FRAME ARMS DESTINY T&S   作:デボエンペラー

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シンくんがいない&本筋の少し裏側なので小数点題ー

パイロット登場作品FA関連以外で三つ目ー
いくら月関連でもこれはねーだろって意見なら修正します。
普通に出すとフレームアームズがいらない子になるので、IFルート前提なのは簡便な。

PS装甲に関する話題もちらほらと。まあ一番頑強なのはセーフティシャッターだけど。

あとこの作品における日本も日本でヤバい立ち位置になっているというお話。
ちょっと最初の方にオリジナルワードがあるけど、そういう話があったんだ程度に流し聞きすればOKなので箸休め且つ酒のつまみにでも。祭礼の蛇とか棺の織り手とかそう言うレベル。


PHASE-02.5 天敵

 この世界における日本の立ち位置は異なっている。

最初期のフレームアームズの一体である『轟雷』……海外名称『ウェアウルフ』を当時存在していた自衛隊が開発したものの、月面軍との戦闘には消極的だった。

理由は平和憲法を護れ、九条に則れ、月面軍と話し合えと、現実を見ない野党と彼らに味方するマスメディアの暴走だった。

防衛機構の行動を妨害して月面軍との戦闘すら反対し、挙句の果てには戦争狂とまでバッシングを続ける連中を処罰しようとしない政府に防衛機構はウェアウルフ――あえて轟雷ではなくウェアウルフと呼称――の特許を要求するのは時間の問題だった。

勿論自衛隊側も政府に向かって月面軍と戦う事を提案し続けたが、野党は耳に貸そうともせず『殺人集団』のレッテルを張り続ける。軍の基地には毎日のようにデモが募るという始末だった。そのくせ隣の日本を妨害するのにご執心な3ヵ国に危機が迫れば即座に救援に迎え、何のための軍だと吠えるし、月面軍が日本に侵略した際もどさくさに紛れて九州を占拠したのだ。

当時の自衛隊の幹部かつ轟雷の設計者だった源内蒼慈は轟雷を基に『漸雷』や『榴雷』などを作り上げたし、九州奪還も視野に入れていたが、野党はそれすらもバッシングし、侵略者のはずの某3ヵ国には無償で提供しろと言う始末だった。

その結果、源内蒼慈自身が自衛隊のシンパを募り、自らの軍服を赤く染め上げて『紅赤朱』と言う軍事団体を設立、研究施設として存在していた海上研究所を占拠して日本の代わりに月面軍と戦う事を決意していた。

後に『紅赤朱の乱』と呼ばれる戦後日本最大の内乱が行われたのだ。しかも『紅赤朱』陣営は日本が目を覚ましてこちらを打ち倒せるだけの戦力となればよし、そうでなければ自分たちが代わりに日本を護る義務が発生するだけだと考えていた。

シンやルナマリアが聞けば怒りに震えるレベルの代物だが、肝心の紅赤朱は防衛機構に轟雷の改造機における戦闘データを手土産に日本の内乱を静観して欲しいと依頼していたのだ。

野党もマスメディアも紅赤朱の思惑を察しバッシングを行うが殆ど無意味なものになっていたし、3ヶ国の『大中華防衛機構』の軍事力を利用して紅赤朱を処分しようと躍起になったほどだ。

尤も、最終的には紅赤朱は自身の思惑通り目を覚ました政府によって有志を募り、本拠地となった海上都市へ向けて進撃、当主となっていた源内蒼慈と彼が操る轟雷のカスタマイズ機を撃破して内乱を終わらせた。

だが今日に至るまでの傷跡は深く、特に九州を足掛かりに大中華防衛機構等は西日本を瞬く間に月面軍のどさくさに紛れて占拠し野党もこぞってそちらへ亡命、東日本も九条破棄を宣言し新国家を樹立したのである。

結果、日本と言う国は月面軍抗戦派の東日本と、平和憲法護憲派の西日本に分断されたのである。

新日本史を聞いたシンはその事実に対して怒りを露にし、知っていて戦争を起こした紅赤朱も九条に固執した当時の政権も怒りの対象に含めていた。

そしてそして今も日本と言う国は防衛機構の中でも異質な国として見られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海上都市『ナンソウ』――

プロジェクトReスフィアの恩恵の1つにして、かつての日本が誇る海上都市。そして東日本で最も栄えている街にして、日本に残った唯一の海上都市。

更に言うならば日本と言う国家の最前線にして、月面軍との戦闘における地獄への門。それこそがナンソウに対する世界の認識であった。

 

 「気が滅入るのう……」

 

 ミリティアコーポレーションの社長であるヴィスクエアは、以前提出した屑鉄の悪魔……シンが言うところの『デスティニー』について詳しい説明を行うため会議室へとへ赴いていた。

元々の持ち主であったシン・アスカは生活費と引き換えに金銭で売買契約が成り立っている。最初こそ文句を言っていたが、異世界の機密をこちらで後生大事に抱え込んでも意味がないと説得し続けてようやく金銭と引き換えに契約したのだ。

更に翼も推進器であることが分かり、現在机上の空論だったギガンティックアームズNo3の開発に目途が立った。

 

 「……あの装甲に関しては量産できんのが痛いのう……」

 

 今回は装甲についての話を中心に行う事を考える。あれから本土にあるミリティアコーポレーション本社の地下ブロックで調べたところ、あの装甲――シンたちの話だとヴァリアブルフェイスシフト装甲、通称VPS装甲と言うらしい――には一定の電圧を通すと物理的な衝撃を無効化することが分かった。尤も消費電力が激しくなる以上、必要な電力もUEエンジンでないと安定して供給できないという弱点があった。

 

尤も、製造コストも割高になるだろうし欠片を調べたところ同じサイズの物に比べても重かった。使用する兵器も必然的にフレームアームズのみになる以上、実用性は微妙な範囲だ。しかも一度作ろうとして失敗した経験もあり、原因はシンたちの話によると無重力空間ないし低重力空間でしか製造できないらしい。

現在日本が持っている低重力空間を再現できる研究所はキョウト研究所にしかなく、そこはよりにもよって西日本の連中に占拠されている。あれはどちらかと言うと民間用の物なのが痛かった。

因みに中継点はあくまでも『中継点』であり、そう言った研究及び開発施設を配置するのは御法度である。結論から言うと防衛機構の技術力ではあの装甲は再現不可能と言われた。

 

 「……」

 

 そして扉を開け、会議室にいる防衛機構や企業の面々を認め、その中の1人を見た際はさらに頭が痛くなった。

尤も、その人物に対しては普段は悪い印象など微塵も無いし、いい緩衝材と思える。しかしシン・アスカらの事情を抱え込んでいる以上、万魔殿に放り込まれた印象しかなかった。

何しろその人物には隠し事など通用しないのだから。更に言えばその人物には組織間の演習で点での戦いには勝てても、面での戦いに勝てた事が無い。

 

 「おお、ヴィスクエア代表。お久しぶりです」

 「そうじゃなぁ……」

 

 (特異災害対策機動部二課司令・風鳴弦十郎……人望・洞察力・指揮・用兵・指示に関しては超一流で、かの紅赤朱の内乱においても迅速な対応で源内蒼慈の暗躍を見抜いた日本影の軍神……)

 

 大柄で赤いワイシャツを着た男・弦十郎に曖昧な返事を返す。一見すると獅子を思わせるような雰囲気を持つ男は、それ以上の人情味あふれる雰囲気を身にまとっていた。

 

 「何でも宇宙でいいものを拾ったと聞きましたが」

 「本土にいるかと思えば海上都市にまでご苦労なこった……量産できるかどうかは話を聞いてからにせい。わしもこの件に関しては慎重なんじゃ」

 

 そう言ってヴィスクエアは円卓の1つに座って書類とにらみ合う。そんな中でも円卓に座る面々を見据え、書類の写真と関係者の一覧を見据えながら要注意人物を見据える。最初に見たのは禿頭且つ初老の人物と、手元の関係者の中でひと際目立つ金髪の美丈夫の写真。

 

 (北米防衛機構から派遣された第3機動艦隊司令ブラス・ネオスライドはハワイに置かれた月面軍基地破壊作戦で戦果を挙げ、その息子であるケイン・ネオスライドはあの新型機である蒼と白のバーゼラルドを託されるほどの腕前で、機体色から『無窮の青空』と味方からも恐れられるFAパイロット……)

 

 禿頭の人物はこちらに向かって一礼し、自身もそれに返す。一向に参戦しない日本を攻めろと言われたが、ナンソウに駐留許可を求めるだけに留め、日本とアメリカの戦争を回避した男としても有名だった。

 

 (防衛機構も噂じゃ一丸と言うわけではない。海上都市議会も大丈夫かと思うところもあるし、企業連も油断ならんし、傭兵共も危険思想持ちもおる。それに月面軍も本気でエラーが原因なのかどうかも不明……ヴィクトリオの流派も2年前から脱走者が出たという話じゃ……どうも歳を取ると疑い深くなるわ……)

 

 頭が痛くなる。そんな中、会議が始まり海上都市の警備や月面軍の進軍状況、ここ最近中東で話題になっている独立自営組織と防衛機構の小競り合いに武力介入する集団や謎の巨大兵器、もちろん西日本が占拠しているキョウト研究所の奪還作戦なども議題に上がっていく。

 そしてついに自分の番となった。気が滅入るが、まずは回収した屑鉄の悪魔の画像を映し出す。

 

 「……これが先日私が宇宙で回収した屑鉄の悪魔と名付けた機体です。見ての通り駆動骨格にフレームアーキテクト及びグライフェンなどのエクステンションフレームは使われておらず独自の骨格を使用していることからフレームアームズではないのは明らかです。また画像の通りメタリックグレーを基調としたカラーリングですが、研究の結果一定の電圧をかけることによって色相が変化し、物理攻撃に耐えうるという効果が得られました。斬られたような痕は、装甲から見える溶けたような箇所から見てイオンレーザーカッターないしベリルウェポンで斬られた物と推察します」

 

 もちろんこれは研究が3割、残った7割はシンから聞いた内容である。自分の発言と同時に次々と質問が飛び交い、よりにもよって一番相手にしたくない男から聞きたくない質問の中でも上位に出てくるものがきた。

 

 「この装甲についてフレームアームズ以外の兵器運用は可能か?」

 「……答えは不可能、一定以上の電力が必要となる以上最低でもフレームアーキテクト一体分は必須だと思われる。またついでに言うが量産もほとんど不可能。試しに試作品を作ってみて屑鉄の悪魔に近い品質なのが、弊社で持ちうる重力操作質のうち、無重力に近いもの。理論上ミサイル76発分の衝撃には耐えられるとの事じゃが、それすらも不可能じゃった」

 

 ミサイル云々もシンから聞かされた話だった。製造方法に関する話を聞かされて意気消沈としている連中め、やはりバーゼラルドに使う予定だったか。これ以上開発部を過労死の代名詞にさせてたまるか。

 

 「また、重力云々に関しては恐らく北米かフランス、ロシア及びキョウト研究所にある無重力研究施設の物を利用するしかないでしょう。尤も、この国がやらかしてくれた護憲騒動に手を差し伸べてくれる国があれば、の話ですが」

 

 日本に対する信用は九条を理由に参加をごねまくった結果、大多数の信用を無くしている。装甲を出汁にしようものならまず屑鉄の悪魔争奪戦が始まるだろう。勿論無重力そのものの宇宙は論外。

 

 「……そうですか」

 

 そう言って弦十郎は席に座る。その眼は明らかに自分の眼を見たうえでの回答だった。よく見るとブラスの眼もこちらを見据えていて頭が痛くなる。

 後はキョウト研究所奪還作戦について詳しく日程と参加者の資格を調べるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議が終わり、即座に帰ろうとしたがよりにもよって風鳴弦十郎に呼び止められた。

 

 「少しばかりお話ししたいことがあります。ナンソウの蕎麦屋で昼食でもどうでしょうか、俺がおごりますよ」

 

 口調こそ軽いがその眼は真剣そのもの。明らかに自分をターゲットにした会話だった。他の面々は弦十郎が真っ先に寄ったのを見たのか今回は逃げたか、あるいは最初から気づいてないかの二択(ブラスは明らかに前者)だった。そのまま連行され、そしてそのまま弦十郎は携帯を取り出す。

 

 「これで万が一の盗み聞きもよし……」

 

 しかもよりにもよって画面はその辺のソーシャルゲームが造ったようなどこにでもある『異世界転生系』だった。

 

 「先に言うが敬語を使わなくともよいぞ。最早私人としてここにおるわけじゃしな」

 「……ヴィスクエア殿。結論から聞こう。これはこの世界で作られたのものだろうか?」

 

 いいや、違う。ヴィスクエアには弦十郎が続けてそう言ったように聞こえた。ここまで予想通りだとかつ丼を要求したくなる。

 

 「……ほう? 随分と突拍子もない話じゃな」

 

 せめてもの嫌がらせと言わんばかりに反論する。勿論彼も予想していたのか余裕をもって返した。

 

 「まず、あなたが言ったようにこれの駆動骨格がフレームアーキテクト及びエクステンションフレームではない、それが理由だ」

 「……また新たにフレームを造ったのではないか?」

 

 その反論に対して弦十郎は即座に手で否定する。

 

 「勿論それだけならば俺も気にしない。実際にあなたがフレームアーキテクトから四肢のUEユニットを外して作業用重機に作り替えたフレームローダーや、フレームアームズの武器を製造しているM.S.G社の武器の型落ち品の寄せ集め品であるMSGロボの可能性が高いだろう。ですがそれらはUEエンジンを二基以上積ませれば容量過多となり、逆にフレームが耐え切れず自壊する恐れがある。胴体や四肢、そして以前提出してもらったウイング状の推進器などから容量は十分だと判断した」

 

 フレームローダーを開発したのは一年前だが、事実これ以上UEエンジンを消費したくないのも事実だった。

 

 「また、この装甲に関しても不可解だった。機体を覆うほどの量があるならば、当の昔に知られているはずだ」

 「……最新素材」

 「北米かフランス、ロシア及びキョウト研究所にある無重力施設でしか作れないだろうと言ったのは貴方のはずだ。勿論コクピット回りだけなら気づかないという話も分かるし、他の勢力も可能かと言う話にもなるがそれは貴方が否定している」

 

 全身を覆っている以上、隠蔽は不可能に近い。弦十郎はそう言って新たに推理を広げる。

 

 「駆動骨格の件に戻ると、開発条件をすべてクリアした時点でフレームアーキテクトにすればいいだけの話。態々オリジナルのフレームを使うメリットがない」

 「噂ではキョウト研究所もオリジナルフレームを造っているという話じゃが?」

 「それでも胴体や腰部がフレームアーキテクトだと情報がある。エクステンションフレームは値が張るため、一部をアーキテクトで代用してはいるがそれでも高い」

 

 そして注文した蕎麦が届き、弦十郎はそれを啜る。ヴィスクエアも黙って啜るが汁の味しかしなかった。

 

 「じゃあこれはフレームアーキテクトを使わない実験機? これも違う。欠損した四肢や片方の推進器は除外するとしても、コクピット以外にも戦闘による痕らしきものがあった、明らかにこれは戦闘を前提とした機体だ。今の防衛機構に戦闘用に耐えうる新型駆動骨格を作る余裕などない。それ以外はどうかと言うと……」

 「……月面軍はアントの特製を殺す。フレズヴェルクシリーズの肩部ユニットは例外中の例外。月面軍の作品でもないというわけか。勿論他の勢力が造っている余裕などない」

 

 ヴィスクエアが蕎麦を啜りながら吠える。それを聞いた弦十郎は頷きを返し、改めて結論を言った。

 

 「ええ。装甲は恐らく全身を覆う以上気づかれずに量産を行うのは不可能。駆動骨格も新型にするメリットも生産する理由も全勢力にはない。以上の点からこの機体は異世界の物ではないか?と言う結論に至った」

 

 その言葉を聞き、ようやくヴィスクエアは悪態を吐いた。見破られることは確定事項とは言えこうもあっさり見破られると、以前の演習を思い出す。

 

 「カーッ!! つくづく相手にしたくないわ!! 女将、わしにかつ丼!!」

 

 そう言って蕎麦を一気に啜るが、弦十郎の顔はいまだに強張ったままだった。そして彼は手で制して声を上げる。

 

 「だがまだ一つ謎が残る。これを何故貴方が提供したか、それだけだ」

 「提出しない理由があるとでも?」

 「ではこの機体は誰が操っていたか? まあそれこそがこの機体を提出した理由だろうと俺は考えている」

 

 それを聞き、弦十郎も蕎麦を啜る。やはりこの男だけは敵に回したくなかった。

尤も、かつ丼が来る前に月面軍がミリティアコーポレーション近辺に暴れまわっているという情報を聞き、即座に移動する羽目になって二重の意味で蟻を呪った。




アント「俺達特異災害扱いかよ」

アントの明日はどこだッ!? 実はシンフォギアキャラにも父よ母よ妹よキャラがいたという罠。

あと何気にギガンティックアームズ最新作のフラグが立っているし、ヘキサギアの大型エネミーも話題に上がっている。勿論あの連中も……

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