FRAME ARMS DESTINY T&S   作:デボエンペラー

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シンフォギアのクロスを発表したら一気にUAが増えた。そんなにシンフォギアが好きかーッ!!

後、この作品でのノイズさんの扱いは設定にもある通り、一般人が普通に生活していてノイズに遭遇する可能性は非常に低く、一生涯に通り魔事件に巻き込まれる確率を下回るレベルです。アルカノイズやカルマノイズを除いてもシンフォギア本編世界がイレギュラー過ぎるのです。場合によっては出さなくてもいい……いや、それだとある人物が不味いか。

二課は一人オリキャラと原作キャラ入れ替えだね、中の人の所為で。

あともう一つ。このお話はフィクションなので、実際の会社とは関係ございませんぞーッ!!


第1章 ナンソウ
PHASE-03 初陣


 「ああ、やはり動きが鈍く感じる時がある。無理難題を言ってすまないが、レイジングブースターかブラストシールドを頼めないだろうか?」

 

 空母の整備室にて青と白のカラーリングが特徴の機体の傍で一人の青年がメカニックにそう依頼する。雑誌のモデルでも通じそうな金髪碧眼の美丈夫はパイロットスーツの上半身部分をさらけ出し、同年代の人間の中では引きしまった肉体を晒している。話しかけられたメカニックも、彼の発言の理由は分かっているのか、彼の機体を見て頭を抱えていた。

 

 「まあ以前中尉が使っていたスティレットではなくてバーゼラルドですからね。僅かな被弾でも命とりになりかねませんが、少なくとも数日はかかるかと……いくらここが最前線とは言え、激戦区と比べるのは酷かと……」

 「……了解した。我儘を言っているのはこっちだからな。すまないがこれは愚痴に付き合わせてしまった礼として受け取ってくれ」

 

 彼からいくらかの金銭を受け取ったメカニックがこの場から離れると、彼――『無窮の青空』の異名を持つケイン・ネオスライドは再び自身の機体……ナンソウでの呼び名『バーゼラルド・ブルースカイ』のコクピットに乗りこみ装備の点検を行う。

 

 「装甲の薄さがネックだな……」

 

 そう言って彼は黙々と設定を調整する。肩部と脚部に小型ブースターを追加したとはいえ、肝心の装甲が薄いのは話にならない。

 

 「よーケイちゃん。自慢のバーゼちゃん、調整上手くいっている?」

 

 彼に向かって慇懃無礼な態度で接するのは、白髪に日焼けした肌が特徴的な青年だった。彼もまたケイン程ではないが女性受けのする顔立ちをするものの、ケインとは違って軽薄な印象を与えていた。

彼の名前はプロスト。これは自身と違って本名ではないがまあ傭兵なんざ基本的に偽名を使っているから気にしたことはない。基本的に中東を中心に活動する傭兵集団『エプコギルド』のFA班隊長を務める実力者で、彼は金さえ積まれればどんなフレームアームズに乗って戦う人間だった。尤も彼曰く『トルースより判断力に乏しい』との事。

 

 「嫌味かプロスト。お前の機体はどうなんだ?」

 「整備班が優秀で俺様ちゃんの出番は最終調整だけなのよね。むしろ整備班に追い出されました。俺様ちゃんの相棒、整備用のユニット届いてないのよね。ホイこれレンタル品の仕様書」

 

 彼にナンソウから支給された機体は榴雷改……ウェアウルフ・ブルーバーと呼ばれる支援機だったが、仕様書をよく見てみると脚部には水上でも問題ないようにホバータイプのものに換装されていた。隣で見てみると緑の制服を着た整備班が弾薬や履帯を調整しているのが見て分かる。

 

 「……なるほど」

 「……そういや新人が来るって話だけど、大丈夫か? ミリコの新人って聞いたぜ?」

 

 彼が言うミリコことミリティアコーポレーション……汎用重機に先祖返りしたフレームローダーや、防衛用に使われているパワードガーディアンに運搬に使うコンバートキャリアー等のギガンティックアームズの開発元だと聞いたことがある。

 

 「ミリティアの人員なら普通ならば期待できるだろうが……父から聞いたところ今回は新人だ。前歴は大丈夫なのか?」

 「んー……ちっと経歴洗ってみたけどうんともすんとも。まあ嬢ちゃん二人にガキ一人……こりゃミリコもナンソウのお偉いさんから人寄越せってどつかれたかねえ?」

 

 そう言って彼が書類を見せると三人の顔写真を見る。黒髪に紅い目が特徴の少年と、赤毛の少女、金髪の少女だったが、彼の言う通り、どこかの前線にいたという話は記されていない。

 

 「朱鳥信に朱鳥真由紀、アルトゥラ・ホーク……月面軍ならともかく、ここの敵はそいつらだけではないだろう」

 「俺様ちゃんの様にお金次第って顔でもないしね。まあ書類を見ると戦えるのは信とかいう奴だけみたいだぜ? ま、無能を寄越して来たらミリコに文句言って今後は安くお願い出来るかもよ?」

 

 プロストは無能でも有能でも気にしないスタンスだが、どうも経歴無しと言う点が気にかかる。そんな中、一台の車両が泊まり、それがコンバートキャリアーかつコンテナ部分……貨物用ではなく居住用の物にミリティアコーポレーションの社章がペイントされていたことから新人が来たと判断する。

 

 「噂の新人が来たか。降りるぞ」

 

 船から降りたところで三人がキャリアーから降りてきて――プロストは金髪の少女……正確に言えば彼女の胸部を見て口笛を吹いたため、即座に足を強く踏む――、三人を代表して少年が前に出ると手を差し出してくる。彼も状況を把握したのか苦笑いを浮かべていた。女性陣――特に赤毛の少女からの評価はお察しだった。

 

 「ミリティアコーポレーションから来ました朱鳥信です。今後はよろしくお願いします」

 「……防衛機構ナンソウ支部所属、第3機動艦隊FA隊隊長のケイン・ネオスライド中尉だ。よろしく頼む」

 「はい。ネオスライド中尉」

 

 そう言って握手で返し、彼ら三人とのファーストコンタクトは無事に終わらせることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シン達がナンソウに向かう最中―――

 

 「わー!! 海の中を突っ切って進むんだ凄い凄いー!!」

 「アルテ、これは本来見張り用のカメラって話だから、あんまりイタズラするなよ」

 

アルテ……以前月面軍から逃げている最中に知り合った記憶喪失の少女に向かってシンは声を上げる。以前月面軍の襲撃の際に出会った少女も服を東日本に本社を置く服飾ブランド『A-ZONE』の物に変えていて、当の彼女は居住用車両に設置された見張り用のカメラを通じて外を見ていた。

名前もない、身元も不明、記憶もなければ家族もいない。そんな状況であるがゆえに彼女はミリティアコーポレーション……正確に言えばシンたちの保護下に置かれた。

名前もないと言う以上、彼女には便宜上の名前が与えられていた。と言ってもフレズヴェルク・アーテルの近くに倒れていて、起動したOSに『ATRA』の文字が浮かんでいたため、その名にちなんで『アルトゥラ』……通称『アルテ』と名付けられた。本来のフレズヴェルク・アーテルの綴りは『ATER』であり男性形、浮かんでいたのは女性形の『ATRA』だったのが気になった。とは言え、今の彼女は『アルトゥラ・ホーク』になったのには違いない。

 

 「それにしても海底トンネルを通って海上都市へ向かうなんてどこのSF映画よ」

 「向こうからしてみれば、俺たちみたいに宇宙でコロニー造って暮らしている方がよっぽどSFだろうよ。俺たちの存在自体がSFだけど」

 

 ミリティアコーポレーションから社用のギガンティックアームズ『コンバートキャリアー』に乗り込んで、海上都市『ナンソウ』へ海底トンネルを使って向かっていた。

海底トンネルはナンソウと本土を繋ぐ通路であり、厳重なセキュリティと審査を超えてようやく通行が許可される。海底トンネルを通過さえすれば後はナンソウへ問題なく行けるのだ。

トンネル以外にも航空輸送及び海上輸送・本土と直接つながっている大橋があるが、輸送は月面軍と西日本との戦争で殆ど機能せず、大橋はあえてセキュリティを設けず敵の通行路にしている程。しかも防衛機構間の補給は自分たちのような新参来訪系はともかく、普段は正反対の港を使うという徹底ぶり。

 

 「おー……ッ!!」

 

 純粋で無垢、肉付きの良い身体と幼い精神性のアンバランスさで、シンにとってある少女を思い出させるため、少し切なさと懐かしさを感じていた。

 

 「シン。そう言えばナンソウって何があったかしら?」

 

 ルナマリアがジト目でそんな事を聞くと、シンはアルテの方から即座に手にしたパンフレットを見て声を上げる。

 

 「えーっと……蕎麦が美味いし、あのフレームアームズや作業用のバルクアームを使ったコロシアムが有名みたいだ。結構あそこって戦争のガス抜きも兼ねた『天国と地獄の境界線』って有名なんだって」

 

 尤も、ナンソウの市議会では、それも興行に入れようかと考えているらしい。まあ、戦争よりもスポーツで金が動くのならばいいが、フレームアーキテクトは元々重機として開発されたものだという事を忘れないでほしいのも本音だ。

ナンソウの売りはコロシアムと海底に眠る遺産発掘、防衛機構らからくる傭兵業で成り立っている。これからシンもルナマリアとアルテの生活費を稼ぐために防衛機構に参加する必要がある。

 

 「蕎麦? 二人とも、ボクお蕎麦食べたい!!」

 

 アルテがカメラからこちらに顔を向ける。彼女は二人に顔と上半身を近づかせて目を輝かせる。彼女の眼は明らかに輝いていて子供のような雰囲気が、年相応の肉体と本人は無自覚に大きく動きながら男性を誘惑させるように揺れる二つの果実がアンバランスだった。思わず揺れる果実にシンも目が向いてしまう。

 

 「シーンー?」

 

 ルナマリアは腕にしがみつきながら問い詰めてくるが、明らかに眼から光が消えている。昔はここまで酷くなかったのに、彼女をここまで歪めた裏切者どもには逆恨みに近い感情を覚えた。

 

 「お、そろそろ着くみたいだ」

 

 画面に映ったアナウンスを幸いに、シンは話題を逸らす。ルナマリアも直ぐに離れながらため息を吐きながら反応を返した。

 

 「分かったわよシン。でも、あたしよりマシだけどアンタも名前変わってるんだから間違えないでね」

 

 ルナマリアがそう言うと、シンも頷く。これからは『シン・アスカ』ではなく『朱鳥信』として行動することになるため、今まで以上に注意が必要だった。

そしてコンバートキャリアーが停まり、居住ブロックのドアを開いて降りる。眼前には空母から出てきたであろう、今は傍にいない親友を思わせるような金髪の美丈夫と、白髪且つ浅黒い肌の若者が歩いてきていた。

白髪の若者が自分たちに続いて降りてきたアルテ――正確に言えば勢いよく降りて着地した際に揺れた部分を見て口笛を鳴らし、隣にいた美丈夫に足を踏まれていた。彼が咳ばらいをする中で、シンは彼の方へと向かって歩く。

 

 「ミリティアコーポレーションから来ました朱鳥信です。今後はよろしくお願いします」

 

 そう言って手を差し出す。確かに若者の行動は良くなかったが気持ちはよく分かる。ルナマリアとアルテも自分に続き礼をすると目の前の青年が声を上げた。

 

 「……防衛機構ナンソウ支部所属、第3機動艦隊FA隊隊長のケイン・ネオスライド中尉だ。よろしく頼む」

 

 彼、ケインもまた手で握り返す。互いに傍にいる若者の事は無視することで結論がついた。

 

 「はい。ネオスライド中尉」

 「今後は君たちは我々の指揮下に入ってもらう。さっそくで悪いが、事前に送られてきたウェアウルフ・アヴェンジャーの調整を行ってもらいたい。整備はこちらの方で行ったが、本人にも確認を取ってもらいたくてな」

 「ウェアウルフ・アヴェンジャー……漸雷のことですね。了解です」

 

 そう言って空母へと乗り込み、彼の眼前に運び込まれたのは、一機の白と青で彩られた漸雷だった。轟雷系の特徴である砲台は搭載されておらず、通常の漸雷と違い背部にはブースターが設置され、腕の部分にはイオンレーザーカッターとタクティカルナイフが装備されていた。尤も一番特徴的なのは脚部であり、そこは従来の轟雷系統の機体とはまるで違う印象を抱かせていた。

 

 「懐かしいなぁアベさんかぁ。所々仕様が違うけど、まあこんなもんかな」

 

 先ほどケインに足を踏まれていた白髪の人間が漸雷を見て声を上げる。するとシン達――ルナマリアやアルテの方を見て爽やかそうな笑みを浮かべて言い切った。

 

 「では自己紹介。俺様ちゃん、プロストって言ってこのナンソウで傭兵業を営んでます。金さえ積まれればオンボロな旧式から訳アリのトンデモ物件まで操ることを誓います。気軽に『プーちゃん』って呼んでね、特に女の子」

 

 こうも軽薄だとヨウランやヴィーノ、アーサー副長を思い出す。ルナマリアにしてみれば某元上司よりはマシだが好きにはなれそうにない人種だった。

 

 「……朱鳥真由紀です……よろしくお願いします。今度やったらセクハラで訴えますんで」

 「ボクはアルトゥラ・ホークでーすッ!! 皆からアルテって呼ばれてるけどよろしくお願いしまーす!!」

 「はい真由紀ちゃんにアルテちゃんね。今後ともよろしく」

 

 プロストの自己紹介に対してシンはふと疑問に思ったことを言う。

 

 「あの……他の皆さんは?」

 「あー。今お仕事用の服の手入れしてんの。整備班から追い出された俺様ちゃんとうち等のチームリーダーのケイちゃんでキミたちの出迎えとかしてたのよ」

 「朱鳥、プロスト。一応言っておくが、俺のバーゼラルドもある程度設定と調整は済ませている。これ以降は本番と言う事だな。さてウェアウルフ・アヴェンジャーの調整と装備に関してだが……」

 

 ケインがそう言ってシンの漸雷……ウェアウルフ・アヴェンジャーに目線を向ける。シンの漸雷は頭部と腕部は共通、背部こそ共通しているがブースターを取り付けられていて、胸部は単座を想定しているのか轟雷の物に変更されており、脚部に至っては東アジア防衛機構――西日本の母体こと大中華防衛機構は除名されている――でつい最近建造が開始されたと言うJX-25系統の物に似ていた。

 

 「へぇ。ミリコにしたらシンプルだな。最近のあいつら、空飛ぶパワードアーマーの開発に着手したって噂だし、もっとゴテゴテに盛るんだと思ったよ」

 「紅赤朱の盟主・源内蒼慈のようにか? あの人が造ったウェアウルフ系統は俺から見てもある種の芸術だからな……」

 「……お二人のお話を聞いてなんですけど、俺はあの人の事は好きになれませんね。まあ役立たずの理念を護ることに固執していた連中と比べればマシですけど」

 

 憮然とした表情をするシン・アスカにとって源内蒼慈の評価は、当時の護憲派や理念を護ることに固執したウズミ・ナラ・アスハ及び戦場に介入しまくって無用な犠牲を増やしただけのカガリ・ユラ・アスハと比べれば遥かにましだが、それだけだった。ルナマリアもシンの反応に対して顔を背けてしまっている。

 

 「まーやった事は武力行使だったから褒められねえなぁ。東日本の方でもやりすぎって言う批判もあったし、あの連中に乗っ取られた西なんざ悪魔の様に嫌われてるぜ」

 「俺は評価している。当時の日本は俺から見ても醜悪だったからな。二課が主導で東側の防衛機構を再編し、何とか形にして本拠地めがけて襲撃したんだ」

 

 二課と言う組織について聞いてみると基本的には災害対策が主だという話だし、フレームアームズも本来はこれでもかと言うほどチューニングされたものが二機あったが、かつての大敗で一機撃墜・パイロットも戦死してしまったとの事だった。

 

 「まぁうちらに敵対はしないどころか陰で協力してくれているし、そこのボスってすげえ指示とか用兵とか巧いって話なのよ。俺様ちゃん達も一回彼がいる時に演習に参加したんだぜ、敵側で」

 

 結果は大惨事だったけど、と彼は乾いた笑みを浮かべていた。一方のケインも思い出したのか顔を俯かせている。

 

 「んで、アベさんの方だけど……どう見ても接近戦だよなぁ。ノーマルウルフ御用達のキャノンは消えてら」

 「武装はイオンレーザーカッターに僅かな手持ちの銃……基本的な兵装だな」

 

 二人の評価に対してシンも思わず息を呑む。ルナマリアとアルテは様々なフレームアームズのデータを見て、ふとある質問を挙げた。

 

 「あの……質問なんですけど月面軍ってコクピットとかないんですか?」

 「ん? ああ基本的には無いみたいだね。噂じゃ何機かは有人機じゃねえかって話だけど……どうかした?」

 「いえ……少し気になっただけです」

 

 そう言ってルナマリアもすぐに話題を切り上げた。彼女が言わなかったらシンが指摘していた質問だったため、シンも声にあげる。

 

 「噂?」

 「おーよ。噂の白い魔鳥……フレズヴェルク=アーテルの動きが妙に有人クサイって噂があるんだよ」

 

 シンとルナマリアの視線が僅かにアルテに向けられるが、当の本人は分かっていなさそうな表情だった。するとケインが声を上げる。

 

 「とにかく朱鳥はともかくとして、二人はミリティアコーポレーションの出向社員だ。我々の方で信用できる居住を用意しておく。そこで――」

 

 その直後、警報音が鳴り響く。シンは態勢を整え直し、ルナマリアはアルテの傍に寄る。ケインはともかくプロストも先ほどまで見せていた三枚目丸だしな表情から一変して戦士のそれになった。

 

 『あー、テステス。第3機動艦隊の司令ブラス・ネオスライド中佐です。みんなも聞いての通りアリが巣穴から出てきた、今回の担当は僕達側なのですぐに発進用意。今日は新人もいるから歓迎会代わりに祝砲を用意、以上』

 

 その声と同時にケインは開けていたパイロットスーツを着直し、プロストもヘルメットを被る。シンも漸雷に乗ろうとするが、それをプロストが制した。

 

 「待てよ、今回はお留守番だ。まだポジション決まってない奴を好き勝手にさせるわけにはいかないんでね」

 「プロスト……エプコ1の言う通りだ。ブルーバーならともかく、アヴェンジャーではアントの掃討には向いていない。上には俺の方から通達しておく、ブリッジで待機してくれ」

 

 そう言って二人は一斉に自身の乗機へ乗り込もうとする。シンとルナマリアはアルテを連れて奥の通路へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 信たちと別れた後、ケインはバーゼラルド・ブルースカイに、プロストはウェアウルフ・ブルーバーに乗り込む。そして二人はシステムを起動させVTOSを参照モードに設定し、UEエンジンを全て起動させる。

 

 「こちらアーチャー1、バーゼラルド・ブルースカイ……」

 「同じくエプコ1、ウェアウルフ・ブルーバー……」

 

 二人の言葉と同時にブリッジから発信許可が出た。それと同時に二人は操縦桿を前へと突き出して叫んだ。

 

 「出撃するッ!!」

 「蹂躙させてもらうッ!!」

 

 その声と同時に青の機体と緑の機体が一斉に出撃する。敵はアントの群れ、中にはヴァイスハイトやコボルトにシュトラウスも何機か混ざっていた。

 

 「二課がご執心のヴァイスハイトはいないか……」

 「あの銀色の機体なら見間違えるはずがねえからな……アーチャー1、俺はオーケストラ隊に合流する」

 「新人に歓迎の祝砲代わりの砲撃を聞かせてやってくれ」

 

 そう言って二人は分かれ、ケインは黙々と操作する。それに呼応するかのようにバーゼラルドの動きは隊から逸れているアントを中心に、手にしたセグメントライフルで打ち落としていった。

その動きは正に軍人の手本そのもの。教科書通りの動きではあるが、それをスムーズに行えるようになるのにどれだけの時間を費やしたのだろうかと思えるような動きだった。

撃っては甲板に降り立ち、そしてフォトンブースターを起動させて再び上昇する。アントやシュトラウス、ヴァイスハイトが一塊になったところでケインにプロストから通信が入った。

 

 『こちらエプコ1。楽団に合流した、いつでもいけるぞ』

 「……確認した。アーチャー1より各機、これよりナンソウの楽団がオーケストラを響かせる。射程範囲から逃げろ」

 その言葉が響くや否や、上空を舞っていたスティレットが一斉に逃げ出す。最後の一機が射程圏から離れて数瞬後、ある会話が響いた。

 

 『オーケストラコンダクターよりオーケストラメンバー各機。用意はいいか?』

 『エプコ1、準備完了』

 『バルディオス3、いつでもいけるぞッ!!』

 『チャーリー8、OK』

 

 様々なコールサインが響き、その直後――

 

 『それではコンサート、スタート』

 

 それと同時に様々な弾薬やミサイルが、アントやヴァイスハイトらに向かってオーケストラを連想させる豪勢な音楽となって響きわたった。そしてその直後に響く爆音。赤と黒の花火となってアントを徹底的にジャンクに変える。

 

 残ったのは半壊したヴァイスハイトだったが、それを撃ち貫いたと同時に再び警報が響き渡る。

 

 「……どうした? まさか月面軍の追加か?」

 『バルディオス3より各機!! MSGロボの大軍が攻めてきたぞ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プロストらが弾丸とミサイルのオーケストラを奏で爆音を響かせた後、半壊したヴァイスハイトをケインが撃ち落してしばらくしたのちに警報が鳴り響く。

 

 『バルディオス3より各機!! MSGロボの大軍が攻めてきたぞ!!』

 

 その声を聞き、プロストが反応のあった個所にセンサーを向けると、そこには何らかの機械をつなぎ合わせた様なロボットが複数いた。その胸部にはアーキテクトと共通のコクピットブロックがあり、その奥からご丁寧にオープンチャンネルを使っているのか一人の男の声が響き渡った。

 

 『我々は“偉大なる9条復興委員会”であるっ!! 我らは偉大だった平和憲法を復活ために戦っているッ!! 今の日本はかつてこの国を護ってきた第9条を恥知らずにも捨て、今やかつての大日本帝国と同じ侵略者として蹂躙する側に回っているッ!! 諸君、思い出せ!! 9条があったときは平和だったと!! それを防衛機構が踏み躙ったことをッ!!』

 『平和憲法万歳ィィィィ!! 平和憲法を取り戻すために、侵略者の防衛機構をこの国から追い出すんだぁぁぁぁぁ!!』

 『真の敵は9条を土足で踏み躙った防衛機構のはずだ、目を覚ませ日本市民よ!!』

 

 ムービーで見た平和主義者とやらの支離滅裂な言動を思い出す。後生大事に9条を掲げるような組織は西日本系の集団しかいないため、プロストは舌打ちをして眼前の敵を睨みつける。

 

 「後方にはマスメディアもいやがる……」

 

 マスメディアとはかつて新聞・雑誌・ラジオ放送・テレビ放送などのメディアを差していたが、東日本ではデマや偏向報道などで日本を侵略国家だの差別国家だのと貶したことからテロリストの後方支援団体として認知されている。

特にマスメディアによる暴力と扇動の恐怖は2年前の“あの事件”で嫌と言うほど思い知らされている。ここで攻撃すればここぞとばかりにマスメディアが自分たちを悪逆非道の存在として非難するのは確定だ。この戦闘に参加している時点で向こうは喜び勇んで防衛機構を悪とする報道に掛かりきりだろう。

 

 「……ん?」

 

 そんな中、プロストはある機体を見かける。MSGロボでは無いし月面軍の使っている機種でもない。カタログで見たことがある機体だが、高価すぎたがゆえに手が出せなかったものである。

 

 「エプコ1より各機、敵はアーマーグライフェンを使っているようだ。しかもミサイルコンテナをこれでもかと言うほど積んでいる」

 『アーチャー1よりエプコ1。今の話は本当か? ミサイルコンテナを積み込んでいるだと?』

 

 自身の声に対してケインが疑問の声を上げる。しかしその声にも若干の恐れが混ざっているのは気のせいではないだろう。ミサイルコンテナを限界まで積み込んだアーマーグライフェンはその重さによって動けないという始末であり、本来ならば防衛ないしは無重力となっている宇宙戦に特化している。

大体アーマーグライフェンを使っているのならば、とっくの昔に前線へ放り込んでいる。それにミサイルに着弾して爆発したという事例もあるし、自分もそれを利用して撃破したこともある。

だからだろう。アーマーグライフェンを使う目的など……この場においては1つしかない。現に空母と二課から同時に通信が入ってきた。

 

 『特異災害対策機動部二課の風鳴だ。恐らくだがアーマーグライフェンの目的は1つしかない!!』

 『ルーラー0より各機。これより最優先でアーマーグライフェンを無力化して欲しい。あれの狙いは恐らく……』

 

 そして二人は同時に叫ぶ。そしてそれは彼ら二人が危惧していた最悪の展開ともいえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『海底トンネルの爆破だッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シン・アスカたちは艦橋にたどり着くとケインの許可を得ていると聞かされ、そこで戦闘を見ていた。最初こそ民間人として登録されているルナマリア達を見て周囲の軍人が怪訝そうな顔をする中、禿頭の人物が手で制した。その人物はかつてミネルバにいた時の副長を思わせる雰囲気だが、直ぐに彼の興味は自分たちから戦場へと戻していく。

 

 「今は追い出す時間すら惜しい。邪魔しなければいてもいいよ」

 

 そう端的に言って直ぐに部隊への指示を出していく。ケインの使っている青と白の機体が空を舞い、プロストらが乗っている機体から爆音と銃撃のオーケストラを聞かされる。爆音のオーケストラが晴れた時、そこには月面軍の機体の中で動けるものは存在していなかった。

 

 「これで終わったんですか?」

 「いいやまったく。あいつらは基本的に第一波を囮にするから、次が本番……かな?」

 

 シンの問いかけにも禿頭の人物は警戒すら解こうとしない。するとオペレーターからある報告が挙がってきた。

 

 「艦長!! 西日本のMSGロボです!! その中に1機アーマーグライフェンが混ざっている模様!!」

 「二課に速攻でデータを流すんだ、それで仕様は!!」

 「このパターンは……ミサイルコンテナ搭載型……ッ!?」

 

 その言葉と同時にブリッジにいたシン達は首を傾げ、艦長以外のクルーたちは騒めく。するとシンの耳に音声が大音量で響き渡った。

 

 『我々は“偉大なる9条復興委員会”であるっ!! 我らは偉大だった平和憲法を復活ために戦っているッ!! 今の日本はかつてこの国を護ってきた第9条を恥知らずにも捨て、今やかつての大日本帝国と同じ侵略者として蹂躙する側に回っているッ!! 諸君、思い出せ!! 9条があったときは平和だったと!! それを防衛機構が踏み躙ったことをッ!!』

 『平和憲法万歳ィィィィ!! 平和憲法を取り戻すために、侵略者の防衛機構をこの国から追い出すんだぁぁぁぁぁ!!』

 『真の敵は9条を土足で踏み躙った防衛機構のはずだ、目を覚ませ日本市民よ!!』

 

 その言葉はかつてあった9条を復権させろという声。だがその言葉はある意味でシン・アスカにとって逆鱗に触れるかのような言葉であり、彼は憎悪のこもった眼で彼らがいるであろう方角を見据えていた。

 オーブの理念を護るためだけに戦場に介入していらない犠牲を生み続けてきたテロリスト集団。赤と桃色に染められた機体がシンの眼の裏に浮かび上がっていた。

 

 「綺麗事を言い張るのはどこの国も同じってことかよ……ッ!!」

 

 シンの言葉はルナマリアにも届いたのか、腕を握りしめる。それに気づいたシンは怒気こそ収めたものの、怒りの眼を向けることは止めはしなかった。そんな中で禿頭の人物が声を上げた。

 

 「君は奴らの言葉を毛嫌いしているみたいだね……一応キミの意見も聞きたい。あれ、どう思う?」

 

 そう言ってグライフェンと言われた機体がアップになって映し出される。この機体に関しては詳しくは知らないが高価で、ミサイルコンテナを限界まで積めば陸上戦では不向きになることはヴィスクエアから聞いている。ルナマリアはそれを見た瞬間、震えだしたがシンは怪訝そうにしながらも声を出す。

 

 「まあポジションとしては妥当かと。動けないし、ミサイルを放って攻撃すれば……」

 「あのオーケストラ以上の威力は出せないよ。一機だけだからこっちの戦力を殲滅するのも不可能だね」

 

 二人が言い合う中、ルナマリアがポツリと呟いた。その顔は青く、シンにとってかつて仲間に裏切られたトラウマを抉られたかのような雰囲気を出していた。

 

 「違う……あの機体、攻撃のために出したわけじゃない……」

 

 震えだし、思わず膝をついてしまうルナマリア。それを見てシンは彼女に向かって声を上げた。

 

 「おい、どうした……しっかりしろッ!!」

 「あの機体……ミサイルを積み込んで自爆したら……場所が場所なら……」

 

 その言葉を聞き、艦長はアーマーグライフェンの動きに注目し、シンでも分かるように僅かに『アソコ』の入り口近辺の方へ動いていたのに気づくと直ぐにコンソールに拳を叩きつける。それと同時にブリッジから一人の紅いワイシャツを着た大柄な男が映し出される。

 

 「風鳴司令。どうしましたか?」

 『ネオスライド中佐、大変な事態だ。あの敵の動きがわかった』

 「やっぱりそうか……そっちは動ける?」

 『今はこちらの担当方面に現れた月面軍の対応で難しい。そちらの方は?』

 「予備を使えば何とか。でも確実にMSGの邪魔が入るから後一機欲しいね」

 

 ネオスライドと呼ばれた男は即座に通信機を手に取り、自身の指揮下に入っている部隊全てに通信を行った。

 

 『特異災害対策機動部二課の風鳴だ。恐らくだがアーマーグライフェンの目的は1つしかない!!』

 「ルーラー0より各機。これより最優先でアーマーグライフェンを無力化して欲しい。あれの狙いは恐らく……」

 『海底トンネルの爆破だッ!!』

 

 その言葉と同時にブリッジが先ほどよりも慌ただしくなる。しかもそれと同時にアーマーグライフェンとMSGロボが動き出し、目標へ到達するのを防ぐかのような動きを行いだした。

 

 「あの、艦長さん!!」

 

 シンは思わず声を上げる。それを見たネオスライドは目つきを鋭くさせながら問いただした。一見かつての副長を思わせるような雰囲気は微塵も無い。

 

 「なんだい? 僕は忙しいんだ、手身近に言ってくれよ」

 「俺があれを止めます!! 一機でも通ればいいんですよね!?」

 

 その言葉を聞き、ルナマリアとアルテは思わずシンの方を見据え、ネオスライドも流石に雰囲気を強張らせながら言い放つ。

 

 「君のポジショニングはまだ決まってない。それに君は新参だ、許可は出せないね」

 「海底トンネルが潰されたら今回を切り抜けられてもいずれ負けます!! 俺なら奴らも存在を把握しきれていないから、まだ意表はつけるかと!!」

 

 シンは自分の機体が載せられている事を聞かされているし、仕様もある程度把握していた。となると後は追いつけるかどうかのみ。ここで海底トンネルを潰されたら、いずれナンソウは干上がってしまう。船や航空機での輸送や大橋を使った移送では、月面軍や西日本軍に襲われ貨物が奪われるか海の底に沈む未来しかない。

 

 「……」

 『ネオスライド中佐。私も彼に賭けます。我々が護りたいのは人の命です、俺たちのメンツなんざそれに比べたらどうでもいいでしょう』

 「……分かっているよ。少しばかりこの艦隊を預かっている者としての体裁を整えていただけさ、当の昔に答えも腹も決まっている……朱鳥君、敵性アーマーグライフェンの撃破、頼めるかな?」

 

 頷きを返し、シンは即座にこの場を後にする。そしてネオスライドもまた通信を行い、声を上げた。

 

 「ルーラー0より各機!! 今から予備機を全機MSGロボにぶつけさせる!! 今からニューカマーのデビュー戦だ、見せ場を作ってやれよ!!」

 

 シンが急いで漸雷の元へ向かうと、そこには既に起動準備が終了していた機体が用意されていた。パイロットスーツも用意されていて、シンはそれを着込むと起動準備を行う。

 

 『あー、朱鳥君、聞こえる?』

 

 映し出された禿頭の男……この空母の艦長に対してシンは頷きを返す。

 

 『この機体は、あくまで装甲は他のフレームアームズと比べて頑丈ってだけだからね。あの屑鉄の悪魔のような無敵装甲は無いから無茶なことはしないでね』

 「了解しましたッ!!」

 

 シンはこの時彼の発言の真意に気づくことなく頷き、発進準備を行う。一方のネオスライドは頷きを返し、改めて命令を行った。

 

 『倒してくれれば問題ないけど、少なくともMSGロボの群れさえ突破できればこっちも追いつける。そのエクステンドブースターなら態々大橋を使わずに直線距離でアーマーグライフェンに追いつけるはずだ……改めて行ってくれ』

 「ハイっ……朱鳥信、漸雷……」

 

 その声と同時に発信許可が出る。シンは勢いよく踏み込み、漸雷のセンサーを起動させた。

 

 「行きますッ!!」

 

 そして漸雷が勢いよく飛び出す。飛び出したと同時にエクステンドブースターを起動させ、大橋での戦闘を横目に対岸にいたアーマードグライフェンの前へと躍り出る。向こう側はどうやら有人機だったらしく、こちら側に向かって声を荒げた。

 

 『貴様……我らの邪魔をするかっ!! 平和憲法を踏み躙る侵略者がッ!!』

 

 シン・アスカにとってその言葉は一番聞きたくない答えだった。だからこそだろう、かつてアーモリー1での初陣を思い出し、似たような言葉をあえてオープンチャンネルにした後で紡ぎだす。

 

 「そんなもののために海底トンネルを爆破するのか……そんな物を護るのに、どれほどの人間が苦しむのか分かっているのかよッ、あんた達はッ!!」

 

 そしてシンは手にしたサーベルでアーマーグライフェンに襲い掛かる。その言葉を合図に、シン・アスカの月面戦役は幕を開けたのだった。




今回は防衛機構側のお話です。FA戦でのお話なので、生身の戦闘は次の次あたりで。

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