イエローinアニポケミュウツーの逆襲   作:まるた

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嵐の海

 新緑の森を、一陣の風が吹き抜ける。そしてひときわ強く吹いた風にかぶっていた麦藁帽子を飛ばされないようにと、一人の少年……否、少女が頭を押さえた。そしてこぼれかけた長い金髪を再び麦藁帽子の中に納め、わずかに笑みを浮かべると快晴の空を見上げ、肩に乗っていた黄色い友達に笑いかけた。

 

 

「今日はいい天気だね! ピカ!」

 

 

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

 

 

 今から少し前、ボクの……イエロー・デ・トキワグローブの初めての冒険が終わった。

 

 今よりも幼かった僕が、憧れていた人がいた。その人はボクをポケモンから助けてくれて、そして初めてポケモンとの関わり方を教えてくれた人。

 その人の、レッドさんのアドバイスでゲットしたコラッタのラっちゃんは今でも大事な友達だ。今はコラッタから進化してラッタになっちゃったけど、友達だってことに変わりはない。「正しい、優しい気持ちで育てればポケモンはいつまでも友達でいてくれる」。そうボクに教えてくれたレッドさんの言葉は、ボクのポケモントレーナーとしての礎になっている。一番忘れちゃいけない、大切な事だ。

 

 僕の初めての冒険はその憧れの人が危機に陥っているかもしれないから、協力してくれとブルーさんに言われたのが始まり。そしてとても長いような、とても短い期間だったけど……色々……本当に色々なことがあった。つい先日四天王との戦いに終止符が打たれたことは、記憶に新しい。

 四天王の(おさ)であるワタルとの戦いに勝てたのは、レッドさん達が僕たちに向けてエネルギーを送ってくれたからだけど……正直今でもちょっと信じられない。絶対に負けない、彼にこれ以上の破壊をさせてはいけないって気持ちはあったけど、ワタルはボクなんかよりずっと強いトレーナーだった。……トレーナーとしての強さはもちろん、彼なりにポケモンを想うその気持ちも。

 ボクだって、いいやトレーナーなら誰だって。ポケモンを想う気持ちは強いけど……それでもワタルあそこまで突き動かした想いは、どれほどのものだったのだろうか。

 

 トキワの森に返ってきた今も、時々考える。

 やり方は間違っていたけど、ポケモンの事が大好きで助けたいと思っていたワタルとは……出会い方が違えば、分かり合えたんじゃないかって。

 

 

 

 

 

「ピカ?」

「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事してたんだ」

 

 ぼ~っと川の流れを見ていたボクの顔を覗き込んできたのは、ピカチュウのピカ。本当はボクの手持ちじゃないけど、四天王との戦いの間、ずっと一緒に戦ってくれた頼もしい相棒だ。

 

 ピカは四天王との戦いの後はレッドさんの手持ちに戻ったんだけど、今日はレッドさんが「たまには故郷の森でうんと遊ばせてやってくれよ!」と言って預けてくれた。多分ピカと離れる時、寂しそうだったボクに気を使ってくれたんだと思う。時々マサラタウンに遊びには行くけれど、きっとまだ気持ちの整理がついていないボクに改めてピカとの時間をくれたんだ。……ありがとう、レッドさん。

 

 

 だから今日は、ピカとめいっぱい遊ぶ日って決めてたんだ! ぼーっとしてちゃピカに悪いよね!

 

 

「よし、みんなも出てこい!」

 

 今ボク達が居る場所は、トキワの森の川辺。ボクがよく釣りやスケッチをしている場所だ。

 そこにラッタのラッちゃんをはじめとした、ボクの仲間たちをモンスターボールから出す。

 

 バタフリーのピーすけに、ドードリオのドドすけ、そしてゴローニャのゴロすけと、オムスターのオムすけ。進化して姿かたちはかわっちゃったけど、この子たちもラッちゃんと同じでボクの大切な友達だ。

 ふふっ、みんなも久しぶりにピカと会えて嬉しそうだなぁ。特にピーすけなんか、キャタピーだったころピカにお守りしてもらったことあったもんね。一番嬉しそう。

 

「じゃあ、早速行こうか!」

 

 おーっ! と拳を握って振り上げれば、みんなもノリよく答えてくれる。へへっ、男の子のふりして旅してたら「ボク」って一人称も男の子っぽい仕草も、すっかりなじんじゃってなかなか直らないんだよね。レッドさんにはボクが昔助けてもらった女の子だって言う機会をついつい逃しちゃって、今さら言うのもなんとなく恥ずかしくてそのままだから、しばらくはこれでいいかなって思うけど。

 

 

 そして、森の中へ行こうとした……その時だった。

 

 

「みゅ?」

「え? わわっ」

 

 つんっと顔に何か当たって横を見たら、凄く近くに空色の瞳があった。驚いてのけ反ったら、そのまま尻もちをついてしまう。

 

「みゅ~、みゅうっ! みゅみゅみゅっ」

 

 そんな僕を見て楽しそうに笑っているのは、初めて見るはずなのに、何処となく見覚えのある姿のポケモンだった。

 

 白に近い、薄いピンクの体に大きな耳と長い尻尾。ふよふよ浮いているその子は、ひとしきり笑うとボクたちのまわりをグルグルと回り始めた。ピカが警戒したようにパリパリとほっぺの電気袋を帯電させるけど、そのポケモンには敵意を感じなかったので慌ててなだめる。

 そして改めてポケモンを見ると、好奇心のままに問いかけた。

 

「君はどこからきたの?」

 

 グルグルまわるその子を見ていたらちょっと目が回ったけど、向こうもこちらに興味津々で何処にも行きそうになかったから聞いてみた。するとその子はピタッと動きを止めて、改めてボクに近づいてくる。そしてスンスンと鼻をならしてボクの体を嗅いできた。

 

「うわっ、あはは! くすぐったいよ」

「みゅっ」

 

 思わず笑えば、そのポケモンも笑った。なんだろう、遊んでほしいのかな? トキワの森では初めて見る子だけど、翼が無いのに空を飛べるって事はエスパータイプかな。

 それにしてもこの見た目と「みゅう」って鳴く声、やっぱり何かを思い出すような……。

 

 そしてボクは少し前の戦いで、カツラさんと一緒に勇敢に戦った一匹のポケモンを思い浮かべた。

 

 

 

「あ、そうか! きみ、ミュウツーに似てるんだ!」

 

 

 

 

 ぽんっと手を打って言った。…………その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 世界がぶれた。

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 次の瞬間感じたのは心臓が止まってしまいそうなほどの水の冷たさと、呼吸と体の自由を奪う濁流の枷。

 

 ボクは「水の中に落ちるの何回目だろう」と思いつつ、すぐそばに居たピカをとっさに抱き寄せる。視界もはっきりしない荒れ狂う水の中でそれが出来たのは、ひょっとしたら奇跡だったかもしれない。

 そしてピカはすぐに"なみのり"でボードを作り出し、僕を水の上へと押し上げてくれる。すると急に空気が肺に入ってきたのと水を飲んでしまったせいで、ひどくむせてしまった。だけど苦しくても、そのままではいられない。他のみんなは……!? オムすけは泳げるにしても、ピーすけ、ドドすけ、ゴロすけが心配だ。特にゴロすけなんか水は弱点だし、その体の重みで沈んでしまう! ピーすけだって、羽が濡れてしまって飛べないかもしれない。早くみんなをボールに戻さないと……!

 

 しかしボクがみんなの安否を確認する前に、荒れ狂う水は再び僕たちを飲み込もうをする。そしてひときわ高い波に押し上げられた時、一瞬見渡せた周囲の光景にボクは息をのんだ。

 

 

 

「海……?」

 

 

 

 

 ボクはこの日。晴れた空の下にあった森から、一瞬で嵐の海に放り出されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




このクロスオーバーをどうしても書きたかったけど詰まってしまったので(序盤中の序盤ェ……)とりあえすちょっとでもモチベーション上げるために書けたところまでひっそり投稿。イエロー好きすぎて逆に書けない。
ミュウツーの逆襲もう一回(一回目のレンタル期間で書けなかった)レンタルしてきたら続きを書くかもしれません。
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