機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike 作:見ルシア
「アラスカ基地周辺に多数の熱源を感知!」
「何だと? それにしても、この数はどういうことなのだ?」
オペレーターからの報告でホバートは自らもコンソールの画面を確認するが、そのあまりの機影の多さに言葉を失ってしまった。
そこに統合作戦室より入電が入る。
ブリッジのパネルに老年の指揮官と思われる茶髪の人物が映し出された。
「守備軍は直ちに発進! 迎撃を開始せよ!」
ウィリアム・サザーランド、地球連合軍最高司令部統合作戦室に所属する大佐である。
サザーランドからの二言目を待たずにしてホバートが叫ぶ。
「軍司令部から直々に迎撃命令だと? 各員、総員第一戦闘配備! 我々の任務は5番ゲートの防衛だ。なんとしても死守するのだ」
その様は彼は既に状況下に入り、的確に指示を出していると言っても良かった。
「増設した艦尾ミサイル発射管、7番から10番まで発射準備!
「ザフトの攻撃目標はパナマだったはず、我々もそのために主力をパナマに集結させていたというのに……まさか謀られたと?」
ホバートとは逆に、副艦長は状況をよく飲み込めていない様であった。
ホバートの方を見上げると副艦長は感心したように言う。
「ホバート艦長は、ここに来てようやく艦長としての風格が出て参りましたな」
「なあに、我々の周りにはユーラシア連邦の同胞がいるからな。みっともない姿は見せられまい」
ホバートは鼻を鳴らす。
「それにアークエンジェルにはあの『砂漠の虎』を撃破したストライクとそのパイロットのコーディネーターがいるのだろう? 我々はすぐに敗けはせんよ」
結局友軍頼みのホバートに副艦長は口をあんぐりさせ、驚いたように言った。
「ホバート艦長は聞いていなかったのですか!? どちらも既に失われていますよ!」
「何、そうなのか?」
目を丸くするホバートに、副艦長はこの状況でもただ呆れるしか無かった。
────
アレンがへリックスに乗り込むと直ぐにシャルルからの通信が来た。
「アレン中尉、空中の敵は任せましたよ。バクゥは空を飛べませんからね、お互いに御武運を」
「シャルル少尉、こちらもバクゥ隊の武運を祈ります」
アレンもシャルルに軽く返事をする。
会話が終わるのを待っていたのかアタランテが作戦の説明を開始した。
<バクゥ隊を艦周辺に展開させます。アレン、へリックスはグゥルに搭乗して空から敵機を遊撃してください>
「了解……アタランテは今回の戦闘でアラスカを守りきれると考えておられるのですか?」
アレンは率直にアタランテに聞いてみた。
敵機の数がこれまでの比では無いと言う事を既に聞いていたからである。
<私は常に最善の結果のための提案を出しているだけです。それは今までもこれからも変わりませんよ。この艦が沈まないように私も全力を尽くします>
はぐらかされた気もするが、アタランテはヴェンデロートのために行動を行ってくれるようであった。
「……分かりました。変な質問をしてしまい申し訳ありません」
<構いませんよ。いつもの様にザフトの
「……了解」
アレンはへリックスの発進シークエンスに入る。
「アレン・クエイサー、へリックス出る!」
────
<0時方向よりディン1、9時方向にシグー>
「ビーム兵器の有利性を存分に発揮させて貰う!」
アレンはへリックスの左手に持っているビームライフルでグゥルに乗っているシグーを打ち落とす。
後方から接近するディンに対してはアタランテが背部クローアームに接続されていたビームライフルで対処した。
眼下ではシャルルがバクゥ隊を率いて、ザフトの地上部隊と戦闘を行っている。
「コーディネーターがあああぁぁ!!」
シャルルはバクゥの無限軌道のドリフトを効かせつつ、レールガンを撃つ。
その一撃は敵バクゥの上半身を吹き飛ばした。
「よし、3機目! これでどうだ。もう半数は減ったんじゃないか?」
「シャルル隊長、まだ半数以上……いえ、数は先程からあまり変化してません」
リナルドが憔悴しきった声で答えた。
シャルルは舌打ちする。
「いくらなんでも数が多すぎるな、これほど防衛戦は今までに経験した事の無い規模だ」
シルバニア基地やこれまでの道中、オルレアン、採掘基地でも攻めて来たザフト軍は遊撃隊ばかりであった。
だが、今回は違う。
総力戦というのに相応しい程のザフト軍機がこのアラスカに集結している。
「カラミティとレイダーは? まだアラスカ基地に残っているだろうに」
シャルルが辺りを見回しながら言った。
戦闘が始まってからしばらく経つが、連邦の主力
「こちらバクゥ3番機、脚をやられ……きゃあっ!」
ヴェンデロートの左後方を守っていたバクゥから救援要請が入る。
左後脚を損傷した上に、ディン1機から重突撃機銃の掃射を受けていた。
「待ってろナモ、今援護が向かう」
シャルルはそう答えるがバクゥ2機が目前に迫ってきており、自身はとてもその場から動けそうに無かった。
「俺が行きます!」
リナルドが答える。
「落ちろ!」
だが、リナルドが撃つレールガンはディンには当たらなかった。
焦るあまり、ロックオンが完了する前に引き金を引いていたからである。
傷付いたバクゥにディンが更に迫っていく。
ディンは突撃銃を散弾銃にも持ちかえ、傷付いたバクゥを狙う。
だがディンは散弾銃を撃つ前に爆発した
「もう間に合わな……あ、あれは?」
リナルドはその爆発に驚いて叫んだ。
へリックスの300mmレールバズーカ『ゲイジャルグ』から放たれた弾丸がディンを貫いたのである。
「リナルド少尉は3番機を艦へ、その間の抜けた穴のカバーは任せてくれ」
「アレン中尉!」
アレンに言われるがまま、リナルドは遅れてきた僚機と協力して傷付いたバクゥを艦まで運ぶ。
「まさか、アレン中尉から援護が来るとは、あの人はいつも1人で戦っているものだと思っていたが……」
リナルドは呟くが、3番機を降ろすと、すぐさま戦場へと戻っていった。
各地で劣勢の状況はヴェンデロートのブリッジにも伝わっていた。
「6番ゲートが突破された模様です!」
オペレーターがモニターを見て叫ぶ。
「何、このままでは基地中枢部に侵入されてしまう。我々で封鎖を」
「この5番ゲートすら危うい状況で? それに我々にはもう予備兵力は残っていません。へリックスにバクゥ全機、偵察用のスピアヘッドまで前線に出しているのですよ?」
副艦長が言う。
「より、熱源反応! SFSに乗っている模様、距離65、熱紋照合、これは……デュエル!?」
「奪取されたG兵器だと、こんな所で……直ぐに外の部隊にも伝えろ!」
ホバートがオペレーターにそう指示を出すと、オペレーターは直ぐ様アレンへと通信を入れた。
「アレン中尉、デュエルがこちらに接近してきています。対処をお願いします」
<既にへリックスのレーダーでも捉えていますよ>
アタランテがアレンの代わりに答える。
GAT-X102 デュエル
ストライクと同じG兵器の1機であり、その中でも最初に完成した
「デュエル、あれがストライクの同型機なのか」
アレンが呟いた時には既にへリックスのツインアイがグゥルに乗る青色を基調としたガンダムフェイスの
初期G兵器との戦闘は、もはや避けられそうに無かった。