イエローinアニポケミュウツーの逆襲 作:まるた
荒れ狂う嵐の海を、ボクとピカは必死にラッちゃんたちの名前を呼びながら進んだ。けれど視界の悪い中でみんなを探すのは困難で、みんなの安否を思うと焦燥ばかりが募る。オムすけが助けてくれているといいんだけど……。
けれどしばらく海を進むと……まるで今までの荒れ模様が嘘のように凪いだ場所に出た。空を見上げれば星さえも見える。そしてその空と意味の周囲には、まるで壁のように高く厚い黒々とした雲がそびえていた。
自然現象というにはあまりにも不自然なそれに、自然とつばを飲み込む。けど心配そうにボクを見上げてくるピカに気づいて、弱気になっちゃダメだと強く首を振って、得体の知れないものへ対する感情を振り払う。今は怖がっている場合じゃない!
「大丈夫だよ、ピカ! さ、みんなを探そう。ほら、あそこを見て。島だ! もしかしたら、みんなあそこに流れ着いているかもしれない。行ってみよう」
そう、僕が指さした方向には島があった。もしオムすけがみんなを助けてくれていたら、きっと安全な場所を目指すはず。ヒットポイントをボードに変えているピカの体力も心配だし、ひとまずあそこを目指そう。
(みんな、無事でいてくれ……!)
けど、最初の再会はすぐそばから現れた。
「ぷっはぁ! や、やっと出られた……。サンキュー、ゼニガメ!」
「見て、星が見えるわ! さっきまでの嵐が嘘みたい。……ヒトデマン、ありがとうね」
「いや、本当に二匹とも頑張った。ゴローニャまで引っ張ってくるの、大変だったろう。……って、沈む沈む!?」
「さ、さすがにきついわよね! でも、この子どうすればいい!? 誰かの手持ちなのか、こんなに弱ってるのにボールには入らないし……!」
「でも放っておけないだろ!?」
「わかってるわよ!」
「か、カスミ! とりあえず他の水ポケモンも出してくれないか!?」
「あ、そうか! えっと、ボールボール!」
ゴローニャ!?
すぐ近くであがった水しぶきに、人の声。そしてその会話の内容に、ボクとピカは顔を見合わせてから急いで方向転換した。そしてバシャバシャと水しぶきをあげてもがいている人影とポケモン影に近づくと、釣り竿を振り上げて糸に括りつけたゴロすけのボールを投げた。するとボールに重みが増したのがわかり、水しぶきもおさまってほっと息を吐く。
「すみません、この子ボクの手持ちです! 助けてくれて、ありがとうございました!」
「あーっと……。それはよかった。ところで、俺の頭の上にのってるバタフリーも、もしかして君のかな?」
「! もしかしてピーすけ!?」
薄暗くてよく見えないけど、人影……三人のうちの一人が頭の上を指したのに気づく。たしかにそこには大きな何かが乗っているようで、眼が慣れてくるとそれが羽を濡らしてぐったりしているピーすけだと気づいた。すぐに近寄って、差し出されたピーすけを受け取る。本当ならすぐに回復させてあげたいけど、その前にゴロすけとピーすけを助けてくれた人たちにお礼を言わないと。
「あの、本当にありがとうございまし………………え?」
そこに居たのは、男女が三人。そしてピカチュウにヒトデマン、ゼニガメ。
だけどその内二人の顔に、僕は見覚えがあった。
「タケシさんに、カスミさん……?」
短髪で目の細い、ニビジムのジムリーダーであるタケシさん。ボクにゴロすけをくれた人。
オレンジ色の髪をひとつに結んだ、ハナダジムのジムリーダーであるカスミさん。ボクにオムすけをくれた人。
だけど四天王との戦いでも各町を守って活躍した正義のジムリーダーであるお二人は、ボクを見て不思議そうに首を傾けた。
「あれ、どこかで会った事あったかしら?」
「すまん、ちょっと覚えてなくて……。名前を聞いてもいいかな?」
「???」
ボクはさらに増えた疑問に、ちょっと目が回りそうになった。
「ピッカ! ピーぴかちゅ~」
「ピッカ! ぴかぴーか!」
「ははっ、なんか仲良くなったみたいだな!」
島に向かう途中、ピカともう一匹の……タケシさんとカスミさんと一緒に居たサトシくんの手持ちであるピカチュウは仲良くなったみたいで、ピカチュウはこちらのボードに移ってピカと何か会話をしている。
ボクの事を覚えていなかったタケシさんとカスミさん。でもとても似ているし名前も同じだけど、よくよく見るとなんとな~く僕の知っている二人とは違う気もする。まるで初対面のような反応をされてしまったし、事実初対面かもしれないのでボクはとりあえず自己紹介だけして深く突っ込むことはやめておいた。みんな疲れているし、まずは島に上陸しよう。そしたらポケモン達を、みんな回復させないと。
……ラッちゃんとドドすけ、オムすけも無事だといいんだけど……。
「え、招待状がいるんですか!?」
なんとか島に上がったボク達だったのだけど、その先で待っていた島の案内人だという女の人に「招待状の届いていない方はお帰りください」と言われてしまったのだ。
「ま、待ってください! ボクの手持ちが、もしかしたらこの島に流れ着いているかもしれないんです! なにか知りませんか!?」
「…………そういえば、ドードリオとオムスターが打ち上げられていましたね」
「! きっとその子達です! あの、会わせてはもらえないでしょうか」
「招待客でない方を、中へお入れすることは出来ません」
とても綺麗な人だけど、綺麗なだけに無表情で言われるとひるみそうになる。でも引き下がるわけにはいかない。
「そこをなんとか……」
「なあ、なあ」
食い下がる僕の肩を、ぽんぽんっと誰かが叩く。振り返れば、それはサトシくんだった。サトシくんはまかせろと言うように胸を叩くと、僕より一歩前に出て女の人に向き合う。
「イエローも、俺達の仲間なんだ! だったら一緒に入ってもいいだろ?」
「…………そういうことでしたら」
「だってさ!」
ニッと屈託なく笑ってボクを見るサトシくんに、一瞬だけレッドさんが重なって見えたような気がした。
「あ、ありがとう」
「いいって! それより、はやく会えるといいな。はぐれて心配だったろ?」
「うん。でも、あとラッタのラッちゃんを探さないと……」
「それなら、事情をこの島の主に話してみたらどうだ? なんでも最強のポケモントレーナーらしいから、すごいポケモンを出して探すの手伝ってくれるかもしれないぜ!」
「! そうかな。だとしたら、すごく助かる」
「俺も一緒に頼んでやるよ」
「本当? ありがとう、サトシくん!」
心強い言葉で励ましてくれるサトシくんに、ボクは不安な気持ちが薄らいでいくのを感じていた。……こんなところもレッドさんに似てるなぁと思ってしまうのは、ピカチュウをつれているからかな。それか、レッドさんと同じマサラタウンの出身だって聞いたかもしれない。
……でも不思議なんだよね。マサラタウン出身なのに、リーグ優勝者のレッドさんや、グリーンさんを知らないなんて。オーキド博士は知っていたのに。
まだあまり話せていないけど、みんなを見つけたらもっと話してみたいな。
++++++
「なんだかすっかりお兄さん風ふかせちゃってるわね、サトシの奴」
「自分と同じようにピカチュウをボールに入れないで連れてるから、親近感がわいたのかもな」
「あとイエロー、十歳だって言ってたけど見た目ちょっと幼いしね。背もサトシより低いし」
出会ったばかりであるポケモントレーナー、イエローとサトシのやり取りを後ろで見ていたカスミとタケシはなんとなく微笑まい気分でそれを眺めてたが、次いでイエローを見てとある疑問が頭をもたげる。
「そういえば、イエローが乗ってたボードってどこいったの?」
「あ、いつのまにかなくなってるな。でもついさっきまで乗っていたのに……」
「それと、なんであたしたちの名前知ってたのかしら」
「普通にジム関係じゃないか? トキワシティ出身だって言ってたし」
「あ~、それもそうか。でもジムリーダーのお姉ちゃんたちじゃなくてあたしまで知ってるなんて、これはやっぱりハナダ美人四姉妹の知名度よね!」
「…………」
「ちょっと、なんでそこで黙るのよ」
「お~い、何やってるんだよ。先行っちゃうぜ!」
カスミの姉たちを思い出しデレっと惚けるタケシを睨むが、サトシに声をかけられて慌ててカスミはタケシをひっぱり後を追う。
「あ、ちょっと待ってってば~!」
ほんの少しの偶然か、それとも誰かが招いた必然か。
本人たちはまだ知らない数奇な出会いを、月明かりが照らす明るい夜空は静かに見下ろしていた。
一応イエローがチュチュと出会う前の時間軸という事で