FRAME ARMS DESTINY T&S   作:デボエンペラー

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実は最初の戦闘に関しては即座に書き終えることが出来たんよ。
でもそれじゃあ薄すぎたと判断してフライングで敵の幹部を出す羽目になったよ。

やっぱりAIよりも有人機の方が敵としては優秀。月面軍も何機かは有人機じゃねーのと言う記述がチラホラと。

何機かは無人機のインターフェースが描かれているけど、何機かは有人機と言う設定でお願いします。


PHASE-04 緋銀

 「何っ!? 朱鳥が出撃した!?」

 

 ケインがMSGロボの大軍と戦っている中、漸雷が凄まじい速度で移動し、アーマーグライフェンに追いつく光景をモニター越しで目の当たりにする。確かにこの状況ではえり好みは出来ないとはいえ、いくら何でも新兵に全てを託すなど、父も何を考えているのだ。

 

 『アーチャー1。俺たちも早く片付けるぞ。どちらにせよ話にならない』

 

 プロストがそう言って手持ちの銃でMSGロボの中枢を射抜く。コクピットはアーキテクトの物を流用しているため、問題なく射抜き爆散させる。元々武器の型落ち品の寄せ集めである以上何の価値もない。

 

 「分かっている……!!」

 

 ケインは即座にレーザーカッターを振りぬいて唐竹割りにした。爆散するMSGロボと、圧倒的な差を前にしても現実を見ようともしない連中。

 

 『おびえるなぁぁぁぁぁぁ!! 前へ進めぇぇぇぇぇ!! 平和憲法を取り戻す日が来るまで、俺たちの戦いは終わらないぃぃぃ!!』

 

 あいつらの眼に映っているのは一体何だろうか? ケインの眼には月面軍ではなく彼らこそが化け物の様に見えており、そんなもんと割り切れるプロストがある意味羨ましかった。そんな中、弾を撃ち尽くしたウェアウルフ・ブルーバーに対してMSGロボが纏わりつくのをケインは目撃した。

 

 「チャーリー8!! 纏わりつかれている!! 早く――」

 

 それよりも早く銃撃音が響き渡る。MSGロボが距離を離した時には纏わりつかれていたウェアウルフは胴体から吹き飛ばされていた。生死など確かめるまでもない。

 

 『クソッたれがぁッ!! よくもマイクをッ!!』

 

 僚機が行ったガトリングの応酬でMSGロボを吹き飛ばしていく。しかし特攻もかくやと言わんばかりの対応だった。弾も充電もそろそろ心もとない。もうこちら側の予備は先ほどの投入で限界だった。

 

 (朱鳥……お前に託すしかないか……ッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンはアーマーグライフェンと対峙して改めて相手の機体を考える。アーマーグライフェンの特徴は至る所に装備されているミサイルコンテナであり、機動性を犠牲にして威力を高めた典型的な宇宙戦や防衛線で威力を発揮する機体だ。一方でシンの漸雷は改修こそされているが防御能力は今まで使っていたMSとは雲泥の差であり、その事も注意して戦わなければならない。

 

 (ミサイルてんこ盛りの機体と戦ってみて改めて考えると、PS装甲って本当にトンデモ装甲だったよなッ!!)

 

 バクゥのミサイル76発まで無力化できるし、インパルスでさえ制限時間があってこれだからフリーダムやジャスティスのなんざ核エネルギーで制限時間を無くすと言う自分から見て悪役上等な代物。シンは改めて装甲に今まで救われてきたのだと痛感し、どうやって相手の動きを止めるか考えていた。

 

 「まずはこいつでッ!!」

 

 そして手にしたマシンガンで敵のミサイルコンテナを撃ち抜く。まずは右肩のコンテナを射抜き爆散させるが、その直前に切り離していたらしくグライフェン本体には直接ダメージを与えることはできなかった。

 

 「流石に心中してくれないか……だがまずは一つ目ッ!! そしてッ!!」

 

 続けて胸部のコンテナへと銃弾を放ち、それは流石に武装の無くなった右腕で防がれる。そしてパイロットはシンに勝てないと判断すると一目散にトンネルの方へ逃げだした。

 

 「逃がすかよッ!!」

 

 忌まわしき仇敵であるキラ・ヤマトと同様、相手の足を射抜いて行動を阻止する。勿論不殺なんて生ぬるい真似ではなく、相手の動きを封じる事こそが目的だったが、相手の機体は脚部は従来のグライフェンとは切り替えているのか、ローラーで移動が可能なものになっている。

逃げる敵にそれを追うシン。一方でシン・アスカに対して敵は叫びながら逃げていた。

 

 『何故邪魔をするッ!! あんな海上都市があるから日本は侵略されるし、侵略する側になるんだぞ、平和憲法が世界中に広まれば世界は平和だっていうのに、何故それが分からないッ!!』

 「月面軍が来るからだろうがッ!! 俺は内戦を起こして日本を乗っ取ろうとした紅赤朱なんか嫌いだが、あんたらの様に妄想で人を平然と殺して悲しそうな顔をするクズは紅赤朱以上に大っ嫌いだ!!」

 

 その問答の最中にも互いに海底トンネルに近づきつつある。その刹那、アーマーグライフェンの背部に備えられていたミサイルコンテナが開かれ、それが一斉にシンへと襲い掛かる。

 

 「はぁッ!!」

 

 最もそれは銃火器で射抜いて誘爆させたが、向こうもそれを織り込んでいたのか一目散に移動しており、シンも即座にそれを追った。

 

 「腹をくくるしかないか……」

 

 遠距離での射撃による撃破を諦め、相手の機体がもう一つの機能の“射程範囲”に入った際、アーマーグライフェンから声が響き渡った。

 

 『邪魔をするな侵略者!! われらの正義の一撃をッ!!』

 

 まだ寝言を言うか。シンが怒りに震える中、突如としてコクピット内に警報音が鳴り響く。背後から複数のMSGロボが飛び掛かってくる。

 

 「邪魔を……するなぁッ!!」

 

 その直後、シンはイオンレーザーカッターを振りぬいてMSGロボを両断する。そしてその直後にエクステンドブースターを限界を超えて点火させ、無理やりアーマーグライフェンに追いつかせる。

 

 『ば、馬鹿なぁッ!?』

 「うおぉぉぉぉぉッ!!」

 

 振りぬいた直後のイオンレーザーカッターを無理やりアーマーグライフェンの背後に突き刺し、機能を限界まで引き上げてゼロ距離で暴発させる。その刃は背後からでも貫いたと分かりきり、海底トンネルの入り口から通り過ぎたのを確認するとようやく敵機の爆発が始まった。

 

 (あっ……やべ……)

 

 これは試験機だったし、どうやって逃げるのかまで今まで考えてなかった。そもそもミサイルもまだ胸部と脚部に残っている。シン・アスカがこの機体の重要性と相手のミサイルを再認識した時は残ったミサイルコンテナの誘爆に巻き込まれそうになった後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大橋での戦闘の最中、ケインは海底トンネルの入り口近辺で大きな爆発が響き渡るのを確認し、最大の懸念事項だったアーマーグライフェンの信号が途絶えたのを見ると現在生き残っている僚機に対して勝鬨の声を上げた。

 

 「アーチャー1より各機!! 新入りが敵性アーマーグライフェンの撃破を成功させたッ!! 我らの勝利だッ!!」

 

 その声を合図に僚機の士気は向上し、逆にテロリスト側の士気は激減した。テロリストと交渉する気など更々ないため、ケインは警告も何もなくMSGロボを駆逐していく。

紅赤朱の際はあくまで自衛隊の一派閥であり、当時は日本が消極的だった月面軍との戦闘にも進んで参加していたため降伏も受け入れられていたし、紅赤朱の降伏後は防衛機構や二課に参加する面々も見られている。

一方で大中華防衛機構はこの期に及んで日本を侵略したため、防衛機構から除名されている。しかし日本を信用しきれない面々もいるのは確かなので、そいつらは正真正銘のテロリストと化しているのが現状だった。

 

 『馬鹿な……正義の一撃作戦が失敗に終わっただとッ!? 転進ッ!! 転進ー!!』

 

 そしてMSGロボは一目散に逃げだす。勿論可能な範囲で手荒い実弾入りの祝砲を浴びせてやって、何機かを汚い花火に作り替えて大橋から追い出していった。そしてプロストとバルディオス3……北斗雷太少尉が海底トンネルの入り口あたりまで行くと、通信が入ってきた。

 

 『……エプコ1よりアーチャー1。新入りを見つけた……見たところ機体は無事だぞ』

 『バルディオス3より各機。敵は周囲に敵影はなし』

 『……朱鳥信です……敵が爆発しそうになったので更にブースターを点火しました。結果、何とか爆発からは逃れられましたが、ブースター四基中二基オーバーヒート、イオンレーザーカッターがお釈迦になりました』

 

 どうやら朱鳥はあの状況で接近戦を仕掛け、ブースターで爆発しそうになったのを逃げた様だ。しかし、結果見たところ背部のエクステンドブースター二基とイオンレーザーカッターが損失している。

 

 「アーチャー1より各機。新入りの機体を確保した。これより帰投準備に入る」

 

 そして信の機体を回収し、そのままナンソウへと帰投――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『悪イガ、ソウハサセナイ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その通信がオープンチャンネルで響き渡ると同時にシャトルのような戦闘機が9基も空から降りて来て、そこからアントを筆頭としてコボルトやシュトラウスが合計8機も現れる。最後に白銀のヴァイスハイトを見た瞬間、ケインは苛立ちと共に通信を繋いだ。

 

 「アーチャー1より緊急通達!! 降下艇が降りてきた!! 数は9、種類はアントが4機でコボルトとシュトラウスが2機ずつ、最後の1機は白銀のヴァイスハイト!! 二課に援軍要請!! 銀のヴァイスハイトが来たと言ったら喜んで飛んでくるだろッ!!」

 

 とは言え、向こうも向こうで月面軍と戦闘中。弾薬が付きかけた状態で相手に勝てるなど期待していない。果たしてこちらが力尽きるのが先か、向こうが飽きるのが先か、二課の到着が先か――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンは一体のヴァイスハイトを見据えて息を呑んでいた。あのヴァイスハイトは佇まいだけでも先ほどの戦闘でケインが撃ち落した同じ黒い機体とは雲泥の差だ。亡き上司のハイネが操っていたグフ・イグナイテッドや、ステラをデストロイに乗せてベルリンの民を虐殺させておきながらも自分はオーブで何食わぬ顔をする外道ネオ・ロアノークの赤紫色のウィンダムを思わせる。

色合いとしてはアントと同じ焼き鉄色のフレームに白銀の装甲。装備としては背部のキャノン砲に腰部に備えられた細身のバズーカに似た砲台。特に腰部と背部の装備は家族とステラの命を奪った因縁の敵であるフリーダムを思わせ、シンは無意識のうちに舌打ちを行った。

 

 「新入り……その機体じゃ戦うのは無理ではないか? 逃げてもいい、この援軍は予想していない」

 「逃げられるんなら逃げてますよ……でも、後ろ見せたらズドンとやられますね」

 

 シンはそう言って左腕からタクティカルナイフを引き抜く。先ほどの爆発によって腰部に据えていた銃も異常を起こしていないとは限らない。暴発して死ぬのはごめんだからだ。しかし向こうはそんな状況など関係なく背部に備えていたキャノン砲で砲撃を開始した。

 

 「問答無用かよ!? 本当に容赦ないなッ!!」

 『貴様ラノ都合ニ合ワセル必要ナドアルカ?』

 

 続けて両腰部に備えられていたキャノン砲を展開し、砲撃を行う。その動きはシンにしてみたらフリーダムに酷似しており避けるのには造作もない。

 

 (よしッ!! 相手はふざけたやり方を止めたフリーダムだと思えばいい!!)

 

 シンは戦い方を避け続けるやり方に変更する中で、ケインから通信が送られてくる。

 

 『朱鳥っ!! 二課の連中が後三分したら来れるかもしれない!! それまで行けるか!?』

 「了解です、ネオスライド中尉!!」

 『新入り、相手は月面軍の指揮官機だ。無理に倒そうなど思うな!!』

 

 プロストからも通信が送られ、彼は残ったであろう弾でコボルトやシュトラウスを狙う。もう一機の榴雷改もアントに対して攻撃を行い、そちらはヴァイスハイトからの攻撃によって一機だけ破壊を防がれてしまった。

 

 『ホウ……』

 『朱鳥、あのコボルトとシュトラウスはヴァイスハイトのパーツだ。あの機体の傾向からコボルトの武器は補給されかねない。奴の背部と同系になっているコボルトのビーム・オーブガンだけは絶対に破壊しろ』

 

 ケインの言葉と同時にシンも頷く。ケインの言う事も尤もだし、何よりあの武器に関しては命令されなくても絶対に破壊すると決めた。オーブと相対するとは世界が違うとはいえシンに妙な感慨を抱かせていた。

 

 「了解ですッ!!」

 

 その言葉と同時にシンはコボルトの腕部にタクティカルナイフを突き刺す。その直後にオーブガンが暴発し、シンは爆発が起こる前に距離を離して難を逃れた。

 

 『これで残りはアリ、コボ、ダチョウが1機ずつに銀ピカヴァイスハイトか!!』

 『アーチャー1より各機、奴……ヴァイスハイトはこの際無視する。残った敵を倒していくぞ!!』

 『了解!!』

 

 その後はヴァイスハイトの砲撃を避けながら、コボルトとシュトラウスをプロストと残った榴雷改が射抜いて爆散させる。しかし、そんな中だった。

 

 『……ダガ、動キニ翳リガ見エタゾ!!』

 

 ヴァイスハイトが腰部と背部の砲撃を再度行おうとシンへその銃口を突き付ける。シンは避けようとしたが先ほどブースターを使って避けた直後もあって再点火に時間がかかってしまった。

 

 「しまっ……!!」

 

 シンの手にはタクティカルナイフしかなく、砲撃を放たれたが最後、死を迎える。この状況で逆転の目などない。

 

 そう思った直後、突然シンの機体を制御するOSからある文字列が突如浮かび上がってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――THUNDER SYSTEM...[BOOT]

 ――THUNDER VALIANT...[YOUR SKILL LEARNING]

 ――SYSTEM UNROCK...[THUNDER SWORD]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その直後、OSの画面上に龍と剣、緋色の雷のアイコンが浮かび上がり、それを上書きするかのように『雷龍剣』の文字と英字で書かれたルビが浮かび上がる。

 

 「雷龍……剣? サンダーバリアント……何のことだ?」

 

 サンダーソードはヴィスクエアから話半分に聞いていた雷を纏った剣技の事で、彼の弟であるヴィクトリオが使っている剣とは対になる流派らしい。しかしそんな技を学んだ覚えもないし、最初から使えたら当の昔にフリーダムやジャスティスに対して使っている。

 

 しかし、現状では砲撃を躱す術などない。ならばこの一撃に賭けるしかなかった。

 

 「上等……!!」

 

 シンは何のためらいもなく追加されたコマンドを入力する。コーディネーターだからこそ出来た早業で起動させ、漸雷の右腕から緋色の雷が奔流を走らせる。

 

 『ソノ技……マサカッ!?』

 

 この戦闘で初めて浮かべたヴァイスハイトの狼狽の声。しかしその直後に背部と腰部からの砲撃が放たれ、シンもタクティカルナイフに纏わせた雷でその光を相殺させる。

 

 「うわぁぁぁぁっ!!」

 

 シンもタクティカルナイフごと右腕を大破させ、機体を後方に吹き飛ばされる。体勢はギリギリで整えることは出来たが、これで戦闘が完全に不可能な状態になった。そんな中、シンの機体から警報音が鳴り響く。モニターには1機近づいているとの情報。

 

 「また来たのかよっ!? もう無理……」

 『……いや、この反応は!! 喜べ新入り、二課から援軍だ!!』

 

 シンの嘆きを打ち消すかのようにプロストから喜びの声が浮かび上がる。そして自分たちとヴァイスハイトの間を遮るかのように一本の槍が地面に突き刺さった。

 

 『……ドウヤラオ前タチニ追イツカレタヨウダナ。片翼ノラピエール』

 

 その機体はアスランを思わせるような赤い機体だった。形としてはスティレットに似ているが、背部に備えられたブースターと手足に若干の違いがみられる。

 

 『ようやく会えたな……昔の借り、ここで返させてもらうぞ!!』

 

 その声はシンがこの場にいて聞き覚えのない声……すなわちあのラピエールと呼ばれた機体のパイロットの声だった。男性にしては高く女性にしては荒々しい中性的な声で、どちらかまでは見当がつかない。しかし、それよりも早くラピエールが槍を拾い上げ、ヴァイスハイトの砲撃を避けた後でそれをヴァイスハイトの右腕を貫いて爆散させた。

 

 『……今回ハココマデカ。緋色ノ雷ニ片翼ノラピエール……今回ハ貴様ラノ勝チダナ』

 『待ちな、決着をここでつけてやる!!』

 『貴様ノ制限ハ知ッテイル。アレホドノ戦イノ後、ココマデ来タノナラ、モウ時間ガ近イダロウ。身ヲ引ケ、相棒ノ仇ヲ撃チタイノナラナ』

 

 ラピエールの咆哮を受け流してからもう早い。ヴァイスハイトは随伴していたアントと共に逃亡、用はないと言わんばかりに逃げ去っていった。

 

 「……助かった……?」

 

 シンは思わずそう呟くと張りつめた空気を即座に開放した。ケインとプロストらも同様で盛大に息を吐いた。余裕なのはラピエールのパイロットのみだ。

 

 「助かりました……ありがとうございます」

 『アンタが新入りか。礼は受け取るが、あのヴァイスハイトは私の獲物だ。なるべく邪魔はするなよ』

 

 映し出されたのは赤みがかったオレンジを基調とした印象の衣裳にフルフェイスメットを被った、肉付きからして女性の姿。フルフェイスメットに入りきらなかったのかオレンジ色の髪を広げた姿からは、顔や眼が見えずとも明確に復讐者としての意思が感じ取られている。

復讐者としての行動は自分も知っているため、頷くしかない。それを見た後、彼女は即座にこの場を後にした。

 

 『……もう追加はないな?』

 『あったとしても、俺は逃げさせてもらう。これ以上は無理だ』

 『……援軍の気配はない。今度こそ帰投命令を出す』

 「了解です……」

 

 シンの漸雷が粉微塵になった右腕の話をどうしようかと考える中、プロストが声を上げた。

 

 『……それにしても朱鳥ちゃん、さっきのそれ何なんだよ』

 

 口調こそ最初に出会った時のそれだが、眼は明らかに先ほどの技に興味がいっている。それに関しては自分も正直なところ聞きたいので、正直に突然使えるようになったとしか言えなかった。

 

 「絶対に信用してもらえませんけど、俺だって知りませんよ。正直な話、使えていたらとっくの昔に使ってます」

 

 その言葉には三人がそれぞれ別々の反応を示していた。

 

 『何だとぉ……?』

 全く信用していない者――バルディオス3のコールサインで呼ばれた男・北斗雷太。

 

 『……へぇ』

 言葉に興味を示さず単純にその技に対して興味を示した者――プロスト。

 

 『……』

 納得こそしていないものの疑うのを無意味だと断じて放置した者――ケイン・ネオスライド。

 

 『帰投するぞ。朱鳥の雷に関しては現段階では不問とする。問答は無意味だからだ。それにこれ以上労力を使いたくない』

 

 ケインの言葉に対してプロストも賛同の意思を示し、雷太も遅れて踵を返す。シンもそれに続くが間の道中は敵を警戒し、なおかつ先ほどの雷もあってか終始無言だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンたちが大橋――海底トンネルはFA搭乗時は誰だろうと問答無用で通行許可が下りない――を渡り、入り口付近の港湾部へたどり着いてフレームアームズを各々整備所へと運ばせる。そこには既に先客……もとい空母にいた整備班と何人かの人間が既に待機していて、その中の一人――ルナマリアが漸雷から降りたシンの姿を見届けると即座に駆け寄ってきた。

 

 「シン!!」

 

 勿論シンは彼女の熱い抱擁で迎えられ、疲れ果てていた為か彼女に押し倒されるように足がもつれて倒れた。

 

 「大丈夫だった? 怪我とかはしてない? 中佐さんから聞いたけど、あの銀色の機体強かったんでしょ?」

 

 確かに強かった。雷の刃が振るえるようにならなかったら自分は死んでいたし、ラピエールが駆けつけてくれなかったら全滅もあり得た。

 

 「大丈夫だって……離れてくれよ……」

 「アンタね、私は心配してんのに!!」

 

 プロストも元気が戻ってきたのか茶化すかのように口笛を吹く。厳つい大柄な男――雷太は鼻を鳴らしてこの場を去っていった。最後のケインはため息を吐く中、後ろからアルテも飛びついてくる。どうやらルナマリアの真似をしてみたかったらしい。

 

 「真由紀にホーク……だったか。二人とも、すまないが続きは部屋でしてくれ。俺は中佐に今回の事を報告してくるし、その後はレポートを書かなければならないからこの場で解散とする」

 

 ケインはそう言ってこの場を後にした。シンも立ち上がってその場を後にする。そして整備班のメンバーに向かって頭を下げ、ルナマリアとアルテと共に帰っていくことになった。

 

 「ねえシン……やっぱりあたしもこの戦いに……」

 「俺は反対だ。アルテの事もあるし、ルナには彼女の事を護ってもらいたい」

 

 周囲に人がいない事を確認し、ルナマリアを本名で呼んで反対の意思を示す。ルナマリアの射撃の腕は論外としても、アルテの近くにいられるのは彼女だけ。彼女まで戦場へ向かったら、アルテは一人で待たなければならない。

シンとヴィスクエアはアルテこそがフレズヴェルク・アーテルのパイロットであると確信しているため、彼女に疑いの目を向けられることも避けたい。今回の雷の剣に関しては自分に目を向けられるため囮としては最適だった。

 

 「……俺はルナがここにいてくれるだけで有難いんだ。1人だったらどうなっていたか、考えたくもない」

 

 もしこの世界に飛ばされたのが自分だけだったら、かつてレイが打ち明けた彼の兄替わりだったパイロット『ラウ・ル・クルーゼ』の様に世界を呪う人物に成り果てていた可能性だってあった。ルナがいてくれたからこそ、自分はこうしていられる。

 

 「……でも、無理そうだったらあたしも戦うわ。あの銀色の機体レベルの敵がまだいるって可能性が高いもの」

 

 それに対してシンは即座に否定できなかった。あの銀のヴァイスハイト並みの敵が他にいないとも限らないし、西日本の連中のなかに凄腕のエースがいる可能性もある。

 

 「ねー信、真由紀。ボクお腹すいた……」

 

 アルテがそんな事を言う。彼女は険悪そうな雰囲気を感じたのか今にも泣きそうな表情をしている。少し戦闘の後だったのか、気を張りつめ過ぎたようだ。彼女にはルナマリアの事情は話しているが、今後も気を引き締める必要があった。

 

 「……そうだな。今日は何を食べようか」

 

 シンは夜空を見上げながらそんな事を言う。既に夜の帳に覆われ、頭上には月と星が静かに輝いていた。

 




ついにシンフォギア組が出ました。
出すキャラは事前に決めていたから、後はOTONAをどうやって対処するか考えていたのよ。

ネタに走るときはネタに走る作者。バルディオス3のネタ、分かるかな?

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