていなければ……」
<それを指示したのは私です>
二人の会話を女性の声が遮る。
<スタビライザー脱着後の機体バランスが不安定な状態で、ジンに真正面から攻撃を仕掛けようなど無謀な作戦でした。ヘリックスの装甲はラミネート装甲ですが、76mm重突撃機銃を正面から受け続ければ相応の被害は免れません、それよりも敵の意表をついて側面から攻撃を仕掛ける作戦の方が現実的で、実際にそれは成功しました>
アタランテはあの時の状況のリプレイを壁のモニターに映しながら解説する。
「という訳だアレン君、天文学的数字の戦闘パターンを分析できる『アタランテ』が言うのであればそれが正しいのだから」
「はい、失礼致しました」
アレンはすぐさま自分の考えが間違っていた事を謝った。統合戦略防衛コンピューターシステム『アタランテ』、このシルバニア基地の防衛システムからライフラインまで全てを管理しているAIである。
ナチュラルであるアレンが
「話は変わるが君はアルテミスが陥落した事を知っているな」
「はい、まさかとは思いましたが」
アルテミス、ユーラシア連邦が保有する軍事要塞の一つであり『アルテミスの傘』とよばれる『全方位光波防御帯』によりこれまで難航不落を誇っていた要塞である。それがつい先日、アルテミスの傘を破壊され陥落してしまった。現在は自衛のために傭兵集団を雇っているとの話まで聞いている。
「アルテミスの傘を破壊する手引きをしたのはザフトに奪取されたG兵器の内の1機、ブリッツとの事だ」
G兵器は地球連合加盟国の1つ大西洋連邦が、オーブ連合首長国公営企業モルゲンレーテ社の技術協力を受け、オーブ管轄の資源コロニー「ヘリオポリス」で極秘開発した試作型
G兵器はブリッツの他にデュエル、バスター、イージスそしてストライクの全5機が生産されたと聞く。
「他のGAT―Xシリーズも今や全機がザフトの手の中だ」
<全機ではありませんよ>
「何? 少し待て今確認する」
小隊長が右耳のインカムから「アタランテ」の指示を受けている間、アレンは窓の外を見ていた。結局の所、この男は「アタランテ」の傀儡なのだ、しかし自分も「アタランテ」のサポートが無ければヘリックスを動かす事は出来ない。そういう意味ではあまり違いは無いのかも知れない。
「なるほど、ストライクは未だに健在で現在はアークエンジェルの搭載機と言う事だな」
今度は机のモニターに地球の現在の勢力図を表す地図が表示される。中央にある艦船がどうやらアークエンジェルを現しているようである。艦船の進行方向は月のプトレマイオス基地を示していた。プトレマイオス基地は最大規模の連合宇宙軍基地であり、地球連合宇宙軍の総司令部でもあるため月本部とも呼ばれている。
「現在アークエンジェルはアルテミスを出港した後、地球軍第8艦隊がコンタクトに成功、現在は共に月本部に向かっている。……との情報だ」
<月には向かってません、第8艦隊と無事に合流した時点でその必要も無くなりましたから>
モニターの画面が切り替わる。アークエンジェルのルートが変更されていた。
「これは? 目標地点が変更されておりますが」
<新しい情報によると、アークエンジェルはアラスカ本部へ降下させるつもりのようです>
ホバート大尉は伝えられていた情報と異なる事に戸惑っている様子だった。その中でアレンは単純に涌き出てきた疑問をアタランテに質問した。
「その前にアークエンジェルが月に行く必要が無くなったというのはどういう理由なのでしょうか?」
<既にG兵器の開発データ及び第8艦隊と合流するまでの戦闘データを第8艦隊の特命部隊が受け取っています。後はこの部隊が月本部にデータを持ち帰り、地球の
つまりG兵器のデータは既に回収済みということらしい
<このままでは大西洋連邦と我々ユーラシア連邦の
5/19 推敲