機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike 作:見ルシア
大型輸送機は採掘基地から離陸した後、アラスカへの航路を取っていた。
ブリッジでは機長がドハティに現状の報告を行っている。
「カラミティとレイダーの収容及び補給が完了しました」
「ようやくか、奴等はコクピットに入れたままにしておけ、また出撃して貰わなければならんからな」
「ところで話は変わりますが、我々の目的地は本当にアラスカ基地であっているのでしょうか? 当初の予定ではグリーンランド基地が指定されていたはずですが……」
機長は出発の際に思っていた違和感を口にしたが、ドハティはそれを一蹴する。
「何を言っているアラスカ基地には
「ですが、輸送場所の変更がつい約5時間前というのも急過ぎる気がしまして……」
機長は尚も反論するが、オペレーターからの一報にその会話を遮られた。
「オレンジ、3000より8機の機影を確認、映像出します」
「やはり来たな、ジンやディンでは無駄だと言うのに」
ドハティは含み笑いをしながら言った。
ザフトのディン部隊の追撃が来ることは既に織り込みである。
だか、ディンではいくら数を揃えても新型のガンダムに対抗できない事はこれまでの基地防衛戦で証明済み、負けるはずがないのである。
しかし、パネルに表示された機体群にはディンではない物も含まれていた。
「なんだあのジンは? まるで羽織を着ているみたいな……」
ドハティはその内の3機の容姿を見て思わず絶句した。
ベースはジン、どれも右肩のみ紫色に染めていいる以外は通常と同じである。
だが、そのバックパックにはディンの頭部シェルと6枚の主翼があり、まるでディンその物を背負っているかのようで、レールガンの砲門も確認する事ができた。
その正体は『ジェグス』、グゥルの発展機体でディンの飛行ユニットをベースにバックパック化した物である。
「各機予定通りに行動せよ。輸送機は落とさず、ただし護衛機は全て蹴散らせ」
「2番機了解」
「3番機了解、パトリック様のために!」
それを合図に『ジェグス』を着たジン3機が散開する。
ドハティは格納庫で待機している2機に出撃命令を出した。
「スクランブルだ! カラミティとレイダーを出せ!」
「出番か、カラミティ、ザナキス・ソラス、出撃する!」
「了解です。レイダー、マーク・ヴァプラ、出ますよ!」
輸送機からレイダーとそれに乗った形でカラミティが出撃する。
直ぐ様に2機のジンがカラミティに対して切りつけてきた。
カラミティに乗っているソラスは苦笑する。
「
が、直ぐ表情を改める事になった。
刀の刃部分からレーザーが伸びるのを見たからである。
レーザー重斬刀から防御するためにカラミティは盾を構える。
刀が一閃すると、盾は上半分を真っ二つにされてしまっていた。
もう1機も斬りかかろうとするが、レイダーが連射した機関砲を避けるために回避行動を取り、その場を離れていく。
「ケーファー・ツヴァイが……よくも!」
ソラスは使い物に成らなくなった盾を投げ捨てると背部の連装ビーム砲『シュラーク』と携行している大型バズーカ砲『トーデスブロック』を空に向かって乱射する。
「ソラス降りて下さい。今度は私がやります」
「了解……」
カラミティを輸送機に下ろすとレイダーも
当たれば
ヴァスプは目を丸くした。
「く、これまでのコーディネーターとは違う?」
ジン3機の連携の前に2機のガンダムが苦戦する状況で輸送機のブリッジは慌ただしくなった。
「数では我が軍が明らかに不利です」
「奴をフォビドゥンに乗せろ! 数的不利はそれで克服出来るだろう」
「し、しかしあの生体CPUは制御できる物では……」
「構わん、このままでは海の藻屑になるぞ!」
ドハティはフォビドゥンの出撃命令を出す。
既に輸送機の方にも損害が出始め、高度を落としつつありこのままでは撃墜される恐れもあった。
「りょ、了解しました。オリアスク少尉の拘束を解くように医務班にも連絡します」
オペレーターが慌ててコールフォンを取ると医務班に連絡を取る。
「あいつら、まさかジンごときに遅れを取るとはな」
ドハティは苦々しく呟く。
その時輸送機のレーダーが新たに接近するグゥルの機影を捉える。
「まだ敵が来るのか」
「いえ、この識別は味方機てす。グゥルに乗っているのは……ヘリックス、シルバニア基地のアレン中尉です!」
────
アレンは4連装ミサイルポッドからミサイルを射ち、敵の陣形を動かす。
そして動いた所を300mmレールバズーカ『ゲイジャルグ』で狙い撃った。
ジン1機のジェグスに被弾し、当たった1機はやむを得ずに高度を下げる。
輸送機の上にいるソラスと、ジン2機と対峙していたヴァスプは援軍が来たことに驚く。
「あれは、アレン中尉の
「あの
アタランテはそんな二人と大型輸送機に通信を入れる。
<状況が状況ですので我々も援護致します。これに他意はありませんよ>
そしてアレンにも指示を出した。
<いくら武装を強化しても、ベースはジンで動力がバッテリー式なら稼働時間はそれ程長くないはずです。輸送機への攻撃を牽制しつつ、先にディンを落として行きましょう>
「了解しました。こちらもバッテリー残量が気になりますが」
アレンは再度4連装ミサイルポッドのミサイルを今度はディンに向けて発射する。
標的となったディンは回避攻撃を取るが、反転した所をカラミティの背部連装ビーム砲『シュラーク』の放ったビームに撃ち抜かれた。
カラミティに乗っているソラスから通信が入る。
「ナイスアシストです。アレン中尉」
<こちらこそ、良い狙撃でしたよ>
アタランテが代わりに答える。そしてアレンに向けてこう言った。
<我々は今回はアシストに回りましょう。この戦闘の後の事も考えてね>
────
思わぬ援軍にブリッジは活気だっていた。
「よし、これで戦線の崩壊は防げるな」
ドハティが安堵した様に言う。
「ですが、この戦闘が終わった後に我々が
「それは後で考えれば良い、彼らも我々の目的地がアラスカと知れば、協力を惜しまんはずだ」
ドハティはまったく機長と取り合おうとはしない。
仕方がないので機長は戦場の統制指示に戻った。
「現在の敵味方の総数はどうなっている?」
「ジン1機が戦線を離脱、またカラミティがディン1機、レイダーがディン2機を撃墜して残りジン2、ディン1です」
「まて、ディン1機はどうした?5機いたはずだろう。もう一度確認して報告しろ!」
オペレーターからの報告に機長が疑問を挟む。
最初に確認したディンの総数は5機、その内3機を撃墜し、現在の敵数が1機では数が合わないのである。
オペレーターは再度確認作業を行うが、突如ドラム缶の中で揺さぶられた様な衝撃にブリッジ全体が大きく揺れる。
「どうした、何事だ!」
ドハティが激を飛ばすとオペレーターがパネルを見つつ、青い顔を浮かべながら答えた。
「格納庫の与圧・空気調和装置に異常発生、これは……輸送機に穴が開けられています!」