FRAME ARMS DESTINY T&S   作:デボエンペラー

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この物語はメサイア攻防戦前後の時系列である以上、必然的にキラ達にアンチ・ヘイトがかかることになります。ご了承ください。



序章
PHASE-01 漂流


 「もうやめろシン、過去に囚われたまま戦うなんてもうやめるんだ!」

 

 所々に銀の関節を有した赤き機体が血涙を流したかのような顔と翼をもつ機体に襲い掛かる。悪魔のごとき風体を持つその機体はその攻撃に押されるが、決して敗れまいと必死になって食らいついていく。

 

 「やめるんだ、だと? 俺達を裏切ったくせにふざけた事をぬかすなよアスランっ!! あんたはキラ・ヤマト以外認めたくないだけだろ!!」

 

 目の前の敵に対して叫ぶ。あの足に自身の大剣を斬り砕かれ、もう一方の長距離砲はこの状況では何の役にも立たない。この機体に関しても最早自身の身を顧みず無理やり動かしている状況で、呼吸もおかしくなっている自覚はある。

武器は二振りのブーメランにもなる刃のみ。本来は掌のパルマ・フィオキーナもあるがふさがっている状況では話にならない。

万事休す。本音は尻尾を巻いて逃げたかったが、ここにはいない戦友と傷を舐め合う中で守りたいと願うようになった少女の想いを背負ってこの場にいる以上、逃げることは許されなかった。

 

 (俺がアスラン、レイがメサイアを護りながらフリーダムと戦い、ルナがミネルバを護る……それが俺たちが考えた作戦だ……)

 

 最早敵の最強たる二振りの剣に対して数の暴力は無意味。

そう考えた3人はシンとレイが持つ特権を利用し、ある作戦を提案した。

自分とレイ・ザ・バレルが奴らと戦い、残ったルナ――ルナマリア・ホークがミネルバを護る、それだけの作戦ともいえない提案。しかし、向こうも同じ事を考えていたのか了承した。

シンとレイだけの間で交わした約束は、万が一自分かレイが敗れた場合、残った方がミネルバの救援に向かい僅かな仲間を護るという事だけ。

 

 (負けるわけには、行かないよなぁっ!!)

 

 何度か結び合う最中、シンは目の前の敵に集中していた。だが、そこへ本来ならばあり得ない事態が起こった。

 

 (ミネルバの信号が途絶えたッ!? 馬鹿な、周囲はザフトのMSがいたんだぞッ!? ルナは、ルナは無事なのかッ!?)

 「シンッ!! ミネルバは落ちたぞ!! もうお前たちの帰る船はないんだ!! 投降するんだ!!」

 

 シンが僅かに視線逸らした際に見た友軍反応のうち、母艦の信号が消えていた。周りには友軍機に囲まれていたのにも関わらず、である。そしてそれと同時にアスランの勝ち誇った声が響き渡る。その異常事態に却って頭が冷静になったシンは周囲の状況を見渡す。

 

 (レイの信号も途絶えている……!? 負けたのか……)

 

 仲間が敗れたという絶望。ようやく訪れようとしていた平和を踏み躙られた憎悪。そして自分の無力さ。そんな中、シンは微弱ながらもルナマリアの機体が持つ信号を捉えた。

 

 「……アスラン」

 

 その言葉を最後にシンは相手にしていた機体に背を向ける。この状況下、間に合うかどうかわからない。でも、最早自分だけが足掻いたところで無意味になった。

ならば最後に行うのは約束通り1人でも多くの仲間を助ける。それこそがシン・アスカに残った最後の意地だった。そして無意識のうちに目をアスランの方へと向ける。その眼はどう映っていたのだろうか?

 

 「よかったな。この戦争、あんた達オーブの勝ちだ。精々他所から掠め取った勝利に酔っていろ」

 

 その言葉を最後にシンは機体を全速でミネルバの信号が途絶えた場所へと向かっていく。ミネルバとルナマリアのいた場所は月面に近い。

ミネルバのあった場所へ駆けつけたシンが見たのは信じられない光景だった。

 

 「なんだよ……これ……」

 

 そこにはオーブや連合軍のMSや戦艦はいなかった。そう、いなかったのである。それは頭の片隅に追いやっていた最悪の答え。

ザクがグフを撃つ。グフがザクを斬る。バビが戦艦を撃つ。戦艦が負傷したMSを撃つ。

グフがザクがバビがザクがグフがグフがグフがザクがバビがザクがグフがグフがバビがザクがザクがバビがグフがザクがザクがバビがグフがザクがバビがザクがグフがグフがバビがザクがザクがバビがグフがザクがザクがバビがグフがグフがバビがザクがグフがザクがバビがザクがグフがグフがバビがザクがザクがバビがグフがザクがザクがバビがグフがザクがバビがグフがザクがザクがバビがグフが――

 

 「なんだよこれはぁっ!?」

 

 それはまごう事無き『同士討ち』『裏切り』『離反』だった。通信を入れるが即座に後悔する。

 

 「ラクス様のために!!」「ラクス様こそがプラントを正しく導けるのだ!!」「デュランダルに裁きを!!」「ラクス様のために!!」「ラクス様のために!!」「ラクス様のために!!」「ラクス様のために!!」

 

 残った味方からは絶望のうめき声と断末魔しか聞こえない。あとは裏切者の声だけだった。その声がシンには散々余計なことをした故郷と呼んだ国を最終的に支配したウズミの娘を思い出した。

 

 「糞がぁっ!!」

 

 シンは残った気力で襲い掛かる敵を切り裂いていく。あの状況だと味方は殆ど残っていない可能性が高い。

 

 「ルナぁっ!! どこだぁっ!!」

 

 嘆願に近い声。届くかどうかわからない声。誰が味方で誰が敵かもわからない以上、シンは迫る敵を切り裂きながらミネルバへ近づき、ようやく見つけると言葉を失った。

 

 「うそ、だろ……?」

 

 そこにあったのは動力部に穴が開き、ブリッジ周辺は跡形もなく消し飛んだ戦艦だったものしかない。そしてそんな中で見覚えのある機体に寄ってたかって嬲ろうとする複数のMSを見つけるとシンは怒りを振り絞った。

 

 「やめろぉ!!」

 

 手にした刃で一蹴し、即座にシンは近くに漂う灰色にくすんだ機体……かつての愛機で今はルナマリアが使用する物に近づくとそれを抱きしめ一目散に逃げるしかなかった。

 

 「……シ、ン?」

 「ルナ無事だったか!! 今はここから逃げるぞ!!」

 

 ルナの機体を抱えている以上、全速は望めないがそれでも奴らを振り切るだけの速さはある。

 ミネルバが落ちた以上、動力がどこまで保つかわからないが、まずはレクイエムのところまで向かう予定だ。あそこはデュランダル議長がレクイエムを再生した際、新たな動力に変更したと聞いたが籠城するにはうってつけだろう。そしてレクイエムの周辺にたどり着いて、ようやくシンはルナマリアに向かって声を上げた。

 

 「ルナ、さっきのあれは一体なんだよ? 他の皆はどうなったんだ!?」

 

 その言葉がした瞬間、ルナの機体のコクピットが突如開かれ、こちらへ……正確に言えばコクピットへ向かってくる。シンは思わずコクピットハッチを開放し、ルナマリアを招くことにする。

そしてルナマリアは開放された瞬間、シンに抱き着く。そしてヘルメット越しでもわかるように泣きじゃくり、声を振り絞って答えた。

 

 「……アイツが、ラクスが来て、何か戦闘を止めるように言った瞬間、何人かのザクが突然こっちに銃を向けてきて……あたしも咄嗟に撃って、それから……ミネルバもあいつらに落とされて……みんな、みんな……」

 「みんな……? みんなってまさか!! 艦長もヨウランもヴィーノもアビーも副長もマットの親方も!?」

 

 シンの声に対して頷くルナマリア。彼女の話では何機かランチが脱出したらしいが、乱戦による流れ弾あるいは『ラクスに逆らうものは必要ない』と言わんばかりに殺された可能性がある……

 

 「ランチは発射されたけど、信号が突然消えて……何度か抵抗したんだけど、もうエネルギーも無くなって……」

 「もう、いいよ……俺も多分レイも負けた……もう、俺たちは負けたんだ……」

 

 シンは悔しかった。故郷にいた際にウズミの無謀無策からくる行動で両親と妹を亡くし、フリーダムの乱入時には気心の知れた上司を喪い、ベルリンで護ると約束した少女をもう少しで救えるところで全てを台無しにされ、フリーダムを落としたと思ったらアスランがルナマリアの妹を連れて脱走し、ジブリールを匿ったオーブへ攻め込めば生きていたあの二人がヒーローごっこもかくやと言わんばかりにザフトを蹂躙し結果として最初のレクイエムの発射を許し、挙句の果てに今回の件だ。

 

 「シン……なんでこうなったの? あたしたち、どこで間違ったのかな……?」

 

 ルナマリアが今にも、いや今まさに心を壊した状態でシンに問いかける。あの時シンたちを和ませてくれた眼の輝きは感じられず、あの時自分が感じた以上の絶望に支配されていた。

 

 「ルナ……?」

 

 シンは思わず鳴り響く警報音を聞き即座にモニターをオンにする。なるほど、確かに眼前にはオーブ軍の旗艦ともいうべき2隻の船と先陣を切る白と濃紺を基調とした青い翼をもつMS、先ほどまで戦っていたアスラン、そしてオーブの象徴と言われた黄金のMSが迫っている。

しかし警報音は近くの存在に対して放たれている。この場にある近くにあるもので警報音が鳴るような存在と言えばレクイエムしかない。

だが、シンはその可能性を切り捨て、思わずルナマリアを見据える。闇よりも深く昏い目を宿し、彼女は声を張り上げる。

 

 「だって!! みんな死んじゃったじゃない!! 父さんもハイネ隊長も!! 艦長も副長もヨウランもヴィーノもレイに議長だってみんな!! みんな!! あいつらに殺されて!! 多分メイリンも……」

 「ルナ……」

 「シン……宗教が廃れたっていう話だけど、アスランがメイリンを攫って脱走してから1つだけ考えていた事ってあるの……」

 

 そして背後のレクイエムが突然虹の様な輝きを放つ。シンが最後に見たのは中枢部で発光し今にもひび割れそうな虹色の結晶体。そして耳に残ったのは一人の少女の怨嗟と疑問の声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「この世界に――神様っているのかな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉を最後にシンの眼前が光に包まれ、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月から遠く離れた宙域に、一隻の船が戦闘で行われた残骸を拾い集めていた。その船体の側面部に目立つように青と黄色のVの字が描かれた船のブリッジに一人の老人が目を凝らして星を散りばめた暗黒の海域を見据えていた。

 

 「まったく防衛機構め。ここ最近妙な連中が出張っているとは言え、わし等のような零細企業まで使い走りのようにしおって」

 

 老人は長い白髪を掻きむしり、愚痴を漏らす。この船は元々自分たちの船であり、防衛機構のメンバーは殆ど乗っていない。だからこそ彼は愚痴ることが出来たが、作業を的確に行う事から断るつもりがないのは明らかだった。

 

 「仕方ありませんよ社長。我々ミリティアコーポレーションは戦闘要員が貴方と今地上で傭兵をやっている彼しかいませんから」

 「しかも社長が本気で戦う際には、専用のフレームアーキテクトを用意しなければなりませんし。むしろ社長が出張った方が赤字になります。毎回オーバーホールしなきゃならないんすよ」

 「アーハイハイ……」

 

 そう言って老人はセンサーと眼前の海をにらみ合う。文句を言っていた老人だったが、突然視界に見覚えのある外骨格の中に見覚えのない残骸が浮かんでいたのが見えた。

 

 「……ん?」

 

 それは一言で言うと四肢を欠損し、頭部が半壊した暗灰色の機体だった。悪魔のような翼は元々二枚で一組だったのだろうが、一枚は所々が欠けており、もう一枚は根元から消えていた。見た事のないフレームアームズに彼らは瞬く間に目を奪われていた。

 

 「……差し詰め『屑鉄の悪魔(スクラップド・ディアボルス)』と言ったところかの?」

 「……社長。あの機体は現存するフレームアームズの基本形といずれも一致しません。防衛機構の物は勿論、月面軍の物でもありません」

 「ああ、見ればわかるわ……ここ最近、戦闘やテストが行われたという情報は?」

 「防衛機構にそれとなく聞いたところ、特に」

 「あーそうかい。じゃあわしがあれを回収しに行く。もしアリ共が出張ってきてもわしなら問題ないわ」

 

 老人はため息をつき、ヘルメットを被ってこの場を離れる。勿論警戒を解かないよう厳命したうえでだ。

 そしてカタパルトへ移動すると老人は鎮座していた青と白を基調とした航空機を思わせる機体へと乗る。その腰部には結晶をそのまま削り出したかのような白い刀身を有した剣がむき出しのまま鎮座している。

 

 「おーい主ら。出るから発進用意よろしくの」

 『り、了解です……発進用意が出来ました。いつでもいけます』

 「了解っと。んじゃヴィスクエア、スティレット出るぞ!!」

 

 そう言って機体……スティレットを発進させ、問題の宙域へと向かう。その道中でやはりというべきかむき出しになった焼き鉄色のフレームと紫で彩られた頭部やひざ、そして単眼が特徴の機体と重厚な機体が突如として姿を現す。

 

 「案の定アリ共が出張ってきたかッ!! しかしのう!!」

 

 彼は肩部の刃を手に持ち、瞬く間に敵機に近づいて切り裂いた。しかし、その眼はその奥にいたもう一機の重厚な機体へと目線を向けられている。

 

 「アントの次はヴァイスハイトか……ならば!!」

 

 即座に腰部に据えた剣を引き抜き、それに雷を迸らせる。周囲に目を配り、その場にお目当てのお宝が無い事を確認した。そして相手が背部のキャノン砲を下したのを見て即座に剣を振りぬく。

 

 「消え失せろッ!!」

 

 相手がキャノン砲を発射させる前に両断した。相手は分離・合体機能を備えていると情報があったため、オーバーキルも同然の右腕のガトリングをヴァイスハイトに向けて掃射して爆散させる。

 

 「……あれを出汁に囮作戦……というわけでもあるまいな。さて、回収するか」

 

 そして屑鉄の悪魔を回収し、牽引した状態で船へと戻る。自爆装置がつけられている可能性も鑑み、機体は無人操作の小型艇に乗せようとしたところで妙な事態が起きた。

 

 「……ん? 生体反応あり?」

 

 この機体に備えていた生体反応を感知するプログラムが戦闘が終了したためか、突如起動した。

場所は近く。数は2。近くにあるのは自分の他には屑鉄の悪魔だけ……

 

 「……有人機というオチか。おい防衛機構、仕事ぐらいしろ」

 

 頭を抱えるヴィスクエア。新型機のテストないし戦闘があったのならば、自分たちの耳に入れてほしかった。

 

 「まあ、有人機を爆弾にするような真似はせんじゃろ」

 

 愚痴るのはそこまでだと言わんばかりに、即座に自分の部下に対して自身らを収容した所で即撤退を命じる。

先の戦闘で感づかれたら目も当てられない。ここから月は近くないとはいえ遠くもない。先の部隊は偵察要員の可能性もあるだろう。

当然戦闘を見ていたのもあるだろうが、彼らは警戒しながら宝探しを切り上げて即座にこの場を離れていった。

その最中に屑鉄の悪魔のコクピット部分を探す中、偶然開きかけたハッチであろう箇所を無理やりこじ開けて中から見覚えのないパイロットスーツを着込んだ二人組が姿を現す。体格からして少年と少女が一人ずつ。酸素欠乏症の可能性も鑑み、即座に医務室へと運ばせた。

そして中継点と呼ばれている補給基地へたどり着くと、少年が目を覚ましたと聞き即座に話を聞くため医務室へと向かったヴィスクエアだったが、その時はまだとんでもない話になるとは思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……う……」

 

 シンが目を覚ますと、そこは見知らぬ天井かつ見慣れない景色だった。周囲を見渡すと医務室であろうことは予想着くし、体も重さを殆ど感じないことから宇宙にいるだろうことは検討づく。

 しかし、パイロットスーツを着ていたはずなのに着ているのは質素な患者服。更に周囲を見渡すと誰かの私物であろう二人組のアイドルのポスターらしきものが……

 

 「……ん?」

 

 アイドルのポスターを見てシンは首を傾げた。自分たちにとって『アイドル』と言えば、絶対に認めたくはないがラクス・クラインとそれに扮したミーア・キャンベル以外認められないという暗黙のルールがあった。

これが地球連合軍の船だとしても、あの戦場に連合軍の船は存在せず、ましてや彼女らのようなアイドルは見たことも聞いたこともない。

オーブに関してはアイドルのポスターよりも理念を護る事云々の標語が描かれた張り紙があるとロゴス討伐に参加した連合兵が冗談交じりに言っていた記憶がある。

連合の船でもオーブの船でも、ましてやザフトの船でもない。ならばこの船は……

 

 「そうだ、ルナは!? ルナはどこだ!?」

 

 ルナマリアの事を思い出してパニックに陥るシンを尻目に扉が突然開かれる。シンの眼に映ったのは銀の長髪に歳を重ねてきたのか皺が多い、されど若いころは美丈夫とも言い切れるほどの風貌と、それ以上の印象となる威圧を持った老人だった。

 

 「どうやら目が覚めたようじゃの。わしはヴィスクエア=プレセペ。地球にあるミリティアコーポレーションというしがない開発メーカーに属しておる老人じゃ。まあ今は中継点で補給物資と回収したジャンクを売っとる最中じゃが……主の名はなんじゃ?」

 

 話を聞くと自分とルナはヴィスクエアという老人に助けられた様だ。だがミリティアコーポレーションなど聞いたことがない。だがオーブや裏切者の船ではないことに感謝すると即座に礼を返すため敬礼を返して声を上げた。

 

 「自分はザフトのミネルバ所属、プラント国防委員会直属の特務部隊FAITHのシン・アスカです。この度は窮地のところを救っていただき誠に感謝します」

 

 自分の所属を話した瞬間、ヴィスクエアの眉が片方吊り上がった。やはり地球の人間にとってザフト、強いてはプラントはエイプリルフールクライシスの影響もあってかやはり恨まれているのだろうか?

 

 「……プラント……プラント、ねえ……それは月面を支配しておるアリ共と何か関係があるのか? それにザフトというORGなんざ聞いたこともない」

 

 今度はシンが驚愕する番だった。月面は自分たちが最後にいた場所であり、彼らの言うアリが何かの隠語を差すのだろうが、そんな存在など聞いたことも見たこともない。ましてやプラントが月面を支配しているというのであれば、レクイエムの発射さえ起らなかったのだ。大体ザフトの名を知らないなんてまずありえないことだった。

 

 「あの……ここで大規模な戦闘があったはずですが、他の船は? それに戦争はどうなったかわかりますか?」

 

 すると今度こそヴィスクエアと名乗った老人が驚愕する番だった。

 

 「大規模な戦闘じゃと? あ奴らの話が本当ならば宇宙での大規模な戦闘は殆ど行われておらん。精々が月面を偵察した部隊とアリ共の戦闘ぐらいなもんじゃ。それに戦争に関してはまだまだ継続中……」

 

 シンは老人の話を途中から聞いていなかった。月面軍も『アリ』も聞いたことのない話だし、戦争は認めたくないがあの状況だとテロリストとテロ支援国家のオーブが勝ったはずだ。それを認めない面々が戦争を吹っ掛けたのならばともかく、今度はアリなどの矛盾が生じる。

 

 「……おい坊主。少しばかり話を聞かせてもらうぞ」

 

 その言葉には虚偽や黙秘は認めないという強い意志が感じられたが、自分も彼から情報を少しでも聞きたい。話し合いには応じることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「コズミックイラにザフト……デスティニープランにモビルスーツ、のぅ……」

 

 ヴィスクエアは自分の話を聞き、頭を掻きむしる。一方でシンも彼から聞かされた話と単語をポツリぽつりとつぶやく。

 

 「クラウドセンチュリーにプロジェクトReスフィア、月面プラントにフレームアームズ……!?」

 

 互いが互い信じられない情報をオウム返しのように呟き、しかも嘘は言っていないという事実が明らかにされるのみ。

話の途中で看護スタッフから一緒に連れ込んだ少女……ルナマリアが目を覚ました――彼女の名前を聞いた瞬間、ヴィスクエアは盛大に噴出した――と聞き、部屋を移動してヴィスクエアが彼女にも話を聞くと同じ言葉が返ってきたため盛大にため息を吐く。

 

 「……で、主らはCE73年、ザフトとかいう組織に属してモビルスーツという兵器のパイロットをしておった、と」

 「はい。俺たちを裏切ったアスラン・ザラとの戦いの途中、俺たちの船が落とされたという情報を聞いて即座に駆け付けたんです。同僚との約束で、一方が負けた場合はミネルバの護衛についてほしい、と」

 

 結果はご覧の有様だった、と言ったところでルナマリアがシンの服の裾を掴み今にも泣きそうな、それでいて困惑しきった声を上げる。

 

 「し、シン……どういうこと?」

 

 流石の彼女も狼狽し、ヴィスクエアもシンも互いが互いに“ある事実”に行きつくが、それを口にするには盛大に憚られた。

 

 「しっかしのう。西暦の次はクラウドセンチュリーじゃし、間に何か挟まっていてもコズミックイラという年号なんぞ知らん。機動兵器もモビルスーツじゃのうてフレームアームズ、ないしは内部骨格のフレームアーキテクトじゃ。プラントも月面を差す代名詞……こうも食い違うと困惑よりも逆に呆れ返って来るわ」

 

 因みにこの部屋にはシンとルナマリア、ヴィスクエア以外の面々はいない。その理由はヴィスクエアにとってシン達から得られた情報が余りにも荒唐無稽だったのが四割、残りの六割の原因は偶発的とはいえルナマリアにあった。

 

 「とは言うが、その嬢ちゃんの名前を聞いた瞬間、主の話よりも質の悪い冗談を聞かされた気分になったわ。“月の聖母(ルナマリア)”なんぞ速攻でイジメにあっても文句言えんわ」

 「ルナは関係ないだろっ!! 流石にそこまで難癖付けられると怒るぞ!!」

 

 事実を認めたくはないとは言え、あからさまな話題逸らしにシンも怒りを露にする。ヴィスクエアもそれは分かっていても沈黙するしかない。それを破ったのはこの場に現れた新たな登場人物だった。

 

 「兄上。恐らく彼らは異世界から来たのでしょう」

 

 シンとルナマリアは新たな人物に向けて目を向ける。そこには金が混ざった髪以外はヴィスクエアとうり二つと言わんばかりの老人がいたのだった。

 

 「……ヴィクトリオ。荒唐無稽な結論をあえて言わんかったのに、何故言うのじゃ」

 「先ほど来ましたが、貴方が見つけたという屑鉄の悪魔、あれ程の技術ならばアーキテクトを使った方が都合がいいでしょう。なのにそれを使わないし、少年のパイロットスーツに触れてみましたが肌触りも従来の物とは違いました。ここまで来ると異世界から来た、という方が月面軍からのスパイだと考えるより納得いきます」

 「……で、逆に帰る方法は分かるのか?」

 「残酷なことを言うようですが、彼の話が事実ならば帰らない方がいいのではないですか?」

 

 ヴィクトリオと呼ばれた老人があっさりと切り捨てる。その言葉にルナマリアは目を見開き、シンは一瞬の怒りを感じた後で即座に納得していた。

元の世界に帰ったところで自分たちは脱走兵、しかもシンはルナマリアを助けるためとはいえ、裏切った同胞を殺している。ラクス・クラインが正義、オーブの理念を守ることこそが善だと断じる奴らに捕まったら今度こそ銃殺刑の危険性が高い。話で聞いたところ、オーブを支配していたセイラン家はアスハが戻った瞬間、瞬く間に国家反逆罪が適応され、権限を奪い返されたと聞く。

大方理念を捨てようとしたのが原因だろう。今にして思えば大西洋連合、もといロゴスと手を結んだのはセイランだと考えれば納得がいく。

 

 「で、モビルスーツとやらの機動兵器パイロット、という事はこ奴らもアリ駆除に出す気か?」

 

 「正直な話、彼らが市民権を得るためにはReスフィアの産物である海上都市へ赴いて防衛機構に参加させるしかないでしょう。あの海上都市に属している防衛機構に入って何年間か務めれば市民権を得られます」

 

 どうやら自分たちは元の世界に戻れない可能性が高く、戻れたとしてもあの戦争の敗者になった自分達がまっとうな裁判を受けれるかどうか怪しい。

 

 「どうするの? シン……」

 

 ルナマリアが親からはぐれた子供のように袖口に掴みながら問いただす。とは言え今の現状だと軍に入る、というのも少しばかり気が引ける。

 

 「軍に入る以外の方法は?」

 「わしが身元引受人になって都市開発部のメンバーに入るしかあるまい。まあどちらにせよミリティアコーポレーションに属することになるから海上都市にご招待じゃがの」

 

 ヴィスクエアがそういうとヴィクトリオは地上へ戻る手続きを行うため、部屋を後にする。シンはため息を吐いてルナマリアの方を見る。

今のルナマリアにはかつての快活さは微塵も見られず、自分が目を離したらどうなるか分かったものではない。眼も光が宿っていないようにも見えるし、このままではどうなるか不安だ。

 

 「……わかりました。都市開発部のメンバーに入ります」

 

 シンが一人ならば防衛機構とやらに入っても問題ないが、ルナマリアの現状だと戦闘にはかかわらない方がいいだろう。それにこの世界の情報が少なすぎる。

 

 「まあ安心せい。最初の一か月はこの世界について教えてやるし、アーキテクトの操縦も教えてやる。うちの会社は基本民間用アーキテクトや似たような重機を使っての作業じゃからの。ああ、その嬢ちゃんは偽名を使うことになるから、いい名前を考えておくんじゃぞ」

 

 その言葉を聞き、シンは頷きを返す。そして準備が整い、彼らは大気圏を突入して地球へと向かうことになった。

 

こうしてシン・アスカとルナマリア・ホークはコズミックイラとは異なる地球へと降り立つ事になった。




実は今回のお話に出てきたアイドルのポスター。シンフォギアも混ぜることになったらツヴァイウィングにする予定なんじゃよ。
ルナマリアも漂流することになったが、こうでもしないとシンの精神がヤバくなってグレ響ならぬグレシンになっちゃうんよ。
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