機動戦士ガンダムSEED Parasite Strike   作:見ルシア

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PHASE-04 へリックス 起動せず

 ユーラシア連邦所属 ルーマニア軍 シルバニア基地

 

 作戦準備のための物資が次々とゲオルク級地上用中型戦艦『ヴェンデロート』に運ばれていく。運んでいるのは作業用の地上型モビルポッドである。

 アレンはその光景を見て何故か少し羨ましいと思った。自分がMS(モビルスーツ)を操縦する時は必ずアタランテのサポートが入るため、一人で操縦を行うという事をしばらくやっていなかったからだろうか。

 

「アレン中尉、ここにいましたか、先日アフリカのビクトリア基地が陥落したそうです」

 

 話しかけてきた灰色の髪の人物はカイ・シャールヴィ、バクゥ部隊のパイロットの一人でもある。

 

「ビクトリア基地が?」

 

 C.E.71年2月13日 後に第二次ビクトリア攻防戦と呼ばれるこの戦いでザフト地上軍の侵攻によりアフリカのビクトリア宇宙港は陥落した。

 

「そしてアークエンジェルも当初の降下ルートを外れてアフリカに降下したそうですよ」

「ビクトリアが落ちた事でアフリカはザフトの勢力圏である事が決定的になった、よりによってその渦中にか」

 

 アレンは最後に残ったG兵器ストライクとそのパイロットの事を思った。いくら最新鋭の機体に乗っているとは言えこの状況から生還できるとは思えなかった。

 

「それで、救援にはどの部隊が向かっているんだ? この基地からも救援が出るのか?」

「まさか、アラスカ基地はこの件について何も教えてくれなかったみたいですよ、それに大西洋連邦の部隊にユーラシア連邦のうちが真っ先に救援を出す訳がありませんよ」

 

 シャルルは逆に驚いた様に言った。

 

「ところで、この間の戦闘リアルタイムで見てましたよ、パラサイトストライカーの大型クローアーム、たしか名前はミストテイルンでしたっけ? ジンを瞬時にスクラップにするなんて凄いじゃないですか」

「あれもアタランテのおかげですよ、バクゥの方の調整は終わったんですか?」

 

 

 本来バクゥはザフト軍の陸上型MS(モビルスーツ)である。通常のMS(モビルスーツ)が人型の2足歩行なのに対し、バクゥは獣型の4足歩行であった。これは陸上生物が鳥類と類人猿を除いてほとんどか四足歩行である事に着目して開発を行ったからとされている。

 

「こちらがやることはケーブルがちゃんと繋がっているかを確認するだけのようなものですからね、後はアタランテに任せるだけなので」

 

 シルバニア基地では鹵獲したバクゥにアタランテが作成した専用OSを搭載している。

 それでもナチュラルでは扱う事が出来なかったので、首からアタランテと常時通信を行うためのケーブルを伸ばし運用していた。

 

「しかしこの作戦に基地のMS(モビルスーツ)の大半を連れていくというのはな、基地防衛は大丈夫なのか」

「本家アタランテの防衛システムは健在ですし、ザフトも辺境のこの基地より今はアークエンジェルの方に気を取られているんじゃないんですかね、しばらく襲撃が来ることは無いですって」

 

 基地の守りが薄くなった事を心配するが、シャルルの方は基地防衛に関してそこまで気にしてる様は見せない。

 

「それよりもようやく外での実戦です。今まで堪え忍んでいた分、コーディネーター共に鬱憤を晴らさせてやりますよ」

 

 シャルルの意気込みにはアレンはあまり関心を持たなかった。

 

────

 

 出陣式のセレモニーを終え、ゲオルク級地上用中型戦艦『ヴェンデロート』は出撃前の最終チェックに入っていた。

 

「ホバート少佐、武器システム全て異状ありません!」

 

「ここでは艦長と呼べ、分かったかね? 、ホラン君、そっちのエンジンの方の調子はどうかね?」

 

 艦長席に座っていたホバートはヴェンデロートの指揮を任されるにあたり少佐に昇任していた。艦長帽を被り、肩の階級章には少佐である事を示す二本の線が入っている。

 先の出陣式でも誇らしげな表情を見せていたが、よほど戦艦に乗って指揮をするのが面白いようだ。

 

「主動力、エンジン、異常なし。ヴェンデロート全システム、オンライン。発進準備完了です!」

「よし、これより『ヴェンデロート』はアイルランド、リマリック基地に向かう。気密隔壁閉鎖。前進微速。『ヴェンデロート』発進!」

 

 まるで木箱のような戦艦がゆっくりと浮上を開始する。

 

────

 

 オーストリア ノイジードラーゼゼーウィンケル国立公園付近

 

「空中哨戒中のスピアヘッドより入電! オレンジ45、マーク20に識別不明機を確認! 」

「熱紋照合確認、ジン3、どれもグゥルで飛行中だと思われます。それと先行する機影、ディン1! 」

 

 突如艦内に警報が鳴り響く

 

「艦長!」

「う、うろたえるな、スピアヘッドを呼び戻せ! 総員第一戦闘配備! 迎撃に当たれ! 」

 

 ホバートか全員に戦闘の指示を命じる。

 

「偵察にしては数が多いですな、シルバニア基地から出港する我々を見て目標を変えたのか、それとも……」

「そんな事はどうでもいい! スピアヘッドを追って来た所を残らず撃ち落とすんだ! 」

 

 副艦長は敵機の数に疑問を持ったが、ホバートはそれを一蹴した。

 

「カタパルト、接続! パラサイトストライカー、スタンバイ! システム、オールグリーン! 

 進路クリア! へリックス、どうぞ!」

「アレン・クエイサー、へリックス、出る! 」

 

アレンの駆るMS(モビルスーツ)『ヘリックス』が甲板に躍り出る。

 

「カイ・シャールヴィ、バクゥ、出撃する! 」

 

 アレンのへリックスに続いてシャルル達のバクゥ3機もそれぞれの発射口から甲板に出てくる。バクゥはどれも首からのケーブルが艦に繋がった状態であり、まるでリードに繋がれた犬を思わせる。

 

「スピアヘッド戻って来ました! その後方にディン1! 」

「なんだあのディンは、何でスピアヘッドに追い付けるんだ? 」

 

 F-7D スピアヘッド、地球連合軍の重力下での主力機として運用されているジェット戦闘機である。

 対して追って来るディンはシグーをベースにして作られたザフト軍の大気圏内用MS(モビルスーツ)である。

 グゥルの様なSFS(サブフライトシステム)無しで飛行できる反面、人型であるため最高速度は従来の戦闘機の半分以下である。

 それがスピアヘッドの上に、まるでダイバーが魚と並走して泳ぐ様にすぐ上を飛行していた。

 

「砲撃手は何をやっている! はやくあれを撃ち落とせ! 」

「しかし、これでは友軍機に当たります! 」

 

 ホバートと砲撃手が言い争う中、スピアヘッドが着陸動作に入った。速度は出ていたが甲板に設置されていたアレスティング・ワイヤーにより短距離で無事着陸する。その上をディンが悠々自適に通り抜けていった。

 

「離れたな、よし撃て! 」

 

 ヴェンデロートに搭載されている。2連装対空砲と対空ミサイルが火を吹く、アレンも攻撃に参加するため移動しようとするが、へリックスは操作を受け付けない。

 

「何!? 、こんな時に動作不良を起こすとは」

 

 しかし、調べて見るとアタランテが操作を止めているようだった。

 その間にディンは対空砲の射線からエルロン・ロールで離れた後、ミサイルを左手の90mm対空散弾銃で次々に撃ち落としていく。

 

「まだあるんだよ!」

 

 シャルルが450mm2連装レールガンを撃つが、先ほどの対空砲と同じ機動で回避されてしまう。

 ディンは右腰のホルスターから何かを取り出す。シャルルは咄嗟に身構えるがディンが持っていたのはカメラガンだった。

 

「ハイ、チーズ! 」

「何だと?」

 

 呆気に取られたシャルルを他所にディンのパイロットはそう通信を入れると何枚かの写真をパシャパシャと撮り、離脱して行く。

 ジン部隊もこちらが動きを捕捉した後はヴェンデロートに近づく事はなく、ディンと合流するとその場を去っていった。




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